ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~ 作:生まれ変わった人
とは言っても今回は幕間のような物なので見ても見なくても問題はありません。
今回で黒幕の一部がネタバレとなるのでご注意ください。
それではどうぞ!
間劇~旧き魔王と帝王~
「ぐはっ!」
イッセーたちがソーナたちとゲームをしている時、事は起こっていた。
とある場所、誰も近づかないような世界
天界でも冥界でもない無限に続く更地に血飛沫が吹いた。
「あ……がぁ……」
血まみれの男は地面に這いつくばって何かから逃げようと体を引きずる。
だが、死に体の男の傍に小さな人影が突然現れて男を踏みつける。
「ぐあああぁぁぁぁぁぁ!」
「おやおや……旧魔王の末裔と偉そうにふんぞり返っていた割には随分とあっけないものですね」
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げる男の背中を踏みつける足にさらに力と体重をこめて踏みつける。
その人影には角が生え、全体的にアルビノのように白い身体の異形の生物なのは明白だった。
そして、その異形の生物は男をいたぶり、満足そうな笑みを浮かべる。
「な、何故だ……真のベルゼブブの血を引く私が……オーフィスの蛇で旧魔王に同格の力を手に入れたこの私が貴様のような下等な存在に……ガハッ!」
「まだまだお元気で何よりですね」
「グアッ!」
白い生物が男の腹に蹴りを入れる度に侮蔑の言葉を吐き出した男の口から血が吐き出される。
踏みつけていた足がどかれたはずなのに男は逃げるどころか防御することもしない。
もはや虫の息とも言えるその男に執拗にいたぶり尽くす。
ある程度いたぶって満足したのか、蹴りを止めて男の髪を乱暴に掴んで自分の目線と無理矢理合わせる。
「あなたのような人を幹部に仕立て上げるカオス・ブリゲートとやらも大したことなさそうですね……まあ、期待はしてはなかったのですが、これはあまりにも酷い」
「はぁ……はぁ……」
「それではもう一度聞きますよシャルバさん。私たちに協力してくれませんか?」
邪悪
丁寧な言葉と眼前の笑顔にシャルバと呼ばれた男は寒気と吐き気を覚えた。
外見では測れないほどの悪意を垣間見たシャルバにとって目の前の存在は恐怖でしかなかった。
だが、まだシャルバには策があった。
そもそも、冥界で工作活動していた最中に何らかの方法かは分からないが、無理矢理異次元に連れてこられたのだ。
当然、部下たちも自分が消えたことに不審を感じて探しに来るはず。
バレるのも時間の問題
部下が来たところで目の前の存在には勝てるとは思えない。
オーフィスの力を使っても掠り傷さえ付けられなかったのだ。
この存在が部下たちに気を取られている隙に逃げて転移で逃げればそれでいい。
頭の中で逃げる算段を立てている時だった。
「いつまで遊んでいる。フリーザ」
突如として知らない存在が上空から現れた。
最初は援軍かと思ったシャルバの期待は見事に裏切られてしまった。
現れた人影は目の前で自分を見下ろすフリーザと呼ばれた人外と容姿が酷似している。
ガラス体のような頭部、白が強調された身体、そして長い尻尾
それだけで状況の悪さを思い知らされた。
一方でフリーザは肩をすかして溜息を吐いた。
「これは兄さん。最近ずっと座りっぱなしでね。体がなまってきそうだったから旧魔王とやらの力を試してみたのさ」
シャルバは言葉を失った。
「ひ、一つ聞く……私を、襲ったのは……」
息絶え絶えに言葉を吐き出すと、フリーザはウンザリしたように首を振った。
「先ほどの言葉を聞いていなかったのですか? 私の遠征中に偶々、強い戦闘力を見つけたので運動がてらちょっかいを出してみたのです
耳を疑った。
さっきまで自分は現魔王派を幾らか始末してアジトへ帰っている最中だった。
暇つぶしの運動……それだけの理由で自分は異次元に引きずり込まれ、今ではボロ雑巾のように転がされ、踏みつけられている。
口の中に広がる血と砂利を噛みしめるほどの屈辱が湧いてくる。
「……ざけるな」
「はい?」
足元シャルバにフリーザは目を向けると、そこには怨恨を込めた目で見上げてくるシャルバの顔が目に映った。
「ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁ! 貴様らぁ! 私をどこの誰だと思っている! 真の魔王ベルゼブブの血を引く正統な後継者だ! 貴様らとは格が違うのだぁ!」
