ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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今回のお題は『戦闘民族も休日はエンジョイしていた』ですのでそんな感じで軽く見てください。



閑話休題・我が家の偉大さ

アザゼルの教師赴任した一週間は終わり、週末の休日をエンジョイしようと考えていた俺たち。

 

だが、彼らは休むでもなく、居候のリアスとアーシアとともにある場所へと向かっていた。

 

「あの~……これは部長の企画ですか?」

「いえ、カリフが私たちも家に招くように号令を出したらしいって朱乃から聞いたのだけど……具体的なことは朱乃や小猫でも知らされてないみたい」

「なんだかドキドキします~……」

 

あの破天荒で傍若無人なカリフから家に招かれたのだ……当然、小心者のアーシアちゃんは小動物のようにカタカタと可愛らしく震えている。

 

まあ、気持ちは痛いほど分かる。玄関で特訓と称して聖水に浸したナイフが飛んできた! なんてことだって想定しておかないと危ないからな~……

 

「大丈夫よ。今日は特訓は休みだって本人から言質は取ってあるから」

 

俺の考えを見抜くように部長は微笑みながら俺の頭を撫でてくれる。

 

くぅ~! そういうことなら今日は久々に穏やかな一日に……なるとは限らないけどまあ普段よりはマシかも。

 

最近結ばれた駒王協定に至るまで俺はそれなりの死闘を演じてきたのだが、正直あの狂暴な後輩を相手にしている方が経験値が高い。

 

普通の特訓でも下手すれば死ぬ仕様とか……スパルタを通り越して何て言うの?

 

まあそのおかげで白龍皇とも善戦できたんだから結果オーライってことかな? うん、そうなんだろうなきっと。

 

「さあ、見えてきたわよ」

 

部長の声に意識を戻すと、一度行ったことのある鬼畜家は目と鼻の先にまで近付いていた。

 

見た目は普通の一軒家なのだが、あそこだけ異空間な気がして仕方ない。

 

だってあの家に関しては三勢力やいかなる神話さえも介入を許さないっちゅー中立場なんだぜ?

 

要約すれば『世界の神々が荒ぶるような事件』とかが起きてもあの家だけは普段と同じように変わらず居続けるって解釈もできる。

 

そのため三勢力からは『世界の影響を受けない中間地点』なんて呼ばれている。見た目は普通の一軒家なのに……

 

「すごいですね~……この普通の家が神様だとか悪魔だとかさえも無闇に手が出せない場所だなんて……」

「でも、中にいるのは永きに渡って確立してきたこの世の力関係を根本から覆す人が生まれ、住んでいるもの。そう思えば当然の反応ね」

「ふわ~……」

 

なんだかギャップが激しい気もするんだけど……そう思いながらインターフォンを押すとほどなくして私服姿の朱乃さんが出てきた。

 

「あらあら、いらっしゃい。リアス、アーシアちゃん、イッセーくん。歓迎しますわ」

 

お淑やかな言い回しで招待してくれる朱乃さんは鮮やかな色のワンピースにフリルを付けたような本当におしゃれした女子校生らしい可愛らしい恰好をしていた。

 

「あら朱乃。随分と気合入っているじゃない?」

「うふふ。お客様をもてなすんですもの。これくらいはね? イッセーくんはこういうのはお好きかしら? 殿方の意見が聞きたいですわ」

「すっごくいいと思います!!」

 

俺が即答すると、部長とアーシアは拗ねた表情で俺の頬を引っ張ってきた。

 

「うふふ。それならよかったですわ。さあ上がって」

「ふゎい。ほら、ぶひょうもあーひあも」

「うう~、誤魔化されました……」

「こうなったらイッセーの家に帰った時に朱乃のような……いえ、それだとインパクトが足りないからもうちょっと露出させるべきなのかしらね……」

「はっはっは。何の話ですか?」

 

な、なんだか小声であまり聞こえないけどとんでもない話が進行しているような気がしてならない……

 

まあ、カリフの特訓に比べたら遥かにマシなことだろう、うん、そうに違いない。

 

「おじゃましまーす」

「失礼します」

「お世話になりますね」

 

頬を離してくれた二人と一緒に玄関に上がる。

 

「心配なさらずともおじさまとおばさまは旅行に出ていないから悪魔関連の話でも問題ないですわ」

「あ、そうですか。でも、途中で帰ってきたらまずくありません?」

 

