理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

37 / 179
テンプレ79:クロス作品を使ったオリジナル技能

テンプレ80:リリカルなのはっぽい転生者

テンプレ81:オリジナルデバイス


悪魔襲来編
三十七話 スライムと転生者


 ここで悲しいほどに影の薄い少年が居た。犬上小太郎である。本来なら京都でネギとの死闘を繰り広げるはずだった少年だ。しかし、そうならずに人知れず反省部屋で反省したのち、普通に関西呪術協会に雇われることになったのだ。だが、そんなある日、京都から忽然と小太郎は姿を消すのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 そこに居たのは一つの影であった。水を移動し様子を見ているものだった。まったく降り止まぬ気配すらない強い雨の中、とても不穏な空気が麻帆良に漂っていたのである。それとは別に、もう一人男がいた。赤いアーチャーの転生者である。このアーチャーは、小太郎をある程度ぶちのめし、”原作どおり”路上に投げ捨てたのだ。その後、”原作どおり”那波千鶴と村上夏美に助けられたのである。それを確認したアーチャーは、その場を後にし、もう一人の男に全てを任せたのだった。

 

 このアーチャーの目的は、ある程度原作に近い形へと持っていくことでもあったようだ。別に小太郎が関西呪術協会で頑張っていても、問題など無いはずなのだ。だがこのアーチャーはそれを許さなかったようだ。だからこそアーチャーは小太郎をこの麻帆良へと強制的に連れて来たのである。

 

 

 

 犬上小太郎は気がつくと、誰かの部屋に居た。ボコボコにされた傷も手当てされ、寝かされていたのである。この小太郎はアーチャーに仲間になるよう言われたが、断った。そこでアーチャーと戦闘し、ボコボコにされて路上へと投げ捨てられてしまったのである。しかしアーチャーは元々小太郎を仲間にする気などまったくなかったのだ。断られることを前提に仲間に誘い、戦いを誘発したに過ぎないのである。

 

 そして、この小太郎は悪魔封印用の瓶を持っていないのだ。”原作”ならば悪魔封印用の瓶を持って麻帆良へとやって来て、そこで敵に倒されたようだった。しかし、ここではそもそもその悪魔自体が、瓶に封印された訳ではなかったので、そういうものが存在しないのだ。

 

 

 だからこそ、知らない女性が二人居る部屋で、なぜか寝かされているこの状況がよくわからなかった。と言うのも小太郎は、あのアーチャーと戦い完膚なきまでに敗北した辺りまでしか覚えてないのだ。一体あの後どうなったのかはわからないが、この部屋から外の景色を見ると、京都ではないことぐらいはわかったようだ。ただ、記憶が無くなった訳ではなかったため、とりあえずおとなしく、その部屋の主二人の世話になることになったようである。

 

 

…… …… ……

 

 

 と、この中等部女子寮に三匹のスライムがやって来た。ある男の命令により、その作戦を全うすべく行動を開始したのだ。その行動とは、まずネギを誘導するための、人質の確保であった。ある男はネギに用事があるらしく、そのネギを呼び込むために人質として多数の生徒を確保せよとスライムたちに命じたのだ。

 

 だが、スライムたちが人質として生徒を攫おうとした場所は、女子寮の大浴場であった。スライムたちは遊びで関係の無い複数の生徒を襲うと、次に目標を定めてそれを狙った。その目標とは、魔法やネギに関わっているのどか・ゆえ・和美の三人だ。”原作”なら古菲も狙われるはずなのだが、ここのネギは中国武術を習っていないので、古菲は除外されたようである。

 

 そのスライムの力により、風呂の中に沈められる三人。三人はその異変に驚いたが、この時点でもはやなすすべはなかった。この謎の現象が異常事態だと気づいた和美たちの前にそのスライムが姿を現し、彼女たちをあざ笑うかのようにうごめいていた。そして、そのままスライムたちは、そのまま水の転移により攫おうとしたのだが。

 

 

「そこの軟体生物ども……。彼女たちに何をしておる?」

 

「ナ?誰ダ!?」

 

 

