遊戯王 Black seeker   作:トキノ アユム

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銀の影との決闘1

「先攻は私ーーーードロー」

先攻は少女にとられた。そのこと自体はいい。だが問題なのは、少女が私の心を読めることだ。

(かなり厳しい勝負になるのは確実ね)

私の戦術は少女に筒抜けだと考えたほうがいい。

となると、長期戦になればなるほど不利になる。

だが幸いにも手札には青天の霹靂と天魔神ノーレラスがある。

これで相手の手札を潰せばまだ自分にも勝機が……

「私は手札から魔法カード異次元の指名者を発動する」

「なんですって!?」

異次元の指名者ーーー確かあのカードは!

「このカードは発動時にカード名を1つ宣言する、そして相手の手札を確認し、その宣言したカードが相手の手札にあるならそのカードを1枚ゲームから除害する。もしなかったら私の手札1枚をランダムに除外する」

「……」

正直専用のデッキを組まない限りはあまりデッキに入れられにくいカードだ。

本来あの手のカードはこちらの手札を判明させるカードを使用した後に使用するのが定石(セオリー)だが……

「私は天魔神ノーレラスを宣言する」

「! 正解よ……」

 あの少女にはそれが必要ない。百発百中でこちらの手札を当ててくる。

 私は手札を公開し、天魔神ノーレラスを除外した。

「私はモンスターをセットしてターンエンド」

「私のターン。ドロー」

 ……伏せカードはなし。ここで攻めるしかないわ。

「私は手札からマンジュ・ゴッドを召喚するわ」

 マンジュ・ゴッド攻/守 1400/600

「その召喚時の効果でデッキから儀式モンスターか、儀式魔法を手札に加える。私は儀式魔法祝祷の聖歌を手札に加える」

「サフィラ……精霊としてのあなたを呼び出す儀式魔法」

「……やっぱり知ってるのね」

 驚きはしない。彼女がシュヴァルツディスクと何らかの関わりがあるのだとすれば、私のことについて知っていても不思議はない。

「他にも知っている。あなたが本当はゾークの娘などではなく、彼に拾われた養子だということも」

「!?」

 不覚にも私は動揺してしまった。知り得る筈のないことだ。そのことは上位の儀式モンスター達か、ルインしか知らないはず。

「あなたは本当はただの人間だった。でもある日本当の両親と乗った車で……」

「黙りなさい!!」

 『あの時』のことは思い出したくない。あの少女を喋らせてはいけない。

「マンジュ・ゴッドであなたのセットモンスターに攻撃よ!」

「セットしていたモンスターはゴブリンゾンビ。守備力は1050従って破壊される。でもゴブリンゾンビはフィールドから墓地に送られた時、デッキから守備力1200以下のアンデット族モンスターを手札に加えることが出来る---この効果で私は守備力0のアンデット族モンスター ゾンビ・マスターを手札に加える」

「……私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

「私のターン。ドロー。私は手札からゾンビ・マスターを召喚し、そのモンスター効果を使用する。1ターンに1度手札からモンスターを墓地に送ることで自分または相手の墓地からレベル4以下のアンデット族モンスターを特殊召喚出来る……私は手札から馬頭鬼を墓地に送り、墓地のゴブリンゾンビを蘇生する」

「く……」

 一気にモンスターを展開され始めた。しかも少女が墓地に送ったのは馬頭鬼……あのモンスターは確か墓地から除外することで墓地のアンデットを蘇生させる効果を持っていたはずだ。

「そして私は手札から融合を発動する」

「融合ですって!?」

 まさか……アンデット同士を融合素材にしようと言うの? そんな融合モンスター聞いたこともない。

「私の場にいるゾンビ・マスターとゴブリンゾンビで融合……」

 フィールドにいる2体のアンデットが結合し、肉塊の門が出来上がった。あまりのおぞましさに気分が悪くなってくる。

 

 

 

 

「満たされぬ魂交わりし時、冥府の門は開かれる……幽合召喚」

 

 

 

 

 肉塊の門が開く。その中から私を覗くのは

『BAOOOOOOOOOOOO!!!』

「!!」

 一体のドラゴンだった。

 

 

 

 

「全ての嘆きを体現せよ。冥界竜ドラゴネクロ」

 

 

 

 

 門が開くと、そのドラゴンはフィールドに解き放たれた。

『OOOOOOOOOOOOO!!』

 歓喜。そう竜は歓喜していた。現世に現れたことに。

 

 

 そして---

 

 

 私を闇に堕とせることに……

 

 

 

 

「っ!」

 今、私はなにを考えた? 今直感であの竜から何を感じた? 

