ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~ 作:生まれ変わった人
何だか中途半端でストップさせていましたが、久しぶりに更新します!
久しぶりで書き方とか変わってると思いますが、ご了承ください!
ザトゥージは戦慄していた。目の前の起こった風景に悪寒が止まらなかった。
(まさか……! まずいぜ!)
急に見えない力に吹き飛ばされ、急いで戻ってきたら事態は思わぬ方向へ進んでいた。カリフが突如現れた謎の男によってエネルギーの波で吹き飛ばされた。
男から発せられたエネルギー波の威力で森の広大な大地が乱暴に抉られている。その威力にザトゥージは恐怖しか湧かなかった。
(地平線の向こうまで抉れてる! あんなの上級悪魔でも出せねー!)
歯がガチガチとなって震えるのが分かる。だけどここにいたらいずれ見つかってしまう。送ってもらった助っ人も殺られた以上、恐怖を抑えてやるしかない。
(と、とにかく、ここから誰かに連絡を……!)
恐怖で固まる身体を無理させながら、ザトゥージは茂みの中に潜みながらターレスから慎重に、されど素早く離れるのだった。
◆
森に紛れて走り去っていくザトゥージ。
その姿は森に隠されて見えないはずだが、その姿を上空から見送るターレス。
「そういえば一匹隠れていたな」
スカウターが壊される前に反撃してきたカリフの他にももう一つの反応を探知されていた。
実際には感じてはいないが、おおよそ来た道を戻りに行ったのだろう、そんな予想はできていた。
(このまま潰してやろうか……)
わざわざネズミを見つけて始末するより森ごと焼き払うか、そう思いながらエネルギー弾を手に集中させる。
ある程度力が溜まったことを確認し、放とうとした時、ふと考え直す。
(このまま泳がせるか?)
自分たちの“組織”は未だに表舞台には出ておらず、他の者にバレているとは思えない。
今では“禍の団”とやらが隠れ蓑になっている。
一応、万全の布陣は強いているのだが、結局のところは可能性での話でしかない。
既に勘のいい者が探るためだけにここに来ただけという可能性もある。
それはつまり魔王側にて違和感程度に察知されたと見てもいいだろう。
それなら、逃がしたネズミは次に仲間を呼ぶ可能性が高い。
全員を連れて来た所を一気に潰せばいいだけのこと。
どの道、ばれる可能性を留意しての作戦だったのだ、少々の退屈しのぎも問題はないと、ターレスは判断した。
(どうせ最後には全員、“俺たち”に首を垂れることになるのだからな)
手に集めたエネルギーを霧散させてザトゥージを見送る。
まるでミツバチの巣を突き止め、最後に蜂蜜を捕獲しようとする狩人のように。
ターレスは獰猛に、それでいて愉快そうに口角を吊り上げた。
「今夜は退屈せずに済みそうだ」
愉快そうな声音を響かせ、狩人はザトゥージと同じ方向へ飛んで行った。
◆
駒王学園のオカルト研究部を月光が照らす。
比較的新人であるイッセーたちでも人間の望みを叶え、契約する業務には慣れてきた。
未だにイッセーには変な契約者からお呼びがかかるという悩みもある。
時代錯誤の鎧武者な内気な女性と西洋の鎧騎士のカップル、見た目は新生物と恐れられている強面でありながら内面は超乙女な魔法少女の女性?
