ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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今更ですが、良ければ誤字脱字の指摘をお願いします。

自分では調べきれないので


バランス・ブレイカーと騎士の決意

フリードたちの襲撃から間もない頃、カリフと小猫が鬼畜家へと向かっていた。

 

「カリフくん……」

「……」

「……」

 

小猫の呼びかけにも何も答えないまますぐに鬼畜家に到着した。

 

だが、鬼畜家の周りには想像絶する光景が広がっていた。

 

「これは……」

「……」

 

鬼畜家の周りを何やらゾンビの群れのように取り囲み、物量差で突破しようとしている人がいた。

 

その量はもう百人はくだらなかった。

 

鬼畜家のドアを叩いたりして押し破ろうとする光景に小猫は手を口に当てて驚愕し、カリフは無言のままだった。

 

「とりあえず入るぞ」

「……うん」

 

再びカリフは小猫を運んで二階の窓から帰還する。

 

何事も無く自室へ入って小猫を降ろし、共に一階へ戻る。

 

「なにがどうなってんだこれ?」

「……多分、堕天使の仕業だと……!」

「そこか!」

 

突然、物陰からカリフたちは攻撃を仕掛けられ、小猫が咄嗟にガードする。

 

「くっ……!」

「ちぃ!」

 

互いに苦悶の声を洩らしながら相手を見据える。

 

小猫に攻撃したのはゼノヴィアだった。

 

「やはりお前か」

「なんだ君たちか……すまないね。また奴等かと思って」

「それはいい。それよりこの状況はなんだ?」

 

軽く謝罪しながら小猫に放った蹴りを引っ込める。

 

その際のカリフの質問にも答える。

 

「この家の周りの人たちはここいら近所の一般人……バルパー・ガリレイに洗脳されているようだよ」

「……事前に調べてたか……考えたな……畜生の分際で……っ!」

「何か手立てはありますか?」

 

小猫が聞くとゼノヴィアはリビングで縛りつけている一般人とソファーの上で丁重に寝かせている両親を見やる。

 

「どうやら気絶……脳に衝撃を与えてやれば洗脳は解けるらしい。長時間かける丁寧な洗脳じゃないことが唯一の救いだよ」

 

どうやら交戦したのか少し疲労を感じさせて溜息を吐く。

 

「あなたはさっきの人とエクスカリバーを追わなくていいんですか?」

「イリナか? いや、さすがに見知らぬ輩をここまで歓迎してくれた人たちを見捨てられるほど薄情じゃないさ」

 

小猫の問いに答えながら体を起こして戦闘体型に入る。

 

今までは修道服を着ていたが、それを脱ぎ捨ててボンテージ姿になる。

 

「さあ、まだまだ数は多い。悪魔は勝手にやっててくれ」

「……あくまで“協力”は無しですか。いいでしょう」

 

教会側としては悪魔にお願いや協力などもってのほか。

 

小猫とゼノヴィアも互いに似たような状況から二人は“協力”などせずにあくまで“各個撃退”の方針で行く予定。

 

満を持して二人は外の暴徒たちに向かおうとした時だった。

 

「ただいま」

 

固く閉ざしていたドアからさっきまで傍にいたはずのカリフが入って来た。

 

「……え?」

「あれ、何をして……」

 

ポカンとした様子の二人に対してカリフは拳を解いてフルフルと手首をほぐす。

 

「なにって……外のは気絶だけでいいのだろう? だから……」

 

ドアを開けてありのままを見せてやった。

 

「仰せのままに」

 

百人以上の洗脳された兵隊は全て気絶させられていた。

 

しかも、一人一人が丁寧に縄で特殊な縛られ方で放置させられていた。

 

「……いや、もう驚かないとは決めてたけど……」

「ばかな……一分すらも経ってないというのに……」

「単純な洗脳だけあって行動も単純だったからな、割と早く片付いた」

 

信じ難い物を見ている二人を置いてカリフは呑気に寝ている両親の元へと向かった。

 

そこでは二人が寄り添って気持ち良さそうに眠っている。

 

「ふん、こっちの気も知らねえで……」

 

思わず愚痴を零していると、母親の方がフワフワとしたいつもの雰囲気でカリフにハグしてきた。

 