 何者かが棒状の武器を風呂場の水面に叩きつけたようだ、その一撃は水しぶきをあげ、風呂の水を天井まで吹き飛ばした。この謎の攻撃に一体どうしたのかと、スライムたちは一瞬焦った。そしてそのスライムに捕まりかけた三人は、その勢いで水面上へと飛び上がり助かったのだ。そこで、すばやくその誰かに気づいたのは和美であった。

 

 

「マ、マタっち!?」

 

「お前さんがた、大丈夫でしたか?」

 

 

 そこに居たのはマタムネであった。このマタムネは不穏な気配を察知して、この大浴場にやって来ていた。そしてマタムネはその衝撃を利用し、浴槽の外へと飛び再び和美たちの方を向いたのである。

 

 

「マタムネさん!!?」

 

「マ、マタムネさん!!」

 

 

 夕映ものどかもマタムネに気がつき驚いていたが、同時に感謝もしていた。もしマタムネが居なければ、意味もわからず捕まっていたからである。

 

 また、その場に居た他の生徒は、マタムネを見ることが出来ないので、謎の現象として捉えるしかなかった。マタムネは三人の安否を確認すると、すかさず認識阻害の札を取り出し適当に投げつけ、他の生徒たちの意識を逸らす。そして、そこで普段通りの表情でありながら、鋭い殺気をスライムへと向けていた。

 

 

「なんだお前ハ!?」

 

「コイツ動物霊ダゾ!?」

 

「邪魔者は倒すのデス!」

 

 

 突然の邪魔者にスライムたちは驚いたが、相手がネコの霊だとわかり余裕の態度を取っていた。そのスライムたちの姿をマタムネは警戒しながらも、静かに睨んでいた。それも目だけで相手を射殺すほどのものであった。

 

 

「和美さんとその友人がたに手を出すのであれば、この小生、手加減せぬ……」

 

 

 その言葉は波を感じぬものだった。だが、恐ろしいほどの威圧を感じる言葉だった。和美は今のマタムネの言葉に一瞬驚いていた。あの温厚なマタムネが、本気で怒りを感じていることをその言葉だけで察したからだ。だが、それは自分たちを心配してくれていることでもあると考え、同時に喜びと感謝も感じていた。

 

 

「マタっち、助けに来たんだね!? ありがとう!」

 

「礼には及びませんよ。これも小生が心で決めた事です故」

 

 

 和美はマタムネにお礼を言っていた。いや、言わずに入られなかったのだ。マタムネもその言葉をスライムたちから視線を動かさずに聞いていた。そして、気にするなと和美へと優しく言っていた。

 

 

「マタムネさん、ありがとうです……」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「お二人にも先ほどと同じ事を申そう。気にする事などありません」

 

 

 そこで夕映ものどかもマタムネに感謝を述べていた。だがやはりマタムネは礼には及ばないと二人に言っていた。その三人と一匹の光景を見ながら、いつまで話しているのだとスライムたちは思っていた。そこでスライムたちはマタムネに挑発的な言葉を発していた。

 

 

「そこの動物霊、邪魔をするなら消えてもらうヨ!」

 

「そうデス、邪魔デス!」

 

「今すぐ出て行くナラ、許してやってもイイゼ?」

 

 

 しかし、そのスライムたちの言葉に耳を貸さずに、マタムネは攻撃を開始した。マタムネはその手に持つキセルで、打撃攻撃を一匹のスライムに与えた。だが相手はスライムである。そういうダメージはなかなか通用しない。さらに三匹のスライム、そこそこ体術ができるのだ。スライムたちはその攻撃を合図にいっせいにマタムネへと飛び掛り、蹴りやパンチを連続的に浴びせだしたのだ。そのスライムたちの猛攻に、マタムネは防戦を強いられていた。

 

 

「所詮動物霊ダナ、このままやられてしまエ」

 

「その柔軟さ、寒天の如し。では小生も()()を使わねばならんようだ」

 

「強がるなヨ!」

 

 

