理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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銀髪との戦いとはうって変わって、とても平和な麻帆良祭


七十一話 娘と騎士の麻帆良祭

 さて、神威がカギに敗れ、覇王に特典を引き抜かれた時間から遡り、麻帆良祭2日目の昼すぎのこと。ベンチに一人の男性が座って、ある人を待っていた。その男性はメトゥーナトである。彼は黒のスーツに身を包み、そのベンチに座ってじっと動かずに居た。先ほど羽織っていたマントは外しており、どこかにしまったようである。

 

 そして彼が待つのは当然アスナということになるだろう。まほら武道会が終わった後、二人はその約束のために移動したのだ。しかしアスナは準備をしたいと言ったので、メトゥーナトは1時間後に、今の場所で落ち合うことにしたのである。そして、アスナが準備を終えて、メトゥーナトが待つベンチの前に、姿を現したのだ。

 

 

「お待たせ」

 

「む、……来たか」

 

 

 そこには普段では見られないような、かわいらしく着飾ったアスナが立っていた。とても清潔感溢れる服装で、いつもなら絶対にしないような、彼女らしからぬ姿だった。ただ、らしくないだけで似合ってないと言うわけではなく、むしろとても似合っておりかなり、普段ではお目にかかれない貴重な姿だったのだ。さらに普段はツインテールをしていた髪型も、今回は髪を下ろしてストレートにしていたのである。

 

 しかし、アスナはなぜ今回、このような服装を選んだのだろうか。メトゥーナトには親代わり、保護者としては恩を感じているが、特に恋愛感情はない。だから基本的に着飾って、メトゥーナトの前に現れる必要は無いのである。

 

 その答えは多少なりに女の子らしくして、メトゥーナトを安心させるためだ。常日頃から自分の教育を多少なりと疑うメトゥーナトに、自分も女の子らしく出来ることをアスナはアピールしようと思ったのだ。だからアスナは、普段しないようなかわいらしい服装で、メトゥーナトの前へ現れたのである。

 

 

「……では行くか」

 

「……ねえ、何か言うこと無いワケ?」

 

 

 しかし、そう考えてせっかく着飾ったというのに、反応がまったく無いメトゥーナト。当然アスナは何か意見ぐらいあるだろうと、はムッとした表情で文句を飛ばした。

 

 メトゥーナトもそれを聞くと、振り向いた顔をアスナへ向きなおし、じっとそのアスナの姿を眺めだした。そしてメトゥーナトは少し感心した表情で、アスナへの感想を静かに語りだしたのだ。

 

 

「今日は随分とらしい格好だな。わたしも君が女性としての意識があったことを、嬉しく思うよ」

 

「そうじゃないでしょ……? もっと、重要なことがあるんじゃない?」

 

 

 メトゥーナトが言ったらしい、というのは女性らしいという意味だった。加えてそれに続く言葉は、女性らしくて良いということだけだったのだ。

 

 確かにそう思われるためにこのような恰好をした訳だが、その物言いではアスナは満足できなかった。だからアスナは、褒められていないと感じ、さらに不機嫌さを増した表情でさらに文句を言ったのだ。

 

 

「そうだな。随分と綺麗になった」

 

「もう……言うのが遅い……!」

 

 

 そこでようやく綺麗になったと、メトゥーナトはアスナを褒めた。その褒め言葉がすぐに出ないのかと、アスナは少し怒りながらも苦笑していた。

 

 本当はメトゥーナトも、今のアスナの綺麗さに驚いていた。いや、よくぞここまで綺麗になってくれたものだと。また、こうやって女の子らしいアスナの姿を見て、自分の育て方は間違ってなかったのかもしれない、そう考えながら少し固くなってしまったのである。そのため、うっかり素直に褒めることが出来なかったのだ。

 

 

「とりあえず昼にしようか。そこでどこへ行くかも考えるとしよう」

 

「そうね。それがいいかな」

 

 

 メトゥーナトは昼過ぎと言うことで、まずは昼食にしようと考えたようだ。アスナもお腹がすいていたようで、それでよいと答えていた。そしてとりあえず、適当な場所で昼飯にすることにした二人は、にぎやかとなっている麻帆良を歩くのだった。

 

 

「こうしてアスナと歩くのも久々だな」

 

「うん、去年やその前の年はなんだかんだ言って出来なかったものね」

 

 

 また、メトゥーナトはアスナと並んで歩くことを、少し懐かしんでいた。こうやってアスナと歩くのは何年ぶりだろうか、そう考えて感慨深く感じていたのだ。その横を歩くアスナはそれを聞いて、去年はメトゥーナトと麻帆良祭を回れなかったと思い出していたのである。

 

 

「その件については、すまかったと思っている」

 

「別にいいのよ。忙しいのわかってたし」

 

「そう言ってくれるとありがたい」

 

 

 メトゥーナトは、去年アスナから麻帆良祭に誘われていたようだ。だが去年と一昨年は転生者対策に忙しく、動けなかったらしい。アスナもメトゥーナトがそういうことで忙しいのを知っていたので、仕方がないと思っていたようだ。だからメトゥーナトの謝罪に、気にしないでいいと言っていたのだ。

