ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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今回から新章&オリジナル展開となっておりますので我慢して見てください。


新入生、新任教師を出迎えろ

ベッドと妙に片付けられた机と本棚に並ぶ格闘マンガの詰まった

 

簡素な部屋に差し込む朝日が顔に当たる。

 

「ん……」

 

日差しの暑さに休んでいた身体を上半身だけ起こす。

 

だが、その直後に自分の身体が重いことに気付く。

 

というより掛けているタオルケットがより一層膨らんでいる。

 

「……まさか」

 

バっとタオルケットをどけると顔にモフモフの猫耳がヒョコっと現れる。

 

「うにゃ……」

 

カリフの身体の上で猫耳と猫の尻尾を生やした小猫がいた。

 

寝ぼけ眼をさすりながら胸元にまで這ってはまた眠りにつく。

 

冥界での修行で小猫は気の使い方を覚えた。

 

気での身体強化や気脈への直接ダメージなどカリフが何気にやっている戦闘を少しずつ模倣できるようになっていた。

 

元々から猫又とは気に長けていたこともあるから小猫の上達も早い。

 

だが、そんな特訓の成果を別の目的で使用してきている。

 

自らの気を消すことでカリフの索敵を?い潜って深夜の部屋に入り、ベッドに入るといったことが起こるようになった。

 

当初は寝ていたとはいえ、自分に気付かれずに侵入してきた小猫の成長には感心してそのことを伝えた。

 

 

 

それがいけなかったのか味を占めた小猫の侵入は加速していった。

 

こうやってベッドに忍び込むのも数日連続になった。

 

だけど、小猫には敵意は無く、その逆の感情しかないので敵意に敏感で好意に鈍感なカリフにとって小猫の感知は困難を極めている。

 

「起きたなら寝るな。ていうかワイシャツ一枚って……どういう神経してんだ」

「にゃあ……」

 

ワイシャツの襟を掴んで未だ寝る小猫を吊り下げると部屋を出る。

 

早く顔を洗いたいのに前を見据えると、そこには果てしなく長い階段とセラフォルーのセクシーポーズの銅像が連なって見える。

 

「侵入者を混乱させる造りもここまで来るとムカツク……」

「にゃ~……」

「勝手に背中に乗るな……クソっ! 人の気も知らねえで……」

 

背中でゴロゴロと鳴く小猫には何だか怒気が失せてくる。

 

オーフィスとはまた違った雰囲気のせいだ。

 

下ろす作業さえも億劫になったカリフは背中に小猫を乗せたまま洗面台へと向かおうとした。

 

その時、通りかかった扉が開いた。

 

そこからは寝間着姿の朱乃が出てきた。

 

目が合うと嬉しそうに挨拶してきた。

 

「おはようございます」

「あぁ」

「うふふ、朝から良いことがありましたわ。あら?」

 

嬉しそうに笑うと、カリフの背中の小猫に気付いて手を口にやる。

 

「あらあら、またですの?」

「ネコってのは目を離すとすぐこれだ。躾ができないだけに厄介だ」

「いいじゃありませんか。ずっと頑張ってきたのですからご褒美ということで」

「……それについては否定しない。仕方ねえから黙認してやる」

 

事務的な言葉に笑みが零しながら先に洗面台へと向かっていく二人を見送る。

 

「まるで兄妹ですわね」

 

今日から駒王学園も夏休みを終え、普段の日常が始まる。

 

 

色々と変わったことを除けばの話だが……

 

 

今日が新学期の始めということもあって学園は九月の行事である体育祭の準備に追われていた。

 

どこもかしこも慌ただしい学校の中を進んでカリフと小猫、さらにはギャスパーと並んでクラスへ向かっている。

 

新学期に伴ってギャスパーの長期休校は家庭の事情が解決したと誤魔化した。

 

晴れてこの学期でギャスパーもカリフたちと同じクラスとなった。

 

「う~……人が一杯ですぅぅ!」

「……ギャーくん。くっつき過ぎ」

「というかくっ付くなお前ら」

 

ギャスパーは周りの生徒に脅えてカリフの服を掴んでしがみつき、小猫は理由もなくカリフに抱き着いてくる。

 

