遊戯王 Black seeker   作:トキノ アユム

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きりがいいところなので、短いですがここで終わらせました。
次で決着です。


GXデュエルアカデミア編第4話『黒きイレギュラーカード』
現れし異物なる機械人形


闇を吹き飛ばす勢いの風がフィールドに吹き荒れる。そしてその風の中心点にいるのが何者なのかなどはもう言うまでもない。

『ただいま』

ウェン子。うちの精霊の中の数少ない良心にして、最高最強のマスコット。

「よく帰ってきた」

そしてよくやった。デイビットを挑発し、攻撃を誘う俺の意図を察し、言葉の援護をしてくれたウェン子には、本当に感謝しかない。

ウェン子。空気が読めるマスコットを持てて、俺は嬉しいぞ。

「ウェ、ウェンディゴちゃん!? どうしてここに!? まさかあの攻撃を自力で脱出したんですか!?」

そしてバカ娘よ。空気を読めないエースを持ってしまって、俺は悲しいぞ。

『やられるわけない』

「す、凄い自信です!? その自信はどこからくるんですか?」

『きまってる』

ウェン子が幼女の見た目とは裏腹に、ウェン子は不敵に笑う。

 

 

 

 

『かぜはけっしてやまないものだから』

 

 

 

 

「なんかめっちゃカッコいいです!?」

まったくだ。どっかのバカなエースよりも百倍かっこいいな。

「今、マスター失礼なこと考えませんでしたか?」

「いや別に」

日に日に勘がよくなってるなバニラの奴。まあ、どうでもいいがな。今はそんなことより目の前の敵に集中しなければならない。

「たかが攻撃力200の雑魚モンスターがMeのSATURNを倒した? そんな、こんなことがーー」

茫然としているな。絶対の信頼を置いたエースモンスターが雑魚と判断していた格下の相手に負けたのだ。その精神的なダメージはけっして小さくはないはすだ。

「どうした? お前の番だぞ。それともサレンダーするか?」

「ふざけるな! このMeがサレンダーなどするはずがないだろう!!」

「なら、カードで示してくれよ。このままだと、俺ーーいや、Meが勝ってしまうぞ?」

「貴様ぁ!」

あえてデイビットの口調を真似て言ってやると、唇を噛み締めながらデイビットは俺を睨み付けてくる。

「お前だけは絶対にMeが闇に葬ってやる!」

「やってみろ。ただし、俺を決闘で倒せるのならな」

「っっ! Meは伏せていた永続魔法スペシャルバリアコーティングを発動! これにより、Meの場のレベル3以下の機械族モンスターは戦闘では破壊されない!更にカードを3枚伏せてターンエンドだ! 」

「俺のターンドロー」

引いたカードを確認し、思わず苦笑してしまう。やれやれ。デッキに入れたとはいえ、本当に来るとはな。だがまだこのカードを使うべき時ではない。

「手札からEーHEROプリズマーを召喚」

「トラップ発動! 奈落の落とし穴! その効果により、攻撃力1700のプリズマーには消えてもらう!!」

「やるな。ならばバトルフェイズ。ウェンディゴでクオンティティーを攻撃する」

「やらせん! 永続トラップスピリットバリアを発動!

この効果により、Meが受ける戦闘ダメージは0になる!!」

「耐えたか」

厄介なカードを使う。これで奴の場には強固な壁が完成してしまった。プリズマーが奈落の落とし穴を受けなかったら、ブラックバーニングとのコンボで相手のモンスターをスクラップに変えられたのだが。

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

「ならば、そのエンドフェイズに、リバースカードオープン。リビングデットの呼び声! その効果でMeは――」

リビングデットの呼び声か、この状況で奴が呼ぶベストなモンスターといえば、マシンナーズ・フォートレスだが――

ちらりと、ウェン子に視線を送る。うちのマスコット様は何も言わずにこくりと頷いた。

「Meが蘇生するモンスターはマシンナーズ・フォートレ――」

『くすり』

「――なにがおかしい?」

モンスターを特殊召喚しようとしたデイビットがぴたりと止まる。その目は彼の言葉の途中で笑みを浮かべたウェン子を睨み付けていた。

『べつに。ただいいまちがえをみつけただけ』

「言い間違えだと? そんなことMeはしてな――」

『ううん。した。もんすたーっていった』

「それのなにがおかしい?」

『だって――』

 

 

 

 

『あなたのあつかってるのは、ただのてつくずでしょ?』

 

 

 

「――」

「マ、マスター! ウェン子ちゃんがスーパーブラックです!!」

「黙ってろバカ娘」

「こっちはストレートにブラックです!?」

 ウェン子があそこまで露骨なまでに黒い台詞を吐いてるのは俺が目でデイビットを挑発するように合図を送ったらからだ。

先程エースを倒されたことで、ウェン子に敵意を剥き出しにしていたからな。俺が挑発するよりかは効果的だと思っていたがーー

「ここまでコケにされたのは、生まれて初めてだ」

どうやら刺激が強すぎたらしい。目は血走り、怒りは殺意にとなり、真っ直ぐにウェン子に向けられる。

「殺す。なにがなんでも、そのクソガキだけは、Meの手で叩き潰してやる」

『……』

ウェン子がちらりと俺を見、視線で『これでいい?』と尋ねてくる。俺は小さく頷いた。上出来すぎる。流石は俺のマスコットだ。

だが問題は、そして本当のクライマックスはここからだ。

 

 

