「黒崎 黒乃。お前は今のデュエルアカデミアをどう思う?」
「まだ一度もアカデミアに行ったことのない相手に対していう台詞じゃないよなそれ」
「ふぅん。貴様なら答えられるはずだ」
社長。それは過大評価という奴だ。答えられなかったら「俺の期待を裏切るとはな……」とか言いそうだよなこいつは。この社長の部下やってる奴らには尊敬するよ。ストレスで胃がマッハになるんじゃないか?
「俺は言葉を選ぶ気がないから、はっきり言うぞ?」
「それでいい。言え」
じゃあお言葉に甘えまして。
「今のアカデミアの状態は正直くだらん」
「ふぅん……続けろ」
オーナー相手に対して言う台詞じゃないが、社長はむしろ興味深そうに頷いた。
「社長。あんたがアカデミアにレッド、イエロー、ブルーの階級制度にしたのは、生徒達に向上心を与え、互いを向上させる原動力とするためだ。だというのに、今のアカデミアの面子はそのことを間違って受け止めている」
レッドになったものは自らの落ちこぼれという境遇に絶望し、向上心を諦める。
ブルーになったものは自らのエリートという境遇に満足し、向上心を捨て去る。
イエローはその中間のどちらでもない空気のような存在。
「これじゃあ何の意味もない。社長、あんたがアカデミアを建設したのは、優れた決闘者を育成するためなんだろ? それは単に戦術が優れてるとか、デッキの構築が上手いとかそういうことだけじゃない」
俺は自らの胸に手を当て、言う。
「心だ。いや、精神力というべきか? どんな脅威にも屈せず、どんな逆境にも逆らう……そんな人間を育成したかったのだろう? かつて人生のどん底から這い上がった海馬社長、あんたのような決闘者をな」
俺の話を聞いた社長は少しだけ黙っていた。
一瞬、まずったか? とも思ったが、それは杞憂だった。
「ふふふふふ! わははははははははははははははは!!!!」
返事は社長特有の高笑いだった。
「貴様は実に面白い奴だな。この俺にそこまで言う奴は初めてだ」
「そりゃどうも」
誉められてもあんまり嬉しくないのは、相手があの海馬社長だからだろう。この俺様ジャスティスさんが何の理由もなしに俺を呼び出すはずがない。
「そんな貴様に特別な仕事を与えてやる」
ほらやっぱりな。
「お断りします」
「やることは単純だが、貴様のような奴でなくては絶対に勤まらん仕事だ」
ああ、無視ですか社長。お前いい加減にしないと、弟拉致して女装させてやるぞこの野郎。
「デュエルアカデミアの今のくだらん常識を破壊しろ」
……
「おい。それオーナーの台詞じゃないぞ」
「ふぅん。知ったことか。俺がアカデミアを建てたのは決闘者の総合レベルを上げるためだ。それが出来ていないのなら、一度その腐りきった常識を破壊するだけだ」
「……破壊なくして新たな創造はないってか?」
「そうだ。だからお前をここに呼び出した。貴様ならそれが出来ると、俺の直感が言っていたからな」
無茶苦茶にも程があるが、これでこそ海馬瀬戸だよな。やれやれ自分から進んで選んだ訳ではないが俺、就職先をミスったな。
「黒崎 黒乃。貴様の経歴が一切不明な点や、なぜブラック・マジシャン・ガールを3枚も保有しているのかということを俺の部下は気にしているが、俺から言わせればそんなことはどうでもいい」
いやどうでもよくないだろ。自分で言うのも何だが俺みたいな怪しい奴はもっと警戒しようぜ社長。
「アカデミアでのお前の行動の全面的な自由を約束してやる。校長の鮫島には既に連絡済みだ」
おいおい。俺まだ一言もやるって言ってないんですけど?
