「してやられたようだな」
遊戯王デュエルアカデミア。その校長室にて、鮫島校長――否、鮫島校長だった者は、自らの協力者に愉快そうにそう言った。
「おいおい。してやられたんじゃなくて、してやられてやった――だろ?」
来客用のソファーに寝転がった少年――白崎 白乃はそう言った後に、肩をすくめた。
「なんてね。ああ。認めるよ。いくらレイン恵を操っていたのが、僕の力の僅な欠片でしかないとは言え、超融合は手に入らず、『Another No.』も一枚回収された。今回は僕の敗けだ」
自らの敗けを認めたというのに、白崎は気分を害する所か、むしろ楽しくて堪らないと言った風に、頬を緩めていた。
「嬉しいのか?」
「ああ。嬉しいとも。こっちの世界に来て、僕の宿敵が弱くなったと思っていたが、どうやら勘違いだったらしい」
愉悦と憎悪を混ぜ合わせながら、白崎は笑みを深めていく。
「自分ではどこにでもいる普通の決闘者なんていうことをのたまっていたが、あれは僕の知っている最凶最悪の決闘者のままだ」
故に、潰しがいがある。白崎はソファーから立ち上がると、鮫島校長だった者を見た。
「だから容赦はいらないよトラゴエディア。こちらも全力で彼を叩き潰しにかかろうじゃないか」
「よかろう」
校長に宿った災厄の精霊トラゴエディアもまた、笑みを浮かべた。
「ではこちらも次の刺客を送っていいのだな」
「ああ。全て君に任せるよ。ただし――」
「刺客を送るタイミングは貴様が示したタイミングでだな。確か次は月一テストの時だったな」
「ああ。頼むよ。それは必要な事なんだ。定められた物語を
「だそうだぞ?
校長室にもう一人いる少年に、トラゴエディアは視線を向ける。
「次の刺客は貴様だ。精々俺を楽しませろ」
「……ああ」
無機質な声だ。
「お前達から渡された力で、俺は雪乃を
しかし燃えるような闘志を、はっきりと感じる。
これならば、あの黒崎 黒乃相手にも善戦するだろう。
(さて)
これにて舞台は整い、役者も万全の状態であることが分かった。
(こちらの勝利は明白だ)
いくつかのイレギュラーが発生してはいるが、こちらの体制は磐石。黒崎 黒乃にも、
(後、少しだ)
もう少しで望みが叶う。
(誰にも邪魔はさせない)
一枚のカードを取り出す。
白紙のカード。
今はまだなにも描かれていないが、全てが終わった時、このカードは自分が望む姿になるだろう。
(いや、してみせる)
その為に全てを犠牲にして来たのだ。
必ず果たして見せる。
この計画――Black seekerを
その為に――
「まずは世界を壊す」
次回からいよいよ月一試験です