獣が統べる!<作成中>   作:國靜 繋

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遂にアニメアカメが斬るも最終話です。
しかしオリジナル展開になってからが微妙と感じてしまったのは私だけだろうか。
ブドー大将軍の声優が何か想像してたのと違うな~とも感じたりといろいろありましたが最終話です。
この作品もきちんと完結させたいです。



獣と分岐点

抜け道を確認したムソウは、そのまま陣の敷いてある場所まで戻った。

ムソウは極力人目を避ける様に自身の天幕に戻るようなことはせず、堂々とした様子で戻った。

満月が天高く輝いているため、その明かりがムソウの状況を鮮明に隊員たちに見せつける。

中には、ムソウの所々に焦げ目が付き、破れているコートや軍服を見て、何があったのか聞いて来る隊長たちもいたが、ムソウは簡潔に、そして楽しそうに一杯喰わされたと答えた。

そのため報復に向うことを進言する者もいたが、ムソウはあえてそれを止めた。

 

「所詮物などいつか壊れるもの、それが今日であっただけだ。それに私自身には傷を付けることが叶っておらん」

 

ムソウはそう言って聞かせたが、ムソウに盲信的な者は不服そうな表情をしていた。

天幕へと戻ると早々にムソウは、ナイトレイドにスパイとして潜入させていたチェルシーを呼び寄せた。

 

「しかし、ナイトレイドの糸使い、私に傷を付ける事は叶わずとも逃げ遂せるとは中々やるな」

 

「糸使い、てことはラバックですね」

 

「ほう、奴の名はラバックと言うのか」

 

「もしかして長官の服やコートをボロボロにしたのは」

 

「そのラバックだ」

 

それを聞いた瞬間チェルシーの瞳から光が一瞬消えた。

もしこの世界にヤンデレなる言葉が生まれていたならば、間違いなくみんな口を揃えて『チェルシーがヤンだ!!』そう言うだろう。

 

「気にするな、むしろ私は嬉しい。私を楽しませてくれる可能性があるのだからな」

 

声にこそ出して笑わないが、その表情だけで如何にムソウが喜んでいるのかが、チェルシーは見て取れ、何故自分ではその表情を作らせることができないのか、とその内に黒い何かが渦巻掛けていた。

 

「まあ、この様な些細な事はどうでも良い。それよりも本題だ、チェルシーお前に一つ命じる。我らがボリックを抹殺する僅かな間、あらゆる方法で教主を見張っておけ。あれに今死なれては、武装蜂起が起きる可能性が少なくなる。そうなれば私の予定が崩れる」

 

「分かりました。その命令喜んでお受けします」

 

チェルシーは恭しく頭を下げ命令を受けた。

そもそもムソウに盲信を通り越し、狂信の域に入っているチェルシーに、ムソウの命令を聞かないと言う選択肢がそもそも存在していない。

ムソウに見とれた日から、そして命が尽きるその日まで、チェルシーは間違いなくムソウに忠誠を誓い続ける。

 

「さて、チェルシー」

 

ムソウが、意味ありげにチェルシーの名を呼ぶ。

それだけでチェルシーは総てを察した。

そもそも、この程度の命令を伝えるだけならば夜が明けてからでも十分間に合う。

それを態々夜に呼んだのだ。

他に何かがあるからに決まっている。

中身が史実、見た目がdiesのラインハルトであり、変わったのは名前だけだ。

そのため絶対的に変わっていないものがある。

それは、女癖の悪さだ。

史実では海軍中佐待遇の軍属の娘との交際のもつれから軍法会議にかけられ、海軍を不名誉除隊させられており、diesでは、『女はしょせん、駄菓子にすぎん』と言い切る様な人たちだ。

そんなラインハルトが、一人の姿に集約したのだ。

何も起こらないはずがない。

 

「私の裸何て見ても嬉しくないかもしれないけど……」

 