そう言うと朱乃さんは変わらない笑顔で答えた。

 

「大丈夫ですわ。カリフくんの自腹で一週間の沖縄旅行ですから」

「あ、そうですか……ってカリフ、随分と金持ってるんですね……」

「ええ、総資産で言えば戦車くらいは普通に買えるとか……」

「OH……」

 

もはやどこからどこまでが冗談なのか本気なのか全く分からないが、相手はカリフ……充分に有り得る話だ。

 

思い返せば普段の食生活でも小猫ちゃんと一緒に尋常ならざる量を腹に納めているのだから何気に納得するしかないかもしれない。

 

「でも、ご両親のために旅行をプレゼントだなんて何だか素敵です」

 

そういえばアーシアも俺の親父とお袋に何かお礼したいっていつも口にしてたっけ。確かに旅行ってのはスケールが大きすぎて一般学生では無理だからこそアーシアとしてはカリフを羨ましがっているんだね。

 

そう思っていると近くから別の声が聞こえてきた。

 

「ああ、普段はあんな風貌で行動もあれだけどご両親にはすごく感謝しているって聞いた。今の時代、親のためにそこまでできる高校生ってそうはいないよ」

「ゼノヴィアさん」

「やあアーシア。部長もイッセーもこんにちは」

 

鬼畜家の階段の上から降りながら俺たちに挨拶するゼノヴィアに俺たちも返す。

 

「そういえばゼノヴィア。お前はいつ引っ越してきたんだ?」

「今日の朝方にマナと一緒に引っ越してきた。今は物置に泊めてもらってるけどこれからが楽しみだよ」

 

そういえばここにはカリフとカリフのおじさんとおばさん、小猫ちゃん、朱乃さん、ゼノヴィアにマナって子も一緒に住むことになったんだっけ?

 

確かに一般家庭でこの人数だとちょっときついかもね……俺も人のこと言えなくなってきてるけど……

 

「カリフのご両親が嬉々として物置を片付けてくれてね。すごく申し訳ないと思ったんだけど、私たちが来ると楽しみにしてくれていたみたいでね……」

「断れなくなっったと……」

「マナと同様、私自身の希望だったからお言葉に甘えたんだけど……すごくいい人たちで本当によかったよ」

 

うん、ゼノヴィアの言うことはすっごく分かる。カリフの両親に少し会っただけだけど本当に幸せそうな御家族でした。将来、家庭を持つとするならあれがまさしく最上級の理想の家族だと言ってもいいほどに。

 

ていうかカリフのご両親もゼノヴィアとマナのホームステイに賛成だったんだ!? いい人すぎる!!

 

そんな穏やかでほっこりした人たちからどうしてあんなに狂暴で最強の人類が生まれたのかは謎だ……世界の七不思議に認定しても問題ないと思う。

 

「あら? ということはマナも来てるのね?」

「うん。後は木場とギャスパー、先生とかはカリフと一緒に押し入れを物色しているから私も手伝おうと思って居間に行く予定なんだ」

「押し入れ?」

「なんでも、探し物らしい」

 

う~む、今回呼ばれたことに関係しているのかも……でも、これで今日は物騒なことにはならないと分かったので胸のつかえが取れた気がした。

 

「それじゃあ私たちも行きましょう?」

「はい」

 

俺たちはカリフたちのいる居間へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでいいかな? カリフくん」

「ん~……そうだったような違うような……とりあえずアザゼルんとこ行ってみな」

「うん、分かった」

 

俺たちが居間に来てみると確かに皆揃って物置を物色していた。

 

木場が物色し続けるカリフに声をかけてからすぐ近くでなにやら機械みたいな物をいじっているアザゼルに向かって行った。

 

「先生、これもです」

「おう、どれどれ……」

 

木場が持っていたのはカード。そのカードをアザゼルに渡すとそのカードを例の機械でスキャンしていた。

 

「けほっ! こほっ!……すごく煙たいです~……」

「マスク貸そうか? 小猫ちゃんもいる?」

「……ありがとうございます。マナ先輩」

 

別の押し入れにもギャスパー、マナ、小猫ちゃんが押し入れを総動員で物色していた。しかも皆は私服を汚さないように割烹着を着ていたのはなんだか凄い光景だった。

 

状況が分かりかねるので一番暇そうな先生に聞いてみる。

 

「あの、なにやってんすか?」

「おう、イッセー一向が来たか。おいカリフ、もうこの辺でいいだろ」

 

先生の言葉に皆は俺たちの方に向いて集まって来た。

 

にしても木場の野郎……割烹着姿でも爽やかイケメンオーラを垂れ流しやがって! イケメン死ね!

