獣が統べる!<作成中>   作:國靜 繋

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新年一発目は零を題材としたものです。
まあ、零が完結する前位に限のいいところで切りますが……
原作11巻も出たことですし、ぼちぼち原作の方にも触れて行きたいと思っています!!

と言うことで、今年も獣が統べる!!よろしくお願いします!!


一斬必殺の過去と過去の獣

ボリックを暗殺したナイトレイド一行は、帰還時の襲撃を警戒し、大きく迂回して、南から帝都に戻るルートを選択していた。

 

「アカメ大丈夫か?お前が一番怪我が酷いんだ」

 

「痛みはもう引いて来ているから大丈夫だ」

 

私は、皆に無理矢理寝かしつけられながら安心するように嘘を吐いた。

痛みは引いてなどいない。

むしろ日を重ねるごとに痛みを増して来ている。

 

「そうか、もし痛むようだったら行ってくれ」

 

「分かった。しかしナジェンダは少し心配し過ぎだ」

 

ナジェンダもスサノオの奥の手を使って生命力を著しく消耗しているのに、人の心配をして優しいな。

 

「アカメ達はみんな大切な仲間だからな」

 

「仲間、か……」

 

仲間。

その言葉に帝国の暗殺部隊に居た頃のことを思い出した。

しかし、暗殺部隊に居た頃の仲間は、私を残して他は誰一人も生きていない。

そんな嫌なことを思い出しながらも、私はみんなに甘える形になると分かりながらも、襲い来る睡魔に勝てず眠りについた。

 

 

 

 

 

始まりはあの頃だった。

両親にクロメと共に帝国に売られた日。

 

「お姉ちゃん」

 

「大丈夫だクロメ。何があってもお前だけは守って見せる」

 

何も知らされないまま、私達は他に帝国に売られた子供達と一緒に、深い森の縁へと連れてこられた。

 

「これから君たちを試験をする」

 

左目側だけに片眼鏡をはめ込んでいる、骸骨を思わせるほど肉が付いておらず、むしろ骨に皮を張り付けた様な初老の男が言って来た。

いきなりの事態のため、クロメが震えた手で私の手を握ってきたため、落ち着かせるために私は強く握り返した。

 

「なに、試験と言っても簡単だ。君たちにこの樹海を突破してほしい。場所はこの位置から丁度反対に位置する場所だ」

 

簡単と言ってるが、そうじゃないことは誰にでも分かることだ。

しかしクロメだけは確りと守り通す。

 

「期限は、明日の日が昇り切るまでだ。ああ、言い忘れていたが、逃亡はそのまま死刑である事を忘れないように」

 

骸骨のような男はそれだけを言うと、この場を離れて行った。

 

「おら、なにをしているさっさと行かないか」

 

確認のために残されている兵の一人が、槍のように長い棒を使い、私達を追い払う様に樹海の方へと追いつめる。

 

「行こう、クロメ」

 

「うん!!」

 

私はクロメの手を引きながら樹海の中へと駆けだした。

これが地獄の始まりだと知らずに。

 

 

 

 

 

百を優に超える数の子供を帝国各地より買い集め、無垢であり無知である子供を帝国の暗殺兵器に変えるための計画。

今の帝国は多くの火種を抱え過ぎている。

既に何代も続けて皇帝が無能だったと言うのもあるが、中央地方問はず、汚職は当たり前、権力者の気持ち次第で簡単に尊厳は奪われ、命さえ散らす程腐敗が進んでいる。

稀に無能ではない皇帝がいたとしても、皇帝の取り巻きが自身の利益のために邪魔をする為、既に千年続いた帝国は、ほぼ死に体であることは誰の目から見ても明らかだ。

そんな帝国を変えようとする者達が、増え始め小規模だった組織は、日に日に同志や同じ思想の組織を取り込むことで巨大化し、ついには軍と言っても差し支えない規模にまで膨れ上がっている。

帝国側は、分かりやすくするため、その組織を反乱軍と呼称しているが、その実は今の帝国を変えるために集まった革命軍であることは、帝国上層部にいる者達は知っている。

だが、その事実を上の者達は、下の者達に教えることはしない。

都合が悪いからだ。

下には、まじめに働いている者もいれば、正義感を持つ者もいる。

そう言った奴らは上の者にとって、都合が悪いが使い方次第では便利な手駒にも成りえるためにそう簡単に切り捨てはしない。

上の者が最も恐れているのは、諜報部と保安部を一手にまとめる黄金の獣だ。

今回の計画は、表上は帝国に仇なす者の排除ではあるが、その裏で自分達にとっての明確な脅威であるムソウの排除が含まれている。

しかしその計画がムソウに気付かれた場合は、国家反逆罪を適用させ処刑、最悪の場合は強制収容所送りだ。

この様な綱渡り、本来ならば誰も進んで取り組むような愚か者は存在しないはずであった。

あらゆる犯罪に手を染めて来た上層部だ、保身には人一倍気を使っている。

だからこそ、ムソウと言う存在を恐れているとも言えるのだが、一人だけ例外がいた。

オネストだ。

文官の中でも頭一つ飛びぬけている男であり、その罪状は読み上げるだけで日が沈むと言われるほどだ。

そこまで分かっていながら、何故捕まらないかと言うと、その保身が人一倍どころか、人の何倍も上手いからだ。

捕まろうとすれば、迷わず部下を切り捨て、政敵に罪をなすりつけて、のらりくらりとやって来ている。

皇族の中でも最も若く帝位継承では下の方に居る皇子に取り入っていると言うのも理由である。

 

