ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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はぐれエクソシスト

「は? 会長?」

「えぇ、今日もまた山に行くんでしょ? だからついでにこの回覧板とおはぎを持っていって欲しいの……あの方は私たちを随分とお世話してくださったし……」

「世話? いつ?」

「幼少時代のあなたの素行を大目に見てくれてたの」

「あぁ~……」

 

鬼畜家の昼下がり、修業へと向かおうとしていたカリフに母親が言った。

 

回覧板と町会長の好きなおはぎを持っていって欲しいと……

 

小猫は登校で不在だからいない。なので持って行って欲しい。

 

「めんど……」

「今日は焼き肉バイキングに行きましょう?」

「任された」

 

母親は既に息子を知り尽くしていたのだった。

 

それでいいのか戦闘民族……

 

カリフは回覧板とおはぎの包みを持って家を離れたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、俺こと兵藤一誠は夢へと向かって走り出していた。

 

俺は駒の中で最弱の兵士だった。

 

だけど、部長の話も思い出した。

 

レーティングゲームでは活躍さえすれば注目を集める。それは兵士も例外じゃない。

 

確実に成果を上げていけば出世する。

 

「うしっ! 頑張りますか!」

 

俺は今回の依頼者の家へと辿り着いた。

 

「ごめんくださーい。グレモリーの眷属悪魔でーす」

 

ドアをノックしてみるも返事はこない。

 

怪訝に思いながらもドアノブを回すと、カギは開いていた。

 

出かけてカギを閉め忘れたのか? だけど、ここはお得意さまって聞いたし、時間忘れて出かけるのもおかしい話だよな……

 

「おじゃましま~す……」

 

とりあえずこのままじゃ危ないからとりあえず一歩だけ入った。

 

「……」

 

その瞬間、何やら嫌な予感がした。

 

何やら人の気配が無い……だけどそれだけじゃない。

 

そんな胸騒ぎを押し殺して俺は家の中へと入った。

 

そして、廊下の奥のうっすら光る部屋へと導かれるように足を運んでいった。

 

そして、その部屋に入ってみると、そこの部屋の壁には何かが貼り付けられるようにぶら下がっていた。

 

そして……俺は人間の惨殺死体を見てしまった。

 

切り刻まれ、臓物らしきものが傷口から零されて貼り付けられた……

 

「ゴボッ」

 

俺はその場で吐いてしまった。

 

それはそうだ、逆十字の恰好で手足、胴体に釘を打ちつけられているのだから……

 

異常だ……こんなこと普通の精神じゃできねえよ!

 

血でできた床の水溜りと壁に描かれた血の文字に視線がいった。

 

「な、なんだこれ……」

「『悪いことする人はおしおきよー』って、聖なるお方の言葉を借りたのさ」

 

突然聞こえてきた声に振り向くと、そこには白髪の神父らしい男がいた。

 

「んーんー。これはこれは悪魔くんではあーりませんかー」

 

ニンマリ笑いかけてくて実に嬉しそうだ……だが、こいつの神父服を見て部長の言葉を思い出した。

 

悪魔祓い(エクソシスト)

 

神の祝福を受けた悪魔の仇敵……マズい……

 

これはどう考えても最悪の状況だ……

 

「俺はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属中の正義の味方で~っす♪ あ、でも俺が名乗ったからってお前は名乗らなくていいから。クソ悪魔の名前なんて俺の脳内メモリの中に保存する必要ないから、止めてちょ。大丈夫すぐ死なせてあげっから、最初は痛くてもすぐに快感になるから新たな扉を開こうZE」

 

なんだよこいつ! 気持ちわりい!

 

舌をダランと垂らしながら笑ってくる神父に嫌悪感しか生まれない。

 

「あの人……お前が……」

「あそこのお人は悪魔を呼びだす常習犯で取り引きまでしちゃったんですよ? そんな奴は人間としてクズ、論外! なら殺すしかあーりませんか?」

 

そ、そんなことで人を殺すのかよ!?

 

「俺たちを殺すのがエクソシストなんだろ!? それを人を殺すってなんなんだよ!!」

「はあぁぁぁぁ? 悪魔の癖に説教ですか? 笑っちゃった笑っちゃった♪ だって人間の欲望を糧にする悪魔はクズなんですよ? さらにそんなクズに頼っちゃうんですからもう終わり、首チョンパな訳で俺の財布も潤っちゃうんですよ? 最高じゃね? 最高じゃね?」

「悪魔でもこんなことはしない!」

「クソにクソ呼ばわりされたくないのですのことよん。悪魔がクソなのは太古からの常識なわけでございまする~」

 

そう言いながら神父は懐から拳銃と刃の無い柄を出す。

 

柄からはブォンと空気の振動する音と共に光の刃が現れた。

 

「さあ! 今夜のご注文は悪魔のみじん切りだよー! 出血大サービスぅ!」

 

そう言いながらこちらへと向かってきた時だった。

 

「あーらら、こんなに汚しちまいやがってまぁ……」

 

突然に聞こえた別の声にフリードの動きが止まる。

 

「あらら? お客さんですか?」

「うん、この回覧板とおはぎをな……」

「これはこれはどうも御苦労さま~」

 

何事も無いかのよう互いに神父と挨拶する影は……

 

「カリフ!?」

「よ」

 

そこには今度後輩になるよていの番長がいた。

 

「あらら、お二人はお知り合いですか~? 事と場合によっては……」

「ふむ……今日はこれといって用はないのだけどね……しばらく見学するか」

 

そう言って欠伸しながらソファーに座り……はぁ!?

