獣が統べる!<作成中>   作:國靜 繋

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絶対期待に応えられてない確信だけは有ります。
戦闘シーンの向上のためアドバイスがあると嬉しいです。


獣と鬼狩り

「はぁあああああああああ!!!」

 

アカメは叫びながらムソウに斬りかかるもののその全てを尽くサーベルによって阻まれていた。

首、腕、胴体、足、どこでも掠りさえすればアカメの勝利だ。

だが、ムソウは有象無象とは違う。

アカメの鋭い太刀筋を見切りその尽くを余裕を持って阻む、

 

「その程度か。あまり私を落胆させてくれるな」

 

鍔競り合いになった時、ムソウはアカメに聞こえる程度の声で囁いた。

そして、そのまま競り負けたアカメは、バックステップでムソウと距離を取った。

 

「アカメちゃぁああぁん相手は一人じゃ何だよぉぉおお」

 

イバラがバックステップでムソウと距離を取った隙をついて来た。

 

「くっ!!」

 

とっさに回避したたが、無理な体勢での回避だったため脇腹をかすってしまった。

アカメは、ムソウとイバラ両者に気を配りながら村雨を正眼で構えたその時だった。

 

「どういうつもりだイバラ」

 

ムソウは自身の首筋を狙ったイバラの突きを、左手で受け止めながら言った。

完全な死角からの攻撃だった。

にも関わらずムソウは難なく受け止められたことにイバラは動揺して……いなかった。

相手は、帝国最強のエスデスやブドーを差し置いて、世界最強などと呼ばれている人物だ。

この程度のことで動揺していては、仕事ができないと言うものだ。

 

「へっへっへ、さすがムソウ様。一筋縄ではいきませんね。でもまあ、それでこそ殺し甲斐があるってもんですかね」

 

ムソウの自身の腕を掴んでいる腕に対して攻撃することで、何とか離させることができたが、万力に誓う強さで握られていたため、掴まれていたか所は赤くはれ上がっていた。

 

「大臣の差し金か、イバラ」

 

「さぁあ、どうでしょうねぇえ?もしかしたら独断かもしれませんよぉ」

 

「どちらにしろ、敵対した以上関係ない。ただ処断するのみ」

 

三絡みの状況だが、状況はムソウにとって非常に有利なものだ。

武装親衛隊第一師団と言えば、武装親衛隊の中でも精鋭中の中の精鋭だ。

それが小隊規模であったとしても変わらない。

そのため、ムソウの指示がなくとも二人を囲む檻が、静かにしかし着実に完成しつつあった。

もし檻が完成したならば、イバラとアカメは完全に腹を空かせた獣の檻の中に閉じ込められることになる。

 

「っと、アカメちゃぁああぁん、どこに行こうとしてるんだい。一人だけでこの状況を脱することができると思ってるのかい」

 

一歩下がったアカメに対し、イバラは直接アカメを視ずに牽制を掛ける。

いや、アカメのことを直接見ることができないのだ。

それはアカメも同じで、アカメはムソウが現れてから一度たりともイバラを視界に入れていない。

両者ともムソウを視界から外すことができないでいた。

瞬きでもしようものなら、その瞬間自身の首が胴と永遠に分かれてしまう。

全ての決着は、一瞬にして決まる。

イバラとアカメがそう思った時だった。

一歩、ムソウが足を進めた。

目測の距離にしても十分距離がある、そのはずなのに二人は目の前まで、距離を詰められる幻視をした。

 

「そろそろ覚悟は出来たか」

 

ムソウがそう言った瞬間、イバラとアカメは同時に駆けだした。

逃走ではない、ムソウ相手に背を向けるのはそのまま死へと直結してしまう。

ならばと両者は同時にムソウへと襲い掛かった。

イバラはアカメにした攻撃と同じで、両腕を鞭のようにしならせながらも槍の様に鋭い突きでムソウに襲い掛かる。

ムソウは、その全てをわざと紙一重でかわして見せた。

 

「くそがぁああああああ」

 

ムソウがイバラをサーベルで真っ二つになるように斬りつけようとした時だった。

背後からアカメが、ムソウの背中を横薙ぎに切り裂こうとした。

ムソウは斬りつけるのを中止し、手首を曲げそのままサーベルで村雨の刃を受け止めた。

そしてそのまま、ムソウはイバラの恐ろしく速い突きを空いている左手で受け止めると、勢いよく背後にいるアカメめがけて回し当てた。

 

「「ぐっ!!」」

 