 

 

「それに、今日だって私のわがままに付き合ってくれて、感謝してるもの」

 

「何、去年は行けなかったからな。今年は付き合わないと悪いだろうと、わたしも思っていたさ」

 

 

 さらにアスナは、今日のことをメトゥーナトに感謝していた。こうして付き合ってもらっていることは、自分のわがままだと思っていたのだ。その考えをアスナはメトゥーナトへ、微笑みながら言葉にしたのである。また、メトゥーナトもこの数年、こういった付き合いが出来なかったことを少し悪いと思っていた。そういう思いがあったからこそ、今年こそはアスナと麻帆良祭を回ろうと思い、予定を空けたのだ。

 

 

「そう。ありがとう」

 

「礼には及ばん」

 

 

 そんなメトゥーナトの気遣いに、アスナは嬉しく思っていた。だから素直にそのことへの礼を言ったのである。それを聞いたメトゥーナトも、表面上の変化は無かったが、内面ではその礼に対して喜びを感じていたのである。そうして歩いていた二人は、カフェを見つけたのでそこに入ることにしたようだ。

 

 

 そこで適当な席へ座り、飲み物や軽食を注文した二人は、静かに午前中の出来事を振り返っていた。まほら武道会にてアスナは準優勝を飾ったのだ。何か思うところがあるだろうと、珈琲を片手にメトゥーナトはそれを聞いたのである。

 

 

「今日の大会、どう感じた?」

 

「どうって……?」

 

「色々感じたことがあっただろう?」

 

 

 アスナは、突然そんなことを言われて、突然どうしたのかと思ったようだ。それで飲んでいた紅茶をテーブルに置き、頭にクエスチョンマークを浮かべていた。ならばメトゥーナトは、何か思ったことを話せばよいと、アスナへ静かに話したのだ。するとアスナは腕を組み、今日の試合を少しばかし思い出そうと頑張っていた。そして、とりあえず考えが浮かんだことを、メトゥーナトへ伝えたのである。

 

 

「とりあえず、まだまだってことを痛感したわ」

 

「ほう、あれでまだまだとはな」

 

「まだまだよ。何とかタカミチに勝てたけど、タカミチは余力がまだあったもの……」

 

 

 アスナはあの大会で、自分の力不足を感じたようだ。しかしメトゥーナトはあれでも十分強いと思ったようで、あれで満足出来ていないのかと聞いたのだ。その言葉にアスナは、タカミチの勝利は本当にギリギリだったと話したのだ。何せ自分は決着前、立っているのが精一杯だというのに、タカミチは多少動けた様子だったからだ。その差は地味に大きく、もしタカミチが攻撃していれば負けていたと、アスナは思っていたのである。

 

 

「タカミチは実戦経験豊富だからな。ある程度余裕を残すことの重要性を知っているのだろう」

 

「そう言われると、確かに私はそういった意識なかったかも……」

 

 

 メトゥーナトはそこで、タカミチに実戦で多くの場数を踏んでいるとアスナに聞かせていた。そして、だからこそ余力を残し、最悪の事態に備えることを考慮して余力を残す癖があるのだと話したのだ。アスナはその話を聞いて、自分は全てを出し切る形で戦っていたことを、甘い考えだったと痛感していた。そういう余力を残そうなど、考えたことも無かったと、衝撃を受けていたのだ。

 

 

「何、あのタカミチに勝てたのだから、自信を持っていいとは思うがな」

 

「でも、やっぱりもっと強くなりたいかな。幻のナギにも勝てなかったし」

 

 

 だがメトゥーナトは、それでもタカミチに勝てたのなら、自信を持つべきだとアスナを褒めていた。あのタカミチは本国でも有数の実力者であり、AAAクラスという屈指の猛者なのだ。さらに言えば、この麻帆良にて転生者を除けば、学園長の次に強いと言われるほどなのである。そんなタカミチを追い詰め倒せたのだから、十分だろうとメトゥーナトは考えたのだ。

 

 しかしアスナはそれでも満足していなかった。タカミチ以外にも、あのアルビレオのアーティファクトで現れたナギの幻にも勝てなかったからだ。ナギは魔法剣士タイプだが、魔法使いという点では自分の方が有利なはずだと、アスナは考えていたのだ。それは魔法無効化により、いかなる魔法でも無傷で済ませられるからだ。だというのに単純な力比べで、ナギに敗北してしまった。だからこそ、これではまだ足りないと、アスナは思っていたのである。

 

 

「……そこまで強くなって、どうするつもりなんだ?」

 

「何かしたい訳じゃないけど、不安をぬぐえないのよ……」

 

「……魔法世界のことか?」

 

 

 そんな強さにこだわるアスナに、メトゥーナトはそこまで強くなる必要があるのか考えていた。正直言えばこの時点で、アスナは相当な実力者。並みの魔法使いでは手も足も出ないほど、強く育っているのである。それをメトゥーナトはアスナへ質問すると、今の実力では不安があると言ったのだ。メトゥーナトはその答えに、魔法世界が関係していることを察したのである。