「カリフ~♪」

「……こういうのは寝言だけにして欲しかったぜ」

「カリフ~♪」

「親父に抱きつかれるって誰得?」

 

二人共寝ても覚めてもお変わりない様子だった。

 

普段の両親は十年以上も断絶していた息子の交流がついに叶ったのでしょっちゅう息子のカリフに甘えてくる。

 

母に関しては叱るどころかカリフの成すこと全てを微笑ましく思い、愛おしく思っているほど。

 

両親は小猫にも朱乃にもそんな感じで愛でている。

 

要は極度の親バカである。

 

その親バカが寝言にまで現れるのだから流石のカリフも認めるしかなかった。

 

―――これは筋金入りだ

 

そう思っていると、部屋の中で二つの魔法陣が出現した。

 

一つはグレモリーのだと分かるが、もう一つは初めて見る物

 

両方から現れたのはオカ研メンバーとソーナと匙の二人だった。

 

「やっと追いついたわ」

 

リアスが溜息混じりにカリフに詰め寄る。

 

「おじさま! おばさま!」

 

その間に朱乃はカリフの両親へと駆けよる。

 

二人の容体を確認し、異常がないと分かって胸をなで下ろす。

 

「良かった……何も無くて……」

「堕天使にここまでの勝手を許すなど……不覚!」

 

自分の失態と責任を感じるソーナだが、その間にもカリフは両親を起こさないように担ぐ。

 

「よくもまあここまで寝れるもんだ……よいしょ」

 

二人をそのまま担いで寝室へと運んでやる。

 

そんな姿を見てイッセーと匙は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔になった。

 

「いくら鬼でもあんな一面があるんだな」

「親にはやっぱ勝てないってことか?」

 

二人はリアスとソーナに叩かれた尻の痛みでペンギン歩きになっていた。

 

「全く……匙も騙されたならそう報告しなさい」

「うぅ……すみません会長……」

「まったく……彼にもこういうことは控えるように言っておかないと」

「悪いわね。ソーナ」

 

ソ-ナが匙を叱っていると、カリフは何事も無く戻って来た。

 

朱乃が聞いてくる。

 

「お二人は?」

「な~んも、いつも通り呑気なものさ」

 

その答えにひとまずは安心だと朱乃と小猫とゼノヴィアが胸を撫で下ろす中、ソーナがカリフを睨む。

 

「カリフくん。今回の件ですが、あなたの行動には見過ごせない点があります。あなたの行為が匙を殺し、三竦みの関係を壊すかもしれなかったのですよ?」

「それくらいは知っている」

「知っているって……本当に反省しているの?」

 

カリフの答えに流石のリアスも雰囲気を一転させて怒気を帯びる。

 

二人の姿にイッセーも匙もその他のメンツも固唾を飲む。

 

だが、当の本人はどこ吹く風かいつも通りである。

 

「オレは人間だから、そっちがどうなろうとあまり関係の無いことでね。ただ、一つ言えることがある」

 

雰囲気が変わった。

 

 

カリフは歯茎を露出するくらいに歯軋りし、その鋭利な牙を露わにする。

 

表情もさきほどの両親に向けられるような柔らかな物ではなく、明らかに敵意、殺意をありったけ込めた表情へと変貌する。

 

『『『!?』』』

 

カリフの“鬼”とも呼べる“野性”を幻視した一同は戦慄を覚えた。

 

(なんて威圧! この子本当に人間なの!?)

(純粋な怒りが私たちにダイレクトに伝わってくるっ! 不味い! この殺気に当てられたら聖剣がっ!)

 

初めて見るカリフの力の一端に悪魔としての本能が“逃げろ”と警鐘を鳴らし、聖剣までもが独りでにカタカタと震えだす。

 

『これほどの殺気……こんなもの人間を越えてるぞ』

『あぁ……やっぱこいつ規格外だろ……』

 

恐怖に耐えながらドライグと話すことで精神を保っている。

 

カリフは周りの重圧に耐える面子にも目もくれない。

 

 

 

「殺す……」

 

日常的にも悪ふざけで使われるような陳腐な言葉ではなく、本気で実行しようとする“凄み”を含ませていた。

 

一同はそんなカリフに戦慄し、次にかける言葉を失った。

 

「……とりあえず各々で奴等が尻尾出すまで待機しよう」

「そ、それならあなたも……」

「いや、オレは一人でいい……今はそんな気分じゃない」

 

