遊戯王 Black seeker   作:トキノ アユム

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お仕置き決闘2

「私はあなたを軽蔑します!」

 初対面でいきなりそんなこと言われると、腹立つを通り越して尊敬の念を抱くな。流石は委員長。くそ真面目だ。

「いくらまだ違うとはいえ、あなたは教師になるのでしょう!! なのに、生徒に手を出すなんて!」

 おのれマスメディア! そんなことまで、ばらしたのか! お前ら、俺の元の世界なら確実に訴えてるぞ!人の生活を無茶苦茶にしやがって!

「恥を知りなさい! いくら雪乃が許しても、幼馴染みである私は許しません!!」

 勝手にヒートアップしてるな委員長。台詞を聞く限り、全部雪乃のことを思っての発言。本当に仲がいいんだろうな。

 TFでは水と油のように相性が悪い二人だったが、この世界ではちゃんと幼馴染みやってるみたいだな。

『さ、流石に言い過ぎですあの人! ていうか、マスターは何もしてません!! 全部勘違いです!!』

(やめろバニラ)

『でも!』

 今何を言っても無駄だ。真面目ということは、裏を返せば、どこまでも真っ直ぐで柔軟性がない思考を持つという面を持つからな。

(ここは無難な会話で、穏便に事を済ませるのが得策だ)

『……分かりました。マスターがそう言うなら』

 よし。さて、何を話そうか、無難な会話……そうだ! ここは雪乃と幼馴染みと言っていたことを利用して、3人の関係について、聞いてみよう。

 上手く行けば、話の論点をずらせることが出来るかもしれない。

 

 

 

 

「黙れ貧乳」

 

 

 

 

 しかし、口から出たのはまったく別の言葉だった。

『マ、マスター!? 事を穏便に済ませるんじゃなかったんですか!?』

(あ、しまった。つい……)

 思ったよりもイライラしていたようだ。思わず正直に思ったことを言ってしまった。反省。反省。

「ひ、貧……乳」

 しかし、効果は絶大だったようで、麗華は両手で胸を押さえながら、がっくりと膝をつく。

 そういえば、貧乳ってTFでも委員長に対しては禁句だったな。

「うふふ。流石は先生。一撃で麗華の心を折るなんて、そうそう出来ることじゃないわ」

「どうも」

 誉められても全然嬉しくないけどな。

「おい、黒崎!」

 と、何故か大地が俺を睨んでくる。

「俺の幼馴染みをバカにするのは許さないぜ!」

 おお。一昔前の熱血主人公っぽいセリフだな。いいね。そのノリは嫌いじゃない。

「事実を指摘しただけだが? ああ、それとも何か? お前ら付き合ってるのか?」

「いいや! 麗花はただの幼馴染みだ!」

「ただの幼馴染み……」

『あわわ!? れいかさんがうずくまってしまいました!?』

 ……おい。まさかこいつらって――

「ちなみに、雪乃は?」

「雪乃は、その――ただの、幼馴染みだ」

 頬を赤く染めながら、答える大地。

 明らかに委員長の時と反応が違うな。

 なるほど。大体分かった。

 ここはもう話の矛先を変えとこう。

「あー。それで? お前のターンじゃなかったか大地? 」

「おっと。そうだった」

 少し話を変えただけで大地は麗花の存在を忘れてしまったみたいだ。扱いやすすぎるなあいつ。

「俺のターン。ドロー!」

 さて、ようやく決闘が再開されたが、大地が立たされている状況は結構悪い。

 なにせ、ドローしても手札は僅か1枚。その1枚でこの状況をひっくり返すのはかなり困難だ。

「いよっしゃー!!」

 と思っていたが、ドローしたカードを確認した大地はガッツポーズを取った。

 ? そんなにいいカードを引いたのか?

「雪乃! この決闘。俺の勝ちだぜ!」

『マスター勝利宣言です!』

(の、ようだな……)

 さて、何を出してくる?

「俺の引いたカードは疾風の暗黒騎士ガイア! こいつは手札がこのカードだけの時、生け贄なしで召喚できる! 来いガイア!」

「ずいぶんいい引きね」

 雪乃も感心したようだ。かく言う俺も驚いている。この状況で疾風ガイアを引くとは……あいつ、案外強い決闘者なのかもな。

『あれ? マスター。雪乃さんのライフは3000です。ガイアの攻撃力は2300しかありません……これじゃあ、雪乃さんは倒せませんよね?』

(……バニラ。次のお前のセリフは『ぼ、墓地からトラップを発動ですか!?』……だ)

 大地の墓地にはあのカードが落ちてるからな――

「更に俺は墓地のスキルサクセサーの効果を発動するぜ!!」

『ぼ、墓地からトラップを発動ですか!? はっ!』

 冗談半分で言ったのに、本当に言いやがったよ。このバカ娘。

「スキルサクセサーは俺のフィールドのモンスターを1体指定して、そのモンスターの攻撃力。800ポイント上げる! これで疾風の暗黒騎士ガイアの攻撃力は3100だ!!」

「あらあら――最初に伏せてたカードかしら?」

「その通りだ! これで俺の勝ちだ!」

 おお。まさかの事態だな。本当に運がいい奴だな大地は。

「ガイアでダイレクトアタック!!」

『これで雪乃さんは!!』

「甘いな」

『え?』

 

 

 だが運だけではどうにもならないことだってある。

 

 

 

「なにぃ!?」

 攻撃をしかけた疾風の暗黒騎士。

 だがその攻撃は雪乃に届くことはなかった。

「うふふ。おしかったわね坊や。私は墓地から超電磁タートルの効果を発動したわ」

 突如として現れた亀の電磁フィールドによって遮られたためだ。

「相手のターンのバトルフェイズ中に墓地に存在するこのカードをゲームから除外することで、デュエル中に一度だけバトルフェイズを終了させることが出来る」

「くそ!」

(……決着は見えたな)