「そんなものを喰って腹を壊すぞゴズキ」

 

「はっはっは。面白いことを言いますね。元とはいえ羅刹四鬼がこの程度で腹を下しませんよ」

 

狩った危険種の上に座り込み、ゴズキと呼ばれた男は解体した部分を刀で串刺しにして生で齧り付いていた。

 

「しかし樹海に放った子供の数、どう見ても百を超えていたぞ」

 

「良いんですよ。どうせ弱った個体は此処で脱落しますから」

 

「まあそうか。それでゴズキお前は何人まで教育できる」

 

「んー……考えましたが、俺のキャパでは七人が限界ですね」

 

「よかろう、ならばランクを着けた後上位七人の精鋭を渡す。残りはすべてこちらが貰う」

 

そう言っている傍から最初の到達者が現れた。

 

「よく到達した。試験はもちろん合格だ。手当てを受けると良い」

 

一番最初に到達した子供に、奥に見える救護テントを示すとまたゴズキの元へと戻って行った。

 

「一番最初が来たと言うことは、優秀な者達は、そろそろ到達しだす頃合いだな」

 

「そうですね。しかし俺は思うんですけどね。この子たちを教育するのに十数年かかりますよ。その頃にこの国が続いてくれていればいいんですけど」

 

「幾ら腐敗したとはいえ、千年続いた帝国だ、そう簡単になくなりはせん。それにあの獣がいるんだ、むしろ我らが狩られるかもしれんぞ」

 

「そしたら狩り返すだけ……と言いたいところですが、そう簡単にいきませんからね……」

 

二人は、この場にいない黄金の獣の恐ろしさを知っている。

その黄金の獣に今回の計画を認めさせるため、オネストをはじめとした高級官僚たちは多くの者達に根回しをし、陛下に獣が気づくよりも早く許可を取ることで認めさせたと言うよりは、無理矢理承諾させたのだ。

 

「ゴズキ、この計画の裏はお前にかかっているようなものだぞ」

 

「責任重大ですなぁ、そっちもきちんと動きを把握しておいてくださいよ。鉢合わせになってしまっては計画が露呈して、皆さんの首も危ないんですから」

 

「分かっておる。その為に作り物の村まで用意するんだからな」

 

「おっ!!今度は二人揃ってのお出ましだ」

 

「ほう、これはまた、仲睦まじいですなぁ」

 

男は、二人の少女に腰に手を回した状態で近づいて行った。

 

「試験は合格、手当てを受けると良い」

 

「やったぞ!!合格だってクロメ」

 

「うん、ありがとうお姉ちゃん」

 

二人の少女を見送った男は、そのままゴズキの元へと戻った。

 

「後のことは総てお前に任せる。上位七名以下は総て残した兵に任せればいい」

 

「分かりましたよ」

 

乗ってきた馬車に乗ると男は、そのまま帝都へと戻って行った。

 

「さ~て、試験の結果でも伝えに行きますか」

 

愛刀である、帝具村雨を腰に差し、ゴズキは先ほど着いた二人が、手当てを受けているテントへと向かった。

 

「試験の結果を発表しよう」

 

日の向きもあり、ゴズキの顔が影で隠れている。

そのためか、一層その存在感を強く感じさせている。

 

「クロメはキルランクNo.08。アカメはキルランクNo.07。妹を庇いながらこの結果はすごいぞ」

 

ゴズキは一旦二人を見回し、一拍間を置くと、二人にとって絶望的な事を告げた。

 

「お前たち試合は別々の場所で教育を受けることになる。アカメは俺と来い、クロメは帝都行きだ」

 

「いやだ!!私はクロメといる!!」

 

「お姉ちゃん……」

 

アカメはクロメを強く抱きしめ、クロメもアカメに抱きつきと弱弱しくアカメに縋った。

しかしゴズキが指を鳴らすと、外で待機していた兵がアカメを取り押さえ、クロメを無理矢理引き剥がし、二人の中を無情にも引き裂いた。

 

「大丈夫だ、離れるのは一時的、お互いきっちりいい子にしていれば、必ず会えると約束してやる」

 

「クロメ、クロメ!!」

 

「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」

 

二人の叫び声が響くが、現実は非情あった。

 

「悲しむことはないぞアカメ。俺がお前の新しい家族だ。『お父さん』と呼んでいいぞぉ?」

 