明らかに怒気を隠そうとせずにソファーの上で横になる。

 

「少し寝る……」

 

カリフは顔の上にそこらへんの本を取って乗っける。

 

明らかに苛立った場面を自分たちに見られたくないのと少しでも落ちつこうとしているのが丸分かりである。

 

「で、ですが話は終わっては……!」

 

ソーナはそんなカリフに物申そうとした時だった。

 

カリフは鋭い眼を少しだけ開けて凄む。

 

「話は終わった……心配せずともこの件はオレの手でカタ付けてやる」

「……」

「これ以上文句があるなら実力で話聞かせてみろ。これ以上は余程でもない限りは話は受け付けん」

 

そう言ってカリフは頑として耳を貸さない。

 

こんなカリフにリアスたちは溜息を吐く。

 

「はぁ……これはもう何言っても無駄ね」

「まったく……困ったものです」

「でも、今回は堕天使側の問題と言うことは明らかだから、今回はそれで良しとしましょう……しょうがなくだけど……」

「はぁ……こんなことしてたらいつか戦争になるわね……」

 

リアスとソーナはこれ以上の追究は無駄だと感じたようで頭を抱える。

 

だが、今は愚痴を言っている場合じゃない。

 

二人は部員たちに向き直る。

 

「小猫と朱乃、イッセーは私と待機、堕天使が動いたらこの街で好き勝手やったことの報いを与えてやるのよ」

「「「はい」」」

「匙、我々生徒会も関わった以上は全力を尽くします。すぐに動けるよう部員に通達をお願いします」

「分かりました!」

 

各々はそれぞれの魔法陣で帰還していく。

 

そこの部屋には残されたゼノヴィアとカリフだけとなった。

 

悪魔の会話に入ってこなかったのだが、カリフ相手となると口を開く。

 

「私も個別で待機しておくよ。君も気を付けて」

 

そう言い残して鬼畜家を後にした。

 

「……バルパー・ガリレイ……か。覚えたぞ」

 

そう呟いて少しの浅い眠りに着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、夜を迎えるような時間になった。

 

突如として、堕天使の気が活性化した。

 

「!!」

 

カリフはソファーから跳び上がるように起きて時計を見る。

 

多分、三、四時間は寝ていたのだろう。

 

待ちに待った瞬間がやってきた! 自分の信念を舐めくさった堕天使の気を感知して起きた!

 

眠っていた頭にありったけの脳内麻薬をブチこんで覚醒する!!

 

カリフは何を言うでもなくその場から瞬間移動で消えた。

 

 

 

 

 

 

 

カリフが辿りついた所は駒王学園

 

いつもは生徒で賑わっている学園も今回は重苦しい重圧で包まれている。

 

しかも、大がかりな結界が張られて中にはいるのが少しめんどくさい。

 

「めんどくせぇ……一気にぶっ壊して……」

 

はやる気持ちを抑えずに破壊で結界を破ろうとした時だった。

 

「待て待て! 壊すのストップ!」

 

突如として匙がカリフの前に躍り出て体を張って止める。

 

匙の姿を目にしてカリフが一言

 

「どけ」

「う……いや、こればかりは駄目だ!」

 

怒気と殺気と覇気をブレンドし、おどかす程度の通告も匙にとっては失神寸前に追い込まれるくらい怖い。

 

それでも恐怖に耐えて両手を大きく広げて制止を図る。

 

「……」

「た、頼む……抑えてくれ」

 

頑として動きそうもない匙にカリフは拳を治める。

 

それに匙は溜息を吐いて安堵していると、そこへソーナがやってくる。

 

「すみません。この結界は中の堕天使を出さないための処置なのですよ」

「ふ~ん、臭い物には蓋ってわけか」

「言い得て妙です。中には堕天使幹部のコカビエルが力を解放しようとしています。そんなことがあればこの地方地区なんて容易く破壊されるでしょう」

「ほう……」

 

言われてみれば確かに気を探るとでかい気配を感じる。

 

それに、中には木場とゼノヴィアの気までもが紛れている。

 

そして、あの今にも殺してやりたいバルパーの気も捉えた。

 