 

 

「うん、だって私が悪い奴らに捕まったら、また利用されるんでしょ? それは絶対にヤだから……」

 

「そうならないために、わたしがここにいるのだがな……」

 

「……それでも、自分の身ぐらい自分で守りたいのよ」

 

 

 アスナは一度、魔法世界を滅ぼしかけたことがあった。それは本人の意思によるものではなかったが、それでも責任をある程度感じていたようである。また、未だに魔法世界を滅ぼそうと考える敵が存在する以上、自分を利用しようと襲ってくることに不安を感じていたのだ。つまるところアスナは、自分のせいで魔法世界が危機に陥ることに恐怖しているのである。

 

 だからこそ、メトゥーナトがそばにいるのだと、やさしく言葉にしていた。アスナを守ることこそ、このメトゥーナトの使命であり、自分が最もしたいことだと思っているからだ。だが、アスナはそれでも強くなりたいと言っていた。自分の身ぐらい自分で守れるぐらい、強くなりたいと話したのだ。

 

 このアスナ、仲間や友人の足を引っ張ることを極端に嫌っている。自分のせいで仲間や友人が傷つくのを、とても恐れているのだ。そのためアスナは、誰にも迷惑をかけたくない一心で、自らを鍛え上げてきたのである。

 

 

「ふむ、本当なら強さなど求めてほしくはないのだが……」

 

「どうして?」

 

 

 しかしメトゥーナトは、それでも強くなってほしくないと答えていた。その言葉にアスナは敏感に反応し、少し不思議そうな顔で、どういうことなのか聞いたのだ。するとメトゥーナトはゆっくりと、そのことについて話し始めた。

 

 

「君は女の子だ。もっと女性らしく振舞ってほしいと言う親馬鹿というヤツだ」

 

「そう? これでも十分女の子やってるつもりなんだけどね」

 

「それならいいのだが……」

 

 

 その理由はアスナが女の子だからだった。女の子なのだから、ガッチムチに強くなるのではなく、もっと女性のような立ち振る舞いを勉強してほしいと思っていたようだ。そんなメトゥーナトの話に、アスナはそんなことはないと、特に気にしない様子で話していた。

 

 それを聞いたメトゥーナトは、本当にそうなのだろうかと、疑問に感じて複雑な表情をしたのだ。と言うのも、アスナはスイッチが入れば変な言葉を口ずさむ癖があった。そのためメトゥーナトは、そういうことを悩んでいたのである。

 

 

「本人がそう言ってるんだから、少しぐらい信用しなさいよ?」

 

「ふむ、ならそうするとしよう」

 

「うんうん。それで、これからどこへ行くの?」

 

 

 微妙に信用し切れていないメトゥーナトを見たアスナは、少し不機嫌そうに信用してほしいと言い聞かせていた。自分は十二分に女の子をしているのだから、心配ご無用ということだった。そしてメトゥーナトは、不機嫌そうにするアスナを見て、そう言うならと思い信用することにしたようだ。その言葉でアスナは再び笑みを取り戻し、納得してくれたことを喜んでいた。また、そこでアスナはこの昼食が終わったらどこへ行くのか、メトゥーナトに尋ねてみたのである。

 

 

「少し適当に歩いて見よう。そこで見たものに入るのも悪くは無いだろう?」

 

「行き当たりばったりねえ……。まあ、それでいいかな」

 

 

 メトゥーナトは、とりあえず歩いてみて、面白そうな場所に行ってみようということだった。それをアスナは行き当たりばったりで、何の計画性もないと感じたようである。

しかし、それでも良いかと納得したのだった。そこでアスナは紅茶をストローで飲みつつ、軽く食事を取るのだった。加えてメトゥーナトも、ゆっくりと珈琲を味わいながら、おいしそうに食事を頬張るアスナを眺めていたのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 メトゥーナトとアスナは昼食を終えると、祭りでにぎわう麻帆良を練り歩こうと、席を立った。しかしすぐ側に、親からはぐれて泣き叫ぶ迷子の少年がいたのだ。年端も行かぬ少年が、この広大な麻帆良で一人迷子になっていたのである。アスナはそれを見て、とりあえず声をかけてみようと思ったのだ。だがそこに一人の男、いや、老人がやってきた。それはあのジョゼフ・ジョーテスだった。

 

 

「もし、そこのぼうや。もしかして迷子なのかの?」

 

「う、うん。ママがいなくなっちゃったの……」

 

 

 なんとアスナが少年に話しかける前に、ジョゼフがその少年に声をかけたのだ。そこでジョゼフに尋ねられた少年は、母親とはぐれたと涙ながらに訴えていた。それを聞いたジョゼフは、穏やかな表情で少年を励ましていた。

 

 

「心配することはないわい。ワシが一緒に探してあげるからのう」

 

「……おじーちゃんが?」

 

「なーに、すぐおかあさんなら見つかるじゃろうて。まっとれよ……」

 

 

 ジョゼフは一緒に母親を探してあげると、優しく少年に言っていた。少年はおじいさんのジョゼフが助けてくれることに、少し安心したようである。そんな多少元気を取り戻した少年を見たジョゼフは、鋭い目つきとなり、スタンドを使ったのだ。