 スライムたちの猛攻に、これはまずいと考えたマタムネは、次の手に出た。そのスライムたちはマタムネの今の言葉を強がりだと考えたようだ。さらに攻撃の速度を増すスライムたちを、マタムネは一度キセルを横になぎ払って吹き飛ばし、態勢を立て直した。そして、その秘術をマタムネは使った。スライムたちを倒すため、和美たちを救うために、自らの巫力を削って本気を出したのだ。

 

 

(ちょう)占事略決(せんじりゃっけつ)、”巫門御霊会(ふもんごりょうえ)”!」

 

 

 そこでマタムネはキセルに自らの巫力を与え、巨大な刀を作り出したのだ。これこそが超・占事略決に記された秘術の一つ”巫門御霊会”である。

 

 

「な、その巨大な刀ハ!?」

 

「訳がわからないデス」

 

「だが我らにそのような手は通じないゼ!」

 

 

 突然現れた巨大な刀に、恐怖を覚えるスライムたち。だが自分たちはスライムであり、軟体だと言う自信があった。だからあの刀程度ではこの優勢が覆らないと考えたのだ。

 

 

「ならば、受けてもらおう」

 

 

 巫門御霊会、そしてO.S(オーバーソウル)”鬼殺し”。マタムネが自らの巫力にて、キセルを媒介にO.S(オーバーソウル)した巨大な刀だ。その刀はすさまじい力を持ち、切り裂いた肉体を滅ぼす力を宿す。だが、それは自らの生命すらも削る諸刃の剣でもあるのだ。そこでその鬼殺しを、向かってきた一匹のスライムへとすばやく振るう。その軌道、三日月の如し。

 

 

「”三日月(ミカヅキ)(ハラエ)”!」

 

「ナ、ウアアアアア!?」

 

 

 その鬼殺しの一撃で、スライムは軟体の体を消し飛ばされ、完全に消滅した。つまりそれは、スライムが元いた場所へと帰って行った証でもあった。それを確認したマタムネは、残りの二匹へと顔を向け、鋭い視線を向けて無言の威圧を発していた。

 

 

「ウソダロ!?」

 

「い、意味がわからないデス!?」

 

 

 その刀の一振りにて仲間が消滅したことに、残りの二匹のスライムは驚き戦慄していた。それも何が起こったのかさえもわからないのだ、当然のことである。もはやこのマタムネに恐れを抱いた二匹のスライムは、流石に旗色が悪いと考えここは引くことにしたようだ。

 

 

「クッ、作戦通りじゃないけど、時間デス」

 

「このままじゃヤバイ、別の作戦に移ったほうがよさそうダゼ……」

 

 

 二匹のスライムは、このマタムネを相手にする時間がないことを悟り、退散していった。まだ主要人物を捕える任務があるスライム二匹は、ここで時間を使う訳には行かなかったのだ。さらに、ここで全滅してしまっては元も子もないと考えたのだ。また、マタムネは退散して行くスライムを追わず、その場にとどまる事にした。何か強い力を別の場所で感じたからである。

 

 

「マタっちありがとうー! 本当に助かったよ! ただのネコだと思ってたけど、強かったんだね!」

 

「マタムネさん、ありがとうー」

 

「どうもです、マタムネさん」

 

 

 危険が去ったことを察した三人は、マタムネに助けてもらったことにもう一度お礼を言っていた。その礼を聞いたマタムネは三人を無事守りきったことで、いつもの笑顔になっていた。

 

 

「何、当然の事をしたまでですよ」

 

 

 マタムネはこれが当然の行動だと三人に話した。自分はこういうことしかできぬ身であり、こういう時だからこそ、戦うものだとマタムネは考えているからである。しかし、この先にもこのような事態が起こりかねないとマタムネは考えた。だからこそ、この三人に忠告をしておこうと思った。

 

 

「そして今だからこそ、お前さんがたへ忠告しておくとしよう。魔法に関わるという事は、この手の輩に襲われる可能性があるという事なのですよ」

 

 

 こう言う危険な目に遭った時だからこそ、マタムネは魔法に関わることはこういう目にも会うということを、その三人へ話した。その忠告を述べるマタムネは、真剣な表情であった。また、マタムネの忠告を息を呑み、静かに三人は聞いていた。