 

「何で睨んでいるんだい?」

「お前がイケメンだからだよ!」

「あはは……」

 

この野郎! 苦笑まで爽やかにこなしやがって!!

 

「おい、くだらねえことやってねえでそこら辺に適当に座ってろい」

「くだらないって……てかこれから何すんだよ?」

 

皆もジっとカリフに視線を向けると、アザゼルもカリフの横に移動していた。先生もグルなのか?

 

少しもったいつけてからカリフは自信満々に言い切った。

 

「我が家のリフォームだ」

「え?」

 

 

 

やっぱこいつのすることって常人には到底できえないことだね……って皆も思ったのか驚愕に目を丸くしていた。

 

 

 

 

 

 

「要約すると、こいつん家がホームステイの人数に対応できないと判断してな。唐突にリフォームってわけよ。いや~ビックリしたぜ。マナの保護者代わりにこいつん家に尋ねたら『狭いな。じゃあリフォームだ』とか二つ返事で決まっちまった!」

 

アザゼルが面白そうに笑っている中、イッセーたちはあまりのスケールの大きい話に驚愕と呆れを見せていた。

 

「ていうか決めたの昨日って……計画性も何もあった物じゃないわね……」

「決めたら即行動! それがオレの理念でね。文句ある?」

「いや、そこはいいんだけど……ていうかお前、金はどうすんだよ?」

 

イッセーに問いていると代わりに隣から木場が耳打ちしてきた。

 

「実はね……さっき僕たちが探してたのってクレジットカードなんだ」

「クレジット?」

「うん。朱乃さんたちから聞いたと思うけど、カリフくんって10歳越えない内に世界を一人旅してたって聞いたよね?」

「ああ、うん」

 

木場の解説にそんな逸話を初めて聞いたゼノヴィア、マナ、ギャスパーの三人は驚きのあまり一緒に噴き出した。

 

「10って……さ、流石というべきか豪胆な子供だと感心すればいいのか……」

「す、凄すぎます……引き篭もりの僕にはとても真似できません……でも、男らしいです~」

「うわぁ……本当……なのかな?」

『う~ん……ちょっと突飛すぎて嘘臭いかな~……』

 

マナの別人格・ガガガは半信半疑のようだが周りの面子の反応を見る限り本当のことなのかな?……って思ってしまう。

 

「はい……」

「え? これは?」

「さっき押し入れから見つけた……見てごらん」

 

マナが疑っていることに気付いた木場が数枚の写真をマナに渡す。

 

それに釣られてイッセー、ギャスパー、ゼノヴィアも一緒に覗いてきたので写真を覗くと……

 

 

「「「「……」」」」

 

銃やらマスクやらで武装した兵士と思しき十数人が一人残らず縛り上げられて地面に転がっている写真の中でカリフだけがピースして満面の笑みを浮かべていた。チンマイとした見た目からして小学生の頃であろう。

 

何だか無邪気な笑顔と一緒に写る死屍累々の映像に皆は言葉を失っていた。

 

その写真をアザゼルは背後から取り上げ、眺めながら言った。

 

「俺はこの頃からカリフと関わっていたからある程度の金の動きなら分かる。確かこの頃は紛争地帯に赴いたカリフがテロ組織を根絶やしにした挙句に再起不能を狙って金品類を全て没収、兵器を強制解体させて市場に競りに出して稼いでたとか……後はそこら辺の紛争地帯の軍に自分の武力を売り出して有り得ないほど儲けてたっけな」

「マ、マジすか?」

「大事なことだから言っておくけど、当時は九歳だ」

 

子供なのにどんだけシビアな生活を送ってたんだよ……心の中でツッコんでいるとアザゼルの追憶は続く。

 

「確かどっかの国では今でも軍内部で『軍神』として恐れられたりとか、ローマ法王、中国主席、アメリカ大統領、総理大臣相手に不可侵条約を個人的に結ばせたとか……多分確実だ」

「ろ、ろ、ろ、ローマ法王!? 主席? 大統領ぅ!? え!? なにそれ初めて聞いたんですけど!?」

 

