転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ! 作:オルクス001
どうもスランプ気味のようで、字数が少ないです。
聖ウルスラ医科大学病院。大陸有数の医療施設で、病院の他に研究機関もあるらしい。クロスベルだけでなく周辺諸国からも患者が訪れるようだ。
ここにはロイドの知り合い(ちなみにナース)がいるようで、取り敢えずはその人を通して、被害者に会うつもりだ。
何故、わざわざそんな回りくどいことを、と思うだろうがロイドもこちらに来てからまだ会ってないらしく、顔を見せておきたいとのこと。要するに仕事のついでに、だ。ランディは、相手がナースだと知って浮かれているようだが。
院内は、何処からともなく薬品の匂いが漂い、ライトの光量は消して多くないものの、白で塗り固められているせいで、少し眩しくも感じる。
ティオは院内に入ると、少し嫌な顔をするが、俺と目が合うと直ぐにいつもの顔に戻った。そう言えば、バス停で病院が少し苦手とか言ってたな。
「クロスベル警察の者です。今日は魔獣被害の件で伺わせいただきました」
受付で、今日来た要件を説明していると、ブロンドウェーブヘアのナースが、こちらへやってきた。どうやら彼女がロイドの知り合いで、セシルと言うらしい。
しかしこの女性、天然である。いや、早とちりというのが正しいか。はじめはエリィ、次にティオ、そしてまさかの俺やランディまで、ロイドの恋人と間違えだしたのだ。違う、断じて違う。俺にそっちの気はない。
× × ×
場所は変わって、とある病室。そこは、件の被害者がいる病室だ。
何やら男性の医者と、談笑して盛り上がっている。
「先生ってもしかしてSですか?」
「僕としてはMだと思うんだけど」
「もう、ヨアヒム先生、何て話してるんですか」
ほんとなんて話してんだこの医者。
俺達は、手短に要件を伝え、早速事情聴取を始める。
ちなみに医者とセシルは、各々の仕事をするため持ち場に戻っていた。
事件当日、彼は研究レポートの作成で遅くまで残っていたらしい。レポートを書き終え、少し朦朧とした意識の中屋上で夜風に当たっているところを襲われたらしい。翌日、清掃員にズタボロになって倒れているところを発見され、緊急入院したようだ。しかし、肝心の魔獣は狼かどうか判断がつかないらしい。
「なるほど……」
これは、危険だな。彼が襲われたのは屋上だと言った。ならば魔獣の侵入経路があるということだ。となると、次は院内にまで侵入しかねない。
ロイドは男に礼を告げると、すぐさま侵入経路の探索を提案する。
もちろん反対者は出ない。
侵入経路だが、深夜ということなので、戸締りはしっかりとされていたはずだ。よって、窓からの侵入は考えにくい。更に、他に被害が出ていないのを考慮すると、1階のフロントからの侵入もないだろう。となると、屋上への直接な侵入、となるのだが……。
「とにかく、現場の確認も兼ねて屋上周辺を見に行こう」
× × ×
彼が襲われた場所は地上約4階の高さで飛行型の魔獣でもない限り侵入は無理そうだ。
「あそこはどうでしょう?」
ティオが指差すのは、3皆部分の屋上だ。山の傾斜が近く、可能性としてはありだ。更に、こちら側へはコンテナが階段状になっているため、獣クラスの跳躍力なら移動も可能だろう。調べてみると、積もったホコリの中に犬のような足跡があった。
「あたりだな」
「そうみたいだ。すぐに対策をしてもらおう」
セシルへの報告を兼ねて、ナースセンターへ向かう。
セシルは、別の病室にいるらしく、場所を教えてもらう。
病室では1人の女の子が入院しており、名前をシズク・マクレインというらしい。うん、そうなんだ。この子の父親、風の剣聖なんだ。しかも大のお父さんっ子らしい。正直、娘に甘えられる風の剣聖とか想像できない。そんなの目の当たりにしたら、ギャップで禿げそう。いや、禿げないけどさ。
「この子が、事件当日の事で気づいたことがあるらしいの」
それは、ありがたい。
事件当日、彼女は寝付けず、点字の本を読んでいたらしいのだが、その中で誰かの悲鳴と足音、更に、
「気のせいかもしれませんが、キーンとかすれた音が聞こえました」
と言った。
「キーンと……かすれた音……?」
高音が気になるが、侵入経路は、屋上のあそこで間違いないことがわかった。
俺達は、セシルにその事を話し、早急に対策をしてもらうことにした。フェンスの高さを上げてもらえば、それで済むだろう。
しかし、ロイドは終始怪訝な顔をしており、それに気づいた俺が聞くも、「何でもない」と答えるだけだった。
何でもないわけないと思うが、彼が疑惑を確信に出来ないのなら俺が聞いたところで何も変わらないので、俺も引き下がる。
明日は、鉱山町マインツでの聞き込みだ。3件中2件回った今でも魔獣の詳細はわからず、捜査の進展は微々たるものだが、焦りは取り返しのつかない失敗へ繋がると己に言い聞かせ、俺達は帰路へつくのだった。