 

 

「う、そうなんだ……。こういうこと、あまり深く考えたことなかったなー……」

 

「そうですね……。確かに私たちの認識が甘かったのかもしれません」

 

「うん、だから魔法は普通の人には隠されていたんだよね……」

 

 

 そこで三人はマタムネの今の忠告に、少し怯えていた。魔法は確かに危ないものだが、こういう危険があるなどと考えていなかったからだ。そして、このようなことがこの先にも起こるかもしれないと考えると、やはり怖いと思うのが普通だ。だが、そこでマタムネはいつもの笑顔に戻りこう言った。

 

 

「その恐れこそが最も重要。そして、危機があればこのマタムネ、すかさず駆けつけ、必ずや助けに参りましょう」

 

「ま、マタっち……! やっぱ最高の友達だよ! マタっち!」

 

 

 マタムネはとても優秀な御霊神である。赤蔵家や覇王を助けることは当たり前である。また、気に入ったこの和美やその友人を助けることもまた、当たり前だと考えるのだ。そして、とりあえず一難は去ったようだ。だがあのスライムはまだ二匹生き延びている。何があるかわからないマタムネは、とりあえず彼女たちの側に居ることにした。

 

 

…… …… ……

 

 

 なんとか大浴場から生き延びたスライムの一匹は、刹那を捕まえようと考えた。刹那は寮の廊下を歩いているところだった。それを見つけたスライムは木乃香に変身し、隙をつこうと考えたのだ。しかし、その姿は全裸の木乃香だったのである。

 

 

「せっちゃん、せっちゃんと一緒に大浴場行こうと思て」

 

「何で裸なん!? このちゃん!!」

 

 

 その木乃香の姿を刹那はかなり焦った、何故か全裸の木乃香が目の前にいたからだ。だがそれはスライムの変装だ。偽者なのである。木乃香の裸を見てわたわたと混乱する刹那の隙をつき、スライムは姿を変えて取り込もうとしたのだ。

 

 だが、遅い、遅かった。その動きでは、この刹那は捉えられない。それは一瞬だった。スライムが取り込もうとした一瞬、すでに刀は振り下ろされていたのだ。そして刀を鞘へと戻し、ポツリと刹那は言葉を残した。

 

 

「……神鳴流奥義”斬魔剣”」

 

「ナニ……!? ナゼ!?」

 

「このちゃんが、そんなはしたない真似など、する訳がないだろう。だがこのちゃんの姿は切れない。だから姿を変えた瞬間を狙わせてもらった」

 

「嘘ダロ……体ガ……」

 

 

 斬魔剣。退魔用の神鳴流奥義。魔のものがそれを受ければ、絶大なダメージとなる。そしてスライムはその神速の剣技により、体を保てず散っていった。つまりこのスライムも元居た場所へと帰っていったのだ。その剣撃、光の如し。

 

 この戦いにおいて、普段から外では刀を所持しておく習慣を身につけていたことが、功を奏したようだ。ここで刀を握っていたからこそ、一瞬でスライムを切り払らうことが出来たのである。それを考えて刹那は詠春から譲り受けたこの刀、夕凪を強く握りながら眺めていた。しかし、そこでその雰囲気をぶち壊すような言葉を刹那は口にしたのである。

 

 

「このちゃんがあのような姿を見せるのは、私ではなくむしろ覇王さんなのでは……」

 

 

 いやはやなんと迷走した言葉か。それもないだろうと、誰もが思うことだった。そんなことがあれば、覇王ですらドン引きなはずである。それを言い終えると刹那は、今自分が言った言葉に慌てだし、赤面していた。そして木乃香の身が危ないことを察するまでの数分の間、その場で自己嫌悪に陥っていたのである。

 そして、最後に残った他のスライムも、別の場所へと移動していた。

 

 

…… …… ……

 

 

 そこはアスナと木乃香の部屋だった。窓からゆっくり侵入してくる残りのスライム。いまだその存在に気づかないアスナと木乃香を、このスライムが攫うのは難しいことではないだろう。だが、そこにはもう一人居た。精霊となったさよである。

 

 