 

 

「”ハーミットパープル”!」

 

 

 ハーミットパープルは念写の能力を持つスタンドだ。その紫色の茨状のスタンドを地面に這わせると、土ぼこりが麻帆良の地図となったのだ。そして、小さな石ころがその地図に沿って動き出したのである。ジョゼフはそれを見て、その石の位置こそが少年の母親の位置だと、特定したのである。

 

 

「ぼうやよ。君のおかあさんの場所はわかったぞ。さて、そこへ迎えに行くとしようかの……」

 

「うん……!」

 

 

 ジョゼフは少年の手を握り締め、その場を去っていった。そのジョゼフをただただアスナは眺めていたのだ。というか、あの背の高い老人は、状助の担任の教師だったかと、いまさら思い出したのだった。

 

 

「あ、あれ状助の担任の……」

 

「ジョゼフ・ジョーテス先生か。ご老体だと言うのにまだまだ元気そうで何よりだ……」

 

「知り合いだったの……!?」

 

 

 そこでメトゥーナトは、ジョゼフのことを知っているような発言をしていた。まあ、ジョゼフは一応古株の転生者であり、ある程度メトゥーナトらにもつながりがあるのだ。それを初めて知ったアスナは、驚きの表情をしていたのである。

 

 

「そのとおり、知り合いだ。彼は随分協力的で、我々は何度も助けてもらった」

 

「そうなんだ……」

 

 

 さらにジョゼフはハーミットパープルで、色々調べてくれたようだ。そのことをメトゥーナトは、とても助かったと感謝していたのである。そしてまさか、そんな事実が有ったとは。そう考えて世の中狭いと改めて感じるアスナだった。

 

 

「さて、行くとしようか」

 

「うん」

 

 

 メトゥーナトはそれを話し終えると、麻帆良祭を回ろうとアスナへ声をかけた。アスナもそれを笑顔で了承し、共に歩き始めたのだ。そして、麻帆良祭を見て周り、久々の安らぎの時間を堪能していたのだ。だが、そんなところにもトラブルはつき物だったようだ。

 

 二人が歩いていると、なにやら騒がしい場所を発見した。それは他の場所から来た人たちと、麻帆良の学生たちが喧嘩を始めようとしていたのだ。もはや衝突は避けられそうにないほど、ヒートアップしており、勃発寸前のようである。

 

 

「デカイ面してんなよ! 他所モンがァ!」

 

「やんのか、あぁ!?」

 

 

 黒い学生服に身を包んだ集団が麻帆良の学生たちのようである。そして対立するのは、他からやってきた集団のようだった。その両者がにらみ合い、煽り合いをはじめたのだ。メトゥーナトはさてどうしたものかと考えた所に、乱入者が現れた。

 

 

「その喧嘩、買ったァ!」

 

「か、カズヤさん!?」

 

 

 そこへ颯爽と現れたのは、やはり喧嘩バカのカズヤだった。喧嘩と聞いて即参上したのである。流石喧嘩バカ筆頭だ。また、麻帆良の学生からは”さん付け”で呼ばれており、ある程度慕われているらしい。しかしこのカズヤ、基本一匹狼で、群れることを良しとしないのだ。

 

 

「んだテメェは!?」

 

「てめぇーから死ぬか? クソガキが!!」

 

「いいねえ、そういうの! だったらやろうぜ、アレをよぉー!」

 

 

 他から来た集団から、煽りに煽られるカズヤ。だがカズヤは、その煽りすらも気力に変え、むしろ元気になっていくのだった。そしてカズヤがその集団に、殴りかかろうとした時、突如そのカズヤが後方に吹き飛ばされたのだ。

 

 

「グウオァァ!?」

 

「この毒虫が……」

 

 

 さらにそこへ現れたのは、あの法だった。法は殴りかからんとしたカズヤの顔面に平手を撃ちつけ、吹き飛ばしたのだ。そこで吹き飛ばされたカズヤは、後ろに並んでいた複数の学生と衝突し、その学生たちもボウリングのピンのように倒れされていたのだ。それを見た他所の集団は、目を見開き驚いていた。そんな集団を、完全に冷めた目で法は見ていたのである。

 

 

「お前たち、ここで何をしていた」

 

「流法さん……!?」

 

 

 この法の視線、冷めてはいたが内にはすさまじいほどの熱気が宿っていた。加えてそこからは、ルールの枠をはみ出さんとするこの連中に対する怒りも混じっていたのだ。また、法を見た学生たちは、絶対正義とつぶやいていた。この法は喧嘩や暴れる人々を武力をもって鎮圧することが多い。まあ、広域指導員の真似事というか、見習いみたいなものなのである。法は学園の秩序を完膚なきまでに正そうとする男。そんな法はいつの間にか周りから恐れられる存在となり、やはり”さん付け”で呼ばれていたのである。

 

 

「この学園での喧嘩は禁止されている。ルールを守れないのなら、早々に立ち去るがいい」

 

「あぁ? 今度はてめぇーが相手になんのか?」

 