「ていうか、俺があんたの考えていたような人間じゃなかったらどうしてたんだよ?」
「当然クビだ」
やだこの社長怖い。
おい、もうこれ断れる空気じゃないよな? まあ、いいけどさ。行動の自由が約束されるってなら、俺としてはやりやすいし。
だがタダで受けるわけにはいかない。
「1つ条件がある」
「なんだ?」
「ブラック・マジシャンというカードの情報が欲しい」
「ブラック・マジシャン? 聞いた事のないカードだな」
「……」
遊戯の宿命のライバルである社長ですら覚えていないのか。分かっていたが、想像以上にバカ娘のお師匠さまを探すのは骨が折れそうだな。
「とにかく何か情報があったら、すぐ俺に情報をくれ」
「ふぅん。いいだろう。何か情報が入れば貴様にくれてやる」
「交渉成立だな」
さて、そうと決まればさっさとここから出させて貰おう。
正直社長と話していると疲れる。出来ればさっさとここからエスケープしたい。
「じゃあ、俺はアカデミアに――――」
「待て。貴様誰が退室していいと言った?」
「……まだ何か用があるのか?」
まじで木馬を拉致ってやろうかと考え始めた俺だったが……
「ふぅん。勘違いするな。お前に用があるのは俺ではない」
「あ?」
じゃあ、一体誰なんだよ? と聞こうとした俺だったが、突然外からプロペラの回転する爆音が聞こえたので、思わず耳を押さえた。
「なんだよ今度は?」
「お前に用がある奴が到着したようだな。黒崎よ。屋上に行くがいい」
「……ちなみに、それを俺が拒否したら?」
「クビだ」
結論、デュエルアカデミアのオーナーはまじで暴君です。
「しっかし、誰なんだ? 俺に用がある奴っていうのは」
流石にここまで来たら俺も予想なんて出来るはずがない。こっちに来てから精霊の奴らとしかまともに話してないし、知人なんて皆無だ。
ていうか、今更だが改めて考えると俺の周りにいる奴等って、まともな人間1人もいないよな。雪乃もハーフだし。
いや、別にどうとも思わんけどさ、何ていうか俺、GXの世界来てから平和な時間がほぼ皆無な気がする。
どうか、俺に用がある奴とやらはまともで普通の人間でありますように――――そう祈りながら、俺は屋上のヘリポートに出た。
「お」
ちょうどヘリから人が降りてくる所だ。頼むからマジで人畜無害な人でありますよう――――
「OH!! ハロー! ミスター黒崎! ユーと会えるのを楽しみにしていました!!」
出てきた相手に、俺は空いた口が塞がらない心境だった。
ロングな白髪の長身。そしてこの独特で耳に残る喋り方。
「ペガサス!!」
そいつは遊戯王の王国編でのボスであり、この世界ではデュエルモンスターズの生みの親であり、I2の会長という設定を持つ重要キャラクター……
ペガサス・J・クロフォードであった。
「さあ、準備はいいか十代」
「いつでもいいぜ!!」
レッド寮の前で十代と大地は決闘を始めようとしていた。
「勝ったほうが、黒崎と先に決闘出来るでいいよな?」
「いいぜ!」
「青春ね」
「……雪乃。何故あなたがここにいるのですか? あなたはブルーの女子寮にいるはずですが?」
「その言葉はそっくりそのままあなたに返すわ麗華。優等生のあなたがこんな所で決闘の観戦をしていていいのかしら?」
「それは……」
言いよどみ、麗華はちらりと大地に視線を送る。
「ああ――」
ぽんと雪乃は手を打つと、意地の悪い笑みを浮かべた。
「あなたも青春してるのね」
「せ、青春って! 私は別に大地とは何も――!!」
「私は大地の坊やの名前は出していないけど?」
「……」
「あらあら、無言で顔を真っ赤にしちゃって――――可愛いわね麗華」
「う、うるさいです! それ以上は怒りますよ!」
「あら怖い。なら静かに二人の決闘を観戦するとしましょう」
手に人差し指を当てながら微笑む雪乃に、麗華は少しだけ困惑したように、眉を潜めた。
「雪乃。何かありましたか?」
「どうしてそんなことを聞くのかしら?」
