ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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現る魔王少女

 

「にゃあ……今までお世話になったにゃ」

「そっか……まあ、いとこが見つかったのなら仕方ないけどね……」

 

ヴァルハラにて騒動が起きた後、鬼畜家では一つの進展があった。

 

「なんだか寂しくなるな……この家に子供がいなくなるなんて……」

「おじさま……おばさまにもまた会いに来ます。必ず帰って来ますから……」

「そう? 白音ちゃんがそう言うなら……ねぇ?」

「もう黒歌ちゃんからのお酌も減ってしまう~!」

「そんな泣かなくてもいいにゃパパさん。私もここ好きだから、またママさんの料理食べに来てパパさんと飲み明かしに来るにゃ」

「あら~、嬉しいわ~」

 

内容から察するに、黒歌は長い間世話になった鬼畜家を白音と共に出ていく様子である。

 

本当は、黒歌を眷族悪魔にしたいという悪魔が現れたからである。

 

この先、妖怪である自分たちがいることで鬼畜家に何らかの脅威が迫る可能性がある。

 

その可能性を示唆されたことで黒歌は嫌々ながらも悪魔への転生を決めた。

 

もちろん、鬼畜家と白音の保護が条件とした。

 

この真実は白音にだけ話して、鬼畜家には何一つ話していない。

 

目の前で号泣する父親とそれを宥める母親の姿に様々な想いが奔るも、これが一番の手だ。

 

白音も別れが辛いのか涙を浮かばせるも、弱音は吐かない。

 

気丈に振る舞う妹に微笑みが自然と浮かんでくる中、黒歌が時間に気付いた。

 

「じゃあそろそろ行くにゃ。時間にうるさい従妹だから……いこ、白音」

「はい……おじさま、おばさま……色々とありがとうございました」

「パパさんもママさんも元気でにゃ」

「うん。またいつでも来なさい……もし住むことになったらまた暮らそう」

「荷物はまた後で送ってあげるわ」

 

頭を下げると、父親も母親も頭を優しく撫でてくれる。

 

その温もりを愛おしく想いながらも、白音は黒歌と手を繋いで鬼畜家から離れていく。

 

その二人の後ろ姿を父と母は静かに肩を寄り添いながら見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、この頃の鬼畜家の一人息子はというと……

 

「餃子、シューマイ、春巻き、チャーハン……だぁーもう面倒だ! 全てもらう!!」

 

中国で露店巡りの旅を繰り広げていた。

 

そして、その傍らには……

 

「我……杏仁豆腐が食べたい」

 

何故かオーフィスがいた。

 

説明すると、ヴァルハラから出発した時、上空でオーフィスに会ってしまったということだった。

 

カリフはもうオーフィスに関してはどうでもよくなってしまった。

 

こいつはこいつで何を考えてるかは分からないし、なによりこいつとはどこか通じる部分がある。

 

そう思い、完全にマスコットみたいにしてるとカリフの背中にピッタリと張りつくか、服の裾をつまんでついてくるのが普通となってしまった。

 

周りからは兄妹と思われても仕方ないシチュとなっている。

 

そんな中で、カリフはまた妙な気に気がついた。

 

「……」

「気になる?」

 

オーフィスも気付いているのかカリフの顔を見上げてきた。

 

「……だが、オレにはやらねばならないことがあるんだ……」

「そう……」

 

そう言ってカリフとオーフィスは山のように買い込んだ食べ物の袋を持ってベンチに座りこみ……

 

「「いただきます」」

 

食事の時間に入った。

 

「美味」

 

オーフィスも中国の味には満足したそうな。

 

カリフは言わずもがな、全てを平らげていた。

 

 

 

 

とある一本道では人だかりができていた。

 

そして、その中心には一人のコスプレした少女が写真を撮られながらポーズをとっていた。

 

「はーい☆ 押さないでー!」

 

そう言いながら横チェキしながらノリノリの少女がはしゃいでいた。

 

周りはそんな少女に興奮が最高潮になりながらも写真を撮り続けていた。

 

そして、少女は自分の腕時計を見ると高々に腕を上げて伝える。

 

「皆ごめんねー☆ レヴィアたんはこれからもすること一杯だからここでお別れだよー!」

 

そう言って手を振って行こうとするが、その手を周りの野次馬たちに掴まれた。

 

「そんなこと言わずもう一回お願いします!!」

「すぐ済みます!!」

「お願いします!!」

 

口々にそう言って中々離してくれない野次馬に内心で困惑していた。

 

(うわ~どうしよう……これはちょっと……いえ、でもこれが冥界でも起き得ること!! これは試練なんだわ!!)