「……オレも入るのだが?」

「……よろしいのですか? ここからは人間の住む世界が違います。相手は太古の戦争を生き抜いた堕天使、たとえあなたでも……」

「尚更戦ってみたいものだ。今までで強い部類には入りそうだ」

「既に魔王さまにも打診はしましたが?」

「キャンセルしておけ。その前に間違いなくカタが付く」

 

あくまでカリフは勝つ気満々でいる。

 

本気で行くようであり、もうソーナも止められないと考えに至った。

 

「分かりました。それではあなたを送ります」

「よし」

 

カリフは腕を組んで結界を見守る。

 

中では気の変動がまたおかしくなったのを感じてウズウズしていた。

 

「気が増え……いや、気にしては薄い……だけど存在感はある。幽霊に似たような……」

 

ただ、中で何が起こっているのか、そんな好奇心を胸に開いた結界の中へ入る。

 

 

 

 

 

 

一方、結界内では様々な力が渦を巻いていた。

 

フリードは新たに統合したエクスカリバー、バルパーの投げつけてきた白い球、集まったグレモリー眷族、そして堕天使コカビエル

 

学園は既に戦場と化し、イッセーたちはゼノヴィアを加えてバルパーから真実を聞かされていた。

 

途中で現れたケルベロスも全て葬り去った所だった。

 

「私はね、エクスカリバーが好きなのだよ。エクスカリバー伝説にも胸を躍らせるほどに。だからこそ自分に聖剣使いの適性が無いと知った時の絶望と言ったらなかった」

 

バルパーは首を横に振りながら続ける。

 

「それでも私は聖剣使いに憧れ……至ったのだよ。それなら私が聖剣使いを造ろうとね……そして完成した」

「完成? あれは失敗したから殺したのだと……」

 

木場が怪訝そうに眉を吊り上げて問いただすと、愉快そうにバルパーは続ける。

 

「表向きはな……だが、研究を続けるにつれて私は聖剣を扱うのに必要な因子を発見した。だが、その因子は個人差で聖剣を扱うに達する量があまりに不足した。足りない物はどうすればいいのかと問われれば簡単だ。『集め』ればいい」

「なるほど読めたぞ……聖剣使いになるときに神からの祝福と共に体に入れられる物をこいつは……」

 

ゼノヴィアは忌々しそうに歯噛みすると、バルパーはより一層嘲笑する。

 

「正解だ聖剣使いの少女。因子を抜き取って一つに固めた結果がこれだ」

 

そういって懐から光輝く結晶……聖剣の因子を見せつける。

 

それを見た木場は目を鋭くさせる。

 

「それは……殺した同志たちのっ……!」

「そゆこと! ちなみにこの因子を色んなエクソシストに入れたんだけど俺っち以外の奴は皆死んじゃってね! そう思うとやっぱ俺はスペシャルでございますわぁぁ!」

「よりにもよってお前が生き残ったのかよっ!」

 

イッセーの忌々しそうな声も無視して笑い続けるフリード

 

「……そうやって自分の研究や欲望のためにどれだけの命を弄んだんだ……」

「だが、それで神側の聖剣の研究も大幅に進んだ。ミカエル共によって研究資料を奪われたがな」

 

木場は手を震わせ、憎悪の念と魔力を魔剣に込める。

 

「そんなに言うならこの因子はくれてやる。後は環境さえ整えれば量産できる。そしてその因子で聖剣使いを量産し、各地のエクスカリバーを集めて私を断罪した天使やヴァチカンに戦争を仕掛けてやる! そのためにコカビエルと手を組んだんだ!」

 

狂気の手本とも言える形相で歓喜しながら因子を放り投げる。。

 

そんなバルパーを皆が睨んでいたときだった。

 

「なんかややこしいことになってると思ったら……思い出話は近所付き合いでやれってんだコノヤロー」

 

そこには頭を掻いて面倒くさそうに登場するカリフがいた。

 

「カリフ!」

 

リアスがその名を叫ぶと、バルパーが興味深そうに呟いた。

 

「ほう、来たか。少年」

「ふん」

 

鼻を鳴らしてカリフは構える。

 

「何も問わず、聞かずに臨戦態勢か……せっかちなものよ」

「貴様なぞただの肩ならしに過ぎん。さっさと死ぬがいい」

 

そう言いながらゆっくりと歩いて近付いていたが、ここで何かの気を感じ取った。

 

「? これは……」

 