思い出したらキリがない、そう思い至るイッセーは本日もまたそういう類の契約者に当たってしまったのだろう。
「いやー、終わったぁ!」
「お疲れイッセー。皆もよく頑張ってくれたわ」
主からの労いに皆の表情が和らぐ。
特にイッセーは敬愛する主であると同時に想い人でもあるリアスからの優しさに感無量とさえ思える。
始終、変な契約者に翻弄されていた疲れも吹っ飛ぶものだと。
「随分と慣れたよね。最初の頃は凄く苦労していたのにね」
木場が懐かしむように過去のイッセーを引き合いに出す。
イッセーは春の時よりも格段に強くなった、そして頼もしくもなった。
悪魔として、下僕として、そういうつもりで言ったのだが、直後にイッセーが恨めしそうに見せる表情に動揺した。
「な、なんだい?」
「別に~? 綺麗なお姉さんを契約者に持ったり、俺よりも強かった奴に言われてもって思っただけだよ」
「そんな意地悪言わないでよ……」
イッセーには別の意味で捉えられてしまったことに気付き、苦笑する。
「それにほら、元は一般人だったイッセーくんだって今では冥界でも一目置かれるほどに成長したんだし。過去は過去だよ」
「でもよお、そのきっかけになった合宿は酷かったんだぞ? 俺だけ山の中で勝ち目のない戦いを繰り返してたんだぞ!」
「それは、まぁ……」
「ちくしょう! 分かってる、分かってるんだけどよぉ!」
本人は気付いていないだろうが、イッセーの行動力と我慢強さ、いわゆる根性は充分に眷属たちに良い影響を及ぼしている。
そのおかげで眷属たちのテンションも高くあることができる。
地力が弱かった彼がメキメキと強くなる姿は自分たちのいい発破になったとも思っている。
そのために厳しい鍛錬を詰めに詰め込んだメニューには同情を覚えてしまう。
それは神滅具所有者、戦いを呼ぶドラゴンに魅入られた者の宿命だと思って諦めてもらうしかなさそうだ。
それを踏まえてもイッセーは自身の能力と影響力は目を見張るものがあると木場は思っている。
本人に言えば舞い上がってしまいそうだから口には出さないけど。
そう思っていると、ふと思い出したようにイッセーが呟いた。
「そう言えば俺が悪魔となったと同時にカリフに会ったんだよなぁ」
その名が出た瞬間、部屋中の誰もが動きを止めた。
「結局、あいつは色々と分からないことばっかりだし、俺としては助けてもらったこともあるから何かしてやりたいんだよな」
イッセーはイッセーなりにカリフのことを考え、恩も感じている。
今までに散々なことを言われたり容赦のない言葉で打ちのめされたこともあった。
あの傍若無人ぶりに振り回されたこともあったけど、それでも結果的には助けられた。
でなければとっくに死んでいたのかもしれない。
「確かに色々と無茶したりさせたり、容赦も無いようなことばっかあったけど、あいつは本当はそんなに悪い奴って訳じゃないんですよね」
そのことは部室にいる誰もがそのことを理解していることである。
仮にカリフと数か月過ごしてきたのだ、彼のことを何一つ理解できていないなどあり得ない。
学園生活を通し、彼の人となりを見たまま、感じたままに捉えている。
個人個人の認識は違えど、抱いている認識のなかで共通していることがある。
それがイッセーの言う通り、カリフにある優しさの有無であろうことは間違いない。
「彼は偶に厳しいことは言いますけど、あれはあくまで素直に伝えただけだと思います」
「私も気の利いたことなんて言えないのは知っての通りですからね。ただ彼は人より無神経なだけですから」
カリフは善くも悪くも純粋であり、素直であること。
それは朱乃、小猫、ゼノヴィアが心の中で想う。
それは幼なじみとしてか、はたまた命を救われた者としてか、それとも己が力を認めてくれた者としてか。
今更分かっているからこそ言わんばかりに黙して語らず。
見る限り、部員の皆は少なくとも悪い感情を抱いてはいないのがよく分かる。
まだ模擬戦と称して完膚なきまでに負かされたこと、辛言されたことについては既に皆もよく受け止められている。
そう思えたイッセーは今まで自分が考えていたことを皆に提案する。