「いえ、幼い頃からあなたを知ってますが、なんと言いましょうか……いつもあなたはどこか表情に陰りがあったのに、今さっきの笑顔は真っ直ぐなものに見えたからです」
「うふふ。まあ、そうねあったと言えばあったわね」
「なんですか?」
「簡単に言えば――」
「簡単に言えば?」
微笑みを浮かべながら、雪乃は麗華にウインクをした。
「恋すると女は変わるってことよ」
「え!? 雪乃それってまさかあの黒崎っていう人のこと?」
「さあ、決闘が始まるわよ麗華」
「ちゃんと答えて――――」
「「決闘!!」」
麗華の言葉を遮るように十代と大地の声がレッド寮の前に響きわたった。
「ユーのことは私の友人からよく聞いてマース。決闘者としてかなり優れていると」
生ペガサスは遊戯王ファンとしてはテンションが上がるが、どうにも聞き逃せないことがあった。
「友人? 誰だそいつは?」
俺のことをよく聞くだと? 俺の事をそんなに評価している奴なんてこの世界にいるわけーーーー
「ミスター藤原デース」
いたな。何故か俺の事を評価している闇の支配者様が。てか、ゾークの奴ペガサスと知り合いだったのかよ! 流石に精霊であることは明かしてないとは思うが、それでも色々フリーダムすぎるだろ!
「ユーに一度会いたいと思っていたら、海馬ボーイが今日君と会うと聞いたので、これはグットタイミングと思い、この場をセッティングさせてもらいました」
「あー。それで話は?」
会長がわざわざ私事だけで俺に会いに来たとはちょっと考えにくい。もしかしてこいつも俺に何か特別な用があるんじゃーーーー
「話はヘリに乗ってからにしましょう。他人には決してバレてはいけない事ですしね。ついでにデュエルアカデミアまで送りマース」
「……」
うわーい。やな予感がビンビンするぞ。さっきの海馬社長の依頼が可愛く見えるほどの、厄介事の予感。
「分かった」
とりあえず、アカデミアについたら胃薬を買っておこうと、俺は本気で思った。
「先行は俺だ!」
大地の坊やのターンから始まるみたいね。さて、どういう決闘を見せてくれるのかしら?
「俺は熟練の青魔導師を攻撃表示で召喚!」
熟練の青魔導師――――魔法を使う度に魔力カウンターを乗せていき、3つ貯まれば自身をリリースしてデッキから「暗黒騎士ガイア」モンスターを手札、デッキ、墓地から特殊召喚出来るモンスターね。まずは様子見という所かしら?
「更に俺は永続魔法 凡骨の意地を発動! この瞬間魔法が発動したので、青魔導師に魔力カウンターが1つ置かれる」
青魔道士の持つ槍についた三つの魔石の1つに光が灯った。
「更に俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「へへ! 俺のターンだ! ドロー! 手札から融合を発動! 手札のE-HEROフェザーマンと、E-HEROバーストレディを手札融合!」
いきなり融合とは、あの十代の坊やは随分引きがいいのね。それに、あの融合素材はクロノスとかいうデュエルアカデミアの教師を倒した融合モンスターを出す気ね。
「マイフェイバリットカード! E-HEROフレイムウィングマンを召喚だ!」
攻撃力2100の融合モンスターがフィールドに現れる。それだけを見るならただの低ステータスモンスターだが、確かあのモンスターには……
「フレイムウィングマンは戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えられる!」
「だが、お前の融合が発動されたことにより、俺の場の青魔導師にも魔力カウンターが1つ乗る」
これで魔力カウンターは2つ。ガイア召喚までにリーチがかかったという所かしら?
「だけど、ここで破壊したら関係ないぜ! バトル! 行けフレイムウィングマン! 熟練の青魔導師に攻撃!」
フレイムウィングマンの異形の腕から炎が吐き出される。今更疑問だけど、あれって戦士っていうより悪魔族の方がしっくりくるんじゃないのかしら?