「このかさん! アスナさん! 変なやつが来ました!!」

 

「変な? む、確かに変ね、”来れ(アデアット)”!」

 

「ホンマや。とりあえずここはアスナに任せよか」

 

 

 スライムは驚いた。音も無く忍び込んだはずがバレたからだ。だがその認識は甘い、甘すぎる。ここには精霊さよがいるのだ。その程度すぐばれる。その侵入者の姿を見たアスナはすかさずハマノツルギを取り出し臨戦態勢へと移る。そこで木乃香はアスナが臨戦態勢になったのを見て、とりあえずこの侵入者はアスナに任せようと思ったようだ。

 

 

「さて、今日はもう眠いからさっさと終わらせてもらうわね?」

 

「その強気もどこまで持つカナ?」

 

 

 スライムはそう言うと、すかさずアスナへと飛び掛った。体を広げアスナを捕えようとしたのだ。だがアスナにはその程度の動きなど、亀の歩み程度にしか感じないのだ。そしてアスナはハマノツルギを横に一振りし、スライムを切り裂いた。

 

 

「そんな攻撃など効かないデスヨ!?」

 

「無駄よ、あんたはもう、終わりよ……」

 

「何を悠長ナ……アアア!?」

 

 

 ハマノツルギの効果は魔法の消滅である。それは召喚された式神などにも有効で、一撃で帰してしまうほどだ。このスライムもまた召喚された存在だ。ゆえにこのハマノツルギの一撃を受ければ、強制的に送還されてしまうのである。もはや断末魔も言えずに、そのまま元居た場所へと強制的に帰っていくスライムであった。

 

 

「これで一安心ね」

 

「アスナのソレ、ホンマにスゴイんやなー」

 

「わあ、軟体さんが一撃で消えました!」

 

 

 アスナは完全に消滅したスライムを見て、安心して休めると思ったようだ。また、木乃香はアスナのアーティファクトであるハマノツルギを眺めながら、いつもながらすごい効果だと考えていた。そしてスライムをたった一撃でしとめたアスナを見て、さよはすごいと言葉にしていた。

 

 

「でも、本当にこれで安全になったのかしら? 何かやな予感がするんだけど」

 

「そやなー、とりあえず今夜の運勢でも占ってみよか?」

 

 

 しかし、完全に安心するのはまだ早いとアスナは考えた。あのスライムの仲間が居る可能性があると考えたのだ。さらに、何かいやな予感を感じたので、そのことを木乃香へ話したのである。そこで木乃香は占いで、そのいやな予感が的中しているかを探ろうと考えたのだ。

 

 

「そうね、それじゃお願いね」

 

「このかさんの占いの命中率は高いですからね」

 

 

 アスナは木乃香が占うと言ったので、そうてほしいと頼んだ。また、さよも木乃香の占いがかなりの確立で当たることを知っているので、どんな結果が出るかどきどきしながら見守っていた。そして木乃香が占いを終えると、木乃香の表情が険しくなった。あまりいいとは言えない、むしろ悪い結果が出たようだ。

 

 

「まだ誰かがやってくるかもしれへん、占いでは背が高い男がやってくるよーなことを示しとる」

 

「背が高い男?」

 

「それは誰なんでしょうね」

 

 

 木乃香の占いでは、この後背の高い男がやってくることがわかったようだ。だが木乃香の表情から見て、その背の高い男は知り合いではなさそうだった。それをアスナは察したのか、まだ面倒が起こるのかと頭を悩ませていた。その近くで占いの結果を見たさよも、それが誰なのか考えていた。

 

 

「うん、背の高い男や。そんで、なにやら悪う感じみたいやわ」

 

「もしかして、変態だったりして……。そしたら最悪じゃない」

 

 

 アスナはこの男が変態だったら本気でいやだなと考えていた。過去に一度変態と戦ったアスナは、二度目があるかもしれないと思っているのだ。そして、このアスナの勘、当たらなければよいと木乃香は思った。こんな雨の夜に変態がやってくるなんて、普通に考えても悪夢でしかないだろう。

 

 

「んじゃ、とりあえずこうやって待ち構えてようか」

 