「あの、部長も、皆も少し聞いてくれません?」
立ち上がったイッセーに視線が集まり、意識的に集中されていることに気付くとイッセーは続ける。
「もうすぐ体育祭が近いから皆も練習もするし悪魔稼業も鍛錬も忙しいと思うんだけどさ、もう一つイベントあるんですよ」
「あら? そうなの?」
部長であるリアスでさえ知らないイベント。
イッセーの様子からそんなに悪いものではないと理解し、興味深そうに聴き入っている。
「俺も知ったの最近ですけど、カリフの誕生日が近いんですよ」
「そうなのか?」
「あらあら、それは大変ですわ」
「初耳……」
「あ、あれ?」
同居している部員なら知っているだろうと思って勿体付けることも無く言ったのだが、ゼノヴィア、朱乃、小猫が初めて聞いたことのように驚いていた。
ゼノヴィアはともかく小さい頃から見知っていた朱乃と小猫さえもカリフの誕生日のことは知らないのは意外だった。
「朱乃さんたちは知らなかったんですか?」
「えぇ、まだ私たちは同居して間もないですし、そう言ったことは……」
「そうだったんですか。てっきり小さい頃から知ってるからそういうことも知ってるものだと……」
「私は小さい頃に何回か会っただけで、付き合い自体は短いので……」
「……私もあの家で引き取られたと言っても、彼は私達が同居した頃すぐに出て行ったので」
つまり、小猫も朱乃もカリフの誕生日を知ることなくすぐに別れたということ。
しかも今年にようやく帰ってきたから両親も直に誕生日を祝うのも久しぶりなのだろう。
「よく知ってたわねイッセー」
「いやぁ、それほどでも……と言いたいんですけど、本当はもっとあいつのこと知りたくて調べてただけなんですけど」
恥ずかしそうに謙遜する。
実際の所、イッセーは色々と礼替わりのために何かできないかと模索していた。
仕事とかそう言う面では口惜しいけどカリフほどの器量も腕力も無いから力になれない。
そう思ってささやかながらも彼の喜びそうなことを調べるに至り、彼の両親から誕生日のことを偶然聞き出せたのだ。
本来なら両親から小猫たちを通じて呼びかけようとも思っていたけれど、イッセーが先に誕生日のことを知ったので彼の方から伝える話になったという。
その話を聞いた後、リアスは腰を上げた。
「その話、いいと思うわ」
前向きな答えにイッセーは破顔する。
知らぬ間に緊張してしまっていたようで、今更ながら気付いた。
そしてイッセーだけでなく他の部員もどこかホっとしたように一息吐いた。
「確かに彼には色々と、結果的に助けられているのも確かね。契約において貸し借りは重要だもの」
立ち上がった際に靡いた真紅の髪が凛と輝く。
「それに、私としても友人を祝いたいという気持ちはあるわ」
そして、優しい眼差しを眷属に向ける。
眷属を愛するという家訓と同時にリアスは同じくらい友に優しい。
それが人間だとしても自身の心情は変わらない。
リアスとしてもカリフには色々と言いたいことは多々ある。
その中には幾何かの感謝も含まれている。
色々と諌めたい所はあるのだが、それを理由に遠ざけ、都合よく彼を利用しようと企むほど彼女は恥知らずではない。
今までは持ちつ持たれつの関係でいっていたのは確かだ。
だが、本音を言ってしまえばもはや彼は只の他人ではない。
ここで、契約とは関係の無い、眷属でもない友人関係を純粋に結びたがっている。
故に、今回の報せはまさに棚からぼた餅だった。
「勉強や悪魔稼業、鍛錬の両立は厳しいと思うけれど、しばらくはカリフの誕生日の準備もよろしく頼むわ」
「「「はい!」」」
素直で真摯な眷属の返事にリアスは微笑む。
改めて優しい眷属と力不足な
自分がしてきたことが間違っていなかった、そういう自身がこみ上げてくる。
話題を皮切りに皆が彼を祝う催し物について話し合う姿に微笑ましさを覚えながら帰り支度をしようとカバンに手を伸ばした―――
『リアス、急な連絡で悪いが緊急事態だ。すまないが全員集めて部室で待機しててくれ』
リアスたちに飛び込んだアザゼルの通信に楽しい時間は終わりを迎えた。