 

「待てよ! この状況見て分かるだろ!? 今危ないんだって!」

「ですよね~」

 

必死に言い聞かせてもカリフは助ける所かソファーの上で胡坐をかきやがった!!

 

「いや、助けてくれよ! 俺たち仲間だろ!?」

「知らんね。オレがいつお前たちを仲間と言った? そういった慣れ合いを求めるのは止めていただきたい」

「はぁ!?」

 

信じらんねえ! こんな状況でオレを見捨てるのかよ!

 

「あらら、随分と嫌われてますなぁ? ですよね、誰がクズ悪魔となんて好き好んで仲良くなりますか? この子はよくできた人間でございますな~」

「冗談は止めろよ! お前ならこんな奴一撃で……!」

「甘ったれるな! 青二才が!」

「!?」

 

突然としてカリフが俺に怒声を上げた。

 

「お前は悪魔になってこの世界に自分の意志で飛びこんだんだ……お前の言う夢が簡単だと思ったか? ならこの世界から消えろ!! 今すぐに離れて関わらなければいい」

「な……」

「それでも夢を諦めないというのなら自分の力だけで勝て!! そこには一切の甘えも許さん! はっきり言って浮ついた考えで戦いを繰り広げられても目障りなだけだ!」

 

あまりに非情な一言に俺は呆然としてしまった。

 

その横では神父が爆笑していた。

 

「あーっはっはっは! やべえこの子最高! マジパねぇ! そうですよクソ悪魔きゅん♪ 君が悪魔になってしまった以上はずっと狙われ続けるネバーエンディングストーリーを演じなければなりません。なお、これはフィクションではありませんし途中退席もございませんのでご注意ください! 映画の前にはトイレに行っとけよ!?」

 

そう言いながら拳銃を俺に向けた時だった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

再び、部屋の入り口から女性の悲鳴、しかも聞き覚えのある。

 

俺はその子を知っていた。

 

「アーシア」

 

俺の声にあの時の金髪シスターがいた。

 

「かわいい悲鳴をありがとう! そういえばアーシアたんはこの手の死体は初めてですかねぇ。ならとくとご覧ください。悪魔に魅入られたダメ人間さんの末路を」

「そ……そんな……」

 

そしてアーシアがこっちを向いてくると、目を見開いて驚愕していた。

 

「フリード神父……その人は……」

「人? ノンノンノン、これはクソ悪魔くんよ」

「イッセーさんが……悪魔……?」

 

その事実が彼女の心を揺らがせる。

 

「え? 君たち知り合い? これはおったまげた! シスターと悪魔の許されざるこ・い?」

 

面白おかしそうに俺とアーシアを見る神父。

 

……知られたくなかった。

 

あのままずっと会わなきゃよかったんだ……俺はもう二度と会うつもりはなかったのに……

 

ごめんアーシア……俺は君を裏切ったんだ……

 

「ギャヒャヒャ! マジっすか!? こりゃドラマにしてはよくできすぎだろ!? こんな天然ものの映画がこんなところでやるなんてよぉ!! すぐに脚本を書かねえと!!」

 

そう言いながら再び斬りかかろうとしたが、それは意外な所で阻まれていた。

 

それは、目の前で俺を庇うように手を広げて神父と対峙する影……アーシアだった。

 

その様子に神父の表情が強張った。

 

「おいおい……マジですかアーシアたん……何してるか分かってますかぁ?」

「承知してます……ですが、この方は見逃してください……」

 

アーシア……俺を庇ってくれるのか?

 

「もう嫌です……悪魔に魅入られたといって人を裁いたり悪魔を殺したりするなんて……」

「はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!? バカこいてんじゃねえクソアマが! 教会で習ったろうが、悪魔はクソだって! お前頭にウジが湧いてんじゃねえのか!?」

 

フリードは表情を憤怒に染めていた。

 

不味い!! あれじゃあアーシアまで殺しそうな勢いだ!!

 

どうする!?

 

誰に確認してんだ俺は!! 答えは決まってんだろ!

 

「お前は既に決めているはずだ……答えを」

 

そこへ、俺の気持ちを悟ったかのようにカリフがソファーに寝転がりながら言った。

 

「……え?」

「は?」

 

突然口を開いたカリフに神父もアーシアも呆然となる。

 

「お前とそいつでは明らかに経験が違う……そこで問題だ。そんな格上の相手にどうする? 3択―ひとつだけ選びなさい

 

答え①ハンサムイッセーは突如駄目もとで神父をぶっ飛ばしてアーシアとやらの王子さまになる

答え②仲間が来て助けてくれる

答え③確実に殺される。現実は非情である」

「ありゃりゃ? クイズですか? 僕チンそういうのだ~いすき! 答えは③でファイナルアンサー! キャモ~ン!」

 

神父……お前はカリフの言いたいことを理解してない……

 

カリフ……お前は俺の気持ちを察したからそんなこと言ったんだろ?……こんなタイミングで言ったんだから……

 

お前は覚悟の無い俺に冷たい言葉をかけて考え直す時間をくれた……おかげで決心を考える時間ができた……

 

そして……俺も覚悟……決まったぜ

 

だから見てやがれ……俺の答えは……

 

「答え……①……」

 

目の前の女の子に守られるんじゃない……俺が……

 

「答え①!……答え①ぃっ!!」

 

アーシアを守るってことだ!!

 

俺はアーシアを後ろへ突き飛ばし、神器を発動させて神父にグーのパンチを飛ばしてやった。


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