「スカしてんじゃねぇーぞ! このイケメンが!!」

 

 

 だが法はそこで、あえて他所の集団へ忠告を入れた。ここでは喧嘩をするな、やるのなら立ち去れと、冷酷に強い意志の元発言したのだ。しかしそれが気に喰わなかったのか、他所の集団は法を罵倒し、敵としてターゲットにしたようだ。

 

 

「なるほど。今度は見ず知らずのこの俺に、そうがなりたてるという訳か」

 

「ナメんじゃねーぞ!」

 

「ビビってんのか?! オラァ!!」

 

 

 この時点で法は、すでにかなり頭に来ていた。別に煽られ貶されたからではない。こういう集団を最も嫌っているからだ。また、そうやって冷淡に語り、動かぬ法に痺れを切らしたのか、他所の集団は攻撃態勢へと移っていた。そして、そこで他所の一人が、法へと殴りかかったのだ。

 

 

「ならば処断せねばならないな。ルールを侵すものは、処断されなくてはならない」

 

「ガッ!? グアアアー!!?」

 

 

 法は殴りかかって来た相手の腕をいともたやすく掴むと、強く握り締め捻り上げた。その痛みで相手は苦痛の叫びを上げ、動けなくなってしまったのである。さらに法は、その相手を冷たく眺め、他所の集団を処断すると断言したのだ。

 

 

「こ、こいつ!?」

 

「やっちまぇえー!!」

 

「そう来るか。ならば俺も、それ相応の対応をするしかないようだな……!」

 

 

 今の法の行動に頭に来たのか、その集団が一斉に法へと襲い掛かってきたのだ。それを見た法は、抑えている相手を投げ飛ばし、襲い掛かるもう一人へとぶつけた。加えて、別の方向からやって来た相手に平手を撃ちつけ、一撃で伸びさせたのだった。さらに別の相手の頭部を踏み台にし、蹴りはねてその集団の中央へと移動したのである。

 

 その戦いはもはや戦いではなく、一方的な蹂躙だった。法は手加減せず、自らの武術のみでその集団を寝かしつけ始めていたのだ。蹴り、あるいは平手、あるいは拳。どの攻撃も強力で、ほとんどの相手が一撃で倒されていった。これこそが法、アルターなど無くとも、自分の身一つで大抵の相手を倒す実力者なのである。そして最後に高く飛び着地した瞬間、残りの相手も全部倒れ、全滅させたのだった。

 

 

「これに懲りたら、学園のルールを守ることだ……」

 

 

 倒れ苦しむ他所の集団を、法は見下ろしながらその言葉を放った。それを見ていた学生たちも、驚き感心していた。また、野次馬の見物人たちは、その法の戦いぶりを賞賛し、拍手までしていたのである。だが、それが気に入らないヤツがいた。それが許せないヤツがいた。それこそやはり、カズヤだった。

 

 

「おいおいおいおいおい! テメェ突然現れて人様の喧嘩を奪うたぁ、いい度胸してんなぁ? えぇ? おい!!」

 

「何を言っている。俺は学園の秩序を乱すものを、処断したにすぎん」

 

「人の喧嘩奪っといて、ほざいてんじゃねぇぞ! 何かあんだろ? 悪かったとか、ごめんなさいとか、すいませんでしたとか……」

 

 

 カズヤは法に喧嘩を奪われたと思い、かなり冠にきていたのだ。そんなカズヤに法は、わからんだろうがと思いつつ、冷静な表情で説明をした。しかし案の定、火に油を注いだようで、カズヤは怒り心頭で叫んでいたのである。

 

 

「貴様も学園の人間なら、学園のルールに従え!」

 

「んなこたぁ知るか! まずはテメェが俺に謝れぇ!!」

 

「ならば貴様も処断するしかないな。カズヤ……!」

 

 

 なんということだろうか。今度は法とカズヤが喧嘩を始めたではないか。すると周りもさらにヒートアップし、どちらが勝つか賭けを始めていた。もはやこうなったら止まることはないだろう。完全にいつものノリとなってしまっていたのだった。メトゥーナトはそれを見て、これはもう駄目だと思ったのか、その二人を放置することにしたようだ。また、アスナも完全にあきれており、あの二人はいつもああなのかと、むしろ関心するほどだった。

 

 

「あれ? あの二人って確か……」

 

「ん? あの二人を知っているのか?」

 

 

 アスナはあの二人がまほら武道会で戦っているのを見ていた。それを思い出し、何か謎の力を操っていたことを考えたようだった。しかしメトゥーナトは、その二人が戦っていた試合に間に合わなかったので、アスナが二人を知っていることに疑問を感じたのだ。

 

 

「ああ、あの二人、武道会の試合に出てたのよ。それで変な力使ってたから、割と印象が強いっていうか……」

 

「そういうことだったのか……」

 

 

 アスナはメトゥーナトの疑問に難しい顔をして答えていた。変な力、すなわちアルターなのだが、一体どういう原理なのか、まったく理解しがたいものだったからだ。魔法でも気でもなく、魔力も使わない謎の現象。それは自分の能力以上に特異だったので、強く印象にも残ったようだった。メトゥーナトもそれを聞いて、頷き納得した様子を見せていた。