◆
広大な使い魔の森にて魔方陣が表れる。
幾何学模様の陣から光が溢れると同時にリアスたちが現れる。
しかし、先程と違うのはその人数にある。
火急の知らせを受けたリアスたちと一緒にシトリー眷属の面々、イリナやロスヴァイセ、マナ、アザゼルの姿もそこにある。
一度は訪れた使い魔の森には色んな思い出があるだろうが、今のリアスたちにはそんな余裕も暇も無い。
広大な森の中の獣道に転移した彼らの姿を確認し、すぐ傍で待ち構えていた影が走り寄って来た。
「やっと来てくれたか、待ってたぜい!」
相も変わらず少年っぽい恰好のザトゥージは最初に対面した時と違って憔悴し、声も抑えながらもリアスたちに近付く。
「悪いけど挨拶している暇はないわ。詳しい状況を聞きたいのだけれど」
リアスは急かすようにザトゥージから事の詳細を聞こうと問い質す。
その場にいる全員が一刻も早い状況の理解を求めているのか身体を小刻みに震わせている。
(無理もねえか、いきなりの不意打ちで現実を理解できてねえんだからな)
後方で待機しているアザゼルも彼等の心境に同情する。
事の発端は、ザトゥージの通報から始まった。
彼はカリフが駒王学園の関係者だと知っていたため、学園に連絡した。
その時、特別顧問としてアザゼルが報告を受けたのだが、内容は彼を以てしても驚愕を隠せない物であった。
『カリフがやられた』
カリフの底力やおおよその実力を知っている彼がそう簡単にやられるはずがない、疑心に駆られるまま否定したかったが、自分が取り乱してはどうしようもないと思いとどまった。
信じられない、こみ上げるそんな思いを理性で抑えつけながらもザトゥージから状況を事細やかに聞き、推測する。
偶に彼も恐怖心からかチグハグな内容もあったが、話している雰囲気と具体的な内容から起こったことが事実であると思った。
勿論、そのことはサーゼクスたち悪魔サイドやミカエルたち天界サイドにも伝わった。
二天龍さえも凌駕するカリフの敗北は彼等にも大きな衝撃を与えたことは通信越しでも手に取るように理解できた。
その中でセラフォルーの反応が一際大きかったことはアザゼルも知らなかった。
しかし、彼等は既に禍の団と事を構えるに当たって大多数の戦力を既に投入している。
その中でもカリフすら打ち倒す戦力を投入するなど現状では無理な話だった。
そのため、今回の正体不明な敵に対して様々な武功を挙げ、成長株として期待されているグレモリーとシトリー眷属にお鉢が回って来た。
そして同じ駒王学園関係者として悪魔とは関係ないイリナたちも戦力として投入されたという。
そんな事情と経過を踏まえた上で直接、使い魔の森にまで赴いてザトゥージに話しを聞きにきた。
そして、事の全てを話した瞬間、イッセーの我慢が切れた。
「そんなはずねえよ!! あいつがそう簡単にやられるかよ!」
「でも、
「見間違いだよ! そんなのある訳ねえ!! あいつは俺たちよりもはるかに強いから!」
「イッセー!!」
「落ち着いてください兵藤くん!」
今にもザトゥージに飛びかかりそうなイッセーをリアスとソーナが諌める。
明らかに熱くなっているイッセーを責めるものはこの場にいない。
イッセーの言葉は全員の総意である。
皆が疑いようも無い、それでいて信じられない話の内容に瞑目し、こみ上げる身体を震わせる。
イッセーが飛び出していなかったら自分たちが代わりにああなっていただろう、かろうじてそう自覚している。
正気を失いかけているイッセーを諌めるリアスとソーナも例外ではない。
カリフの強さはこの場の誰もが目にし、経験済みであるが故に信頼している。
だからこそ今回の件に失敗は許されない。
信じられない、そんなありもしない根拠が覆された今となっては迅速な行動と解決が望まれている。
カリフのような手練を打ち負かす存在……心の奥底で微かに思案していた可能性が現実のものとなってしまった。
禍の団、もしくは別の組織か、単独犯か……どちらにせよ世界を滅ぼす可能性を孕むその存在を無視できる訳がない。
ようやく落ち着きつつあるイッセーを引き離したリアスたちが皆に向き直る。