そう言って、チェルシーは胸ボタンを外す。

服によって隠されていた綺麗な谷間が露わになる。

一枚、また一枚と服を脱いで行き、身に纏う物全てを脱ぎ捨てたチェルシーは生まれたままの姿になった。

シミ一つないきれいな肌ではあるが、ムソウの命令の元反乱軍に入って居たため傷がないと言う訳では無い。

治っているが綺麗に消えていない後もある、だが寧ろそれが一層生身であると実感させるものがある。

そしてその傷の一つ一つが、ムソウの命令を遂行する上で付いたものだ。

そのような忠臣をムソウが愛さない訳がない。

 

「おいでチェルシー」

 

そう言ってムソウはチェルシーを自身の閨に誘い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日が経った。

ムソウの指揮の元、周辺の索敵およびボリックの監視を昼夜休みなくさせている。

屋敷周辺の監視や抜け道の罠などの確認も既に終わっており、抜け道の罠外しも既に終了しており、ムソウの命令一つでいつでも突入可能な状態を維持させている。

しかしムソウは未だに命令を下していない。

ナイトレイドが動かないからだ。

あくまでもムソウの計画では、ナイトレイドの手によってボリックが殺されることになっている。

そこだけはムソウにとって、絶対に譲ることができない部分であった。

しかし、これ以上悠長に時が過ぎるのを待つことが、ムソウは出来ない。

帝都での仕事もあり、保安部の報告や決済、武装親衛隊の定期報告や新しくすべき命令、完遂した命令の報告と結果による今後の計画の修正などがある。

それを一時とはいえ放置してまでキョロクまで来ているのだ。

成果を上げないまま帝都へ戻っては、計画に支障を来す可能性がある。

それだけは、絶対に避けねばならないことをムソウは理解している。

安寧道の武装蜂起、反乱軍の進撃、異民族の侵攻、民による蜂起。

その全てが揃ってこそ、初めてムソウの計画が始動する。

ムソウが唯一懸念していることは、大事な時期に帝都を離れていること位だ。

大臣が良からぬことを考えている可能性がある以上、これ以上帝都を離れているのはリスクばかりが高くなり、リターンがあまり見込めない。

リスクとリターンを天秤にかけ、リターンが得られるのはあと一日、それが限界であるとムソウは判断した。

そんな時だった。

 

「緊急のため失礼します!!」

 

いきなり天幕に副官であるヨハイムが入って来たのだ。

 

「どうした」

 

「先ほど、ボリックを監視していた者達よりナイトレイドが攻め込んで来たと連絡がありました」

 

「遂に動いたか。全部隊に通達これよりボリック行動を開始する」

 

「了解しました!!」

 

ヨハイムは、一度敬礼をすると全部隊に伝達すべく、駆けて行った。

 

「ついに動き出したか」

 

この作戦が成功するか否かで未来が変わってくる。

勝てば官軍、負ければ賊軍。

いくら負けた側が正しく、勝った側が悪くとも勝ったその瞬間から正義になるのだ。

それは多くの歴史が証明して来ており、勝者が自身の都合のいいように歴史を捏造して来ている。

若しかしたら暴君と呼ばれた者は、賢者だったかもしれない。

聖人君主と謳われた者は、畜生にも劣る存在だったかもしれない。

大量殺人者と言われた者は、ただの一般人だったかもしれない。

そのもしもを、今生きるものが知るには歴史を学ぶしかないのだ。

それが正しい、正しくない関係なくだ。

しかし今作戦はそのどちらにも当てはまらない。

成功しようと失敗しようと、この作戦の実情が日の当たる歴史として記されることは、未来永劫あり得ないからだ。

だがこの作戦の成否によって、この後起こり得る事が変わって来る。

失敗すれば大臣の天下だが、成功すればムソウの望んだとおりにことが進む。

その違いが今後に大きく関わってくるが、成功するか失敗するかは、運命の女神のみが知っている。

その女神が誰に微笑むのか、それはムソウにも分からないことであった。

 

「私も準備するか」

 

ムソウは椅子から立ち上がると新しく用意させたコートをマントのように羽織ると天幕から出た。

 

 

 

 

side ナイトレイド in タツミ

 

時間は少しばかり遡る――

 

アカメ達が負傷して帰って来たときは、流石にみんな驚いていた。

特にアカメに至っては、全身擦り傷切り傷、打撲に捻挫、怪我をしていない所を探す方が難しい程ボロボロだった。

何があったかとボスが訊いたら、イェーガーズと出会い戦闘になったが逃してしまい、そこに羅刹四鬼のイバラと言う奴とやって来て戦闘となり、戦闘中に武装親衛隊を率いていたムソウと出会ってしまったとのことだ。