カリフの感じていた謎の幽霊の正体

 

木場が泣きながら抱いていた因子から現れた数多の魂

 

それらはすぐに人の姿となって木場を囲む。

 

これを見てだれもが予想できた。

 

「聖剣計画……統合された因子にひっついいてた魂が具現化したか……」

 

こういった魔法に関しては少し齧ったカリフでも分かる。

 

その中で木場は涙を流していた。

 

「皆……僕は思っていたんだ。僕だけが……生きてていいのかって……僕よりも夢を持った子もいて……僕よりも生きたかった子がいて……それなのに僕だけが生きててもよかったのかって……」

 

懺悔に近い木場の言葉を遮るかのように霊体の子の一人は木場に微笑みかける。

 

耳では直接聞こえないが、口の動きでなんとなく理解する。

 

「『僕たちのことはいいから君だけでも生きて』と言っています……」

 

朱乃も理解したようで、イッセーに通訳してやる。

 

そこから魂の少年少女はリズミカルに、それでいて優しく歌い始めた。

 

カリフは歌詞は分かっても何の歌か分からなかったが、アーシアには覚えがあった。

 

「―――聖歌」

 

木場は昔の日に戻ったように涙を流しながら聖歌を一緒に歌う。

 

幼き頃の唯一の楽しみであり、希望を保つ物。

 

そして過酷な生活の中で得た糧

 

悪魔である木場は聖歌を歌っているというのにダメージはなく、むしろイッセーたちですらその聖歌を心地よく思っている。

 

それに対してはカリフも同じだった。

 

(魂の安らぎ……これが人の為せる力……)

 

想像力、感受性が高いカリフはまるで緑に包まれた大自然に囲まれているような錯覚すら覚えた。

 

(……綺麗ではないか)

 

これほどにカリフを感動させる少年少女たちが殺された。

 

ただ、個人的な理由で……

 

(もしかしたらこの中にオレを楽しませるほどの可能性を秘めていたかもしれぬ奴がいたかもしれない……)

 

カリフは胸に手を置いて黙祷を捧げる。

 

(死んだのは仕方ない……可哀そうなんて慰めもしないし気の毒には思わない……だが、この感動をくれたお前たちに敬意を表す)

 

心の中で彼らを見送っていたとき、魂の子供たちがカリフを見て嬉しそうに微笑んだ。

 

『ありがとう―――』

『僕たちを弔ってくれたのは君で二人目だよ―――』

『見知らぬ僕たちに―――』

『最後の感謝をしてくれて―――』

『僕たちの仲間を守ってくれて―――』

『『『ありがとう―――』』』

 

今度は感覚に響くように声が届いた。

 

魂の子たちは木場とも向き直る。

 

『僕らは一人じゃない―――』

『聖剣を受け入れるんだ―――』

『怖くなんてない―――』

『たとえ神がいなくても―――』

『神が見ていなくても―――』

『僕たちの心はいつだって―――』

『一つだから―――』

『それでも不安だったら―――』

『僕たちを思い出して―――』

 

魂はやがて集まって一つとなり、木場を包みこむ。

 

ここでカリフは感じ取った。

 

木場の飛躍、進化を

 

「なんだ!? 何が起こっている!」

 

バルパーが驚愕する中、カリフは声に反応して向き直る。

 

「『心』ってのはいつもオレを楽しませてくれる……その躍動によってその『心』の持ち主を強くさせてくれる」

「何が言いたい!?」

 

カリフは溜息を吐いてバルパーを失望した目で見つめる。

 

「悲しく、つまらん奴だ……お前には『心』を理解できないようだな」

「そんな偶像的で非科学的な物など私の研究や計算には必要ない! 『心』などただのまやかしだ!」

「人は……生きとし生ける物は計算で生きてんじゃねえんだ。タンパク質とかレントゲンとか因子とかデータとか……『机上の空論』で図れると思うな!! 阿呆がっ!」

「!!」

 

カリフの威圧にバルパーは息を呑む。

 

「これが木場の『心』であり、得た『力』だ!」

 

カリフが宣言した瞬間、木場を包んでいた光が

 

 

 

闇夜を裂き

 

 

 

 

木場を祝福した。

 

 

 

 

それを見たバルパーは愕然とした。

 

「バ、バランス……ブレイカー……」


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