両サイドからしがみ付いてくる二人にカリフはそう注意するだけで最早振り払うことさえ面倒臭がっている。

 

そんな様子も周りからしたら良いネタにしかならなかった。

 

「こ、これは! 男の娘と益荒男とのカップリング!?」

「儚い系男の子と『漢』と書いた男子とのあり得なさそうでその実ギャップ萌えが深い組み合わせ!」

「カリフくん×ギャスパーくんの美女と野獣タイプも良い!」

 

腐ったバカ女子共が騒ぐ反対側の方では違うタイプのバカが騒いでいる。

 

「ふざけんなあぁぁぁぁぁ! 我が校のアイドル塔上小猫ちゃんが野獣に食われたあぁぁブゲラァ!」

「くそ! なんでこんな凶暴な奴がこんなゴハァ!」

「うおおぉぉぉ! くたばれヒデブッ!」

「こんブゲェ! まだ何も……」

 

ほとんどが自分に対する罵声だったので一人残らず鉄拳制裁で沈めたり顔面を掴んで投げ飛ばしたりと廊下の右サイドの女子側と違って左サイドの男子側の惨状があまりに酷い。

 

そんな彼に男の友達はいないのか?

 

そんなことはなかった。

 

「おはよう鬼畜。幾らなんでもやりすぎだろ……」

 

前方から軽く会釈して惨状に引いているツンツン頭の男。

 

「だったら上条お得意の説教でこのカス共を黙らせろ」

「説教が得意ってどんなキャラ付けになってるんでせうか?」

「おっす上やん。それと鬼畜じゃねえかい。この組み合わせも久しぶりだにゃー」

「そりゃあ休み挟んだからそう思うんもしゃーないわ」

「出たな。バカのデルタフォース」

 

カリフにしては珍しく嫌悪な顔を見せる。

 

それに対して新しく出てきた金髪グラサンと青髪

 

「おいおい、上条さんはそんな不名誉な称号を持った覚えはねえ!」

「どっちにしろバカには変わりねえ」

「ひでえ!」

 

そんな他愛もない話をしながらクラスへと入っていく。

 

意外と学生らしい生活を送っているカリフの日常はまた変わらず始まっていく。

 

 

 

「えー、早速ですが今日から新しくこのクラスを受け持つ先生が来ますので紹介しちゃいますね!」

 

まるで幼女というか正に幼女のようなルックスの持ち主であり、カリフのクラスの請け負う小萌先生は朝のホームルームから元気よく通知する。

 

転校生より少し衝撃的な報告にも関わらずカリフは頬杖を突いて我関せずといった様子だった。

 

「こんな中途半端な時期に教師の赴任?」

「転校生なら分かるけどな。また随分と急な話だにゃー」

「先生! その人はどんな人ですか!? スレンダー? それともグラマー?」

「もう女の人だと期待している辺り流石とですね♪ 後で生徒指導室にきてお説教してやるのですよ。上条ちゃんもね?」

「ありがとうございます!」

「俺関係ないじゃないですか! 何で青髪と一緒に……」

「上やんは成績の方じゃないのかにゃー? 進級がどうとかって職員会議の議題に上がってるらしいぜ?」

「マジかよ……不幸だ」

 

朝っぱらから騒がしいクラスの後ろの隅っこではカリフやギャスパー、小猫たちが無視したり、苦笑したり、我関せずといった様子で事の成り行きを見守る。

 

「ちなみに、新しい先生は外国で飛び級して学業を終えている十代のお姉さんなので皆とも仲良くできると思います」

「よっしゃああぁぁ! 大勝利やぁぁ!」

 

青髪がバカ言う間にもより一層騒がしくなっていく生徒を小萌先生が制す。

 

「はーい静かに! こうしている間にも先生にはお外で待たせているのでご紹介しますね。 どうぞ入ってきてくださーい!」

 

クラスの全員の視線がガラっと開く入口に注目し、呆ける。

 

スラっとしたボディーに綺麗にたなびく銀髪

 