むしろ良く生き残ったとボスが言っていたのは、よく覚えている。

そんな俺達は、ついにボリック暗殺を決行した。

ムソウ率いる武装親衛隊と言う不安要素があったが、これ以上長引かせれば形勢不利になるとボスが判断したからだ。

そして俺達は、街が寝静まる夜中に行動を起こした。

ボスが考えた作戦は簡単だ。

まずは地中から陽動班が突入、俺がインクルシオの奥の手である透明化を活かして警備を無力化。

大聖堂の中庭まで見つからずに進入を目指す。

気を付けないと外側で見つかると大量の警備兵や信者が駆けつけて来るからだ。

中庭までくれば、後は目の前の建物にボリックやエスデスがいるから、騒ぎを起こしてエスデスを中庭まで引っ張り出す。

 

「うぉぉおおおお!!」

 

建物の前に居る大量の警備兵に向って、俺、姐さん、ボスにスーさんは無力化すべく駆けだした。

気がかりなのは、負傷しているアカメやラバック、マインやシェーレを一纏りにしていることだ。

だが、エスデスを引っ張り出し戦闘になるのを想定しているこっちに比べたら、まだましだろうとも思っている。

あくまでも今回の標的はボリックだ。

エスデスやクロメも標的ではあるが、ボリックさえ殺せば革命軍が動く。

そして革命が成功すれば、村のみんなや民が笑顔でいられる世界になるんだ。

そのためなら俺は…………

 

side ナイトレイド in 襲撃班

 

ボリック暗殺の実行部隊である、アカメ、マイン、ラバック、シェーレはエアマンタに乗って上空より襲撃を掛けようとしていた。

 

「よし!このまま大聖堂の天上へ突っ込む!!」

 

暗殺の成否が自分達にかかっているとなると、襲撃班の士気も必然的に高く為る。

不安があるとするならば、アカメの傷が思ったよりも治っていないことだ。

骨が折れていないだけ良かったと思うべきなのだろうが、この作戦の重要性を考えると、不安を感じてしまうのも仕方がないと言うものだ。

 

「マインちゃんは突入直前になったら、パンプキンで天井にいい感じの穴開けてくれ!!」

 

「分かってるわ準備OKよ!!」

 

「にしてもパンプキンは頑丈な帝具だよね。爆発に巻き込まれても大丈夫だったとか」

 

「そこもだけど、ボスが使っていた時の話聞くとホント良く壊れなかったと思うわ」

 

「射線がぶれてたりしてないよね?」

 

「ぬかりないわ。臆病ねぇ任せときなさい」

 

そう言って、マインはタツミと会ったばかりの時『射撃の天才なんだろ?』と信じてもらった時のことを思い出し、僅かに頬を赤らめた。

 

「何たって、アタシは射撃の天才だからね」

 

そうマインが言った瞬間だった。

エアマンタの横を高速で何かが張り着くように飛んできた。

 

「な!?」

 

「やはり空からの別動隊、今度はこちらの読み勝ちの様ですね」

 

そう言って、エアマンタの横を高速で張り付いて来たのは、帝具マスティアの所有者でありイェーガーズでもあるランだった。

いつもの柔和な笑顔と違い、その目は猛禽類の様に鋭くまさに狩人を思わせるものがあった。

 

「しかし私と言う存在を知りながら、領域である空から攻撃を仕掛けて来るとは”愚策”と言わざるおえませんね」

 

エアマンタの下に回り込んだランは、先制攻撃と言わんばかりに右の翼、その羽根を全てエアマンタの柔らかい腹に向って放った。

一斉に放たれた羽根はさながら白い槍の様で、エアマンタを貫くことは出来なかったが、その一撃で命を奪い取る事は出来たようだ。

 

「う……」

 

いきなり飛行能力を失ったため、エアマンタは螺旋状に回転しながら墜ちていた。

 

「うわぁああああああああああああ」

 