 

 そして後ろではなにやら騒ぎが大きくなり、バカだのアホだのと叫ぶ声が聞こえてきていた。アスナはその声が知り合いらしきものだと思ったが、あの二人の知り合いで、自分の知り合いなどいないだろうと思い、その考えを否定していた。だが、実際そこで叫んでいるのは千雨だったので、その考えは間違ってなどいなかったのだ。そんな叫びであの二人も懲りたらしく、その騒動は治まったようであった。

 

 

 しかし、それ以上の騒ぎが突発的に発生していた。メトゥーナトとアスナが歩いていると、なんとサーカスから動物が脱走してきたではないか。ゾウやキリン、シロクマやカメ、はたまたダチョウまで走ってきたのだ。また、そのダチョウにの足に中年のおっさんがぶら下がっており、自分のダチョウにも馬鹿にされていると叫んでいた。哀れなり。

 

 それを見たメトゥーナトは、とうとう額に手を当て、何かおかしいと感じ始めていた。いやはやここまで騒動に巻き込まれるなど、本当に何か攻撃を受けているとしか思えないほどだからだ。アスナも流石にこれはと思い、同じく頭を抱えていた。そんな中、またしてもそこへ男が現れた。それはあのバーサーカーだったのだ。

 

 

「おい、お前ら! そうやって暴れてんじゃねぇぞ!?」

 

 

 するとバーサーカーは動物たちに話しかけ始めたのだ。これが動物と会話できるスキル、動物会話というものだ。さらにバーサーカーは動物と精神レベルが同じなので、気が合うのである。だから動物たちを説得し、サーカスへ戻そうとしていたのだ。

 

 

「パオォォン!」

 

「グアッグアッ!」

 

「グルル……!」

 

「そうか! そうだったのか!」

 

 

 金髪のヤンキーが動物と会話している様は、なんと異様なことか。他の人も多少引きつりながら、その光景を眺めていた。だが、バーサーカーが動物と会話してくれたおかげで、動物たちは動きを止めてくれているのである。

 

 

「お前らの話はわかった。だから一旦戻ってやってくれ! 頼む!」

 

 

 バーサーカーの渾身の願いに動物たちは納得したようで、サーカスのテントへと戻っていったのだ。誰もがそで安心し、一件落着だと安堵していた。しかし、このバーサーカーも野生的だった。そこで誰もが予想しない行動を取ったのだ。

 

 

「そうだ、そこの白い奴! 今日からお前はホワイトベアー号だ! 俺と一緒に行こうぜ!!」

 

「グウオオオッ!」

 

 

 なんとバーサーカーは一匹のシロクマをホワイトベアー号と名づけ、乗り去ったのである。それを見ていた人々も、止めることなど出来ず、ただ呆然とするばかりだった。そして麻帆良をシロクマにまたがり駆け巡るヤンキーと言う都市伝説が、ここに誕生したのだ。まあ、その後流石にあの刹那ですら、本気で怒ったというのは言うまでもないことだろう。

 

 

「今日はなんだか騒がしい日ねぇ……」

 

「運がないのだろう。こういう時に運を稼いでおくとよいかもしれん……」

 

 

 いつも以上に騒がしい麻帆良祭に、アスナは少し疲れた顔をしていた。これほどの騒動が起こるなど、考えてもみなかかったからだ。その横のメトゥーナトも、今日の運勢は最悪なのだろうと考えていた。だからこそ、こういう時に運を集めておくべきだとも思ったようである。

 

 

「工学部のロボティラノが暴走したー!」

 

 

 そう二人がため息をついている間に、さらなる災厄が訪れてた。なんと工学部の恐竜ロボが暴走を始めたというのだ。そのロボがなんと、すさまじい地響きと共に走ってきたではないか。アスナもメトゥーナトも、またかと思ったようで、少しうなだれてしまっていたのだ。

 

 だが、そこへ二台の車が走ってきたのだ。その車、ただの車ではなかった。赤いはしご車と、青いクレーン車だった。しかし、やはりただのクレーン車やはしご車ではなかった。明らかに普通のものとは、大きさが違うのである。その二台はうなるサイレンを鳴らしながら、すさまじい速度でロボティラノを追射掛け始めたのだ。

 

 

「システムチェーンジ!」「システムチェーンジ!」

 

 

 なんとその二台の車が声を上げて叫ぶと、車体が突然持ち上がったのだ。加えて後方が二手に分かれ、腕のようなものへと変形、そこから体らしき部分が下へ沈むと、ロボットの頭部が現れたではないか。加えて車体の中央部分から後方部分が反転し、ロボットの体らしき部分へと変形していた。さらに前方が二つに分かれ、真っ直ぐに伸びると、それはロボットの足となったのだ。

 

 すさまじいことに、その二台の車は変形し、人型となった。それはまさにビーグルロボと呼べるものだったのである。そしてその二体は、ロボティラノを押さえ込んだのだ。

 

 

「止まりやがれ!」

 

