転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ!   作:オルクス001

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トラブル

「……」

「……」

 

 いや、なにか喋ろうぜ?

 俺達は現在、【聖ウルスラ病院】へと続くウルスラ街道を歩いている。そう、歩いているのだ。数時間前長い道のりを踏破したのにもかかわらず、だ。

 理由は簡単、バス停でバスを待っていたらなかなか到着せず、様子を見に来た交通課の職員に話を聞いてみると、どうやらトラブルに巻き込まれた可能性が出たのだ。

 全員、疲労で誰も喋らない。が、そんな疲労も吹き飛ぶような状況が目に飛び込んできた。

 目の前にはバスと2体の角が特徴的な大型魔獣、その間には運転手がいた。

 

「とにかくバスと乗客達を守るんだ」

「おい、運転手! 早く中に入れ!」

 

 と、ランディは運転手に声をかけるが、彼は動かない。いや、動けないのだ。大型魔獣2体に迫られた彼は、まさに蛇に睨まれた蛙だった。

 

「俺がやる!」

 

 俺はそう言うと、右手を前に突き出し、刀を持つ左手を引き刀を地面と水平に構える。

 

「牙突!」

 

 その状態から魔獣めがけ、突進しながら突きを繰り出す。

 景色が倍の速度で流れ、手前にいた魔獣との距離が詰まる。俺の攻撃は、確かに相手を捉えたはずだった。しかし、すんでのところでバックステップで避けられ、かすり傷程度しか与えられなかった。

 これは、【るろうに剣心】の藤田五郎が使っている技だ。実は、この前のタイマンの1件から密かに練習していたのだ。仕組みはもう言わなくてもわかるよな?

 

「車内に入れ! 早く!」

「は、はい」

 

 結果的に彼と2体の間に割って入った俺は、彼に声をかける。すると、やっと彼はバスの車内に逃げ込んだ。

 

「おっしゃ! よくやった!」

 

 ランディもすぐさま俺の隣に滑り込み、牽制のためスタンハルバードを振る。

 

「いくぞ!」

 

 ロイドの号令で全員が動き出す。

 俺は相手の懐に踏み込んで、下から斬り上げる。避けられた。更に踏み込み縦に斬り下ろす。が、それも避けられた。どうやら俺が思っている以上に動けるようだ。

 魔獣の右腕がふり上げられると同時に、俺は後ろに下がる。と、先程まで俺がいた場所にその大きな腕が叩きつけられ、地面にヒビが入った。

 おいおい、まじかよ。あんなのまともに当たったら医務室じゃすまねぇぞ。

 俺は更に距離をとろうとするが、気付いた。すぐ後ろはバスだ。これ以上は下がれない。それどころか横への移動もままならない。

 その時だ。突如地面を揺るがすほどの何かが、魔獣のいた場所に着弾した。強烈な砂埃に俺とランディは、目を瞑り耐える。視界が晴れ、状況が読めるようになる。どうやらティオが、アーツを放ったらしい。危機を察知した魔獣は、攻撃が当たる前に後ろへと下がっていたようだ。しかし、その2体には既にロイドが突貫している。

 

「助かったぜ」

 

 そう言うと同時にランディは、再び攻撃に加わる。1テンポ遅れて彼のあとを追うように走り出す俺。

 ロイドが1体に連撃を当てる。彼がその場を退くと、次はランディが重い1撃を叩き込む。そんな攻撃ものともせず右腕を振り上げると、肩あたりをエリィが射撃。これは効いたようで、振りあけた腕を力なく下ろし、左手で薙ぎ払う。が、それを難なく避ける2人。直後、ティオのアーツによって炎に包まれる。完璧なコンビネーションだ。

 一方俺はというと。

 

「うわっ! 危ねえ!」

 

 もう1体を相手していた。

 キツいよ……。1人でコイツ相手なんてキツすぎるよ。まぁ、この場合誰かがもう一体の足止めをしないとどうにもならないわけだが……。たまにはこっちの援護もしてくれよお! いや、この場合向こうを素早く倒してもらった方がいいか?

