獣が統べる!<作成中>   作:國靜 繋

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今回は短いです。

2015年10月25日一部修正
天国も地獄も髪も悪魔も神羅万象、三千大千世界の悉くを。

天国も地獄も神も悪魔も神羅万象、三千大千世界の悉くを。


獣の歩

「では、じゃんけんでの取り決め通り、拙者が一番でござるな」

 

袴姿に陣羽織を羽織っているまさに侍といった風貌の男、イゾウがコートを投げ捨てると、一歩集団から前に出た。

 

「おお、愛しの江雪、今食事を与えてやるからな」

 

唾を鳴らし刃をわずかに出すと刀に対して狂ったまでの愛情を注ぐ男は走り出した。

座座座座座座座座座座斬っ!!

上から下、右から左、斜め切り捨て、切り上げ、縦横無尽な刀捌きが反社会分子に襲い掛かる。

一瞬の出来事に何をされたのか認識する前に殺す……はずであった。

 

「お~、あぶねぇな」

 

「にぃちゃんよぉ、すこしはてかげんしてくれよぉ~」

 

「ひひっひひひひひ!!」

 

反社会分子と保安本部に認定され保護拘禁という名目で拘束されていた者たちだが、その実力は帝都警備隊どころか帝国軍人に匹敵するレベルの者たちばかりだ。

油断や慢心があって殺せるほど甘い連中ではない。

そのため、イゾウによる斬撃の強襲を察知した者たちは、一瞬の判断で少ない数の味方……ではなく同種の人間を犠牲にし生き残ったのだ。

 

「じゃあ、次はこっちの番だよなぁ」

 

反社会分子たちが各々の得物を構えた。

全て近接戦の武器ではあるが、こいつらには十分なものだ。

むしろそれ以下の得物を利用していた者さえいるほどだ。

そんな奴らが一斉に孤立した立ち位置にいるイゾウへと襲い掛かる。

 

「少しはできる者たちもいるようでござるな。江雪今回の食事は歯ごたえがあるようだ」

 

イゾウが襲い来る者たちへの反撃を刹那の中で考え抜く真下、見下ろす位置にいるシュラは驚いていた。

 

「おいおい、マジかよ。イゾウの斬撃で生き残るとか」

 

「シュラ、私がただの囚人を用意するわけないでしょう。特に宿題の成果を確認するためにわざわざそろえた者たちですよ」

 

「だが、イゾウを殺せるレベルの奴はいないな。なんせあいつら全員世界レベルの実力者だからな」

 

「そこまで言い切るのであれば、少しは期待に応えてほしいものですねぇ」

 

イゾウが反社会分子として拘禁されていた者と切り結ぶ姿を見ながら大臣が言った。

 

「そろそろコスミナちゃん行きまーす!!」

 

コートを脱ぎ捨てた下には、うさ耳カチューシャにプリンセスショートドレスを着ている眼鏡を掛けた女、コスミナが大きく息を吸い込むとマイクを取り出した。

 

「安らぎの歌で逝かせてあげましょう!!」

 

歌声が超音波となって襲い掛かる中、反社会分子たちは人一倍体格がでかく太っている奴の陰に隠れた。

 

「あで?なんでみんなおでのうじろにがぐれるだが?」

 

太っている奴がそう聞くのと同じタイミングで超音波が襲い掛かった。

 

「おおおおおお、ぶるえるだよ」

 

本来であれば全身の骨を粉々に砕くはずの超音波は、肉の壁に阻まれ本来の効果を発揮できなかった。

むしろダイエット器具と同程度の効果しか生んでいない。

 

「はっ!!少しはできるようじゃねぇか、よ!!」

 

コートの下からは細身な男、エンシンが腰にさしている曲刀を振るうと曲刀の軌跡から真空の刃が発生した。

真空の刃は切り結んでいるイゾウをを巻き込む形で反社会分子たちへと襲い掛かる。

 

「ぎゃぁぁあああ!!」

 

「腕がぁぁあああ、俺の腕がぁああ!!」

 

反社会分子たちは、真空の刃を止める手段がなく、腕や足を切り落とされてしまい、うまくかわした者たちもその隙を突かれイゾウの手によって切られてしまった。

 

「案外あっけないものじゃな」

 

イゾウの胸のあたりまでしかない小さな身長の見た目女の子ドロテアが、エンシンの帝具による真空の刃で切り殺されている者たちの元へと歩み寄り蹴り飛ばした。

その瞬間、死体の下より小柄な者が飛び出してきた。

小柄であり、他の者の陰になる位置に偶然いたため、追撃を免れスキを突き突き刺すように凶刃がドロテアに襲い掛かる。

 

「おお!!」

 

間一髪、凶刃をかわしたドロテアは、相手の腕をつかむと一気に自身に引き寄せると、首筋に甘噛みするかのようにかみついた。

傍から見たら可愛らしい光景かもしれないが、その実態はとても悍ましいものであった。

噛みつかれた場所から、血を吸い取られ、全身の水分という水分が奪われミイラのように干からびていく様は、あまりにも残酷であった。

 

「少しは使えるようですが、彼の相手はできますかなシュラ?」

 

「あん?どれだ?」

 

大臣が指さした先には、練兵場の壁に寄りかかりわれ関せずの態度で腕組している男がいた。

 