「隊長殿、我々が抑えている今がチャンスです!」

 

 

 そこで青いロボットが何者かへ叫ぶと、そこへ一人の青年が現れた。長いオレンジの髪に、金の鎧の青年だった。顔はなかなかのナイスガイだが、その移動速度、跳躍力ともに人間をはるかにしのぐものだったのである。その青年は、すぐさま押さえつけられたロボティラノの頭部へ移動すると、右手でそれに触れたのだ。

 

 

「よくやったぞ! 炎竜、氷竜! 後は俺に任せろ!!」

 

 

 オレンジ色の長髪をなびかせた青年は、赤いロボットを炎竜、青いロボットを氷竜と呼んだ。そう、それはまさに勇者王ガオガイガーに登場する、レスキュー用ビーグルロボの二体だったのだ。つまりこの青年こそ、ガオガイガーの科学技術とエヴォリュダーの能力を特典に選んだ転生者ということなのである。

 

 

「うおおおおぉぉおおおッ!!」

 

 

 すると青年は緑色の光を発し、そのロボティラノの制御をエヴォリュダーの力で奪い、暴走を食い止めたのだ。エヴォリュダーには機械の制御を奪い、自らの意思で操る力がある。つまり、それを使って暴走ロボティラノを支配したということだった。そしてようやくロボティラノは停止し、完全にオブジェと化したのだ。そこで工学部の部員たちがやってきて、その青年を称えていた。

 

 

「よくやったぞ! 助かった!」

 

「やっぱお前はすげーヤツだな!」

 

「気にするな! 仲間は助け合うものだ!!」

 

 

 ロボティラノを停止させた青年は、工学部の部員に対しさわやかな笑顔で答えていた。実はこの青年、工学部に所属しており、この二体のビーグルロボも青年が作り出したものなのだ。そこで、その二体のロボに子供たちがいつの間にか群がり、面白そうに眺めていた。また、彼らはこのような災害から人命を救出すべく、日夜活動しているのである。しかし、それも何度見た光景だろうか。そう思うアスナは、やはりため息しか出なかったのだった。

 

 

「いつ見てもとんでもないわね……」

 

「すばらしいことだが、派手ではあるな……」

 

 

 レスキューロボの活躍は目覚しいものだったが、やはり派手である。赤いロボと青いロボという時点で、かなり目立つのだ。しかも、いちいち登場が騒がしく、隊長と呼ばれた青年もよく叫ぶ男だった。だからどうだという文句は今のところ出てないが、やはり派手の一言だったのである。

 

 

「とりあえず、先に行こう。騒動は解決したようだしな……」

 

「そ、そうね……」

 

 

 もはや何度も見た光景だった。この麻帆良の名物とも呼べるものだった。いやはや麻帆良祭を回るつもりが、騒動を見るだけとなってしまったのだ。これには二人も苦笑いしか出ないと言うものだろう。それで完全にあきれてしまった二人は、騒動も治まった所を見て、再び移動を開始したのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 そして二人は世界樹前広場へと足を運んでいた。流石にここなら何もないだろうと考えてのことだった。いや、ここでも何かあれば、流石に泣けてくるというものだろう。

 

 

「ここなら何も起きないだろう……」

 

「はぁ……、何か疲れちゃった……」

 

「こうも災難続きでは、疲れてしまうのも無理はないだろう……」

 

 

 前途多難な騒動のせいか、アスナは少し疲れた様子を見せていた。体力的にと言うよりも、何か精神的に来ているようだった。まあ、あの光景の連続では仕方のないことだろう。誰だってそう思うはずだ。そんなアスナを見てメトゥーナトも、無理もないと感じていた。そう思っている本人ですら、微妙ながら疲れを感じていたのだから当然である。

 

 

「それに、今日の大会でも随分疲れただろう。ここで少し休んだ方がいい」

 

「うーん。確かに少し疲れ気味かな?」

 

 

 さらにアスナはまほら武道会で、激戦を繰り広げてきた。そのため体力を随分消耗しているだろうと、メトゥーナトは考えたようだ。また、アスナもそれをある程度実感しており、笑みの中に疲れが見え隠れしていたのである。

 

 

「しかし、アスナがああも強くなってしまうとは……。わたしも時間を感じざるを得ないな……」

 

「まるでおじいちゃんのような言い方ね……」

 

 

 そこでメトゥーナトは、今回のアスナの大会での活躍を思い出し、時間の流れを実感していた。あんなに小さかった少女が、何も知らなかった少女が、ここまで成長したのだ。そう思わずにはいられなかったのである。そんなことを言うメトゥーナトに、アスナは老人みたいだと述べていた。見た目こそ老けない癖に、中身は随分と老け込んでるんだなと、アスナは思っているのだった。

 

 

「フッ……」

 

「むっ? 何か変だった?」

 

「いや……。アスナは本当に成長したと思っただけだ」

 

 

 メトゥーナトは何かを思い出し、小さな笑いをこぼしていた。それを見たアスナは、何がおかしいのだろうかと疑問に思ったようである。そんなアスナを見たメトゥーナトは、随分と成長したものだと、改めてそれを感じていたのだ。