「皆、思う所はあるでしょうけど今は気持ちを切り替えましょう。今回の件は失敗など許されないわ」
「私もリアスと同意見です。この際、正体不明の第三者は忘れましょう。今はカリフくんの救出を最優先に考えます」
荒ぶる感情を抑えつけて二人の王は最適解を導き出す。
情報を元に推理すると、カリフは不意打ちに合ったものと考えられる。
つまり、一対一で戦えばまだ可能性は十分にある。
彼の強さは何に於いても重要であり、信用に値する。
不意打ちとはいえ、自分たちが束になっても勝てない彼を撃ち落とす実力者を相手にすれば無事に済むなど思えない。
正体不明の敵の情報と正体を知るためにはどちらにせよカリフの力に頼るほかない。
それにあの強さだ、生命力を考えても上級悪魔、あるいはドラゴン以上のものだと考えられる。
彼の情報からすれば彼は五体満足で落ちて行ったらしい。
そこで持参してきたフェニックスの涙、あるいはアーシアの能力で治さねばならない。
その考えを眷属たちに伝える。
「ここまでの話を聞いて異論はあるかしら? 他に何か案が無いのならこの方法で行こうと思うのだけれど」
皆に是非を問うが、それに反対する者はアザゼルを含めてこの場にいない。
皆も今できることを理解しているのだろう。
成すべきことを具体的に示された彼等にもはや動揺など無かった。
自分たちにできることを全力を持って成し遂げる、その覚悟を新たに場の空気が熱を帯びる。
戦闘経験から鍛えられた気持ちの切り替えに教え子の成長を感じながらアザゼルも動き出す。
「それじゃあ方針は決めておこう。フェニックスの涙は急ごしらえで四本しかない。できれば涙はカリフに使いたいから事実上、使える本数は三本だ」
「涙は先生が持っていてください。その方がまだ安全ですから」
「気休めかもしれねえがな……戦力は分散しないほうがいいだろう。手分けした所を狙われたら間違いなく殺られる。それに幸いにも撃墜された場所は分かっているからな」
テクニックのシトリーとパワーのグレモリー眷属が一丸となれば大抵の相手くらい対応できる。
戦力が未知数な相手であるならばこの布陣は絶対に必要である。
おおよその方針が決まり、やる気が最高潮に達した眷属たちに号令を発する。
「今回の敵は私達より強いかもしれない、その強大な力を前に私たちは成す術がないかもしれない……情けないけれど、今回はカリフに頼るしかないわ」
弱気な発言であるが、その声は凛としており、不思議と皆の胸の中に染み渡る。
これが自分たちの唯一できることだと、自分たちにしかできないことだと確かな誇りを持って続ける。
「でも、この力に屈してはいけないわ。今だ姿も見せない卑怯な相手に思い知らせてやりましょう。誰に愚かな牙を剥けたか、何より、眷属を、友を愛するグレモリー眷属に手を出したことを後悔させてあげましょう!」
「はい!」
友のために静かに怒れる眷属たちはリアスの号令に溢れる感情を滲ませる。
その号令は眷属ではないイリナたちのやる気にも火を点ける。
ソーナたちは号令はなくとも、主のやる気に感化されて準備も万端である。
『学園の生徒に手を出した相手』に対抗するために。
威勢のいい、覇気に満ちた声を震わせた。
その時―――
「なら、見せてもらおうか」
場を満たしていた覇気を
熱気を押しつぶす冷ややかな声が上空から届いた。
焚き付けていた自身とやる気が言い知れない冷気によって冷まされ、その場の全員の身体を圧迫して震わせる。
それほどまでに強い邪悪を含んだ声だった。
「お前たちの言う卑怯者に示して見せろ」
上空に浮かぶ黒い影。
全員の視線が集まるのを感じ、口角を吊り上げる。
「お前たちの無駄な足掻きをな」
全てを見下し、無慈悲を振り降ろすために態々この場に赴いた。
サイヤ人・ターレスによる悪夢がこの時を以て幕を開けた。
長い間待たせた挙句に戦闘は次回からという引き伸ばしは本当にすみません。
またチマチマ書こうと思います。
情けないことに少し設定もあやふやな所もあるのでおかしい所もあると思います。
それではまたお会いしましょう!