「Meがリビングデットで蘇生するのはThe big SATURNだ!!」

 

 

「!? ここでSATURNを蘇生するのですか!?」

挑発されたせいで冷静さを欠いたプレイミスーーではないな。

「ひは、ひはは!!」

あの顔。何か隠し玉があるな。

「ウェン子。気合いれろ。どうやら次のターンが勝負所だ」

『ん。こころえてる。ますたーはぜったいにわたしがまもる』

「ふ、いい答えだ。なら付き合ってくれ」

『ん!』

さあ、行くぞ。

「……あのーマスター」

と、思ったらその出鼻をくじくように、バニラがこちらに話しかけてきた。

「なんだ? 今わりといいところなんだ。ボケてもツッコまんぞ。というわけで喋るなバカ娘」

「私の発言の全てがボケカウントされてます!? いや、それよりもマスター! 私の時よりもウェンディゴちゃんがかっこよく活躍してるのは気のせいでしょうか。後、マスターとウェンディゴちゃんの仲が異常によく見えるのは私の気のせいですか!?」

やれやれ。何を言うかと思えば。そんなことどうでもいいだろう。それに――

 

 

「気のせいだな」

『きのせいだよ』

 

 

「完全にシンクロしてます!?」

「うるさい。少し黙ってろバカ娘」

『ばにらおねえちゃん。おくちちゃっく』

 

 

「いつか絶対にぐれてやりますうううううう!!」

 

「茶番はいいか? Meのターンを始めていいか?」

「そいつは悪かったな。さっさとやってくれ後悔のないようにな」

「後悔するのはYouのほうだ。Meのターン、ドロー。くくく、Meは手札から魔法カードギャラクシー・クイーンズライトを発動」

「ギャラクシー・クイーンズ・ライトだと?」

 確かあれは自分の場のレベル7以上のモンスター1体を選択し、それ以外の全てのモンスターのレベル選択したモンスターと同じにするカード……

「Meはレベル8のSATURNを選択し、それ以外のモンスター……3体のクオンティティーのレベルを8に統一する」

「レベル8のモンスターが4体……」

 いや、まさかそんなはずはないはずだ。この世界はGXの世界。あの召喚方法が出来るはずが――――

『ますたー』

「ウェン子?」

 

 

『くる』

 

 

 何がとは問わなかった。それを聞く前にデイビットが答えを見せてくれたからだ。

 

 

 この世界には存在しないはずの答えを。

 

 

「Meはレベル8のSATURNとクオンティティーでオーバーレイ!!」

 

 

「なんだと!?」

 

 

 バカな。まさか本当にこの世界でやると言うのか!?

 

 

 

 

 X(エクシーズ)召喚を!?

 

 

 

 

「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」

 

 

 突如として出現した渦の中に吸い込まれていく2体のモンスター。

 

 

 

 

 

「現れろNo.15 ギミック・パペット・ジャイアントキラー!!」

 

 

 

 

 そして現れたのは、この世界には決して存在しないはずのモンスター。

 おざましささえ感じる巨大な狂気の人形。

 それが今、俺達の前に立ち塞がった。

「エクシーズにNo.だと?」 

 ありえない。あれはZEXALの世界にしか存在しないはずのカードだ。

 それが何故この世界に、そしてデイビットが持っている!?

「デイビット。お前、そのカードをどこで――」

「くくく、まだ終わりではないぞ! 更にMeは二体のレベル8となったクオンティティーでオーバーレイネットワークを構築する!」

「!」

 まさかまだ出すというのか!?

 

 

「現れろNo.40 ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス!!」

 

 

 2体目に現れた存在しないはずのモンスターは、破壊効果を兼ね揃えた攻撃力3000のモンスターであった。

「くく、くははは! 力だ! 力がみなぎってくる!!」

「!?」

 ただでさえ顔芸だったデイビットの顔が狂気に歪む。見ると、デイビットの両の手の甲にそれぞれ15と40の光るナンバーが浮かび上がっていた。

「バカな!」

 あれは紛れもなくZEXALでNo.を使用する時に使用者に浮かび上がっていたもの。まさかあのNo.モンスターは本物だとでも言うのか?

 

 

「行くぞ黒崎 黒乃! 貴様の言うとおり、クライマックスをMeがくれてやるよ!」

 

 

 最後の勝負を仕掛けて来る気かデイビット。いいだろう。聞きたいことは山ほどあるが……

 

 

「まずはそのイレギュラーを鉄屑にしてやる」

「やれるものなら、やってみろぉぉ!!」

 

 

『ますたー。かとう』

「ああ」

 負ける気はない。この決闘必ず勝ってみせる。

 

 

 その致命的な異常(イレギュラー)を少女――レイン恵ははっきりと感知した。

「ありえない……どういう、こと?」

 禁則事態にも程がある。この世界で、あんなことをしてしまえば、いずれ取り返しのつかないことになってしまう。

「止め……ないと」

 最早影で行動するなどは考えられない。自らが直接出向き、イレギュラーを消去(デリート)しなければならない。

「黒崎 黒乃……やはりあなたなの?」

 このイレギュラーを直接引き起こしたのが、彼なのか。それは分からない。だが、確実に彼も何らかの関わりを持っているという確信をレイン恵は持っていた。

 銀髪の少女もこうして表舞台に上がる。

 

 

 

 

 永遠に続くであろうと思っていた世界の平穏が崩れていく予感を感じながら――――

 

 

 

 

 

 

 

 


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