皆もさらに面白い顔で驚愕しているとニヤニヤとイッセーたちの反応を楽しんでいるカリフの代わりにアザゼルが真相を話す。

 

「いや~、こいつ、日本の国会だとか国の中心地に侵入してはボディガードやらを挑発しては全員ブチかまして自分の力を誇示してたらしいんだよ。それを世界中でやってな」

「あの頃はちょっとヤンチャだっただけだ。思いつきで百人組手だとかやってみてね~」

「え……っと……そうなんですか……?」

「まあ、こいつは国のトップの間では有名人だぜ? ボディガードとしては優秀どころか天職なんじゃないかと思わせるほどのレベルだ」

『『『……』』』

 

もう何も知っても驚かないとカリフに対する耐性を見に付けてきたと思ったであろうがとんだ大違い。

 

カリフのさらなる真実にリアスたちはどっと疲れていた。

 

「ま、そんなこともあってこいつは超が何十個も付くほど金を稼いでいるのは間違いない。設けた秘匿回線で首脳陣やら軍関係者やら警察機構からカリフの勧誘が半端じゃねえしな。そこで超高額バイトとして日本に換算すれば時給一億円なんて珍しくねえからな」

 

トドメと言わんばかりにアザゼルが告げるともはや納得するしか無かった。

 

そんな経歴があるなら金なんて腐るほどあるのも頷ける。ただ、普通の人に言っても到底信じてもらえないだろうが……

 

「てことは、俺たちの特訓って……」

「一時間一億円のめっちゃ有り難い教導だよ。充分に味わっておきな」

「あはは……」

 

カラカラ笑うアザゼルにもう笑うしかなかった。

 

一時間に一億円払ってでも手元に置いておきたい最高戦力……カリフ

 

そんな大物がこんな身近にいるなどとだれが予想できようか……

 

「あらあら……私でもそんな逸話は初めてですわね……」

「……やっぱり存在そのものが規格外……」

 

古参の同居人にも少しヒかれるほどの逸話であるが、ここで皆の心は一つになった。

 

(((逆に考えるんだ。カリフだから仕方ないさ……と)))

 

皆はこれ以上考えるのを止め、本来の目的であるリフォームの話に入ろうとする。これ以上非現実的な事の連続で目的を見失いたくはなかったからである。

 

「それなら俺やアーシアや部長をなんで呼んだんだよ? お前の家に住んでるってわけでもないのに」

「まあ、ただのアンケートだ。正直、どう改築すればいい家になるだとかオレにはよく分からんからな。皆の希望に沿えばそれなりにいい家になるだろう」

「なんて安直な……でも、そういうことなら別にいいんだけどよ……親の意見の方が有力じゃないか?」

 

イッセーがそう言うと、カリフはポケットの中から紙を一枚取り出した。

 

「読んでみ」

「?」

 

渡された紙を広げてみると、たった一言だけ書いてあった。

 

『息子や朱乃ちゃんたちが幸せになれる家 by母』

『息子がいなかった空白の十年間を埋め合わせるこれから皆で歩む人生 by父』

 

 

「どう思う?」

「ええ話や……」

 

リアルでイッセーも切実であり、愛情深い要求に涙した。本当に世界一幸せなカップルでなによりです。ごちそうさま。

 

「ふわぁ……いいですねこういうの……」

「えぇ、素晴らしい家族ね……私もこういう家族を作りたいわ……ねえイッセー」

「そうですね……でも感動に間をさすようで申し訳ないのですが、これ、息子の冗談と思われている可能性が大ですよ?」

 

一般人の親からしたらこれもカリフとのじゃれ合いのつもりで書いたのだろう……結果、リフォームに行きついた原因の一つなのかもしれない。

 

(鬼畜家のおじさん、おばさん……もっと息子のことを把握した方がいいですよ……幸せならそれで問題ないのですが……)

 

心の中でイッセーが物思いに耽っていた。

 

「まあ、風呂を少し大きく、最新鋭の設備にしてキッチンも設備を増やしてマッサージチェアと長野の温泉旅行チケットということにしよう。それで、次はオレの要望だが、例としてはこんな感じで書いてくれや」

 

カリフの取り出した紙をテーブルに広げ、皆が覗き込む。

 

『拷問部屋』

『おしおき部屋』

『解体部屋』

『火葬部屋』

『培養室』

『地下牢獄』

『イッセーを惨たらしくボコボコにする部屋』

 

