大臣も快く?快諾してくれたため、武装親衛隊第一師団を帝都に召集令を発するのは容易だった。
帝都へ招集された武装親衛隊第一師団が集まるのに要したのは二日。
西の異民族牽制のために配置されていたため本来なら四、五日は掛かる距離を二日で招集に応じたと言うことは、実質最西端から寝る間も惜しんで帝都へと向かったということになる。
これだけでも、武装親衛隊がムソウに向ける忠誠心の高さを理解することが出来るというものだ。
流石に昼夜問わず招集に応じたため、一切疲労が無いと言う訳ではないためムソウは一日休息を与え、武装親衛隊作戦本部局集団A、AmtVⅢ兵器局とAmtⅨに第一師団の武装機材、そして帝国に在って唯一、戦車や装甲車と言われる車輌という馬や馬車以外の鉄の塊で作り上げられた乗り物が配備されている。
そのためか、帝都へと入って来たときには既に市民が大勢帝都の入口へと集まり、物珍しさのため多くの市民が見に来ていたのは記憶に新しい。
そして第一師団が帝都で休息を得た翌日からムソウの命令の元帝都周辺に20個の大隊編成をさせ、昼夜問わず駆逐するために常に5個の大隊を4交代制で運用することで、被害と目撃情報は劇的に減りはじめた。
むろん、ムソウは大臣に頼まれていたサンプルを3体ほど生け捕りで捕獲し渡した。
――ナイトレイド side――
帝都から北東15Km地点――
ムソウの武装親衛隊第一師団が帝都へと戻りついた日、ナイトレイドの面々は新しく出来上がっているアジトを見上げていた。
「なんかさ、新しいアジトって感じしないな」
タツミは特級危険種エアマンタに乗せられ連れてこさせられた新しいアジトを見上げながら言った。
「見つかりにくさと逃げやすさを考えると自然と元のアジトと似る」
「また温泉があるのは嬉しいわよね!!」
「仕事が終わったらそこで一杯やろー」
「いいねー!!」
「マイン、またのぼせて溺れないでくださいね」
「分かってるわよシェーレ!!」
女性四人組は楽しそうに話している中、タツミは何かを思い出したかのように、「切り落とされる……」と頭を抱えながらぼやいていた。
「ナジェンダさん、アジトの周囲に結界張り終えました――」
ラバックが自身の帝具で糸の結界を張り終えたことを遠くから叫びつつ走って来ていた。
「よし」
「緊急避難用の抜け穴も掘り終えたぞ」
「おっ、早いな流石スサノオだ。これで新アジトも本格稼働だな」
「勝ったと思うなよ!!」
「何を言っている」
ラバックは、自身の仕事に対して褒めてもらえるかと思ったら、それ以上のことをスサノオがやり終えて来たことで、ナジェンダの関心がスサノオの方へと向き褒めてもらえなかったことにジェラシーを感じていた。
が、それは人型帝具であるスサノオへ届くことは一生なく、ある種のコントのようにタツミは呆れる様に見ていた。
「よし、各自荷物を置き次第一度集合だ」
ナジェンダが声を張り上げて言うと、皆新しいアジトへと入り各々の部屋へと向かい荷物を置くと前と変わらない会議室へと集まった。
「戻って来て早速だが、今回の標的は例の新型危険種どもだ」
「奴らは群れで行動するケースが多く、わずかながら知性も見受けられる。個々の身体能力は高く、腕試しの武芸者たちも挑んではやられているらしい」
一度間を置くために、ナジェンダは皆を見回し煙草の煙を肺一杯に吸い込み吐き出した。
「今では帝都から南部の鉱山・森林に広く潜み貪欲に人や家畜を喰らっている。毎日のようにイェーガーズや帝国兵が駆逐しているが数が多いらしくまだ残りがいるらしい」
「帝国側も手を焼いているってことは罠じゃなさそうね」
「行ってしまえば帝国に協力する形になるが……いいな?」
今にも落ちそうになった灰を灰皿に落としながら今一度みんなに確認するように見渡し、
「もちらんだぜ!!今回は事情が事情」
「話を聞く限り速やかに葬るべき連中だ」
「兵士と鉢合わせだけは勘弁願いたいけどね」
レオーネも呑気に言っているが、その一言でナジェンダは固まると、神妙な顔つきになり、雰囲気が変わったことを誰もが感じ取った。
「私達はナイトレイドだ、帝国側が休む夜中に動けばいい、といつもならいうところだが今回はそうもいかない」
「どういうことですか?ボス」
「ムソウが、武装親衛隊第一師団を呼び戻した」
その瞬間、武装親衛隊という言葉を初めて聞いたタツミ以外の面子は固まった。
「え、え?どうしたのみんな」
タツミはみんなが何故そんな表情を取っているのか分からず戸惑い、アタフタとしていた。
「それは確かな情報なのか?」
「ああ、チェルシーに帝都へ偵察に行かせていてな。武装親衛隊が帝都へ入って行く姿を多くの市民と共に見たそうだ」