 

 

「フフ、そうよ、成長したのよ。私は」

 

「そうだな。あの小さな小さな少女が、こんなになるなど、わたしも思っていなかった」

 

 

 そう言うアスナは明るい笑顔で、その場でくるりとターンして見せた。そして両手を後ろへ移し、少しかがんで覗き込むようにメトゥーナトを見ていたのだ。それはとても可愛らしいもので、見た目相応の行動だった。

 

 また、メトゥーナトはそれを見て、やはりアスナの成長を実感していた。あんなに無口だった少女が、あれほど無表情だった少女が、あそこまで他人に無関心だった少女が、このような華やかな表情をするようになったものだと、とても感激していたのだ。

 

 だが、そこでメトゥーナトは、この麻帆良にアスナをつれて来て、正解だったのだろうか。どうなのだろうかと、深く考えていた。ハッキリ言えばアスナがここに居るのは大人の都合であり、本来必要のないことだからだ。”原作通り”にするためと言う大人のわがままで、アスナはこの場所へつれて来た。

 

 それに対してメトゥーナトは、負い目をある程度感じていた。しかし、アスナはここに来て随分変わった。ライバルと呼ぶような友人を作り、表情豊かになったのだ。それを考えれば、何も悪いことばかりではなかったと、少しだけ良かったと思っていた。

 

 

「……何か難しいこと考えてた?」

 

「……皇帝陛下の命令とは言え、アスナをここにつれて来て、果たしてよかったのかどうかを考えていた……」

 

「それ、そんなに悩むこと?」

 

 

 アスナはメトゥーナトが、何か悩んでいることを察し、声をかけていた。そこでメトゥーナトは、今考えていたことを素直にアスナへと話したのだ。それはアスナに、本当にここに来てよかったのかを、確かめるかのようであった。だが、それを聞いたアスナは、あっけらかんとした表情で、悩む必要なんてないと言っていたのだ。

 

 

「私は麻帆良に来て、随分いろんなものを貰ったわ。お菓子の瓶が詰まるぐらい、いろんなものをね……」

 

 

 アスナは麻帆良に来て、色々と体験してきた。ライバルも出来た、友人も出来た。ライバルと競うことが楽しいと思えるようになった。友人とおしゃべりすることが面白いと思えるようになった。そして自分の中のお菓子の瓶が、そのおかげでいっぱいになった。それはアスナにとって、かけがえのないもの。宝物と呼べるものとなっていたのだ。

 

 

「つまり、別に気にすることなんてないのよ。私はここに来て、本当に良かったって思ってるんだから」

 

 

 だからこそ、ここにつれて来たことを、悪いことだと思う必要はない。むしろつれて来てくれてよかったとさえ思っていると、アスナはメトゥーナトに微笑みながら語りかけていた。ここに来たから今の自分があるのだと、アスナはいつも思い、メトゥーナトに感謝していたのである。

 

 

「……だから、悔いる必要なんかない。むしろ感謝してるんだから、ね?」

 

「……そうか、そう言ってくれるととても嬉しい……」

 

 

 アスナはそこで、メトゥーナトに感謝してると、嬉しそうに言ったのだ。その笑顔を見たメトゥーナトは、内心すこぶる感動していた。心の中で、感涙を流していたのである。しかし、それを表に出さないのが、このメトゥーナトという男だ。だが、アスナはメトゥーナトが、自分の感情を大きく表に出さないことを知っていた。メトゥーナトが内心感動しているのを察したアスナは、先ほど以上の笑みを見せ、再びくるりとターンして見せたのだ。

 

 

「嬉しいくせに、顔には出さないんだから。ホント来史渡さんは仮面の騎士よね」

 

「騎士たるもの、感情を表に出さんものだ」

 

 

 そこでアスナはメトゥーナトに、本当に仮面をかぶっているようだと話してたのだ。まったく感情を表に出さず、表情を変化させないからだ。まあ、過去の自分も似たようなものだったとも、少し思っているのだが。しかし一応メトゥーナトは感情があり、それが表に出ないだけなので、実際は自分と違うとも考えているのである。

 

 また、メトゥーナトも騎士として当然だと、それを強く言葉にしていたのだ。騎士として、感情的になってはならない。騎士とは常に、冷静で王を支えるものだと考えて居るからである。

 

 こうしてゆっくりと日が落ち、辺りが暗くなってきたのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:獅子帝豪(ししてい ごう)

種族:エヴォリュダー

性別:男性

原作知識:微妙にあり

前世:20代のしがない声優

能力:コンピュータへのハッキング、勇気をエネルギーへ変換

特典:勇者王ガオガイガーの獅子王凱、エヴォリュダーの能力、オマケで一応ギャレオン

   勇者王ガオガイガーに登場する科学技術の全て、オマケでGストーン数個

 

 




銀髪を倒してスッキリした後、アスナの話を出したかった

そして、機械系転生者登場
なおガオマシンやハイパーツールは資金難のため作れなかった模様……
やはり黄金律のスキルは偉大……
でも特典上ジェネシックの可能性も……

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