ゼロの忠実な使い魔達   作:鉄 分

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ゼロの使い魔と実写版映画トランスフォーマーリベンジのクロスオーバー作品です
以前二次ファンに投降していたものを少しだけ作り直して投稿しています.



第二話 主従と忠誠

「コルベール先生、これは一体なんなのでしょうか?」

 

 

 

 ルイズの目の前には巨大なゴーレムが横たわっている。しばらく観察してみても動く気配がないところを見るとこれは生物ではないのであろうか。自身では明確な解答が判然としないため、彼女は引率担当教官であるコルベールに尋ねてみた。

 

 

「……随分と巨大ですが、これは見たところゴーレムのようですね。しかし、これほどまでに精緻で精巧なゴーレムは見たことが無い、」

「しかも、未知の物体で構成されている部分がある!!凄い!凄いですぞ!!ミス・ヴァリエール!さあ契約を」

 

 

 

 

 矢庭に興奮しだしたコルベールとは対称的にルイズは己の顔に落胆の色を張り付けていた。動かず生き物ですらないこんな物体をどうやって使い魔にしろというのか、ルイズは唇を噛みしめると目の前に横たわっているゴーレムの顔にあたる部分によじ登り呪文を唱えた。

 

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 五つの力を司るペンタゴン。

 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」

 

 

 

 コントラクト・サーヴァントの呪文を紡ぐとゴーレムの口にあたる部分に軽く口づけを交わす。ルイズはゴーレムの恐ろしい表情にやや気圧されながらも契約をこなした。すると、心停止した人間が電気ショックを受けた時のようにゴーレムの胸部がドンッと跳ね上がった。

 

 

 

「きゃっ!」

「大丈夫ですか!!ミス・ヴァリエ・・・・・・これは」

 

 

 

 再び地面に放り出されたルイズの安否を気遣うコルベールであったが、目の前に広がる状況の変化に気を取られてしまう。目の前に横たわっていたはずのゴーレムが動き、赤く輝く双眸で自分たちを睨みつけていたからだ。

 そして、目の前のゴーレムは言葉を発した。

 

 

「ここは、どこだ………俺様は……何だ………、」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 小さな少女によって召喚された身の丈10メイルを越える巨大なゴーレム。メガトロンは困惑の極致にあった。

 

 自分自身が何者であったのかが分からない。自分自身の名前・兵装等の自分に関することは間違いなく記憶している。しかし、自身が何を思い何を為していたのかが分からない。己には何か重要な目的があったような気がするが、自身の記憶領域を探ってみても何も見つからない、

 

 それは異常なことである。金属生命体である彼は言葉どおりの意味で一度記憶した事柄を二度と忘れることは無い。しかし、メガトロンは自身を除いた凡そ全ての記憶を失っていた。彼の記憶消失がサモン・サーヴァントによるものなのか、はたまた、エネルゴンの塊であるキューブをその身に受け止めたことが原因なのかは誰にも分らない。

 

 ただ一つだけ分っていることがある。

 それは少女の目の前にいるゴーレムはディセプティコンのリーダーであるメガトロンではなく、独りのメガトロンそのものが其処には在った。

 

 

 

 

 

「ここは、どこだ……俺様は……何だ……、」

「凄い!!言葉が喋れるのね!!」

 

 

 

 困惑するメガトロンを余所にルイズは弾んだ声をあげる。先ほどまでの落胆した様子からは考えられないようなはしゃぎっぷりだ。それもそのはず、人語を理解できるのは限られた高位のゴーレムか幻獣だけだからである。自身が召喚した使い魔が巨大な置物ではなく、ハルケギニア全土でも希少な人語を解するゴーレムだった。メイジとしてこれほど喜ばしいことはないだろう。

 

 

「貴様は誰だ?」

「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あなたのご主人様よ!」

 メガトロンの質問に答えるようにルイズは叫び返す。

 

 

「あなたの名前は?」

「俺様は、俺様の名前はメガトロンだ、」

 

 

 ルイズが名を尋ねたのに対し彼は答えた。

 それは重い声だった。 悠久の年月を感じさせながらも、闘争の感情をその内に孕ませている。

 

 

「先ほど貴様は主人といったがそれは一体どういう意味だ、」

「それは、「それは、わたくしが説明しましょう!!」

 

 コルベールは拙いと思った。 目の前にいるゴーレムから発せられる剣呑な雰囲気。これまで感じたことが無いほどに凶悪で恐ろしいその殺気を放置するわけにはいかない。何とかして穏便に済ませよう、とコルベールは仲裁するために両者の間に割って入った。

 

 

 

 一通りコルベールの説明を聞いたメガトロンは大笑した。

 

 

 

「こんなものが俺様を使役するだと?笑わせるな!!」

「おい貴様、笑わせたいのならばもっと面白いジョークを持ってこい」

 

 

 本心から発せられたであろう嘲りの言葉。

 ルイズはメガトロンのその傲慢な態度に食って掛かる。

 

 

「貴様ってなに!?ご主人様に向かってそんな口きいていいと思ってるの!?」

 

 

 恐れ知らずな少女だった。坐しているとはいえ相手にしているのは身の丈10メイルを超えるゴーレムだ。頑健という言葉がそのまま当て嵌まる肉厚な身体。全身を覆う装甲とその修羅の貌。

 相対することすら忌避されるそのゴーレムに少女は叫んだ。

 

 

「というかさっきちゃんと名乗ったでしょう!?私はルイズ!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」