 

そう言ってファンを攻撃することを心の中で詫びながら少女はどこからかステッキを出す。

 

「人の迷惑を考えない人にはお仕置きよ~☆ マジカル……」

 

呪文と称して軽く魔力を溜めた時だった……

 

 

 

 

 

 

「退けい……」

 

その言葉と同時に重苦しい空気が辺りを覆う。

 

それと同時に周りの通行人がバタバタと倒れていく。

 

「えぇ!? みんなどうしちゃったの!?」

 

少女だけが気絶せずに倒れた人達を揺さぶったりしていると、そこへ一人の少年が歩み寄ってくる。

 

「え?……これ、キミが?」

「……」

 

少女は信じられないように言いながら徐々に近づいてくる少年に少し怖気づいて立ちすくんでしまう。

 

「……」

「……ゴク」

 

少女は近くまでやってきて自分の匂いを嗅いでいる少年になぜか緊張していると、少年が不意に口を開いた。

 

「あんた……悪魔か?」

「!?」

「それも結構強い……魔王か?」

「ギックゥ!……え~っと……」

 

ご丁寧に擬音まで口にして少女は冷や汗をかく。

 

(まっず~……仕事から抜け出したのがもうバレちゃったかな……)

 

内心で冷や汗をダラダラ流してこれからどうしようか考えていた時だった。

 

ク~

 

「……へ?」

 

どこからか可愛らしい音が聞こえてきた。

 

それの鳴った場所を目で辿っていくと、そこには自分を見上げる少年が腹を押さえていた。

 

「……腹減った」

 

その一言に少女は目を光らせ、突破口を見つけた。

 

「じゃ、じゃあお姉さんが何か食べさせてあげる!」

「……マジか?」

「マジマジ☆ その代わり、私がここにいたって言っちゃだめだよ? ね?」

「ん」

 

小さく頷く少年に保護欲を湧かせながらも二人は並んで繁華街へと進んだ。

 

その地面に気絶した人達を置いたままだったのを忘れて……

 

 

 

 

 

 

 

「へ~、じゃあカリフくんのお連れさんはまたどこかに行っちゃったの?」

「あぁ、『また会いに来る』って行っちまった。ま、オレには関係無かったからな」

「気に入られてるんだね~、大事にしなきゃお姉さんきらめいちゃうぞ☆」

 

オーフィスという不思議生命体の愚痴を言いながらカリフはセラフォルーと名乗る悪魔から買ってもらっている団子を口の中へと放り込んでいく。

 

「にしてもお前は急にオレに食い物を買うとか物好きだな」

「え? そうかな? だって困っているヒロインを颯爽と現れて助けちゃったんだよ☆ それならお姉さんもなにか返さないと☆」

「? まあ、良く分からんが、恩は恩だ。何か一つくらいは借りとしてとっておいてやる」

 

カリフが口に餡子をつけながらアムアムと食べる姿にセラフォルーは感極まって抱きつく。

 

食事中に抱きつかれたカリフもこれを何の反応を見せない。

 

「やーん可愛い! なんだかソーたんみたいにチャーミングなのにクールに振る舞うなんて健気でいい! 弟になってよ~カーくん!」

「ちょい邪魔」

 

抱きついてくるセラフォルーの顔に足を押し付けて引き剥がそうそするカリフにセラフォルーも「いけず~」と言って諦めた。

 

「そうだね~……じゃあきみには私の助手と任命しまーす☆」

 

そう言って胸に“サポート”と書かれたバッジを胸に付けさせられた。

 

それにはカリフも首を傾げていると、セラフォルーが力説してきた。

 

「魔法少女といえばサポート役も必然! 動物に化けた美少年? はたまた正体不明だけど何気に助けてくれる存在? そんな人が最近欲しいと思ってたの☆」

「ふ~ん……またボディガードってとこか?」

「そうそう! そんな感じ! 私と一緒にこの混沌と汚辱にまみれた世界できらめこう!」

 

イエーイと言いながらハイタッチを求めてくるセラフォルーにカリフも訳が分からずとも一応ノっておく。

 

放っておけば勝手に進んでいくセラフォルーのノリはカリフにとって未知な部分が多すぎる。

 

もしかして自分はとんでもないのに約束をこぎつけてしまったのか……そう思っていた時だった。

 

「セラフォルー・レヴィアタンさま!!」

「やっと見つけましたぞ!!」

「まだ手つかずの仕事が山ほど残っておりますぞ!!」

 

突如として、大層な鎧を付けた男たちが現れ……

 

「あ”……」

 

セラフォルーはその場に固まってしまった。

 

その光景にカリフは首を傾げて見ていると、セラフォルーはカリフと向き合う。

 

「カーくん! 早速お仕事だよ! あの人たちは私を無理矢理連れて行こうとするの!」

 

その言葉を聞いてカリフは団子を一飲みして好戦的な笑みを浮かべる。

 

「ふはは…悪魔とやり合うのは初めてだからな…セラフォルーの事情など壁に張り付くナメクジのようにどうでもいいが、こういったことなら大歓迎だ」

「カーくん酷い!」

 

セラフォルーの非難も口周りの餡子と一緒に舐め取ってから勢い良くイスから腰を上げて構える。

 

「三匹か……せめて一分くらいはもってくれよ?」

「いっけー☆」

 

セラフォルーがカリフをけしかけると、その瞬間にカリフは上半身を捻って生前に教わった技を……

 

「かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……」

 

一言ごとに手から赤い光を生みだし、白い煙みたいなのが穴と言う穴から噴き出るような覇気を纏わせる。

 

この光景が錯覚だと信じたい。現在、最も魔王に近いのはカリフかもしれない。

 

そして……手の中の赤い光を充分に収束させ……

 

「波ぁ!!」

 

 

 

嵐が

 

 

 

巻き起こった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「忌まわしき仮初の魔王め……」

「今ここで、我らが断罪してくれる……」

「やはり、今の魔王では真の魔王たりえぬ……」

 

裏で暗躍する者というのは時代と共にそのあり方を変化させていく。

 

従う者がいれば反発する者もいる。

 

「まずは……セラフォルー……偽りの魔王に死を……!!」


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