遊戯王 Black seeker   作:トキノ アユム

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GX就職準備編第4話『闇に堕ちる竜の姫神』
白の部屋


『マスター!?』

倒れるマスターの身体。私は残っている力を使い実体化し、その身体を抱きとめました。

冷たくなっていくマスターの身体に、私はサーっと血の気が引きます。

はやく治療しないと、マスターの命が危ない!!

「おのれ、この儂が、邪神たるこの儂が! こんなこんな人間などに負けるとはーーー」

「!? あなた、まだ動けて!?」

見ると、マスターに倒されたレシェフがボロボロの身体でありながらも立ち上がり、こちらに向かってきます。

「この儂が! この儂がぁ!」

ぎゅっとマスターの身体を強く抱きしめる。ここでマスターを守れるのは私だけです。

「来ないで下さい! それ以上近づくなら、たとえ邪神だとしても許しません!!」

「貴様ごときが儂を止められると思ーーー!!」

「そこまでだレシェフ。それ以上は我が許さん」

「ゾーク!?」

近づいてきたレシェフに立ちふさがるように雪乃さんのお父さんのゾークさんが現れました。

「どけゾーク! 今儂は確信してる! その男は危険だ! 今殺さなければ、いずれ確実に我等の脅威となる!!」

「だとしてもお前にその資格はない。レシェフよ。お前は決闘に敗れたのだ」

「ぐっ!」

「これ以上やると言うのなら我が相手になろう」

「ーーーーーー分かった。ひとまずは貴様の言う通りにしてやる」

「感謝する」

ぴしりと、レシェフが作っていた世界が崩壊する。まばたきの間には私達は元の雪乃さんの家に戻って来ていました。

「先生!」

「黒乃様!」

雪乃さんルインさんが駆け寄り、マスターの治療を始めす。

顔色が良くなっていくマスターに私はほっと息をつきました。

「儂は帰るーーー延期の件は了承してやる」

「そうかーーー感謝する」

人間の姿になったレシェフはそれだけを告げると、部屋から出ていきました。

「ーーーさて」

と、何故かゾークさんが私に向き直りました。め、面と向かうとやっぱり迫力が凄いですね。ちょっと怖いです。

「こうして会うのは古代エジプト以来か? 我はあのゾークの欠片でしかないが、ひさしぶりだな。マジシャンの娘よ」

「え、えと、そのーーー」

まずいです。どうやら私の古い知り合いのようですが、これは弱りました。いやでもここは失礼だから正直に謝ったほうがいいですよね?

「すいません。私、ちょっと昔のことは覚えてなくてーーーー」

「む? そうなのか?」

「はい。世界を移動しすぎたせいか、昔の記憶も一部以外は全部忘れちゃっててーーー」

「……世界を移動だと?」

「あ!」

しまった! 口が滑りました!! 慌てて口を塞ぎますが、時既に遅しです。

「少し聞きたいことがある。いいな?」

「は、はいー」

有無を言わせぬ迫力に、私はこくこくと頷くことしか出来ませんでした。

やっぱりゾークさん怖すぎです!!

 

 

 

 

(ーーーなんだここは?)

気を失ったはずの俺は奇妙な光景を見ていた。

 白一色の奇妙な部屋に俺と1人の少女がいる。

 銀髪をツインテールにした人形のような、作り物めいた美しさを持つ少女だ。

どこかで見たことがあるが、頭が上手く働いていないのか、よく思い出せない。

特に反応もしてこない所を見ると、どうやら俺はあの少女には認識されていないようだ。

 少女は感情が篭らない目で虚空を見つめると、ぽつりと呟いた。

「……マスター。世界のターニングポイントを発見しました」

 答えるものはいない。だが少女はこくりと頷いた。

「はい。対象の監視を始める前に彼の性能を調査します。テスト用のデッキは何になされますか?」

 しばしの沈黙の後、少女は首を傾げる。

「コードネクロス? よろしいのですか? あれはテスト用などの性能ではありませんが? ……いえ、分かりました。テストにはコードネクロスを使用します」

 微笑みというよりかは、ほんの少しだけ頬の筋肉を動かしたと言う方が正しい表情を浮かべると、小さく一礼した。

 

 

 

 

「それではマスター。レイン恵―――行ってきます」

 

 

 

 

 その声が部屋に響いた頃には少女の姿はもうなかった。

 

 

(なんだ、何が起こってる?)

この光景は一体何を意味するのか、まったく分からない。ただ1つだけ分かるとすればーーー

「お前が俺にこの光景を見せているんだな?」

俺の背後。少し離れた位置に、一人だけ人間がいた。薄汚れた赤いローブを着た人間。顔は能面のような仮面をつけているせいで分からない。

「何が目的だ?」

「……」

問いかけると仮面は無言で俺に2枚のカード手裏剣を投げてきやがった。

「っ!?」

突然のことに驚くが、ゾークの所での経験が生きた。

脳天めがけて投げられたカードをキャッチする。

「お前、危ないだろうが!?」

怒鳴るが、仮面は特になんの反応も返さず、踵を返した。

「ちょ、待てお前!?」

駆け寄ろうとしたその時だった。

俺がいる白の部屋が崩壊を始めたのは。

「おあっ!?」

床がなくなり俺はそのまま闇に落ちていく。

薄れゆく意識の中、俺は確かに聞いたのだ。

 

 

 

 

 

カードがアンロックされました。

 

 

 

 

という忌々しいシュヴァルツディスクの声を。

 


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