「メガトロン、あなたは私に使い魔として召喚されたの!だから私はあなたのご主人さまなの!使い魔は一生メイジの手となり足となり従うのよ!分かった?!」

 

 

 メガトロンの素性を知っている人が聞けば卒倒するようなセリフをルイズは言い切った。無知ゆえの蛮勇か否かは分からない。あの破壊大帝を相手にしてここまで大言壮語できるものはこの宇宙には存在しなかった。

 無言で話を聞いていたメガトロン。啖呵を切ったそのルイズの言葉を聞き終わると即座に立ち上がる。全身を纏うその恐ろしい雰囲気はそのままにルイズを睥睨していた。

 

 

 

「何よ!ややややるっていうの?!」

 

 

 ルイズは震えながらも杖を取り出して構える。

 しかし眼前のメガトロンはルイズを見ていなかった。ルイズと向かい合わずにあらぬ方向へ一歩歩を進めると、自身の左腕を徐に翳した。

 ガコン、とその左拳が外れると鎖で繋がれた拳が振るわれる。

 

 

「え?」

 

 

 ルイズは唖然とした。

 ただ軽く振るわれただけの左腕。

 自身の使い魔であるゴーレムが何でもないように左腕を振るっただけで巨大な大穴が生まれたからだ。メガトロンは自身の左拳をアイアンメイスとして地面に向かって叩きつけた。その一撃は大地を深々と抉り、土ぼこりを巻き上げる。叩きつけたアイアンメイスを振るって土を落とす。鎖を巻き取って拳を取り付けなおすとメガトロンはルイズに向かって再び話しかけた。

 

 

「どうだ、これが俺様の力だ。これでも貴様ごときが俺様を使役するとのたまうか、」

 

 ルイズの前方には人間が軽く20人は入れるような大穴がぽっかりと空いている。

 目の前にいるゴーレムは先ほどの言葉の真偽を、そしてルイズ自身を試していたのかもしれない。絶対の力を持っているメガトロンらしい考えだった。その片鱗を見せつければ鍍金はすぐに剥がれ襤褸が出るだろうという至極実直な目論見。

 媚び諂い服従するか、それとも破壊されるか。破壊大帝を前にしてその絶対の選択肢にあぶれるものは存在しない。メガトロンに対抗できるものは存在せず、敵対するものは全て破壊されるか従属を強制されたからである。死と破壊を司る破壊大帝。その本性は破壊そのもの。その恐怖に対抗できるものなど存在するわけがなかった。

 

 

 その筈だった。

 

 

 メガトロンの目論見は大きく外れた、

 メガトロンの持つ巨大な力を見せつけられてもルイズは退かなかったのである。眼前で強大な力をまざまざと見せつけられても彼女の眼の光は失われず、しっかりとその先のメガトロンを見据えていた。

 

 

「メガトロン、あなたは私の使い魔よ、それは絶対に変わらない。私は確かに弱いわ、コモン・マジックすらもまともに使えない………、でもいつか絶対に強くなる、強くなってみせるわ。強くなってあなたが誇れるようなメイジになってみせる!だから………だから 私に仕えなさい!メガトロン!!」

 

 

 ルイズの決死の叫びに対してメガトロンは内心驚嘆していた。目の前にいる小さな生き物は自身の力を見ても一切物怖じせずに自分を見つめている。自身を見つめる相手がちっぽけな勇気生命体であることがこれ以上ないほどの驚きを誘った。メガトロンの目の前にいる存在は何も持っていなかった。小さく貧弱で、高度な知性もまともな武器すらも有していない。にも拘らず、メガトロンが持っている強力な力、その彼我の差を見ても少女の視線が揺らぐことはなかった。鮮烈でどこまでもまっすぐな視線。何も持っていないものでは醸し出すことが叶わない誇り高い雰囲気を纏うピンクブロンドの少女は一体何者なのだろう。

 

 媚び諂い服従するか、それとも破壊されるか。

 

その絶対の二択に当て嵌まらない何かの存在はメガトロンに強い衝撃を与えた。 記憶が失われたメガトロン。その姿はまるで刷り込みを行われた雛鳥が親を認識するようにメガトロンの中でルイズの存在が段々と大きくなっていく。非力であるにもかかわらず、力に屈しないルイズの強さにメガトロンは興味を抱いた。気が付けば彼は目の前にいる小さな少女に片膝を付き、その頭を僅かに傾けた。

 

 

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。力に屈しない心をもつ強き者よ。この俺を使役するというのならば、捧げさせてみせるがいい。永遠の忠誠と絶対の服従を。見せてみるがいい。先ほどの言葉をどこまで貫けるかを、な」

 

 ルイズは片膝をついたメガトロンを見上げながら微笑む。

 そしてメガトロンの投げかけとも取れるその言葉をしっかりと吟味し、答える。

 

 

「メガトロン。私は必ず貴方からの忠誠を勝ち取って見せるわ、必ずよ」

 

 

 その宣誓を少女によって召喚されたゴーレムもまた受け止めた。その様子を見たルイズは自身から湧き上がる確かな高揚を噛み締めるようにして身震いすると、一呼吸置いたのちに言った。

 

 

 

「これからよろしくね、メガトロン。私の大切な使い魔。」

 

 

 

 それはこの物語のすべての始まりであり、ゼロと呼ばれるルイズに初めて使い魔ができた瞬間だった。

 

 

 

 ・メガトロン:元ディセプティコンのリーダー strength rank 10

 


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