端正な顔立ちと相まってパンツスーツを着こなす姿はまさしくキャリアウーマン

 

あまりに予想外な展開にクラス中が見惚れる。

 

「綺麗……」

「若いわ……大学生かな?」

「お、大人のお姉さん……」

「あぁ……あんな人に冷徹に言葉責めされたいわ~。なあ上やん」

「上条さんにそんな奇特な趣味はありませんのことよ。でも、確かに綺麗だな」

「また上やんフラグか? 毎度毎度飽きないにゃー」

「変な誤解を招く言い方は止めろ土御門!」

 

各々思ったこともあるようでいつもの騒がしさがどこかへ消えていた。

 

そして、カリフもその一人だった。

 

「……」

 

目を見開いて入ってきた新米教師の姿に驚いている様子を見せる。

 

それには両サイドの小猫とギャスパーに衝撃を与えた。

 

「だ、大丈夫?」

「……知ってる人?」

 

その問いに答える間もなく新米教師は教卓の前にまで来て挨拶を始める。

 

「それではお名前からよろしくお願いしますね?」

「はい。皆さん初めまして。突然のことで驚いているかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします」

 

もう色々と訳が分からない。

 

「本日より短期間の教育実習としてこのクラスを請け負うことになりました」

 

カリフにとっては久しぶりと言うべきなのだろうけど……

 

 

また会うだろうとは思っていたけど……

 

 

 

 

「ロスヴァイセと申します。まだまだ至らない部分があると思いますが、どうかよろしくお願いします」

 

 

どういうことだ?……これ

 

 

 

 

「どういうことだ? こんなことオレは一言も聞いていないんだが?」

 

その日の放課後、カリフはオカ研の部室にいたアザゼルを本棚の所へ押しつけて尋問している。

 

現在、部室にはオカ研を始めとしたシトリー眷属も集まっていた。

 

「そうね。今回はアザゼルの独断だったようだからその辺をきっちり話してもらうわ」

 

対するリアスもカリフと一緒になってアザゼルに尋問していた。

 

「なんか部長怒ってねえか?」

「この学園は会長と部長の管轄だから何も報告が無かった上にアザゼル先生しか知らなかったことだから」

「責任感が強いのですよ」

 

木場と朱乃の言葉にイッセーが納得していると、その横ではこの騒ぎの中心が“二人”もいた。

 

一人は言わずもがなロスヴァイセ

 

そして、もう一人はというと……

 

「あの……元はと言えば私のせいですから……」

 

そこには最近会ったばかりのイリナがリアスたちを止めようとしていた。

 

実を言えば、ここにいる駒王学園の制服を着た紫藤イリナはイッセーのクラスに引っ越してきた。

 

本人からの話によれば天使側からの使者とのことである。

 

「それにしたって……せめてその前に一言でも伝言か何か残していたらいいのに……」

「なに、ミカエルとオーディンのじいさんからの客ってことでな。ちょいとサプライズをと思ってな」

「いらないわよそんなの」

 

悪びれる様子もなく笑うアザゼルの頬をつまんで引っ張り上げると、ここでほとんど初対面のロスヴァイセが自己紹介をする。

 

「カリフくんの知り合いとして会うのはイリナさん以外は初めてでしたね。私は北欧の主神・オーディンの命にて日本に派遣されたヴァルキリー、ロスヴァイセと申します。以後、お見知りおきを」

「私と会ったことのある人がほとんどでしょうが、会っていない人もいるのでこの場で自己紹介させていただきます。天使さまの使者として来ました紫藤イリナと申します!」

 

二人に対して暖かい拍手を送っていると途中からイッセーが手を挙げる。

 

「あの、ロスヴァイセさんはカリフを知っているようですけど知り合いなんですか?」

「はい。十年くらいも前に初めてお会いして助けてもらった日からですね……面影があるからすぐに分かりました」

 

馴れ初めを思い出す、ただそれだけのことでロスヴァイセの様子がおかしくなった。

 

それだけで女の勘は働くものだ。

 

定位置に座っていた朱乃、ゼノヴィア、小猫、マナの様子が変わってジト目になる。

 