「こんな感じで」

「お前は自宅をモンスターハウスにする気かあっ! さっきのご両親の要望聞いてた!?」

 

イッセーが鋭くシャウトしてカリフに詰め寄る。

 

「要は皆が安心するアットホームを望んでるのにお前はここでなにしようとしてんの!?」

「オレにだってやりたいことはいくらでもある」

「やりたいことって何!? 拷問部屋とおしおき部屋って何!? 解体って何を解体すんの!? 火葬部屋で何を火葬すんの!? 培養室で何を育てんの!? 地下牢獄で何を幽閉すんの!? そして最後の要望なにこれ!? 俺だけを標的にしてんの!?」

「どうせ気付いてんだろ!?」

「いやだー!! こんな連想ゲームしたくねーよ! 明らかに一定の人物をボコボコにして監禁して怪しげな実験やって、拷問やおしおき喰らって解体されて火葬されるーー!」

 

最悪のシナリオしか浮かんでこない地獄にイッセーは悶えていると小猫がさり気にカリフの服を掴む。

 

「……そんなのあったらおじさまたちが怖がるよ。だからイッセー先輩の部屋以外は変えた方がいい」

「小猫ちゃん? それって俺に死ねって言ってんの? 皆聞いた? この子俺に死ねって言ってるよ?」

「うむ……それもそうか……」

 

二人の冗談(?)にイッセーが騒ぐ中、朱乃が手を上げた。

 

「あの……これでいいでしょうか?」

「ん? どれどれ……」

 

『ピンク部屋』

 

「朱乃さーーーーーーーーーーーん!」

 

イッセーの腹からのシャウトに関わらず朱乃は顔を紅くさせる。

 

「もちろん、普通の部屋で誰かに見られるかも……って緊張感を持ったままの秘め事も魅力的ですが、やっぱり二人だけの空間も欲しいので……」

「じゃあ一応採用ね『談話室・盗撮、盗聴電波をシャットダウン様式(二人用)』っと」

「お前朱乃さんの要望を全っ然理解してないだろ!?」

「ふふ……それでも二人だけになれる部屋ができただけでも良しとしましょう。うふふ……」

 

朱乃は艶やかに笑っていると次にゼノヴィアとアーシアが手を上げた。

 

「こういうのはどうだろう。『簡易型の教会仕様』」

 

それにはイッセーは少し意外そうにする。

 

「アーシアも同じなのか?」

「はい! 何も教会そのものではなくて、中身を教会の宿舎みたいにして欲しいというのがあります」

「私たち元・信徒は昔馴染みだから落ち着くんだよ」

「へ~、なんだか面白いな」

 

イッセーが少し面白そうにしている中、カリフはこれもメモしていた。

 

本気で作るつもりなのか?

 

そうやって皆との意見交換は正午にまで及んだ。

 

 

 

 

 

正午、意見を出し尽くし、協議に協議を重ねた結果、以下の項目を建築することとなった。

 

『イッセーの家を転移魔法で繋ぐ魔法陣部屋 byリアス』

『ゲーム、マンガ部屋 byイッセー』

『稽古部屋 by木場』

『一人になれるダンボールのぎっしり詰まった安らぎの部屋 byギャスパー』

『談笑部屋 by朱乃&アーシア』

『開発・解析・実験部屋 byアザゼル』

『それなりに広い部屋 by小猫&ゼノヴィア』

『魔術本の書斎、魔法の実験部屋 byマナ』

『核シェルター、広い風呂、拷問部屋、処刑場 byカリフ』

 

 

でかでかとひとまとめにした紙に書き込み、皆で見つめる。

 

『『『おぉ~……』』』

「じゃあこんなんでいいか」

 

最後の方は色々と突っ込みたい所もあるけど、なんだか本気でゴージャス感溢れる家が目に浮かぶ。

 

皆で協議しまくった結果、なんともカオスな構造になるのは間違いない。

 

「アザゼル、こんな設備だが費用は足りるか?」

「足りるも何も……充分余るレベルだな。まだまだ一割にもとどかねえよ。あ、あと近辺住民のことなら既に平和に解決済みだから安心しな」

「マジでどんだけ蓄財してんだよ……もう色々と突っ込んだら負けかなって思うし……」

 

もう放っておくのが一番……そう思ってイッセーは平和に事が解決したことに安堵の息を吐いた。

 