「……何ですかこの人……いや、悪魔ですか。気持ち悪い……」
フリーザが気持ち悪そうに引きながらも踏みつける足を強くするが、シャルバを血を噴き散らせて怒号を上げる。
「どこの馬の骨とも知らん貴様らがベルゼブブを見下ろすなど愚の骨頂! 立場を弁えろ!」
「おやおや……まだこんな元気がありましたか。案外しぶといですね。さっきまで死にかけていたはずなのに」
「……」
生き返ったように自己がいかに各上か……明らかに状況を見失っているシャルバに呆れるフリーザと沈黙を貫くもう一方の影。
その二人を余所にシャルバは体中に魔力を溜める。
「薄汚いアルビノ風情が! この私をコケにしたことを後悔するがいい!」
「お?」
「ん?」
「うおおおおぉ!」
その瞬間、シャルバの身体を覆っていた魔力が徐々に強くなり、やがては強い魔のオーラと化してフリーザたち二人を飲み込む。
魔のオーラはフリーザたちを飲み込むだけでは飽き足らず、さらに大きく広がっていった。
「はぁ……はぁ……」
魔のオーラを使い果たしたシャルバは起き上がれない体を精一杯這いずって周りを見渡す。
砂煙で遠くは見えないが、自分を中心に広がるクレーターくらいの魔力の爆発の跡を確認して確信した。
この広範囲の魔力爆発……たとえ魔力があるものでも塵一つ残すことはない。
ましてやさっきのアルビノ共からは魔力の欠片も感じなかった。
仕留めた。
「は……はは……」
シャルバは口を歪めて安堵の笑みを浮かべる。
殺される寸前だった状況での緊張から解放された安堵が見られる。
「ふはははははは! 見たか! これが私の真の力だ! これが、魔王の力だぁ!」
誰もいない空間で一人叫ぶ。
「私は誰にも負けん! この世にベルゼブブ以上の力も、ベルゼブブを敬わん存在などいらん! そうだ! 私が真の……」
その瞬間、シャルバはの右腕から血飛沫が噴いた。
「こうけい……しゃ……?」
信じられないものを見るかのように自分の腕を見る。
暖かい……だけど濡れている。
何故……腕が血まみれなのだ?
それは高潔なベルゼブブの血だ……その血が自分の腕から止めどなく噴射されていいいはずがない……
頭上に影が舞う。
見上げると、そこには右腕“だけ”が宙を舞っていた。
血をまき散らせて舞う腕がやがて地面に落ちるまで、シャルバはただ呆然としていた。
思考を止めたシャルバの脳はやがて、別の方向へと働き始めた。
本能の赴くままに……余計な思考を排した純粋な“痛み”を……
「う……があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!」
血が止まらない腕を残った腕で締め付けながら痛みに悶える。
「腕ぇ! ベルゼブブの血がぁ!」
痛みと残った僅かな自尊心のままに叫び続けていたシャルバ
だが、その叫びも後に聞こえてきた声がかぶさってくる
「これが旧魔王の力……だとしたら拍子抜けです」
「ここまで惰弱な奴があの猿共以外にもいたとはな……とことんムカつく野郎だぁ!」
「がぁ!」
フリーザとは別の個体はシャルバの顔を蹴り上げ、遠くへと飛ばす。
遠くへ落ちたシャルバにもう痛みはない。
あるのは死への恐怖だけ
今さっき爆発させたのは残りの保有していた魔力をオーフィスの蛇で強化したもの
間違いなく現時点での奥の手であり、最強の一撃だった。
だが、それでもあの二体は喰らって平然と生きている。
傷さえ付いていない!
「く、来るな……」
支えとなっていた自尊心とプライドさえも目の前の化け物には通じない。
こっちに向かってくる二つの影が意識と共にぼやけてくる。
意識さえも失えば今度こそ自分は全てを失う。
「き、貴殿等のことは誰にも口外しない!……ここであったことは何もなかったのだ……!」
何を置いても生き残るだけを考える。
自分が何を口走っているのかさえも疑問に思わない。
ただ生きたいだけだから。
「私の財産をやろう……部下もだ!……私の財力と貴殿等の力さえあれば世界など一瞬で手中に収められる……」
身体は力を失い、倒れる。
「それに私の口添えさえあれば貴殿等を新たな世界の支配者に……」
そして、二体の影が自分を見下ろす光景を最後に彼は確かに、力なく口にした。
「頼む……何でもするから……」
―――助けてくれぇ……
~後書き~
次回はちょっとした学園生活&新たな事件へと突入!
そして、カリフとオカ研との距離感に変化が!
乞うご期待!