ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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大変遅くなって申し訳ございません! リアルの方が忙しくなってきたので最近は一日に書ける量が少なくなってしまいました……

この忙しさはしばらく続くのでその間、更新が遅れることをお許しください!

今回は本編とは全く関係ありません


番外編、母の日

「母の日?」

「はい。五月の第二日曜日は母に日ごろの感謝を表す日なんですよ?」

 

ある日の昼下がり、朱乃の一言で全てが始まった。両親は買い物に言っており、リビングには朱乃や小猫、そしてゼノヴィアを始めとした面々がその話に食い付いた。

 

「日本にはそんな風習があるのか?」

「私も知りませんでした」

 

外国暮らし……元より親がいないゼノヴィアとマナは感心するように相槌を打っているとカリフもバツの悪そうな顔をする。

 

(母……そういえばブルマには一度もそんなことしたことなかったな……)

 

他の者には気付かれないように昔のことに想いを馳せている中、話題は続く。

 

「小猫ちゃんは何をするか決まりましたの?」

「……おばさまは花が好きですから花を贈ろうと思ってます」

「そういえばここの庭は花や木で一杯だよね? あれって……」

「マナちゃんとゼノヴィアちゃんははまだ知らないと思うけどおばさまはすごく植物が好きで家庭菜園が趣味なんですの。だから私も花を贈ろうと思ってたんですが……」

「小猫と朱乃さんが花か……それなら私も何か世話にもなっているし何か贈らねば……」

「大丈夫ですわ。おばさまの家庭菜園はどんな植物も拒まない……この世の花をコンプリートしたいとか前にも言ってましたわ」

「……こだわりが違うね」

 

女の子のトークはより一層に盛り上がり、流石に全員が花というのも味気ないから普段の様子から推理して各々欲しいものを買おうと話が纏まってきた頃、蚊帳の外のカリフは一人思案する。

 

(花……いや、何か植物か……)

 

考えを巡らせている中、カリフは前にアザゼルからちらっと聞いた伝説の花のことを……

 

その名前を思い出したカリフの行動は誰よりも速かった。

 

「カリフくんはどう……あら?」

「……いない?」

「さっきまでいたのに……」

「どこか行ったのかな?」

 

女子勢が気が付く頃には既にさっきまで一緒にいたカリフの姿が忽然と消えていたのだった。

 

 

 

 

~~ここからはダイジェストで~~

 

「なんだカリフ? 今日は何の用ブガッ!」

「アザゼル。単刀直入に聞くが、『蓬莱の木』はどこだ? 言わねばこの頭を■■す」

「うごおおおぉぉ!」

 

彼の一日だけの冒険は唐突に始まり……

 

 

「よう白龍皇……お前、ユグドラシルの木に生える花について教えろ」

「……急にやって来ていきなりだな……何か目的でも……ていうか俺の気を日本から辿ったのか……?」

「ただ質問に答えろ。■■されたいのか?」

「……」

 

 

周囲の人物を巻き込んでいく

 

 

 

「な、なんだ貴様は!?」

「カオス・ブリゲートが『シーブ・イッサヒル・アメル』というギルガメッシュが発見したとされる伝説の植物の残骸を手に入れたというのは確かなようだ。渡せ」

「これは長年生きて力の大半を失った物を偶然見つけた物だ! これを持ち帰って研究すれば我等は不死の力を得ることができる! 何があっても貴様にだけは……!」

「このクソ■■■が!」

「ぐぎゃああぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

世界はまた一人の少年に振り回される結果となった。

 

 

 

母の日も後、数時間で終わろうとしていた。

 

朝から出て行ったカリフ以外、皆は食事の準備をしていた。

 

「それじゃあプレゼントは……」

「折角だから食べる前に渡しましょう」

「「「はい」」」

 

お皿を出したりと手伝いの最中に彼女たちはそれぞれプレゼントの包みをスタンバイさせる。

 

そんな時、いつも以上にそわそわする鬼畜家の父親の姿がよく目立つ。

 

「あなた、どうかしました?」

「い、いや”!? な”、なんでも……」

「? そうですか?」

『『『おじさま/お義父さま……』』』

 

これでもかってくらいに自分から墓穴を掘る大黒柱に皆も苦笑してしまう。それに本気で気付かない母親もまた大物と言えばかなりの大物だと言える。

 

そんな分かりやす過ぎる愛情表現も呆れと同時に微笑ましくも羨ましくも想うのが女の子というものだ。

 

「そういえばカリフはどこに行ったのかしら? 朱乃ちゃん知らない?」

「え、えぇ……申し訳ございません……」

「そう……まぁ仕方ないわ。カリフにだって用があるかもしれないし……あの年の男の子は親とあまり居たがらないって言うし……」

 

朗らかにそうは言うものの、どこか寂しそうなのがよく分かる。少し動きがぎこちなくなったのもそれのせいなのだろうか……

 