アカメの問いにナジェンダが堪えているが、タツミは何が何だかさっぱりと言った様子だ。
「そう言えば、タツミは武装親衛隊について教えてなかったな」
「武装親衛隊ってなんなんだ?」
「武装親衛隊、読んで字のごとく武装しているムソウの親衛隊だ。数にしておよそ90万南と西の異民族を牽制するために常に配置されているムソウ個人の私兵だ」
「90万って!!、それに私兵ってことはもしかして軍と違って自由に使えたり……」
「そうだ、その数をムソウは自身の意思一つで扱える。帝都攻略で最も恐れるべきはエスデス軍やブドー率いる近衛ではなく武装親衛隊ということになる。今武装蜂起した所で反乱軍は帝都へたどり着く前に圧倒的数の前に殲滅されるだけだ」
タツミは圧倒的数に驚きつつ、私兵と言う単語に聞き漏らすことなくもしかしたら違うと言う可能性を信じボスであるナジェンダに聞いたが、返答は最悪のものであった。
「じゃあ、ボス新型危険種の駆逐は武装親衛隊に任せていいんじゃないか?」
「レオーネ普段ならそれでもいいが、今回ばかりはそうはいかない。さっきも言ったが新型危険種は帝都から南部にかけて潜んでいるんだ。特に重要なのは南部までに潜んでいる所。新型危険種は反乱軍が集結している場所の近くまでに潜んでいるため武装親衛隊と反乱軍が鉢合わせにでもなったらそのまま総力戦になりこちらが潰されてしまう。それだけは何としても阻止しなければならない」
「成程、ってことは私達が南部から駆逐して行けば武装親衛隊と反乱軍が鉢合わせすることはないってわけか」
「お前たちを危険にさらすことになる……もう一度訊くがやってくれるな?」
「任せとけ、反乱軍の今後が掛かってるとあってはなおさら頑張らないとな!!」
タツミが皆の意見を代弁するかの如く宣言すると、皆それに同意するように頷いた。
その様子を壁に背を預けながらチェルシーは傍観するように見ていた。
side END――
ノックが三度規則正しくなり、室内に一人のSSの制服として有名な黒い勤務服ではなく、戦車兵であることを示す黒服を着ている男が入って来た。
「失礼します。武装親衛隊第一師団101重戦車大隊長ミハエル・ヴィットマン参りました」
ミハエルは、入って来た扉を閉め背筋を伸ばし敬礼をしながら言った。
ミハエル・ヴィットマン、史実において撃破数は戦車138両、対戦車砲132門。
最も多くの敵戦車を撃破した戦車兵の一人である。特にノルマンディー戦線で、彼が単騎でイギリスの戦車部隊に壊滅的打撃を与えたヴィレル・ボカージュの戦いは有名な英雄と呼べる男でありムソウが信を置いている部下だ。
そして、現在新型危険種の駆逐を言い渡している武装親衛隊第一師団に在りながら、ムソウが特別に別の命令を与えその任に着かせている101重戦車大隊の大隊長である。
「よく来た、楽にして構わん」
ムソウがそう言うと、ミハエルは敬礼から両手を背中で組み、左足を肩幅に開き休めの姿勢を取った。
「さて、報告を聞こう」
「はっ、Landkreuzer P1500 Monsterの製造は順調です。超級危険種を素材とすることで鋼材で製造するさいの予定重量を大幅に軽量化、強度を増すことに成功。完成している主砲の試射も済ませ無事成功しております」
ムソウがミハエル率いる101重戦車大隊に今回特別に命令を与えたのは、大臣や皇帝、エスデスやブドーにさえ秘密にし製造している、アドルフ・ヒトラーが関心を示し、開発を指示したが多くの問題点を含むため開発計画を中断されたナチスの空想超兵器であり、陸上巡洋艦と直訳できるラントクロイツァーP1500モンスターの完成した主砲を秘密裏に試射させることだ。
モンスターの性能は折り紙つきであり、モンスターの全長は42mと想定されており、全重は1,500t、250mmの車体前面装甲を持ち、MAN社製の4基のUボート(潜水艦)用ディーゼルエンジンを装備しするが、搭乗員は100名以上を必要ととする欠点もある。
主兵装は800mm ドーラ/シュベーラー グスタフ K (E) 世界最大の列車砲、副兵装として2基の15cm sFH 18重榴弾砲、および口径15mmのMG 151 機関砲多数を装備しする予定であった。
史実、Dies iraeともに作られることはなかったが、ラインハルトであったことには変わりなくその計画、性能など企画書類を目にし、どちらのラインハルトも不可能な妄想であると結論付けた物である。
だが、この世界は危険種、特級危険種、超級危険種と言われる生物がおり、兵器を作る上での素材としてこれ以上ない程の物であり、事実帝国の始皇帝は、それらを素材とすることで帝具を作らせている。