「何があったのか知りたいですわ……うふふ」

「私も興味があるな」

「私も知りたいです」

「そこの所詳しく」

「え? あの……えっと?」

 

一部女子たちのハッスルにイッセーと匙は本気で嫉妬してカリフを睨んだりそれを顔面掴んで部室塔から投げ捨てたりリアスたちは苦笑したりした。

 

「急な準備で申し訳ないけど、これから二人の歓迎会をしましょう。私たちはあなた方の入学を歓迎するわ」

「悪魔としても生徒会長としてもお二方を歓迎いたします」

 

リアスとソーナの挨拶と机の上の魔方陣から大量のケーキやお菓子が現れるのを皮切りにイリナとロスヴァイセの歓迎会が始まった。

 

 

イリナとロスヴァイセの歓迎会が終わったその日の夜

 

カリフは大騒ぎし、ロスヴァイセとの仲を詰め寄ってきた朱乃たちの追及を全部スルーして疲れも溜まっているが、どうしようもなく疲れている訳でもない。

 

夜は悪魔の仕事の時間ということで家には寝静まった家族とカリフしかいない。

 

そんな中でカリフは自分の部屋のベッドの上で束になった書類に目を通している。

 

その途中でカリフの携帯の画面が光って着信が鳴る。

 

着信に出てみるといつも通りの声が聞こえてきた。

 

『まだ起きてるか?』

「……時間を考えろアザゼル」

『ハハ……悪いな。すぐに終わるからよ』

 

電話越しでおちゃらけているいる声が引き締まった緊張の声に変わる。

 

『今回の仕事でリアスたちを同行させてみないか?』

 

今回の仕事……その言葉にカリフは眉を寄せて電話を握る力を強くする。

 

「本気で言っているのか?」

『じゃなかったら言わねえよ。あいつ等はこの夏で大きく飛躍して強くなったと思っている。実力的には充分だと踏んでいる』

「そういうことじゃねえ」

 

カリフは怒りのままにアザゼルを責める。

 

「困るんだよ……そうやって貴様らの勝手をオレに押し付けるのは……」

『……』

「オレは貴様らと利害が一致しているからこうやって依頼を受けてこなしてやってるんだよ……決して貴様らと慣れ合ったり下に着いたつもりはない」

『そこまでは言ってねえだろうが……でも、あいつ等は助手としては最適だと思うぜ? 赤龍帝、聖魔剣、デュランダルといったパワーの強いグレモリー眷属、ヴリトラを始めとしたシトリー眷属、そして光の力を使うイリナと北欧のヴァルキリーのロスヴァイセ。並の奴等じゃあまず相手にならねえ。オールスターじゃねえか』

 

やけにリアスたちを推してくるアザゼルの言葉に少し考えた後、カリフは話す。

 

「確かに珍しい力を使わん手はないな……なら、試しにテストをしてみよう」

『テスト? 試すのか?』

「当たり前だ。こうでもしなければ奴らが本当に使えるかどうかも分からんからな。これでも寛大すぎる慈悲だ」

『……疑っているのか? あいつ等を』

「こっちは命かけてんだ。重要なのは奴等が役に立つか立たないか、それしか興味はない」

 

アザゼルの溜息が電話から聞こえたあと、しばらくしてから返事が返ってきた。

 

『分かったよ……お前の好きにしろ』

「選別方法は阿呆でも分かるくらいに単純にしてやる」

 

そう言って電話を切ろうとしたが、最後にアザゼルにこう残した。

 

 

 

「もしこの件で奴等が役立たずと判断したら、もうオレは任務では今後一切こんなくだらない提案には乗らん。そのことをよく覚えておけ」

 

返事は聞かず、電話を切って床に入る。

 

また休む間もなく波乱の幕が開けようとしていた。

 

 

 

~後書き~

 

やっと試験モロモロ終わって今では研究のみとなっています。暇になったらまた更新していく予定です。

 

ハイスクールD×Dのアニメが終わってしまいましたね~……まだ小猫がデレてないので第三期もやってほしいです!

 

余談ですがゴッドイーター2楽しみにしてます。女主人公可愛すぎです。


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