転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ!   作:オルクス001

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 いつもこれくらい書けたらなあ。精進します。


神狼の伝承

 皆さん、悲報です。たった今アルモリカ村行きのバスが行きました。次は2時間後になるそうです。って皆さんって誰だよ!

 もちろん2時間も待っていられないので、俺達一行は歩いて村まで行くことに。おい待て、普通ならバスで向かう場所に歩いていくのはキツいだろ。

 

「魔獣も出るから気を付けて行こう」

 

 まじかよ……。街から1歩出れば、そこは魔獣が闊歩する世界ってことか。

 実際、山道に入ると至る所に魔物がいる。蛇のような奴、巨大な昆虫型の奴、トサカが刃物の奴、これはこっちに来たとき初めて出会った魔物だな。いや、愛着はないよ?

 てかこれでバスとか走れんの? 気になったのでロイドに聞いてみると、小型の魔物は導力車に驚いて襲ってこないのだとか。なるほどね。

 さてと、それじゃあ魔物をなぎ倒しつつ、アルモリカ村へ向かいますかね。

 

 × × ×

 

「し、しんど」

 

 村が見えたあたりで、すでに俺は限界を迎えていた。息は上がり、足が重い。普通に歩いたならここまで疲れることはなかっただろう。しかし、度重なる魔物との戦闘によって、俺の体力はゴリゴリと削られていった。なんで皆は、平気なんですかねえ?

 だが、実際はそうでもないようで、4人とも表情に疲れが見える。訂正、ランディは平気そうだ。さすがっすわぁ。

 風が吹き、木々が揺れる。風は俺の体に溜まった熱を冷まし、木の葉の擦れる音は、疲弊した心身を癒してくれる。自然最高っす。地球先輩、マジぱねぇっす。

 顔を上げると目の前には、バス停と村についたことを知らせる看板があった。

 

「やっと着いたのか」

「ああ、ここがアルモリカ村だ。まずは村長に話を聞きに行こう」

 

 あ、早速やるんですね。休憩したい……。

 村長の家に行くと、丁度村長が、爽やかなサラリーマン風の男性を見送っているところだった。こちらに気づくと、会釈をしてきたので、こちらも返す。

 その後、村長にここに来た趣旨を伝えると。

 

「ありがとうございます。まさかあなた方が、来てくださるとは」

 

 あ〜、村長さん? 多分それ勘違いしてる。俺達はけ・い・さ・つ! 遊撃士じゃねえ。

 ロイドが手早く誤解を解き、事件の詳細を説明するよう促す。

 村長曰く、狼型魔獣の正体は神狼かも知れないと言う。

 神狼とは。その昔、血で血を洗う戦をしていたこの地を見守り、時に無力な人間の手助けをする、女神が遣わした聖獣。その姿は狼で、白い毛並みをしていたそうだ。

 

「もしかすると、何かの警告をしに来たのかもしれん。最近のクロスベルの発展を見ていると、そう思えてくるのじゃ」

 

 警告……か。未来の事を考えるのはいいが、時には過去の事も考えないと、大事なものを見失うぞ。ってところか。

 村長に一通りの話を聞いた後、俺達は村の人に聞き込みをし、ついでに宿酒場で昼食を取ることに。そろそろ限界でした、はい。

 聞き込みの結果はどれも大体同じ。当日は皆早く帰っていたせいで何も知らないようだ。

 

「あれ? あなた方は先程の」

 

 昼飯を食べながら皆で話をしていると、あの爽やかサラリーマンが話しかけてきた。

 この男性、ハロルド・ヘイワースは、クロスベル市で貿易業をやっているらしく、今日はこの村の特産品の買い付けに来たようだ。村長曰く蜂蜜を初めとした様々な特産品を良心的価格で、取引してもらっているらしい。

 

「警察の方でしたか。何か事件でも?」

「実は狼型魔獣の件で、捜査に来ていまして」

「なるほど。病院の方では、けが人も出ているらしいですし、物騒ですね。何か有力な情報を提供出来ればいいのですが、生憎、何も持っていないもので」

「いえいえ、お心遣い感謝します」

 

 と、エリィとハロルドさんが話しているのだが、さすが政治家の娘だ、俺達よりずっと受け答えがしっかりしている。おまけにスタイルがいいときた。こいつスペック高ぇ。

 いや、待てよ? ロイドは普通にイケメンで、尚且つ頭が切れる。聞いた話では18歳で、警察試験合格なんて早々ないらしい。ランディもイケメン、しかも戦闘では1番前に立ってくれる男らしい人だ。ティオは、俺より2歳下なのに戦闘面やその他色々で俺よりしっかりしている。そして可愛い。あっれぇ〜? もしかしなくても俺以外皆高スペックじゃないですかやだー。

 

「どうかしましたか?」

 

 俺が1人そんな事を考えていると、ティオが不思議そうに聞いてきた。

 

「高スペックな奴には、俺の気持ちはわからんよ」

「は、はあ」

 

 俺の答えに良く分からないと言った様子。いや、今の目線には「何言ってんのこいつ?」みたいな感じがこもってるね。悲しい。

 その後は、食堂で食事をとっていた村人に聞き込みをしてバス停でバスを待つことにしたのだが、ティオが何かを察知したようで、センサーを最大出力にまで上げ、探知を開始する。

 

「……気のせいだったようです」

「ちなみにその聞こえた音っていうのは?」

「何かの遠吠えのようでした」

 

 遠吠えか……狼型魔獣の可能性が大だな。

 

「ちなみにセンサーの探知範囲は?」

「大体50セルジュです。風向きしだいでは倍にもなりますが」

「まじかよ。そんなにか」

 

 ランディが50セルジュと聞いて驚いている。が、俺はまず1セルジュがどのくらいか知らないので、頭にはてなマークが浮かんでいる。長さの単位まで違うのかよ……。

 結局範囲が広すぎて今は気に留めるしかないようだ。

 

「あの、皆さんは疑わないんですか?」

 

 ティオのその言葉に全員がキョトンとする中、彼女は少し俯き続ける。

 

「普通の人に聞こえない音が私には聞こえた。普通なら嘘か、気のせいだと思うのでは?」

「とは言っても、ティオすけが凄いのは全員が知ってるからな」

 

 ランディが困ったように答える。

 

「ランディの言う通りだ。俺達はお前を信じてる。それに今お前が嘘をつく理由なんて無いだろ?」

 

 俺もランディに続いて言う。

 

「そう、ですね。すみません。今のは忘れてください」

 

 彼女はなんとも言えない表情を浮かべ、そう答えた。

 なぜそんなことを聞くのか少し気になるが、俺が聞いてどうにかなる話しなさそうだし、向こうから話してくれるのを待つしかないだろうな。そんなことを考えながら俺はふとそばの林を見る。

 ……!

 今一瞬だが、林の暗闇の中に動く影があった。慌てて目を凝らすもそこには何もなく、ただ闇が広がるばかりだった。おそらく見間違えだろう。そう自己完結をして、俺は林から目を離したのだった。


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