デュエルアカデミア……GXの舞台となるその学校の試験会場は海馬コーポレーションの建物で行われることになっていた。
「ほら、着いたぞ十代」
「サンキュー! あんたのおかげで助かったぜ!!」
頭を下げてくる十代に俺は気にするなと、手を振った。
(俺の目的地もどうやら、ここだったみたいだしな……)
まったく一時はどうなるかと思ったが、十代と会うことでようやく前に進み始めたようだ。
「でも、あんたどうしてあんな道知ってたんだ?」
「ああ、あの裏道のことか?」
しかし、説明を求められても困る。ここに来るまでの道……原作の十代が通ったようなサバイバル感満載の道ではないまっとうな裏道を知っていたのは、俺ではない。
『クリクリ~』
そう。この道を知っていたのは、意外にも今も十代の背中を追っている『ハネクリボー』の精霊だった。
『ハネクリボーは、可愛い顔して凄いんですよ』
えっへんと、なぜか自分のことのようにでかい胸を張るバカ娘。うん、ハネクリボーはすごいのは知ってるさ。なんてたって主人公の相棒だし。
だけどさ……
(お前、いくらなんでもダメすぎるだろ……)
『はう!?』
指摘を受け、得意そうな顔から一転泣きそうな顔になったバカ娘。だが可哀想なんてこれっぽちも思わんぞ。
(道を忘れるのも有り得ない、それ以上にハネクリボーを見たときに『ハネクリボー。助けてよ~~~!』っていう泣きつくのはなー)
『あうう……』
(仮にも先輩だろ? それなのに、後輩のハネクリボーに泣きつくなんて、いやはや情けないを通り過ぎて滑稽だな)
『生まれてきてごめんなさい~~~!!』
お。しくしく泣き始めた。
「お~い。どうしたんだ急に何もないところを見たりして」
そういえば、十代と話している最中だったな。バカ娘で遊ぶのはこれぐらいにしよう。
「いや、なんでもない。それより十代。はやく受け付けに行ったほうがいいんじゃないか?」
「おう。そうだったぜ! ありがとな! えーと……」
「あー。黒乃だ。黒崎 黒乃」
本当は違うのだがもうこれでいいやと、バカ娘にも名乗った名前を言う。
「おうサンキューな。黒乃さん!」
手を振りながら、受付にダッシュで行く十代。なんというか、台風みたいな奴だな。
「受験番号110番。遊城 十代!! セーフだよね!」
……さて、十代のファースト名台詞を聞けたことだし、そろそろ俺も行くとするか。
「さて、君は?」
「黒崎 黒乃だ」
「え、君が、いやあなたがあの!?」
俺の名を聞いた途端、受付の男が驚いていた。
「どうぞこちらです!」
余裕で十ぐらい歳が離れているであろう俺に、頭をペコペコ下げまくるオッサン。
なんだ? 一体どうなっている?
(おい、バカ娘。なんだこれは?)
『え、ああ、実はですねーーーマスター。ここでのマスターのポジションはーーー』
「黒乃先生!!」
『生徒ではなく、教師なんですよ』
ーーーこうして俺は、GXの第一話に関わることになった。
生徒ではなく、教師として。
次回からデュエルです