ぶつかった二人は、そのまま弾き飛ばされ、二度三度、地面でバウンドして止まった。

イバラは羅刹四鬼と言うこともあり、修行でこういったことにも慣れているためか、打撲程度で他に目立つ負傷は見当たらない。

しかしアカメはあくまでも暗殺者として育てられたため、柔肌を擦り傷切り傷だらけと成り血で滲ませていた。

 

「耐えたか。そこは流石だなと褒めるべきか」

 

「痛っ!!」

 

アカメは全身から血をにじませながらも毅然とした表情で立ち上がった。

 

「いてててて。流石はムソウ様、それでこそ」

 

再度仕掛けて来たイバラに対し、ムソウは天高く掲げたサーベルで一刀の元断ち切って来た。

それをイバラは、白羽取りの要領でサーベルの腹の部分を掴み取った。

しかしムソウはそれを意に介さず、そのまま振り下ろした。

 

「ぁぁあああああああ!!」

 

イバラの手の皮が、圧倒的力で振り下ろされたサーベルの所為で剃り落されてしまった痛みで、絶叫した。

いくら修行で体を鍛え、痛みに耐性をつけようとも、自身の皮を削がれるようなことを想定していない。

そのため、両掌から血が絶え間なく流れ、感じさせられる痛みは尋常なものではない。

しかしその痛みこそが、冷静さを失い攻撃するなどと言う愚策にイバラを走らせず、むしろ頭をクリアにし、ムソウと距離を取らせた。

両手から滴り落ちる血は、体の操作が自由自在であるイバラにとって意識せずとも修復できるもので、すぐさま皮が再成し、止血した。

 

「さすがにこれでは限界があるか」

 

ムソウが使っていたサーベルは、ムソウの力に耐えきれず、ボロボロになりながら刃は根元から折れ、地面に落ち自壊した。

 

「これで十分と思ったが……ふむ、ここは貴様らに敬意を表し私も少し力を見せてやろう」

 

上から目線、しかしそれは総てを見下ろす立場にあるムソウだからこそ許される。

そのためか、アカメもイバラも上から目線の物言いにイラつきを覚えるどころか、ムソウだからそう納得した。

そして二人は同時に後悔することになった。

ムソウの手に黄金の輝きと共に一振りの槍が現れた。

常人では直視することさえ許されない黄金。

手にする者は、世界を支配すると言われる槍。

ムソウだけが持つことが許される、絶対的な力の象徴。

帝具、聖約運命ロンギヌス。

49個目にして唯一の失敗作。

そのため当時の始皇帝が、帝具は48個と偽ることとなった原因。

それを目にした二人は、自覚のないまま震えていた。

恐怖――

人類に残された数少ない野生の本能。

蛇に睨まれた蛙ならぬ、獣に睨まれた草食動物今の現状を例えるならばまさにそれだろう。

草食動物とて座して死を待つわけではない。

時として肉食動物に自身の持つ武器を最大限活かして反撃してくるのだから。

だからこそ、獣に睨まれた草食動物、その表現が一番適しているのだ。

 

「さて、では次はこちらから行くとしよう」

 

ムソウがそう言った瞬間、ロンギヌスの刃がイバラに迫った。

完全に反射の域で、かわしたイバラだが今のをかわせたのは本当に運が良かった。

そう表現するしかない。

次は文字通り存在しない。

アカメも今の攻撃に関して完全に見切れていなかった。

もし自身がされていたら、イバラの様に避けられたか、そう思いつつもムソウの背に向って斬りつける。

アカメとイバラに残された防御手段は、攻撃することのみ。

護りについた瞬間、終わりが待っている、そのことを二人は自覚している。

 

「その程度では私には届かないぞ」

 

「くっ!!」

 

背後からの奇襲に聖槍でムソウは難なく対処し、そのままアカメは吹き飛ばされた。

そこを突くように、イバラはムソウに仕掛けた。

 

「皇拳寺百烈拳!!!!」

 

岩さえ砕くその拳から繰り出される百にも及ぶ回数の拳。

ムソウは、それに対して槍で早く素手で襲い掛かる拳を全て叩き落とした。

その隙を突きアカメはムソウに斬りかかる。

横に、上から、下から、斜めにあらゆる角度あらゆる方向から斬りかかる。

ムソウは、イバラの拳を相手をしながらアカメの斬撃を全て聖槍でいなした。

羅刹四鬼にナイトレイドでも頭一つ飛びぬけているアカメ。

本来なら両者の内どちらかと対峙するだけでも厳しいのに、両者を同時。

自殺志願者と思われても仕方がない現状だろうが、それらと相対しているのはムソウだ。

この程度難なく成し遂げても不思議ではない。

 