アカメを見下ろすゴズキの表情は、まるで無力なお前が悪いと言わんばかりのものであった。

この二人に生まれた格差は、後々二人の仲を引き裂き敵対させる序章となる。

 

 

 

 

 

 

「そうか、分かった」

 

黄金の獣と言われるムソウは、諜報部と保安部、更に自身の私兵である武装親衛隊から持ち寄られる情報を処理し、適切な指示を出していた。

そして今持ち寄られた情報は、ジフノラ樹海と言われる帝国でも屈指の樹海を使い、金にモノを言わせて買い揃えた子供を、暗殺者に育て上げるためにまずはその実力を知るため、という名目の実力選定の結果が届けられた。

この時点でかなりの子供たちが死亡したこと、突破した子供たちは総て帝都近郊にある処刑場でまずは殺しに慣れさせると言うものであった。

この情報は完全にムソウの配下にある諜報部とは別の諜報機関が担当しており、その諜報機関より出された報告書であるため、総てを鵜呑みにするほどムソウは愚かではない。

 

「しかし陛下も愚かな選択をしたものだ」

 

文官であるオネストを初めとした、オネスト派と呼ばれる派閥に皇帝が唆され子供を買い集め暗殺組織を組織しようとすることを承認させたのだ。

むろん、ムソウはこの様なことを当初より反対していた。

リスクとリターン、更に子供を買い集める金そのものが無駄であるからだ。

更にその育成にも金がかかり、その全ての子供に殺しを慣れさせると言うことは、それだけの罪人を集めると言うことにもなる。

無能で無力で、その機能を殆どはたしていない地方軍に一部の太守。

賄賂が横行し、罪なき人に罪を着せ自身はその欲を満たすために罪を犯す無能な官僚と、それに付き従う帝都警備隊。

ハッキリ言ってこの国は腐りきっており、何時国民の我慢の限界が訪れても可笑しくはない。

 

「失礼します」

 

礼儀正しく三度扉をノックする音がムソウの執務室内に響き渡った。

 

「入れ」

 

「報告書をお持ちいたしました」

 

「見せて見ろ」

 

ムソウが受け取り、報告書の中身をパラパラと流し読みしていた時であった。

一つ気がかりな文が入っていた。

北西の辺境にあるロウセイ山。

その近辺に新たに村が生まれたと書いてあったのだ。

村がそう簡単に生まれる訳がない。

特に帝国の存続が末期に近い今、新たに村が生まれる様な余力はどこにも存在していない。

にもかかわらず村が生まれた。

無垢で無知な子供を利用した暗殺者集団と新たに生まれた村。

接点は全くないと言っていい。

若しかしたら偶然生まれたと言う可能性もあるが、逆にそれが怪しくも思える。

考え出したらそれこそ限がないため、ムソウは一つ保安部を動かし確認することにした。

どの道、村が生まれたと言うならば、色々と確認を取っておかなければならない。

 

「分かった下がっていい」

 

ムソウはそれだけを言うと報告に来た部下を下がらせた。

 

「保安部に出向かせ諜報部に調べさせるか。位置的には武装親衛隊が近いが……」

 

敵性分子もいないかを調べるならば、保安部の仕事だ。

しかし長期的に潜入させるならば諜報部、位置的に近いのは武装親衛隊だ。

 

「武装親衛隊を動かした場合、異民族以外に内部にもいらぬ疑いをかけられる恐れがある。ならば、他二つを使っておくか」

 

ムソウは、保安部による確認と、諜報部による長期的内部調査を行う決断をした。

もし、諜報部であると言う確信を官僚の誰かが気が付いた場合、間違いなく裏があることになる。

結果を出すにしても5,6年もあれば十分だろう。

村が人工的に作られた者であれば、反乱軍であれ内部の不穏分子であれ、何かしらの情報を得ることができる。

例え鬼や蛇が出ようとも、ムソウの前では等しく無力である。

ムソウを抑え込もうと思うならば、それこそ伝説とされる超級危険種が群れで襲い掛からなければ無理というものだ。

そのことが比喩でないことを、帝国に使える者達は事実であると捉えている。

だからこそ、ムソウにすり寄ってくる者が後を絶たず、また恐れ排除しようとするものが徒党を組むのだ。

それが無駄であると分かっていながら。

利害の一致でムソウと一時的に組むことができる者もいないこともないが。

 

「さて、後は向こうの諜報機関だが」

 

暗殺部隊の育成に向こうのトップが精力的になるのは、予想できる。

成果次第では、十分出世できる可能性があるからだ。

しかしムソウと敵対するには時期尚早であること位分かっている。

念のためと潜入させていた諜報員の報告待ちか。

ムソウは後手に回らないためにも、情報収集を現状優先する方針をとることにした。




ツイッターのフォロワー中々増えないな~
そして、他の作品も更新しないとな~主にストブラとかストブラとかストブラ
以上ただの愚痴でした。


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