「なら俺は伏せてあった速攻魔法収縮を発動する! これでフレイムウィングマンの元々の攻撃力を半分にするぜ!」
「なに!?」
「いい戦術です大地。これでフレイムウィングマンの攻撃力は2100から1050にパワーダウン。青魔導師で返り討ちです」
「……それは違うわ麗華」
「え?」
あの十代とかいう坊やの顔を見てみなさいな。あの子はこれを躱す術を持っているはずよ。
「速攻魔法融合解除を発動!」
……ほらね。
「これでフレイムウィングマンの融合を解除し、フェザーマンとバーストレディを共に守備表示で特殊召喚する!」
「……収縮は対象を失ったので不発だ」
「やるな大地。いきなりフレイムウィングマンがやられる所だったぜ!」
「お前こそよく躱したな。それでこそ闘いがいがあるぜ!」
あらあら、仲がいいことね。まだ出会って少ししか経ってないのに、あんなに笑い合って、やっぱり男同士って仲良くなりやすいのかしら?
それにしてもあの十代とかいう坊やは本当に引きが強いみたいね。大地の坊やが収縮を持っていたから防げたけど、もしなかったら今頃大地の坊やは負けていたわね。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド! さあ大地、お前のターンだ!」
これで十代の坊やの手札は0枚。戦況は大地の坊やが有利だけど、あの十代の坊やの引きの強さを見ると、1枚ドローしただけで、戦況を引っくり返すようなマネを平気でしそうだわ。
大地の坊やはこのターンでどれだけ十代の坊やにダメージを与えられるかが、この決闘の勝敗の分かれ目になりそうね。
「俺のターンドロー! ふ、きたか!」
あら、大地の坊やったら嬉しそうに笑っちゃって、そんなにいいカードでも引いたのかしら?
「俺の場の永続魔法凡骨の意地の効果発動! ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった時、ドローカードを相手に見せ、俺は更にもう一枚ドロー出来る! 俺が引いたのは--通常モンスター暗黒騎士ガイア!」
宣言しながら、大地はドローしたカードを十代に見せる。あらあら、子供みたいに喜んじゃって、無邪気な坊やね。
「うお! それって遊戯さんが使ったっていう伝説のカードじゃん! いいな! 超かっこいいじゃん!!」
「だろだろ!」
仲がいいのは別にいいんだけど、程々にしてもらいたいものね。私の隣にいるもう1人の幼馴染が若干嫉妬をし始めたわよ? 恋する女は想い人が関わると些細なことで嫉妬をしてしまうらしいから大変ね。
……もっとも私もあんまり人のこと言えないだろうけど。
「さあて、凡骨の意地の効果でドローするぜ!」
凡骨の意地。改めて思うけど強いカードよね。効果が発動するのがドローフェイズだから、もし追加ドローしたカードが通常モンスターだったら……
「よっしゃ! 俺の引いたカードはカース・オブ・ドラゴン! よって更に追加ドローが出来るぜ!」
……こうなるのよね。
「ドロー! 引いたカードは2枚目のカース・オブ・ドラゴン! よって追加ドローだ!」
……それにしても、
「ドロー! 引いたカードは2枚目の暗黒騎士ガイア! 追加ドロー!」
前から思っていたけど……
「ドロー! 引いたカードは3枚目のカース・オブ・ドラゴン! 追加ドロー!!」
大地の坊やの引きの強さは----
「ドロー! 引いたカードは3枚目の暗黒騎士ガイア! 追加ぁドローぉ!!!」
ちょっと引くぐらい異常ね。呪いレベルで攻撃力2000の魔法使いを引くどこかの先生にも、その運を分けてあげて欲しいわ。
……まあ、あれがなかったら先生じゃない感じがするし。やっぱりあの人は今のままでいい気もする。バニラが来て困る先生の顔は可愛いし。
「ドロー! ちぇ、終了だぜ」
あら、やっと大地の坊やのドローフェイズが終了したようね。随分不満そうだけど、このドローフェイズで6枚のカードを補充出来たのだから十分だと思うのは、私だけかしら?
