遊戯王 Black seeker   作:トキノ アユム

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デュエリストあるある

作者「すいませんVジャンプを五冊下さい」
店員「え!? 五冊ですか?」
作者「はい。五冊です」
店員「分かりました」
作者「……」
店員「……」
店員「あの、同じ内容の本ですが、よろしいですか?」
作者(分かっとるわい!!) 



 『カード目当てにVジャンプや漫画を複数買いし、店員さんにドン引きされる』



 だって当然だろう? 決闘者なら。 


GXデュエルアカデミア編第7話『冥界龍VS太陽神』
冥府に至る道


 幼い時よりお仕えしていた。

 少女の成長をずっと見守っていた。

 彼女の苦楽を全て見てきたつもりであった。

 だがそこまでだ。

 自分は傍観者でしかなかった。

 ああ、だから、どうか。もし願いが叶うならば、今度は傍観者などではなく――

 

 

「モウヤンのカレー、いっきまーす」

 

 

 え?

 

 

 

 

「がぼごぼがぼごぼー!!」

 そこには地獄絵図が広がっていた。

「む。まだ起きない。もうワンパック追加で」

「了解です。ウェン子お姉ちゃん!」

 気絶した終焉の王の口に、タッパー詰めしたモウヤンのカレーを起きるまで延々と流し込む我がマスコットと、我が娘。

 うん。地獄絵図だ。本当にむごい光景だ。

 だがこれは必要なことである。だからどんなにひどい光景であっても、俺は止めようとはしない。ただ、眺めさせてもらう。

「がぼごー!」

 デミスがこちらに助けを求めているように見えたが、気のせいだ。

 だからこの面白――いや、むごい光景を目に焼き付けることしか出来ない。

「ウェン子。まだ起きないぞ。ちょっと効果が薄いんじゃないか?」

「りょうかい。こんなこともあろうかと、『体力増強剤スーパーZ』をもってきてる」

「流石だな。五本ほどぶち込んでやれ」

「ん」

「ぶちこんじゃえ~★」

 

 

 

「やめんかコラーーーー!!!!!」

 

 

 おや、限界になって起きたか。それはひどく残念――いや、嬉しいことだな。

「貴様ぁぁ!! どういうつもりだ黒崎 黒乃!」

「どういうつもりだとはなんだ? 負傷したお前の身体を回復してやってただけだろう?」

 なんせかなりの重症だったからな。流石のルインでも治癒は不可能。ならば、ウェン子の万能アイテムに頼るしかあるまい。

「口に流し込むタイプの奴しかなかったのだから、無理矢理流し込むのは仕方のないことだったんだよ」

「む。そ、そうなのか?」

「ああ」

「嘘よデミス。先生。楽しそうに眺めていたから」

 と、少し離れた所で様子を見ていた雪乃が余計な事を言いながら、こちらに歩み寄って来た。

「!」

 雪乃の声に、デミスの巨体がびくりと反応する。

「ゆ、雪乃様――」

 ひどく気まずそうな顔を浮かべているな。まあ、無理もない。正気ではなかったとはいえ、あんな醜態を晒したのだからな。

「デミス。何か言うべき事があるはずでしょう?」

「……はい。今回は、雪乃様に対し、度重なる非礼を――」

「なに言ってるの?」 

 雪乃は呆れきったとばかりにため息を吐くと、

「そうじゃないでしょう? あなたは家族の前に『帰ってきた』のよ? なら、まず言うべき事があるでしょう?」

「は? え――しかし……」

「デミス!」

「は、はい!」

 デミスは直立不動で立ち上がると、

 

 

「た、ただいま戻りました」

 

 

 家族なら何の特別でもない、当たり前の礼を雪乃に言った。

「ええ」

 満足そうに頷くと、雪乃はデミスに顔が見えないように踵を返した。

「お帰りなさい」

 ただ一言そう言うと、地面に崩れ落ちる。

「雪乃様!?」

 ……ああ、そうか。やはりこうなったか。

「どうされたのですか! 一体何が――」

「焦るな。見苦しい」

 考えればすぐに分かる事だろうが。

「お前を助ける為に体力を消費し過ぎたんだろう」

 念の為に抱き起し、脈や呼吸を確認するが、特に問題はない。

「命に別状はない」

 だが相当な疲労があったのは間違いないな。

(だというのに、デミスが起きるまではそばにいる! なんて、馬鹿な意地を張っていたのかこいつは)

 まったく呆れ果てるな。分かっていたが、こいつも筋金入りの馬鹿だ。

 デミスに気付かれないように、雪乃の頬を伝っている涙をそっと拭いながら、俺は苦笑した。

「だから気に病む必要もない。こいつあんたのことを恨んでなんかないんだから」

「しかし私は!!」

「いいから忘れろ」

 じゃないとこいつが浮かばれない。

「そしてこの馬鹿が目を覚ました時は、いつもと変わらない顔で笑ってやれ」

 それがきっとこいつは一番喜ぶ。

家族(・・)なんだろう。お前らは?」

 質問ではない確認をデミスに行う。終焉の王は、はっとした顔になる。

「ああ。そうだ」

 こちらに。いや、雪乃の近くに来ると、少女の顔を見て、デミスは深く頷いた。

「その通りだ」

 終焉の王なんていう肩書からは絶対に想像できない優しい顔だ。

 これなら。きっと大丈夫だろう。

「雪乃を頼む」

「ああ」

 俺はデミスに雪乃を託すと、立ち上がった。

 そして、ゆっくりと口を開く。

「もう十分だろう。そろそろ出て来い」

 独り言ではない。何故なら、今も奴は間違いなくこちらを見ているのだから。

 