「そやね、ウチもO.S(オーバーソウル)しておこーか、さよ!」

 

「はい!」

 

 

 アスナはハマノツルギを握ったまま、その男を待ち構えることにした。木乃香の占いはかなり当たるので、それを信用したのだ。また、何も無ければそれで良しだし、とりあえずいつでも戦えるようにしておこうと思ったのだ。そこで木乃香もいつでも戦えるようにO.S(オーバーソウル)をすることにしたようだ。

 

 

「憑依合体、相坂さよ、イン鉛筆!」

 

 

 今度は鉛筆を媒介に木乃香はO.S(オーバーソウル)をしたようだ。鉛筆は周りが木で出来ているので、普通のシャープペンよりも相性がよいと考えたのだ。そして、そのO.S(オーバーソウル)の姿は、簡素なもので、巨大な鉛筆そのものだった。

 

 

O.S(オーバーソウル)、スピリット・オブ・ペンシル!」

 

「全てがそのまんまなのね、まあ確かにわかりやすいといえばわかりやすいんだけども」

 

 

 名前も見た目もそのまんま、巨大な鉛筆のO.S(オーバーソウル)。その姿を見たアスナも、そう感じて感想を言葉にしていた。というのも木乃香は戦うことをしたことが無いので、まずは媒介に似せた武器のほうがイメージしやすいと考えたのである。しかし、覇王に並ぶためにはさらに工夫しなければとも考えているのだ。

 

 

「そう言わんといてな。ウチだってまだまだこれからなんやから」

 

「覇王さんに並ぶシャーマンになるんだっけ? 確かにまだまだこれからね」

 

「そうなんよ、だからもっとうまくO.S(オーバーソウル)がイメージできるようなりたいんやけどな」

 

 

 O.S(オーバーソウル)はイメージの形でもある。精霊となったさよならば、自由な発想で形状を変化できるのだ。だからこそ、木乃香はさらにうまくO.S(オーバーソウル)を構築出来るようにしたいと考えていた。そして、その状態のまま二人はその男がやってくるのを会話しながら待つことにしたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 一人の少年が麻帆良へと降り立った。彼の名は真方使羽(まがた しば)、転生者である。あのアーチャーと契約した転生者で、ある男とともに麻帆良へとやって来たのだ。この使羽の目的はただ一つ、原作キャラにエロいことをするというものだ。はっきり言えば、いまだに手は出していないカギ以上に変態なのである。

 

 

「ようやく麻帆良か! やっときたぁぁ!!!」

 

 

 麻帆良へやって来たことに、テンションが上昇していく使羽。彼の抱いた最低な野望のために、女子寮へと移動を始めた。

 

 

「大浴場で結界使って閉じ込めて、魔法で拘束してあんなことやこんなことしちゃうもんね!!!」

 

 

 いやはや、なんという行動理念だろうか。最低すぎて反吐が出そうである。まさにこの使羽は本物の変態だった。カギはまだ生易しい方だったらしい。むしろカギはただのエロ親父だ。そして、この使羽の特典はリリカルなのはのアームドデバイスの”ぼくのかんがえたさいきょうのデバイス”である。オリデバイスと言うものであり、巨大な剣なのだ。もう一つの特典は”魔力SSSランク”という、転生場所を間違えたようなやつであった。なぜリリカルなのはに転生しなかったのだろうか。

 

 

 だがしかし、その使羽の行動を阻むものが現れた。使羽が女子寮付近に差し掛かった時に、一人の少年がその使羽に声をかけたのだ。その少年とは流法(ながれ はかる)、スクライドの劉鳳の能力をもらった転生者である。なにやら不穏な空気を感じ、女子寮近くへとやってきていたようだ。そして、法が女子寮近くにやってきたと同時に、そこへ一人の少年がやってきた。それが使羽だった。法は使羽が侵入者であることを察知し、警告をしたのである。

 

 

「お前は何者だ? ここで何をしている? ここから先は女子寮で、男子禁制だ。今すぐ立ち去るがいい」

 

「あぁ? 俺ちゃんの邪魔をすんのかテメェ!?」

 

