転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ!   作:オルクス001

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こうして俺達の物語は始まった

 その日、旧市街に黒づくめの男が4人集まっていた。

 

 「チッ! どうなってんだ。お互いを潰し合う寸前まで行っていた筈なのに、一向にその気配がねぇ」

 

 1人が苛立った口調で言う。その声色には、少し焦りも見える。

 

「ならもう1度やるまでだ。いいか? サーベルバイパーならスリングショット、テスタメンツならバットだ」

 

 その言葉に男達は黒い笑みを浮かべ、闇に消えた。

 

 × × ×

 

 誰もいない旧市街をテスタメンツのメンバーが1人歩く。

 彼らの本部トリニティからある程度離れた時、それは起きた。突如背後から何者かにバットで後頭部を殴られ、そのメンバーは声も上げずにその場に倒れたのだ。

 

「よし、殺さない程度にな」

 

 背後から襲った男が、近くの物陰から出てきた3人の男に声をかける。

 その中の1人が再びバットを振り下ろす。が、なんと気絶していたはずのメンバーが目を覚まし、手に持つ武器で受け止めた。

 

「はいはい、お前ら現行犯な」

 

 さらに物陰から4人の男女が、それぞれ武器を構え現れる。

 ロイドの提案したこのおとり捜査。何より凄いのは、今日再びルバーチェが現れ、新たな被害者を生み出すと予想したのが見事に的中した事だ。理由は単なる【刑事の感】だと言う。刑事の感って怖いね。

 

「ロイド、大丈夫「クソ! 逃げるぞ!」あっ! 待て!」

 

 俺がロイドの心配をする間にルバーチェのメンバーは一目散に俺達から離れ、逃げようと広場へ向かう。が、その先に待っていたのはサーベルバイパーのメンバーだった。腕を組み仁王立ちで先頭にいるヴァルドの顔には、暗がりでもわかるほどの怒りが見える。それを見た2人は怯え、残りの2人は別ルートからの逃走を図る。しかし、テスタメンツのワジにその道を遮られ、さらにその後ろからは、俺とティオのペアが退路を断つ様に迫る。

 逃げ場ないことを理解すると、彼らは武器を抜き戦闘態勢に入る。

 うわ……。こいつら銃かよ。なんかここに来て急に死亡確率が上がった気がする。

 とりあえず後ろのティオだけは銃弾に晒すまいと、身体を移動させる。

 

「あいつら本物の拳銃だぜ? お前は物陰に隠れて援護を頼む。万一、俺が倒れてもお前が残っていれば大丈夫だからな」

「……わかりました」

 

 一瞬の間を置いて、答える彼女。背後にいるので顔は見えないが、おそらく不機嫌なほうだろう。そんなことを考えつつ、俺は刀に手をかけ、構えをとる。

 それを見て、向かいのワジも拳を作った。

 先に動いたのはワジだった。彼が1歩を踏み出すと、マフィアも拳銃を構え、発砲する。が、射出された弾は的を捉えることなく後ろの壁に着弾した。すげえ。あの距離でよけやがった。

 もちろん俺も止まっているわけには行かない。目の前の敵が照準を定める前に刃がその手を襲う。

 しかし、そこは仮にもマフィアの1員だ。俺の攻撃は見事に見切られ、銃口が俺の額を捉える。一瞬ビビるものの、俺は左手で銃口を逸らし、死を回避する。

 あっぶねえ。知り合いにミリオタがいて良かった。あいつのおかげでとっさの判断ができたぜ。そしてうるせえ。耳元で発砲されるとこんなにもうるさいのか。

 次に俺は刀を捨てた右手で手刀を作り、相手の喉を突く。

 一応警察の1員である俺の急所狙いの攻撃に相手が驚き、硬直した時を狙い、ゴローちゃん直伝のアームロックをかけた。

 飯を食うときは、なんていうか救われてなきゃならないんだ。って飯関係ねえ。

 ワジも終わったようで、気絶したマフィアを引きずりこちらへ来た。

 

「終わりましたか。全く無茶をしますね。あれで当たってたらどうするつまりだったんですか」

「んー、死んでたな」

 

 その答えにワジが笑う。

 

「自分の死をそこまで軽く言うなんて 、変わってるね」

 

 いつしか雲は晴れ、月明かりが3人の顔を照らす。それはまるで……。

 

「いてぇ。クソが! 離せ!」

 

 あー、コイツのことすっかり忘れてたな。

 捕まえた2人を連れ、ロイド達のいる広場へ戻ると、そこには例の記者がいた。そう、クロスベルタイムズのグレイス・リンだ。ちょ、カメラのシャッターうるせえ。

 

「なんであの記者が?」

「さ、さあ?」

 

 ロイドも何故彼女がいるのかわからない様子。しかし、彼女のおかげでマフィアもこれ以上下手に動けないだろうし、借りができた。

 

「それより銃声が2回も聞こえたけど大丈夫だったのか?」

「ああ、誰も怪我はない」

 

 × × ×

 

 次の日俺達は課長室にいた。理由はもちろん今回の事件の報告だ。

 最終的に今回の事件は、下っ端の勝手な行動として処理された。なんだか腑に落ちないが、裏社会を操る組織相手にここまでできたのだ。成功と言えるはずだ。

 

「これでだいたいわかっただろう。なぜこの課が設立されたか」

 

 俺達の報告を聞いて、いつになく真剣な表情で問うセルゲイ課長。

 なるほどね。この市は、いや、ここの政治家はマフィアとの癒着が多い。故に警察という組織が、介入できない事件も少なくない。俺達の役目は、おそらくそういった事件に少しでも介入することだろう。介入と言っても今回程度のが精一杯だろうけど。しかし、それだけでも大きな変化となるのだろう。なら、その仕事全うするまでだ。

 

――しかし、俺達はまだ知らない。これから見るさらに深い世界の闇の1部を。――




 やっと序章完結に辿り着けました!
 いろいろと記憶が飛んでる部分もあるので、最近再びやり始めた零の軌跡。やっぱり面白いですね!
 あの面白さを2次創作として、さらに面白くできればと思います。
 これからも宜しくお願いします。

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