「すげえな大地! 一体どんな戦術を見せてくれるんだ?」
「へへ、目には目を。歯には歯をって奴だぜ」
「え? どういうことだ?」
目には目を、歯には歯を……なる程。そういうことか。
「俺は手札から融合を発動!」
融合には融合をぶつけるつもりなのね。
「手札の暗黒騎士ガイアとカース・オブ・ドラゴンで手札融合!!」
「騎士と竜が交わる時、最強の伝説は甦る!」
「現れろ俺の魂の最強カード! 竜騎士ガイア!!」
竜に乗った暗黒騎士がフィールドに現れる。
……攻撃力と言い、竜騎士と言い、乗っただけ融合と言い、どこかのバカ娘の進化した姿が思い浮かんだけど、気のせいね。入学初日で疲れてるんだわ私。
「お前も融合使いか! いいね! 燃えてきたぜ!!」
「おいおい十代。何を勘違いしている? 俺の融合はまだ終わってないぜ!」
言いながら大地の坊やは再び決闘盤に1枚のカードを差しこんだ。
「マジックカード融合発動!」
「2枚目かよ!?」
「俺が融合素材にするのは手札の暗黒騎士とカース・オブ・ドラゴン! 再びフィールドに現れろ竜騎士ガイア!!」
2体目のガイア。ここまで来ると素直に尊敬するわ。
「そして俺は手札から融合回収を発動!」
え?
「墓地の暗黒騎士ガイアと融合を回収し、融合を発動! 手札の暗黒騎士ガイアとカース・オブ・ドラゴンを融合素材にしーーーー」
「竜騎士ガイアを融合召喚!!」
……
ここまで来ると、素直に引くわ。
しかも、大地の坊やの場にはまだ熟練の青魔導師がいたわよね。それも魔力カウンターがフルに溜まった子が。
「そして俺は熟練の青魔導師をリリースし、デッキから暗黒騎士ガイアモンスターを特殊召喚する!」
バニラのガイアはもうデッキにはいないから、出せるのは必然的に、あれしかないわね。
「来い! 疾風の暗黒騎士ガイア!」
暗黒騎士ガイアのリメイクカード。手札が1枚だけの時、リリースなしで召喚出来るモンスターね。
「凄いです大地!」
確かにこれは壮観ね。フィールドに竜騎士が3体と、疾風の暗黒騎士が1体。あまりお目にかかれるものじゃないわ。
「いいぜ!マジでワクワクして来たぜ大地!」
「行くぞ十代。ここからが本当の闘いだ!!」
盛り上がって来たわね。いつのまにか私達以外の観戦者も集まって来たし。
これは想像以上に楽しめーーーー
瞬間。私の心臓がドクンと鼓動した。
(これはーーーー)
身体が震える。
精霊としての自分が『何か』に恐怖と畏怖を感じているのが分かる。
吐き気すら感じるその『何か』はこの島ではなく、遠く離れた場所にいることが分かった。
そのことに安心を覚えた私だったが、その安心はすぐに絶望へと変わる。
『何か』の近くに私のよく知るーーーー否、よく知りたいと思っている人の気配があったからだ。
間違いない。この気配は先生だ。あの人が『何か』の近くにいる。
いや。もう『何か』と考えて、分かっていることを誤魔化すのはよそう。このような気配のする存在のことを私はお父様に以前教えて貰っていた。
『いいか。雪乃。我等精霊の中でも最高位の存在がいる。それはーーーー』
(先生!!)
この気配は精霊の中でも最高位の精霊……全てのモンスターの頂点に君臨する絶対的な存在。
『神と呼ばれるものたちだ』
神と呼ばれるモンスターのものだ。