「何を言っている? まさか女子寮に入ろうというのか?」

 

「そーだよーん! 邪魔しないでくれよん!!」

 

 

 この使羽は女子寮の大浴場に用事がある。だから当然女子寮へと侵入しなければならないのだ。だが法はそれを絶対に許さない。そのような不法侵入を許すような男ではないからだ。その使羽の言葉に目つきを鋭くし、敵と断定する法。しかし、それでも二度目の警告を法は使羽へと出していた。

 

 

「お前が何者かなどどうでもいい、この先は立ち入り禁止だ。速やかに立ち去れ! 次は無いぞ?」

 

「知るか! んなことより女体のほうがいいんだよ!!」

 

「何? お前、何が目的だ……!」

 

 

 法は本気で、しかし静かな怒りを燃やしていた。この使羽は明らかに女子生徒を狙っているからだ。何をするかはわからないが、かなり卑劣な行為を行おうとしていると悟った法は、使羽の目的を聞き出そうとした。そんな怒りに燃える法を、使羽は所詮雑魚だと見下し余裕の表情を崩さない。

 

 

「あぁ? 知りたい? まあすぐ死ぬテメェに、冥土の土産に教えてやらう」

 

「死ぬだと!?」

 

「テメェは俺に殺される。だから教えるのだよん、俺ちゃんの目的は原作キャラにイヤーンなことをするってことよ!」

 

「……原作キャラ? 何を言っているんだ!?」

 

 

 この使羽は完全に法をなめきっていた。そして目的として3-Aの少女たちにエロいことをすると宣言したのだ。だが、原作キャラと言われても、原作知識のない法には、それがまったくわからないのである。原作キャラとは何かと悩んでいる法に、使羽はその答えを馬鹿にした態度で教えていた。

 

 

「おろ、原作知識ないんかテメェ。そだな、女子中等部3-Aの女の子たち、あの娘らにちょっとイタズラしちゃうんだ!」

 

「な、に!? お前は……!」

 

 

 法は今の使羽の言葉を聞いて、完全にキレた。もうとてつもなくプッツン行ったようだ。なぜかと言えば3-Aには友人たる千雨がいるからだ。今その千雨が何をしてるかはわからないが、この下衆な使羽などに会わせる訳にはいかないと思ったのだ。

 

 そして、その千雨は現在大浴場にいる。法はこの事実を知るよしもないが、使羽を野放しにすれば千雨も被害に遭うということを理解した。それを法は許さない。ルール以前に、人として許せないのだ!

 

 

「……お前は俺が裁く! ”絶影”!!」

 

「チッ、血の気の多いやつだぜぇ、変身(セットアップ)!!」

 

 

 もはや完全にキレた法は、しょっぱなから真・絶影を作り出し、即座に攻撃させた。その真・絶影とは、絶影の本来の姿である。普段は拘束衣を装備したような少年の人形の姿の絶影である。だが、その姿は力を抑えている時の姿なのだ。力を解放した絶影の姿とは、巨大な腕の下に装備された二本のドリル状の剣。しかし技名は拳になっているので、一応腕の扱いらしい。そして上半身と下半身が分離し、下半身は大蛇のような形となり、常に宙に浮いた姿。それこそが、まさに真の絶影の本来の本気の姿なのである。

 

 

 また使羽もとっさに変身し、バリアジャケットを装備する。それは黒と青の騎士甲冑であった。バリアジャケットとは、リリカルなのはに登場する、所謂変身後の衣装である。だが、その性能はただの服や鎧などではなく、魔法による装甲であり、対衝撃、対魔法などの高い防御力を有しているのだ。

 

 さらに、その右手には巨大な剣が握られていた。これは同じ作品で登場するアームドデバイスというものであり、武器の形をした杖という特殊な武器だ。騎士と呼ばれるものが好んで使う、攻撃特化の武装なのである。そして、その右手に持つ巨大な剣で、絶影の攻撃を防いでいた。そこで、すかさず使羽は結界を張り、この法を逃がさないようにしたようであった。

 

 

「これが俺のアームドデバイス、”ジャイアントキリング”っつーもんよ!」

 