そして帝具は超兵器としての役割を現役で全うし、その性能を上回る物は未だ出来ておらず、出来て精々臣具と言われる帝具よりも一回りも二回りも劣る物だけだ。
ムソウは危険種を素材とした帝具が現役であることに目を付け、偶然ではあるが武装親衛隊作戦本部AmtⅨ技術及び機械開発より提出されたP1500モンスターの開発許可申請が同時だったため条件指定ののち許可した。
「それで、性能はどうだ?」
「おおよそ初期段階の計画と同等の性能を発揮しております」
「分かった下がっていい。以後、101重戦車大隊は第一師団へと戻れ。そののち第一師団へ与えた命令に従事せよ」
「了解しました!!」
ミハエルは敬礼をし退室した。
「それで、何時まで盗み聞きするつもりだ。盗み聞きはあまりほめられた趣味ではないぞ」
ムソウしかいないはずの執務室、だがムソウは盗み聞きする存在の気配を敏感に感じ取っていた。
「やっぱり気づいちゃいますよね~」
窓から入って来た一匹の猫が窓から入って来ると一転、ドロンっと使い古された擬音と白い煙幕の様なものを立て現れたのは、ナイトレイドに居る時の服装とは違う武装親衛隊の着ている勤務用の黒服を着ているチェルシーだった。
スカートは短く、服もピッタリと合うためチェルシーのボディーラインを強調していた。
「それで、命令通り情報を渡したのだろうな?」
「もちろんですよー」
「それで、ナイトレイドはどう動いた?」
「皆は予想通り、南部の方から優先的に駆逐する様です」
チェルシー今回の一件で一つ新たに命令をムソウは下していた。
ナイトレイドに武装親衛隊が戻って来たこと、南部の方に新型危険種が潜伏していると言う情報を与え、ナイトレイド、反乱軍双方に南部の方に潜伏している新型危険種へと意識を向けさせることだ。
下手にP1500モンスターの試射に気付かれては面倒であることは必然だ。
地方軍に気付かれるようであれば一人残らず殲滅しておけとミハエルに命令していたが、その報告がなかった以上地方軍と遭遇していないとムソウは結論付けた。
「そうか、なら反乱軍に気取られてはいないと考えて大丈夫だな?」
「反乱軍の目的はあくまでこの国の打倒で、帝都には目を光らせても地方までは行っていないから」
「ならばよし、後は時が来るのを待つだけだ」
「一つ報告が」
ムソウは、下がってよいと言おうとした時、それをチェルシーが遮った。
命知らず、ムソウと言う絶対的存在の言を遮ると言うことは即ち死を意味すると誰もが考えるが、事実はそうではない。
基本時に空気の読めない様な無能が遮るために死ぬだけであり、有能なものは自身の死を厭わずして諫言をする者でありそう言った有能な者をムソウは切り捨てる様なことはしない。
「申せ」
「反乱軍の次の目標は安寧道、教主補佐のボリックです」
「ああ、奴か。確かにあれが教主になるのは好ましくないが、だが奴はどこまで行っても大臣の犬だ。犬が主人や周りに噛みつけばどうなるか位の頭はあるはずだ」
その程度のことを気づくことができないようでは、”死”のみが待っている。
僅かばかりに漏れ出すムソウの絶対的存在感が何を言いたいのかチェルシーは肌で感じ取り、無意識下で震え跪いていた。
だが、その心は別であり心酔すべき対象であるムソウの圧倒的存在感が自身を蹂躙し、征服し、支配されることにこの上なく満たされていた。
「だが、反乱軍の目標がボリックと言うことはナイトレイドが動くか。そうなると、イェーガーズもそれを追うか、大臣がボリックの警護にイェーガーズを付けるな…………チェルシー、次のボリック暗殺の際、道中ナイトレイドを離れ、保安本部へ戻れ。代わりの死体はこちらで用意しておく」
保安本部へ戻れ、その一言をチェルシーは一日千秋の思いで待ち焦がれていた。
それが遂に叶うのだ、喜ばないはずがない。
「分かりました」
チェルシーは弾むように言うとそのまま退出した。
「さて、どう出る大臣」
ムソウの提出した報告書で現在進行形でボリックに疑念を覚えている大臣がどこまで手を出すか。
安寧道を重く見るのは分からなくもないが、さてどうなることかなと、ムソウは自身の掌の上で踊る存在に嘲笑を隠せずにはいられなかった。
どこぞの這い寄ってくる混沌並みに後付け設定が増えて行っています。
特に、P1500モンスターはやり過ぎかなって思ってたりします。
以下愚痴です無視してくれて構いません。
卒研で更新がかなり遅くなる可能性もありますがそこのとこご了承ください。
Linux詳しい人いたらマジで助けてほしい
何なん、卒研でシェルスクリプト利用してコマンド作成って
データベース利用して出力って
ファイルのパラメータ出力とか無理だろ
変更ごと変更前を両方出せとか不可能だろ
すみませんお見苦しいものを……