女性陣は、冷静であるが、唯一の男性であるラバックは大きな悲鳴を上げていた。

その様子を見上げている存在達に気付くことなく。

 

side ALL END

 

「状況は」

 

「はっ、戦況はイェーガーズ有利で進んでおります」

 

ムソウが現れた時には、既に戦闘は終盤に差し掛かっていた。

 

「配置はどうなっている」

 

「既定の通りとなっております。突入部隊も突入せずに済みそうなため、既に内部潜入班の脱出用として抜け道を確保させ、援護するよう命令してあります」

 

ムソウが命じる前に命じようとしていたことを実行していたため、流石ヨハイムと内心評価を上げた。

念のためとムソウは、かなり離れた位置から双眼鏡で戦況をその目で確かめた。

エスデスはムソウの気配に敏感だ。

恋する相手として、圧倒的実力を持つ強者としての二つの要素もあるが、それ以上にムソウの存在感がどんなに消そうとしても消しきれない程強大である事が原因でもある。

もし本気のムソウの前に立つのならば、ムソウに許可をもらわなければ息ができない程息苦しくなるほどに強大だ。

それを良く知っているのは、他でもないエスデスだろう。

何せ3度もムソウに牙を剝いたのだから。

その時のことをムソウは懐かしむように思い出しながらも、今は目の前の作戦に集中すべきだと意識を切り替えた。

 

「私の合図とともに合図の照明弾を打ち上げろ」

 

「はっ」

 

ムソウは着実に打ち抜けるタイミングを見計らっていた。

そして、スサノオがエスデスの手によって粉砕しようとした瞬間。

 

「今だ」

 

ムソウの合図とともに、上空へ合図の照明弾が撃ち上がり、その光が夜の闇を打ち消していく。

次の瞬間、三発の銃声が夜のキョロクに響き渡った。

眉間に一発、腹部に二発。

それも重要な臓器の部分にだ。

次に発煙弾が10を優に超える数撃ち込まれ、建物全体が煙に覆われた。

そのさまは、まさに火事のようであり、その様子に気が付いた信者たちが慌てた様子で向かって言ってるのをムソウは見下ろしていた。

 

「あっけないものだな」

 

綿密に立てた作戦もこの一瞬のためだけに存在していたのだ。

 

「スタイリッシュの強化兵がいないようだが……」

 

ムソウは思い出したかのようにヨハイムに訊いた。

 

「スタイリッシュは、今朝帝都に呼び戻され、その際強化兵を連れ戻したようです」

 

「帝都に……」

 

大臣がまたよからぬことを考えている可能性を考慮したが、その可能性をムソウは否定した。

むしろスタイリッシュと仲の良いシュラが、帝都へ戻ってきた可能性の方が高いとムソウは考えた。

そうでなければスタイリッシュのみを呼び戻す必要がないからだ。

 

「……私のいない隙を突いたか」

 

ムソウは保安本部にシュラの捜索をさせていた。

発見後は、監視するようにも命令書を置いて来ているため問題はない。

しかし大臣が横槍を入れてきた場合は、また勝手が違ってくる。

ムソウが直接帝都に居る、それだけで大臣の抑止力に成りえるが、いない今、大臣はシュラの行動を好きにさせ、保安本部員が例え逮捕しようとも直ぐに大臣が釈放手続きを済ませ釈放させることは目に見えている。

シュラが行動を起さなくても、間違いなく碌でもない連中を大臣の息子であると言う権力の元居れる可能性もある。

虎の威を借りる狐ではあるが、その虎の持つ力が強すぎるため、ただの人ではどうしようもないのだ。

 

「潜入班の全員脱出後直ぐに帝都へと戻る」

 

ならば早めに帝都に戻るまでだ、と決めたムソウの行動は早かった。

 

「そしてこの瞬間より計画は第二段階に移行する!!」

 

その意味を理解している者は、この場で隊長各や将校の地位をムソウより頂いている者達だけだった。

 

 

 

この時が後世に残る歴史の決定的分岐点であった。

しかしこの事実を後世の歴史家が知ることは永遠になかったと言う。




次からが少しの間オリジナル展開になります。
オリジナルいいから原作進めてくれと言う人が居るかアンケート取りたいと思うので、活動報告で確認してください。

以上


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