 そんなことを考えながら闘っていた俺が馬鹿だった。俺が動いた先に振り下ろされる腕。それに気づき動きを止めるが、少し遅い。頭上より迫り来る鋭い爪。瞬間、全てがゆっくりと、スローモーションのように流れていく。

 どうすることもできないまま、その爪が目と鼻の先にまで近づいた時だった。

 

「させるかよ!」

 

 その声と共に聞こえる鈍い音。魔獣の動きが止まった。素早く俺は火球をぶつけ、後ろへと下がる。

 

「悪い、助かった」

 

 助けてくれたのはランディだった。

 

「一気にカタを付けるぞ!」

「おうよ!」

 

 俺は素早く魔獣の懐に飛び込むと、真横に斬りつける。初めて攻撃が当たった。しかし、その傷は浅く、俺は片腕を捕まれ、宙へと投げ飛ばされ、数m離れた場所に落下した。

 

「コイツはどうだ? クリムゾンゲイル!」

 

 後ろを振り向くと、ランディが炎を纏ったハルバードで強烈な一撃を叩き込んでいた。斬撃が魔獣の体を抜ける。一瞬の間の後、魔獣の体は2つに別れ、その場に落ちた。やっぱ強えな。

 俺たちが殲滅したところを見ていたのだろうか、運転手が外へ出てロイドと何やら話し込んでいる。その後、修理をするためか車両の装置を触り始めた。

 少し長引くと判断した俺は、ロイドの支持を仰ぐため彼らに近づく。

 その時だった。背を向けているため彼らは気づいていないが、ロイドの背後から襲いかかる先程と同タイプの魔獣がいた。それは狂いなく、ロイドの頭上に飛びかかる。

 茂みから飛び出したそいつに気づき、ランディが声をかける。ロイドもようやく気づくが遅い。俺は咄嗟に彼を突き飛ばし、振り下ろされるその爪を刀で受け止める。

 金属音が鳴り響き、軽く火花が飛び散る。

 もう片方の腕で、俺をなぎ払う魔獣。受け止めるだけで精一杯の俺は、為すすべもなく吹き飛ばされ、近くの木に身体を叩きつけた。

 ズルズルとその場に崩れる俺は、更に2体が現れるのを目撃する。

 

「リンドウ! くそ、今度は3体も。ロイド、どうする? 各個撃破に持っていくか?」

「いや、それじゃバスと運転手が危ない。取り敢えず、ティオはリンドウの手当をしてくれ」

「了解です」

 

 ティオがこちらに駆け寄り、回復アーツを俺にかける。

 その背後で、バスの影から飛び出す2つの影が見えた。それは長棍を持った女性と、双剣を持った男性で、瞬く間に魔獣を殲滅する。

 

「すごいな……」

 

 俺は刀を杖替わりによろけながら立つ。頭をうった為、多少フラフラする。

 

「だ、大丈夫ですか? あ、腕……」

 

 彼女の視線が、俺の左腕に落ちる。

 見ると、服が裂け、血が滲んでいた。どうやら先程の攻撃で、傷ついたようだ。

 しかし、それほど深くもないので、布で縛るだけで済ませる。

 

「よし、これで大丈夫だろ。まあ、後で病院行くから、最悪その時に診てもらうよ」

「そうですか……。まったく、無茶はしないでください。さっきのロイドさんの時といい、この間の私の時といい」

「あれは、不可抗力だ。それより戻ろうぜ。あの2人にお礼も言わないと」

 

 彼女はジト目でこちらを見つめ、やがてため息を吐き「そうですね」と応え歩き出す。

 助っ人の正体は、今日配属となった遊撃士、エステル・ブライトとヨシュア・ブライト。

 

「いやあ、助かったぜ」

「腕は、大丈夫?」

「ああ、それほど深くもないし」

「なら良かった」

 

 2人とも見たところ10代後半のようだが、戦闘力が桁違いだ。

 俺達は話もそこそこに、彼女らにここを任せ病院へ急ぐことにした。

 しかし、2人とも強かった。思わぬところでライバルが出現したな。

 などと考えながら俺達は、ウルスラ街道を病院へ向かい、歩くのだった。




 久々に最初の見返したら割とひどかった件。
 しかも文体が違う感じがするし……。
 これこそトラブルだよ! ひどいトラブルだよ!

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