どこかいたたまれない気持ちになりながらも全員は卓に着く。

 

「そ、その内帰ってきますよ。カリフのことだから多分、また山とかに行って時間を忘れてるだけかもしれませんよ?」

「ふふ……確かにあの子らしいわね」

 

何とかフォローして少し空気も軽くなった所で皆は安堵した。そんな時、父親が唐突に口を開いた。

 

「ちょ……ちょっと待って!」

「? あなた?」

「君に……わた……渡したい物があるんだけど……」

 

さっきからテンパって汗ばむ手をポケットに入れてまさぐり、何か小さな箱みたいな物を急いで取り出すと汗で滑らせて床に落とす。

 

「あ……!」

 

情けない姿を見せたことに恥ずかしく感じながらも小さな包みを取ろうとすると、それを代わりに小猫が拾って手渡してくれた。

 

「……どうぞ」

「あぁ、ありがとう」

「少し落ちついてからの方がいいと思います」

「……そうだね。ありがとう」

「頑張ってください」

 

小猫からのエールをもらった父親は深呼吸をし、母親に改まって向き直る。

 

「あ、えっと……これ……」

「これ……」

「今日は……母の日だから……」

「あ……」

 

小さなお洒落な箱を渡されながら今日がどういう日だったのかを思い出す。そんな母親が握る箱を父親が開けると、そこには指輪が入っていた。

 

「これ……」

「あの……君って派手な装飾は苦手だったから……」

 

口ではそう言うが、本当はそんなに高くて立派な物が買えなかったというのが本音だった。いくら豪邸に住もうが、カリフの父親は一介のサラリーマン……そんなに贅沢な物は買えないのが現実だ。

 

指輪も宝石などは付いていないスタンダードな指輪だった。

 

そんなプレゼントに母親はうっとりとした表情で夫に微笑む。

 

「ありがとう……嬉しい……」

「そ、そう? 本当はもっと立派な物買いたかった……あ」

 

またやってしまった……慌てて自分の口を塞ぐも、既に墓穴を掘ってしまった故にその行動も全く意味が無い。夫の本音に妻は気にすることなく夫の胸に飛び込む。

 

「え、ちょ……」

「ありがとう……あなたがくれる物ならなんでも私に似合うに決まってる……これ、好きよ」

「本当……?」

「ふふ……初めてプロポーズした時もこんな感じだったわね。あなた……あの時から変わってない……」

「仕方ないだろ……僕は君のこと………好き……だから……」

「そう……よかった……あなたで本当に……」

「それなら僕も……」

 

互いの腰に手を回して見つめ合う二人はうっとりとしながら互いを想い合う。

 

カリフの改築した豪邸の内装と相まって二人はロマンチックな雰囲気にも酔いしれる。

 

夫の顔が妻の顔に近付いて来る。二人の情熱は燃え上がり、鎮火することを知らない。

 

そしてそのまま互いの唇が触れ合う……まさにその時だった。

 

 

ガチャン!

 

「うわ!」

「「!!」」

 

突然、グラスが割れた音に二人が驚くとそこにはグラスを落として慌てるマナの姿があった。

 

何とも初々しく、ロマンンチックな二人に見惚れてグラスを落としたマナは慌てて処理するが既に後の祭りだ。

 

自分たちの姿を子供たちに見られた恥ずかしさから万年幸せ夫婦は恥ずかしくなって席に戻る。

 

「……マナ先輩」

「マナ……今のは駄目だろう」

「……ごめんなさい……」

 

マナを責める小猫とゼノヴィアだが、二人の顔も若干紅いのは気のせいじゃない。

 

少し微妙な空気になる前に朱乃が動いた。

 

「あの、ついでかもしれませんが……」

「あら、綺麗……」

 

朱乃に手渡された花束に母親は嬉しそうに受け取る。それに続いて小猫も同じく花を渡す。

 

「これ……どうぞ」

「これも綺麗……とてもいい花……」

「……ちょっと単純かもしれませんが」

「そんなことないわ。こんな綺麗な花を貰えて嬉しいわ。ありがとう二人とも」

 

そう言いながら朱乃と小猫を抱きよせて礼を言うと二人は嬉しそうに目を瞑って母の温もりを堪能する。

 

そこへゼノヴィアとマナも続く。

 

「あの、私はこういうのは初めてだからよく分からないけど……どうぞ」

「私も、ちょっと地味かもしれませんけど……」

 

ゼノヴィアは洋服、マナはスカーフを渡すと母親は小猫たちをゆっくりと離して二人の包装された服を受け取る。

 

「これ……あなたたちが?」

「えっと……学生なのでそんなに高価じゃないですけどよかったら……」

「ここに住まわせてるお礼もあるので……」

 

そう言う二人に微笑むと、今度は二人を抱き寄せる。

 

「「あ……」」

「ありがとう……なんだか娘が二人増えたみたいで嬉しいわ……」

「娘だなんてそんな……」

「そんなことないわ。もうあなたたちは家族なんだから偶にはこうして甘えてもいいのよ?」

 

幼少から両親がいないゼノヴィアとマナは少し戸惑いはしたが、それが心地よかった。

 

初めてか、それとも久々か……これまでに味わうことのなかった“母の匂い”というものが鼻腔を優しく撫でた。

 

(良い匂い……)

(何だか気持ちいい……聖母マリアに包まれたらこんな感じなのだろうか?)