『え、でもマスター。まだ勝負はついていませんよ?』

(ああ。だが、はっきり言って力量が違いすぎる)

 あの大地という奴は運はいいが、まだまだプレイングが甘い。

 超電磁タートルが雪乃の墓地にはあったことを見逃しただけでなく、スキルサクセサーの発動タイミングもあそこで使うべきではなかった。

 大地という奴は、多分テンションが上がると周りが見えなくなるタイプだな。

 初歩的なミスが多すぎる。

「さて、それじゃあこの瞬間、永続魔法 星者の神喰の効果が発動するわ。このカードは私の墓地のモンスターが一体のみ除外された時、デッキから除外されたモンスター以外の属性のモンスターを墓地に送るわ」

『……随分地味な効果ですねマスター』

(お前よりは百倍マシだバカ娘)

『ひどいこと言われました!?』 

 それに、あのカードはその地味さがいいんだよ。それが分からないとは、やはりバカ娘はバカ娘だな……

「除外されたタートルの属性は光――よって私はデッキから闇属性の儀式魔神デモリッシャーを墓地に送るわ」

 ……雪乃の奴、完全に殺す気満々だな。

「俺はターンエンドだ」

「私のターンね」

「へ! だけど、カード1枚で俺の疾風の暗黒騎士を倒せるのか雪乃!」

 大地よ。ダメだそれは死亡フラグだ。それに疾風さんを突破するカードは結構あるぞ。

「お前は絶対絶命なんだよ。雪乃!!」

 もうやめろ。誰かあいつの口を閉じてやってくれ。自分でどんどん死ぬ確率を高めてやがる。それに相手は雪乃だぞ? そんな煽るようなことは言ったら……

「うふふ。このスリル……クセになりそう」

 ほら見ろ。やる気満々じゃねえか。

 ん? 待てよさっきの台詞は……まさかあいつ!

 聞き覚えのある台詞に、ぎょっとして雪乃を見ると、俺の予想通り、

 

 

 

 

 奴は弾けた。

 

 

 

 

 地を蹴り、雪乃は飛ぶ。

『飛んだ!?』

 バニラが驚く。

「「おお!!」」

 周囲の観客も驚く。

「おーい」

 俺は呆れる。 

 

 

 全ての人間の注目を集める中、雪乃は空中でバク転を取りながら---

 

 

「ドロー!!」

 運命のカードをドローした。

 

 

 …………

 

 

 

 

 もうつっこんでもいいよな?

 

 

 

 

 

「意味分からんわ!!!!」

「? どうしたの先生?」

 難なく地面に着地しながら、雪乃は首を傾げる。

「なんでわざわざシャンプする必要がある!?」

「気合を入れるためよ」

「どんな気合の入れ方だよ! てか、お前下スカートだろ!? そんな風にジャンプしたら色々アウトじゃねえのか!?」

「ファンサービスよ」

「フォー!!」

 意味不明すぎて思わず奇声を上げてしまう!!

 周りが奇怪な者を見る目で俺を見るが、構ってられるか!!

「安心して先生。決して下着が見えないように飛んでるから大丈夫よ!」

「今明かされる衝撃の真実!? てか、決して下着が見えないバク転ってどんな飛び方だよ!?」

「うふふ……ひ・み・つ♥」

「ぐがああああああ!! 腹立つぅぅぅぅ!!!」

 唇に人差し指を立てウインクをする雪乃に、俺の中の怒りの臨界点が超える。

 今はっきりと気付いた。俺は雪乃が苦手だ。天敵と言ってもいいほどに。

「さて、先生の可愛い所を見た所で、そろそろ私を呼ぼうかしら……私は手札から今引いたカード……儀式の準備を発動するわ」

 引いたカードは儀式の準備か……

 って、おい。まさか……

「その効果で、私はデッキから儀式モンスター竜姫神サフィラと、その後に墓地の儀式魔法 祝祷の聖歌を手札に加えるわ」

『あれは、雪乃さん自身のカード!……でも儀式モンスターを召喚するだけの生贄がいませんねマスター』

(いや、それは違う……)

『え?』

 既に雪乃は生贄を準備している。

「手札から儀式魔法 祝祷の聖歌を発動するわ」

 フィールドが変化。いつの間にか教会のような建物の中に変化していた。

「!? でも生贄なんてどこにも……」

「うふふ。甘いわ大地の坊や」

 戸惑う大地に、雪乃は微笑む。

「私の墓地には儀式魔人リリーサーと、さっき墓地に送った儀式魔人デモリッシャーがいる。レベル3のこの子達は、儀式召喚を行う場合、その儀式召喚に必要なレベル分のモンスター1体として、自分の墓地のこのカードをゲームから除外できるのよ」

『ま、また墓地からですか!?』

 そしてサフィラのレベルは6……召喚条件は満たしている。

 教会の窓……ステンドグラスに2体の儀式魔人の姿が写る。

 そして、そこから入る光が教会の中心で交わるとき、1つの魔法陣が生まれる。

「舞台の幕は上がった。光輝くステージに、我が魂は顕現する!」

 

 

「儀式召喚」

 そこから現れたのは、

『綺麗……です』

 美しすぎるドラゴンだった。

 全てのモンスターが惹かれる至高のモンスター。

 

 

「竜姫神サフィラ」

 

 

 観客全て……いや、対戦相手ですら魅了する光の竜を召喚した雪乃は妖しく微笑んだ。

「さあ、お楽しみはこれからよ」




お楽しみはこれからだ!!
最近は遊矢君がとかニューネオなんとかさんが言ってるようだけど、ユキノンがそれより先にTFで言ってたことを作者は忘れない。

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