「そうは言うけど僕は結構楽しみだよ? 皆で決めた希望がそのまま形になるって言うのもいいんじゃないかな?」

「はい! それでリフォームはいつやるんですか?」

 

嬉々としてギャスパーがカリフに向き直る。だが、全員はその先の光景に絶句してしまった。

 

「あれ?」

「あら?」

 

疑問の声が上がるのも無理は無い。

 

なぜならさっきまで普通の一般家庭に置かれているような家財道具の全てが姿を消していたのだから……

 

「あ、あれ? 先生……なんだかこの家、スッキリしてません? さっきまでテレビとか色々あったと思うんですが……って何してんすか?」

 

イッセーが突然、前触れも無く起こった超常現象に顔を引き攣らせてアザゼルに向き直る。

 

すると、そこには既に自分の荷物をまとめていたアザゼルとカリフがさも当たり前のように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何って……これからリフォームだろ?」

『『『……は?』』』

「てな訳で、お願いしまーす!」

 

未だに状況に追いつけていない面子を放ってカリフがだれかに叫んだ。

 

その瞬間、地響きが鬼畜家を襲った。

 

「な、なな何ですかこれ!?」

「あらあら……なんでしょう……」

「ひぃぃ~! 何ですか~!?」

 

朱乃は困り顔で少し狼狽する中、イッセーとギャスパーは抱き合って恐怖に耐えていた。

 

周りの皆が警戒し、己の武器を展開させようと椅子から立ち上がった時だった。

 

 

 

 

天井を突き破って『何か』がイッセーたちの背後に落ちた。

 

『『『……』』』

 

突然、後ろから轟音とミシミシと床を破壊する音に皆固まる中、アザゼルとカリフだけが比較的冷静だった。

 

「ほら、んなとこに突っ立ってると工事の邪魔だぞ?」

「こ、工事って……まさか……!?」

 

リアスの驚愕に二人がニヤっと笑う。

 

「これからこの家は生まれ変わるんだ」

 

楽しみにしていたリフォームが予期していなかった時期に開始された。

 

 

 

リフォーム計画立てたその直後、工事開始

 

 

 

 

 

「はい! オーライ! オーライ!」

「ほら! そこに移転魔法陣作って!」

「発注品の蓬莱木の柱届きましたーーー!」

 

今まさに急ピッチでカリフの家のリフォームが進んでいるのだが、皆はその光景を呆然と見つめていた。

 

「皆の意見をまとめてすぐって……あなた随分と急ぎ過ぎじゃないかしら?」

「そうか? セラフォルーが経営するこの建築会社にかかればどんな豪邸だろうと一日でできると聞いたから親が帰る前にやっちまおうと思っただけだよ」

「……それでも、こんな大事なことは話してもらいたかったよ」

 

小猫が訝しげにカリフを睨むが、どこか物思うカリフの表情に目を丸くした。

 

「……事前にシトリー建設会社の奴らが下見に来たんだけどよぉ……この家、あと何年かで倒壊する恐れがあったってよ」

「「え?」」

 

まさかの一言に今まで住んでいた朱乃と小猫が驚愕する中、カリフはショベルカーで壊されていく我が家を見つめる。

 

「当時の建設会社は度重なる欠陥工事の発覚が基で倒産しちまって、顧客データも処分されちまってたから謎だったらしいんだがうちもそうだったらしい」

「でも、そんな不便なことはありませんでしたわよ?」

「オレも最近まで気付けなかったからそう思うのも無理ねえかもしんねえが、柱から若干の腐敗臭が匂ったあたりからちょっとな……」

「……そう……でしたの」

 

朱乃と小猫は十年も住んでいた思い出深い家が倒壊する光景に少し寂しさを覚えた。

 

事情を聞いてからは仕方ないと思うも、やっぱり見慣れた家が形を変えていくというのも複雑な気分になってしまう。

 

「でも、十年もお前らや親共を雨風、雪、台風、地震から守ってくれてたんだよな……」

「……うん」

「あんな酷い手抜き住宅にも関わらず十年も耐えたんだからな……もう休ませてもいいだろ」

「そう……ですわね」

 

朱乃、小猫、カリフは目の前で崩れていく思い出の詰まった我が家を目に焼き付けて昔のことを思い出していた。

 

カリフはそんなに住んではいなかったが、この世に転生した直後にこの家に連れて来られた。

 

 

 

 

 

 