 

ゼノヴィアはどこか見当は違う物の、なんだか安心した様子だった。

 

二人はあまりの気持ち良さにそのまま身体をしばらくの間預ける。

 

皆が微笑ましくそんな光景を見つめた後で二人は母から離れた。

 

「それじゃ、ご飯にしましょう」

「カリフくんは待たなくてもいいんですか?」

「でも、早く食べないとご飯冷めるから……」

「そうですか。じゃあ……」

 

皆が合掌して食卓に着いた。

 

 

 

まさにその時だった。

 

「どわ!」

 

突然、上のフロアを突き破って“何か”が食卓の近くに落ちてきた。とてつもない轟音に全員が驚く。

 

両親はそれに放心する中、朱乃たちは警戒して魔力を練っていると、何かが落ちてきた落下地点から人が立ち上がってきた。

 

「ま、間に合った……のか?」

「カリフくん!?」

 

頭を抑え、片手で何かを持っているカリフに全員の気が抜ける。そんなカリフにゼノヴィアが聞く。

 

「お前今までどこに……」

「どこって、今日は母の日なのだろう?」

「それはそうだけど……」

「だから集めてきた」

「え?」

 

そう言うとカリフは立ち上がって母の前に寄って手に持っていた物……三輪の花を渡す。

 

「これ……私に?」

「まぁ……今まで世話になったからこれくらいは……」

 

頭を掻きながら渡す……明らかに照れている様子の息子を愛おしく想いながら茎を包装した花を受け取る。

 

一つは葉は光り輝き、茎が金、鮮やかに少し光る桃色の花

 

二つ目は少し控えめながらも純真な白く光沢を発する花

 

三つ目は一見して普通の花のように見えるが、バラのように高貴で見事な花弁、鮮やかな紫の花

 

 

三つともそれぞれ魅力を備えた花……見ているだけで命の輝きを感じさせるくらいに美しい花だった。

 

「綺麗……こんなに綺麗な花見たことない……」

「当然だ。そんじょそこらのとは訳が違う外国の花だ」

「じゃあ……今日はずっとこれを……」

「仕方ねえだろ……それ、意外と手間がかかる物だったからよぉ……」

 

顔を背けてぶっきらぼうに返すカリフの身体は汚れていた。口ではどうということは無かったように話すけど実際は違うのだろう。

 

今日という日のために一日を費やしたのだから本当に苦労したのかもしれない。

 

 

他の子供とは違うと周りから言われ続けてきたこともあった。そんな息子に不安を覚えなかったといえば嘘である。

 

突然、この家を飛び出して生きているか死んだのかも分からずに不安にもなった。

 

ただ、健康で元気な子供であればいいと思った時もあった。

 

 

こうして帰ってきた息子のこともまだ分からない所もある。

 

 

 

だけど……

 

「お腹すいたでしょ? 先にご飯食べようか? その後、お風呂にしよう?」

「そうだな……もう腹減って死にそうだ」

 

ちょっと怒りっぽくて友達を作るのが下手で親を心配させるどうしようもない息子だけど……

 

「カリフ……」

「?」

「おかえり」

 

 

今ならはっきりと言えることがあります。

 

 

「ただいま」

 

 

この子が生まれてきて……私たちの息子になってくれてありがとう……

 

「じゃあ皆も一緒に……」

『『『いただきます/アーメン』』』

 

この日のことを忘れない……そう言うかのように翌日、花壇にはそれは美しい三輪の花と母の日に貰った花が花壇をより一層輝かせた。

 

 

 

「そういえばあの花は? 朱乃たちの花とは違うような……」

「あれ? あれは何だか懸賞と一緒に母の日キャンペーンとして付いてきた物なんだけど……懸賞に応募した覚えがなくて……でも綺麗だから飾っちゃった」

「宛先は?」

「名前とかは言ってなかったの……それになんだか配達の人も“歌う黒猫”って言ってたような……

「……なんだそれ?」」

 

 

 

 

「くしゅん!」

「どうしたい? 黒歌」

「いや、誰かが私の美貌を羨んでるのかもしれないにゃ♪」

「いや~……それは……」

 

世界のどこかで恋する黒猫が何かを感じ取ったとかいないとか……それはまた別の話


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