「融合素材に使ったゴブリン・ゾンビの効果でデッキから冥界騎士トリスタンを手札に加える……そしてバトル。ドラゴネクロでマンジュ・ゴッドに攻撃」

「く……」

 相手の攻撃力は3000! でもそれ以上に、精霊としての面の私があのモンスターの攻撃を通してはいけないと訴えている!

「トラップ発動! ドレインシールド! これであなたのモンスターの攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分だけ私のライフを回復するわ!!」

 雪乃LP4000→7000

「そう……」

 攻撃を防がれたというのに、特に驚いた様子もない。いや、それもそうか。私の思考を読んだ彼女にとっておそらくこれはわかっていたことだ。

 だがとなると、1つ分からないことがある。

(あの子の墓地には馬頭鬼がいる……)

 そのモンスター効果を使い、攻撃力1800のゾンビ・マスターを復活させれば、私のマンジュ・ゴッドを破壊出来たばかりか、上手く行けばドレインシールドすら回避出来たかもしれない。

 だというのに何故?

「メインフェイズ2……私は手札より魔法カード闇の指名者を発動する」

「闇の指名者!?」

 私は今度は声に出して驚いてしまった。

 闇の指名者。あれは先程彼女が使った異次元の指名者よりもデッキの採用率が低いカード……何故ならあのカードは---

「このカードの効果により私はカード名を1つ宣言し、そのカードがあなたのデッキにある時、あなたはそのカードを手札に加えなければならない」

 そう。このカード普通に使用してしまえば、大きなディスクアドバンテージを相手に与えてしまうカード。なので何かコンボを狙っていると考えるべきなのだが……

「私が宣言するのはもう1人のあなた……竜姫神サフィラ」

「……やはり()なのね」

 私の直感が言っている。彼女は()に何かをしようとしていると。

「デッキにはある……その効果に従って手札に加えるわ」

「この場合、あなたのデッキを私は確認しなければならないけど、省略してくれていい。必要ないから」

「そう……分かったわ」

 私の思考を読めるということは、私の手札だけを把握しているわけではない。私のデッキの中も彼女は完全に把握しているのだ。

「私はカードを一枚伏せて、ターンを終了」

「私のターン---ドロー!」

 だがこれはチャンスだ。マンジュ・ゴッドを残してもらったことで私を召喚するための準備が出来た。

「私は手札からセンジュ・ゴットを召喚するわ。センジュ・ゴットの召喚時効果! デッキから儀式モンスター竜姫神サフィラを手札に加える!」

 これでいい。これで手札にサフィラは2枚後は手札にいる片方を儀式の生贄にすれば()を……

(……いや、ダメだわ!)

 明らかに彼女は()を召喚させようとしている。

 これは罠だ。彼女の思惑に乗って()を召喚すればきっと何か良くないことが起こる。

(……でも)

 相手の場には攻撃力3000のモンスターがいる。このまま()を召喚せずにターンを渡してしまえば、たとえ私のLPが7000あったとしても、私が劣勢になることは明白だ。

(ならば……) 

 

 

 召喚し、相手のしかけた罠ごと食い破るしかない。

 

 

「うふふ……」

 なんだ難しく考える必要など、どこにもないではないか。

 

 

 

 

「手札から儀式魔法祝祷の聖歌を発動する!」

 

 

 

 

(そう……なんてことはなかった)

 

 

 

 

「私は手札にある竜姫神サフィラを生贄にし、()を儀式召喚するわ!」

 

 

 

 

 いつもと同じだ……

 

 

 

 

「舞台の幕は上がった。光輝くステージに、我が魂は顕現する!」

 

 

 

 

「儀式召喚!」

 

 

 

 

 私は……私と()の力を信じ、闘うしか道はないのだ

 

 

 

 

「竜姫神サフィラ!!」

 

 

 

 

 たった『1人』で……

 

 

 

 




ドラゴネクロさんの幽合は凄い好きな表現なので、どうしても外せませんでした・・・

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