「この程度では、私を本気にすることは叶わんぞ」

 

聖槍で村雨を叩き上げ、左手でイバラの拳を叩き落としたムソウは、聖槍の石突でアカメの横腹を殴りつけ、そのまま円運動でイバラの頭を殴りつけた。

墓石を砕きながら吹き飛び転がる二人の口からは、最早人の声とは到底思えない声が漏れ出る。

圧倒的、今の状況を語るには、それ以外の言葉が見当たらない。

語彙が豊富なものならばまだ言いようがあるだろうが、その様子を見ている武装親衛隊の面々はその言葉しか見当たらなかった。

 

「期待外れか……」

 

アカメに近づき、聖槍で止めを刺そうとした時だった。

 

(エクスタス)

 

その声と共に目をくらます光が、月明かりの身だったこの場を覆った。

ムソウも虚を突かれたため、目を手で覆った。

その僅かな隙を突き、アカメに糸が巻きつくと、勢いよく引っ張られ、引っ張られた先で痛みにこらえながら、見上げた先にはシェーレとラバックの姿があった。

 

「大丈夫かアカメちゃん」

 

「す、まない。たすか、った」

 

途切れ途切れながらも、アカメはラバックとシェーレに感謝を伝えた。

そして、アカメが勢いよく引っ張られ回収している時、もう一組がムソウに襲い掛かって来た。

 

「皇拳寺百烈拳!!!」

 

「ほいっと!!」

 

目を覆っている僅かな隙を突くように左右から、ムソウに対し百にも及ぶ回数の拳が襲い掛かる。

計二百にも及ぶ回数が襲い掛かる中、ムソウは聖槍を地面に突き立てると左右からくる拳を全ていなす。

 

「うそ!!」

 

褐色肌で、袴に襟袖のみで、後は胸を隠している以外肌を見せている少女は、まさか一撃も入らないとは思ってもいなかったためか驚愕を露わにした。

目元を覆っていた手を放したムソウの目に入って来たのは、イバラとアカメ両者に対する増援の姿だった。

 

「イバラがあんまし遅いから見に来たら、あんたなにしてんのよ」

 

「ちっ、来なくても俺一人でどうにか出来たぜ、メズ、シュテン」

 

「アンタ今の姿を見てもういちどいってみなよ」

 

「そうだイバラ、相手はあのムソウ。ならば我らも加勢せねばなるまいて」

 

「ちっ、好きにしろ」

 

三人の鬼はムソウに対し、独特の構えをとった。

 

「私達はこの隙に逃げます」

 

「ああ、そろそろ包囲網が完成しつつあるからな」

 

「なら、私を置いて行け。このままでは足手まといになり、二人を余計な危険にまきこむだけだ」

 

村雨を杖にしながら立ち上がったアカメが、二人だけで撤退しろと言う。

 

「そんなことするわけねーだろ」

 

「そうですよアカメ、何のために私達が来たと思っているのです」

 

二人の出した解答はノーだった。

 

「とりあえず羅刹四鬼がいるんだ。少しは時間稼ぎに役立つはずだ」

 

ラバックが慎重に全体の様子を見ながらも、クロステールで森の中にはっている感知結界で包囲網の状況を感じていた。

 

「逃がすと思っているのか」

 

ラバックが一歩後退したのを感じ取ったムソウは、背を向けたまま牽制を入れる。

元々標的であり、今後自身の命を狙う賊を見す見す逃がす程ムソウは御人好しではない。

更に負傷者もいるのだ、この気に消しておかない手はない。

三つ巴の中、羅刹四鬼とナイトレイドの組のみ緊張感が漂う。

ムソウの髪を靡かせる夜風が止んだ、次の瞬間――

羅刹四鬼とナイトレイドが動いた。

前からはシュテンが、左右からメズとイバラが、背後からエクスタスを構えたシェーレ上空から編み上げた槍を構えたラバックが。

逃げ場は完全に断たれ、かわすのは不可能。

絶体絶命の窮地、客観的に見れば誰もが思う中、ムソウは僅かに口元を釣り上げ心なしか嬉しそうな表情をしていた。

地面に突き刺していた聖槍を抜くと、天高く掲げると一歩前に出、振り下ろす。

全力でなく、力を溜めただけの一撃で街一つを容易に吹き飛ばす聖槍だ。

全力でなくとも、人一人殺すのは容易だ。

とっさに横に飛び退いたシュテンだが、ムソウは聖槍の矛先が地面に付く前に鋭角に曲げ、シュテンを切り裂く。

 

「すみません」

 