「あの程度問題ないだろ?どうせ一人だ。一対一で俺が集めた奴らが負けるわけねぇだろ」

 

「そう言い切れますかな?あれは元暗殺部隊所属で、命令無視多数、命令外の虐殺、味方への襲撃などなど多くの罪状で拘束されていた者ですよ」

 

「命令無視し拘束されてなお生きてるってことは、薬物での強化型じゃないようだが」

 

「ええ、実力はありましたから薬物は投与されていませんし、こちらが拘束する前にムソウの手に落ちてしまいましたからね。今回あれをこちらの手に戻せたのは本当に運が良かった」

 

父親であるオネストの口より聞かされた経歴の数々に、どれだけ使える者か見定めようとシュラは見つめた。

本当に使えるのであれば、それこそ親父に頼み作るつもりの組織にシュラは組み込むつもりでいる。

しかし、組織に組み込むことに関してはオネストより待ったがかかった。

 

「シュラ、先に言っておきますがあれに関しては、この場で必ず殺しなさい。下手に自由になる権限を与えると後々ムソウがうるさいですからねぇ」

 

「仕方ねぇか、面白い奴みたいだったから仲間に入れようと思ったんだがなぁ。なら親父俺も旅をしている間にどれだけ強くなったか見せてやるよ」

 

「それはそれは、ではどれだけ強くなったか見せてもらいましょう。ですが、決して私の期待を裏切らないで下さいよシュラ」

 

練兵場内へと飛び降りるシュラは、食事する手を止めたオネストが発した恐怖を感じさせるだけの力を持った言葉を背中で受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長官、よろしかったのですか。大臣に拘束している者たちを引き渡して」

 

「反社会分子だ。減ったところで問題ではない。それよりも大臣の目を西部戦線と南部戦線から目をそらせることができるだけあれらも使えたと言えるものだ」

 

報告しに来た部下を見ることなく、手元にあるP-1000ラーテの稼働率と戦果報告書を見ながらムソウは答えた。

 

「しかし長官、大臣が引き渡す際に要求した者たちの中には……」

 

「気にしているのは、拘束していた奴であろう」

 

「はっ、そうです!!帝国暗部の一つである暗殺部隊。その中でも最悪に部類される戦闘凶を引き渡してよろしかったのでしょうか」

 

「あの程度問題ではない。私の敵には値しない、捕られようと思えばいつでも捕らえられる程度のものだ。それよりもだ、計画を次の段階に進める」

 

計画を次の段階に。

その言葉を聞いた瞬間、報告を行いに来ていた隊員の雰囲気が変わった。

計画の段階が進み、全隊員に周知されている。

内容はいたって簡単だ。

腐敗しきった帝国の崩壊と再建だ。

腐敗の原因である皇帝を始め、大臣派も大将軍派も穏健派も貴族も太守も等しく浄化することだ。

穏健派は、と思う者も出てくるだろうが、結局腐敗を止めるどころか命惜しさに皇帝へ帝都の現状を伝えようともせず、むしろ諫言を述べることで処刑されることを恐れている。

穏健派という耳障りの言い言葉で身を固めている者たちを使えるから使うが、ムソウにとって助ける理由にはならない。

 

「P-1500の配備にだけは常に注意を怠るな。あれが見つかると厄介だ」

 

「承知しております」

 

P-1500、その巨体からくる鈍重さはムソウを持ってしても解決できるものではなかった。

超級や特級危険種を素材にしてなおその重量は重く巨大であるが、その破壊力は想像を絶するものだ。

たった一発町の中心に落ちようものなら壊滅的な打撃を与えることが可能だ。

むろん使用する弾頭も種類が多く、中実、炸薬、可燃物に化学薬品などがあり、そのどれもが凶悪なまでに性能がいい。

化学薬品などは言葉を濁してはいるが、実質的には有毒兵器だ。

人を人とみなさない悪魔のようで、現実を直視したくない悪夢のような兵器だ。

しかし、そのような兵器開発を許した張本人たるムソウは、否混じり合う二人の魂と肉体は(ラインハルト)は総てを愛している。

差別区別なく、すべてを平等に。

故に全てを破壊しつくす。

天国も地獄も神も悪魔も神羅万象、三千大千世界の悉くを。

そして、それを知っているがために武装親衛隊はムソウに忠を尽くす。

他でもないムソウ(ラインハルト)破壊され(抱かれ)ているのだから。

忠を尽くさず、裏切るはずがない。

 

「もう少しだ、ああ、もう少しだとも。新世界の創造がなされるのだから」

 

いくら混じり合おうともその()ムソウ(ラインハルト)のモノであり、その覇道を止めることは誰にもかなわない。

報告しに来ていた者が出て行き、執務室には一人となったムソウが窓から人々が営み暮らす帝都の街を見下ろしていた。




仕事が忙しく今後も更新期間が開くでしょうが、温かく見守っていただければ幸いです。
別のSSをたまに考えたりしてしていますが、現段階では獣が統べる!!>アンチェイン>不死の王の優先順位ができています。
(赤屍さん+No.37564)+緋弾のアリア=新作を考えていたりもします。
七実+ケンイチも書きたいので、更新速度を上げないとも考えていたり……

では、また次の話で!!

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