『ほ~ら、今日からここが私たちのお家でちゅよー』

 

 

 

『母さん! カリフがもう立ったぞ! しかもバク転までして荒ぶってる!』

『ふふ……将来はオリンピック選手にでもなるのかしらね』

 

 

 

『やあ、おはよう小猫ちゃん』

『……おはようございますおじさま』

『ねね、今日スーパーで小猫ちゃんに似合いそうな服を見つけてきたの。着てみて! 絶対に可愛いと思うから』

『え、でも悪いです……』

『遠慮はいらないよ小猫ちゃん。親子で遠慮するのはおかしいじゃないか?』

『で、ですが……』

『いいのよ。あなたのお姉さん……黒歌ちゃんも小猫ちゃんも、夢に向かっているカリフも皆みんっな私たちの家族なんだから』

 

 

 

 

『そうか……君が昔に引っ越してからバラキエルさんと朱里さんが転勤で朱乃ちゃん一人で……』

『はは……お恥ずかしいお話です。またこの街に私だけ戻ってくることとなったのでご挨拶に来ました……』

『まさか朱乃ちゃんがこんなに美人になって戻ってくるなんて……カリフもいたらさぞ喜んだでしょうに……』

『いやいや、あの時の朱里さんの遺伝子を忠実に受け継いで美人になったね』

『うふふ……ありがとうございます』

『それで、ここで住む場所決まったのかい? もし決まってないのなら家に来なさい』

『え、でもそれは……』

『お父さん。朱乃ちゃんには住む場所はもう決まってるって言ったばかりですよ……だけど、私もたまに遊びに来てほしいわ』

『その……ご迷惑では……』

『いいんだよ。僕たちは全力で君を歓迎するよ』

『むしろ謝るのは私たちの方。一緒に息子の帰りを待ってて欲しいっていう私たちの我儘になっちゃうわね』

 

 

 

 

 

 

 

 

『母さん。カリフってやっぱり他の子たちと違って元気すぎるって』

『いいじゃないですか。皆が変な顔しても私たちの息子は自慢の息子だって決めたじゃないですか?』

『もちろん、分かってるよ。ただ、これだけ元気だと将来何になるんだろう……てね。はっはっは……』

『ふふ……そうですね。この子がどれだけ人と違っても、この子が元気で、道を外さなければ私たちの自慢よ……』

 

 

 

 

 

『愛してるわ』

『強い子に育つんだぞ~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なってやるさ……世界一の息子に……」

「?」

「……何か言った?」

「いや、ただの独り言だ」

 

昔を思い出しながら立ち上がると、カリフは再び決意を胸に固める。

 

ゼノヴィアとマナに向き直る。

 

「明日からはお前らも正式に鬼畜家の一員となる。長い付き合いになるだろうが……まあよろしくっことだ」

「あぁ、こちらこそ。明日からお世話になるゼノヴィアだ」

「こんな無茶な申し出を受けてくれたことに感謝します。私はマナと言います」

 

カリフは二人の改まった自己紹介に不敵の笑みを浮かべる。

 

そして、イッセーたちに向き直った。

 

「よし! 今日はイッセーの家で寝泊まり決定だ! すでに荷物は魔法陣で送っておいた!」

「って、おい! お前最初は今日はホテルで泊まるみたいなとか言ってなかった!?」

「考えてみれば明日は休みだからな。今日くらいは羽を伸ばしてやる」

「あらあら、面白そうですわね」

「……お邪魔します」

「カリフが行くなら私も行こうかな」

「お、お邪魔してもいいかな? 兵藤くん」

「あら、面白そうじゃない。ねえ? アーシア」

「はい。これがお友達でやるお泊まり会斗言うものですね! 感激です!」

 

美女軍団は全員決定

 

「あはは、面白そうだから僕たちも行こうっか」

「あわわ……僕もイッセー先輩の家には興味があります~」

「じゃあ俺もお邪魔しちまおうっかな?」

 

木場、ギャスパーにアザゼルもイッセー宅に突撃決定

 

 

「うええ~!? 俺んちこんなに入らねえんだけど!?」

「床に布団でも敷けばいける! 問題ない!」

「問題ありまくりなんだけど!?」

 

 

辺りはすっかり日が沈んで暗くなっている中、オカ研メンバーは騒がしくも楽しいひと時を満喫していた。

 

 

 

今日も世界は平和に過ぎていった。


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