そのままイバラも切り裂こうとしたが、背後から迫って来たシェーレの持つ帝具、万物両断エクスタスがムソウを両断しにかかる。

ムソウはそれに対し、ハサミ型であるが故の弱点である、ねじの部分を石突を叩き上げそのまま下に潜り込み、シェーレの足を払いバランスを崩した所を更に蹴飛ばす。

 

「くそがぁぁあああ!!!!」

 

上空から迫るラバックと左右からくるメズとイバラ。

 

「これでどぉぉおおおよぉおおお!!!」

 

「はぁああ!!」

 

全力の突きのラッシュと一撃必殺を込めた拳、しかしその全てがムソウの前では見切られていた。

ロンギヌスの持つ能力は、「槍の一撃を受けると聖痕が刻まれ、戦奴となる」「聖痕を刻まれた者に殺害された人間も戦奴となる」 である。

即ち、聖痕が刻まれた団員とその団員が殺した人間の力をムソウは持つため、総合的な魂の容量が桁違いな上に一人一人の経験さえもムソウの元の成っている。

ムソウの手によって殺され、城の一部となった者の中には元羅刹四鬼や皇拳寺の師範代、師範も含まれている。

ならば、ムソウが皇拳寺羅刹四鬼の技を見きれぬ道理はない。

左右からの攻撃をかわし、いなしながらムソウは上空より迫るラバックの持つ槍を突き刺した。

一瞬火花が散ると、ラバックの作り上げた槍はただの糸へとほどかれてしまった。

そもそもただの槍と聖槍では質と格が違うのだ、こうなることは見えていた結果だ。

迫る聖槍に対しラバックは、『これまでか』と諦めながらもせめて一矢報いようとしたが、それはいい意味で裏切られた。

全身の痛みに耐えながらもアカメはムソウの聖槍を村雨で斬りつけた。

そのため聖槍が貫くはずだった標的から逸れ空を切り、ラバックはそのまま地面に転げ落ちた。

 

「すまねえアカメちゃん、助けるつもりが逆に助けられちまって」

 

「いい、それよりも」

 

「ああ、分かってる」

 

そう言いながらラバックはムソウの足元を見ると、一矢報いるために使おうとした小型爆弾がいくつも散らばっていた。

後は衝撃を加えるだけでムソウの足元はまさに地雷原の様に爆発する。

 

「シェーレ!!」

 

「はい『(エクスタス)』!!」

 

「二度も効かん!!」

 

シェーレの持つエクスタスが発光すると思ったムソウは、とっさに聖槍を勢いよく地面に突き付け、その衝撃で地面が抉れ土砂が舞い上がる。

それで光から目を護ろうとしたが、それが返って裏目になった。

ムソウの与えた衝撃が、そのまま足元に散っていた爆弾の起爆キーとなってしまった。

 

「今の内だ!!」

 

檻が完成する前に、ラバックはアカメを背負い急いで逃走し始めた。

 

「ちぇっ、良い所とられたか」

 

メズがそう言って、ムソウの死体を確認しようとした時だった。

舞い上がった土砂がカーテンの様にムソウの姿を隠していたため、気づくことができなかった。

ムソウは生きていたのだ、しかしムソウもまた土砂のせいで、様子が分からなかったが声のした方に聖槍で突き刺したのだ。

 

「かはっ!!」

 

腹を貫かれたメズは、そのまま血を地面一杯に吐き出した。

聖槍を一振りし、血を振り落したムソウの姿は傷一つなかった。

爆発のせいで、所々破れてはいるもののムソウ自身に目立ったどころか、血の滲み、スリ傷、切り傷、打撲、捻挫。

そのどれもが見当たらなかった。

 

「逃げたか、まあいい鬼は狩れた」

 

背後から土砂の音に紛れ中が、奇襲をかけて来たイバラに対し先ほどとは打って変わって、一切容赦ない一撃が迫る。

イバラが最後に見たのは、一筋の黄金の軌跡のみだった。

 

「すみません長官、檻が完成する前に穴を突かれ」

 

「よい、当初の目的は別にあるのだ。直ぐにその場所へ案内しろ」

 

「了解しました!!」

 

ムソウは、土砂のカーテンの中に居ながら一切汚れの着いた様子の無い髪を靡かせながら、部下に先導させた。

 




原作で言うところの八巻がこの話で完結したと思ってください。
次は、ボリック暗殺変ですかね~
もう少ししたら、シュラが……
シュラがどの位の話数でフェードアウトするやら。
10巻の冒頭にあるボリック暗殺から3か月の空白の三か月に、零の話やオリジナルを少し混ぜて行こうかなとか思っています。

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