 

「レイン恵」

 

 

 名を呼ぶと、俺達から離れた場所に位置する場所の空間が歪んだ(・・・)

「決着をつけるぞ」

 茶番はもうたくさんだ。これ以上面倒事を増やされるのは御免だしな。

「私もそのつもり」

 現れるのは、銀髪の少女。今回の一件の元凶となる俺の敵。

 そして――

「……」 

 連れ去られたうちの|エース≪バカ≫だ。

「バニ――」

 名を呼ぼうとし、やめた。

 バニラの様子が、明らかに異常だったからだ。

「お前、うちのバカに何をした?」

 バニラの目は意志の力を感じさせない虚ろなものとなっていた。

「調整をしただけ」

 調整――なるほど。前に雪乃にやったことと似たようなことか。

「デミスの奴を寄越したのは、そいつの調整の時間稼ぎのためか?」

「そう」

 悪びれもしないか。そこまでいくと、逆に清々しいな。

「で? 今度は、そのバカの相手をすればいいのか?」

 それはそれで面白そうだと、思わず緩みそうになる頬を引き締めながら、レインとバニラを見比べる。

「別に構わんぞ俺は」

 相手が誰だろうと関係ない。目の前に立ち塞がるなら、叩き潰すだけだ。

「いいえ。あなたには、私とこの子二人の相手をしてもらう」

「……ほう」

 そいつは中々面白そうだ。

 異論はない。むしろ歓迎だ。

「ふざけるなよ小娘!!」

 だというのに、意外な所から反対の意見が来たな。

「それでは、ただ黒崎 黒乃が不利なだけではないか!」

 何故か憤慨するデミス。まあ、言ってる事は正しい。

 二体一の決闘なんて、圧倒的に一の方が不利だからな。

 スタート時に手札の枚数は相手の方が倍。

 決闘の勝敗を分けるLP。デッキの枚数も相手が倍。 

 ああ。まったくもってナンセンスだ。ここまでの不利を分かっていて、それでもやろうとするのは、ラスボスか、余程の馬鹿ぐらいだろう。

 

 

「余計な事をするなデミス」

 

 

 だが、だからこそ(・・・・・)面白いのだ。

不利(それで)いいんだよ。それで勝たなければ、意味がない」

「しかし!」

「もう一度言うぞデミス」

 視線を一瞬デミスに移す。

 

 

「邪魔をするな。これは俺の闘いだ」

 

 

 

 無謀だと、デミスは思った。

 まさか、自分の不利さえ分かっていないのではないか。自分の仲間を奪われ、冷静な判断力がつかなくなってしまっているのではないか。

「いいえ。それは違いますよデミス」

 デミスの思考を遮ったのは、彼にとって仕事でもプライベートでもパートナーであるルインだった。

「どういうことだ。何が違うのだ」

「あの人は筋金入りの決闘者ということです。ここにいては邪魔になります。距離をとりますよ」

「しかし!」

 ここであの男を残し万が一の事があれば、雪乃様が――

「いいから従いなさい。あの人は大丈夫です。私達がここにいることを疎ましく思う方ですから。それに、私達が今為すべき事はなんですか?」

「それは……」

 主を、雪乃様を守る事だ。

「行きますよ。決闘が始まります」

「……分かった」

 納得はしていない。だが、自分のやるべきことは理解している。

 デミスは一度だけ振り替えると、黒崎達から離れるのであった。

 

 

  

「やっと行ったか」

 デミス達が離れた事を確認した俺は、レインに向き直った。

「それで? この決闘に俺は何をかければいい?」

「命」

 さらりと言いやがったな。

「あなたの存在は危険すぎる。この世界に無視できない脅威が現れた以上、不安要素は消す」

「脅威……か」

 間違いなく、存在するはずのないナンバーズを持つ奴らの事を差している。

(しかし)

 ここまでの強硬手段を取ってくるとは、見た目からは分からないが、この銀髪娘。相当に焦ってるのかもしれないな。

「いいだろう。ならば俺が勝てば、レイン恵。お前の全てをもらうぞ」

「分かった」

 賭けは成立か。それにしても、俺が言えた事ではないが、自分の全てを躊躇いもなく賭けてくるとは、中々に異常な奴だ。

(まあ、その方がやりやすくていいがな)

 問題なのは、うちのバカ娘の方か。

「……」

 完全にだんまり状態。いつものやかましいあいつとは完全に正反対だ。

「ますたー。どうやっておねえちゃんをもとにもどすの?」

「ん?」

 そんなの決まってるだろうウェン子よ。

「半殺しにして吊し上げる」

 慈悲はない。

「りょうかい。ちょっときついのをぶちこむ」

「上手に焼こう!」

 行動方針は決まった。

 なら――ケリをつけるとしよう。

「デュエルスタンバイ」

 シュヴァルツディスクを呼び出す。

「この決闘で、あなたを完全に消去する」

「やって見ろ」

 出来るものならな。

 

 

 

「「「決闘(デュエル)!!」」」

 


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