「何かわからんが、”絶影”!」

 

「甘いぜ!! カートリッジリロード!!」

 

 

 絶影は影すら捕えられぬ動きをする、すさまじい速度での戦闘を得意とするアルターだ。だが使羽はジャイアントキリングに装填されている魔力カートリッジを一つ炸裂させ、そのデバイスを変形させた。その直後、両刃だった剣が片刃となり、その刃とは逆の位置にブースターが装備されていた。見た目としては明らかに、スーパーロボット大戦の零式斬艦刀であった。それのブースターを噴射し、使羽は絶影へと剣を振り下ろす。

 

 

「おらぁあぁぁ!!!」

 

「そんな大振りな攻撃など、あたらん!!”絶影”!!」

 

「がぁぁ!? な!?」

 

 

 しかし、その程度の速度の攻撃、絶影に当たる訳が無いのである。そのジャイアントキリングが命中する手前で、絶影は銀色の残像を残し、すでに使羽の後ろへと移動していたのである。さらに絶影は、その巨大な尻尾で使羽を攻撃した。それに叩きつけられ、吹き飛ぶ使羽。だがその程度では終わらせない。絶影は銀色の残像を無数に展開しながら、使羽を先回りしさらに追撃を加える。

 

 その行動を5回ほど行った後、絶影は使羽を地面へと叩きつけたのだ。この攻撃に、使羽はボロボロとなっていた。流石にバリアジャケットがあるにせよ、今の攻撃を耐えるほどの力は無かったようである。

 

 

「ぐ、ぐうう……、まだだぁぁ!!」

 

「まだ動くか、ならば”剛なる拳、臥龍(がりゅう)伏龍(ふくりゅう)”!!」

 

「な、うわああああああ!!!」

 

 

 トドメといわんばかりに、絶影の持つ二つの剣を使羽へと飛ばした法。その攻撃に先ほどまではかなり余裕をこいていた使羽が、完全に恐怖一色となっていた。そして使羽にそれが着弾すると大爆発が起こり、使羽は完全に気を失っていた。

 

 正直言えばオーバーキル、やりすぎである。だがそれほどまでに、この法はキレていたのである。それは当たり前のことだった。友人たる千雨が、こんな毒虫ごときにひどい目に遭わされそうになったのだ。このぐらいしても仕方が無いことだろう。だが、まだ怒りが収まらないのか、法は鋭い視線を気絶した使羽へと向けていた。

 

 

「毒虫が」

 

 

 もはや動かなくなった使羽に、さらに吐き捨てるように法はそう言った。そこで使羽がのびてしまったためか、結界が消滅したようで、景色が元へと戻った。そして、この使羽を魔法先生へと渡すために、男子中等部へと使羽を持っていくのであった。いやしかし、この使羽、本当に弱かった。大体でかい剣とか使いこなすのが難しいというのに、よく選んだとしか言いようが無い。さらに言えば相手が悪かったとしか言いようが無かった。

 

 

…… …… ……

 

 

 しかし、もう一人この麻帆良に少年がやってきた。それはまたしてもあの赤蔵陽であった。彼もまたアーチャーの仲間となり、この作戦に参加していたのである。そしてやはり女子寮へと潜入しようとしていた。スライムが木乃香を攫うことは予定されていたが、あわよくば自分が攫おうと思っていたのだ。一応知り合いだし、隙をつき易いと思ったのである。いや、それ以上に覇王から寝取ろうと考えていたのだ。どうしようもない下衆である。だが、そんなところで、ある人物に出会ってしまった。それがまたもやあの錬であった。

 

 

「キサマ、何をしている」

 

「な、て、てめぇぇ!?」

 

 

 陽は錬の姿を見るや否や、怒りの叫びを上げていた。過去にて一度この錬にボッコボコにされ、悲惨な敗北をしたからだ。だが、肝心の錬は、またこの雑魚か、程度の認識しかないようだ。

 

 

「なんだ、あの時の雑魚シャーマンか」

 

「ざ、雑魚だとおお!!!???」

 

 

 いやはや、まったくもって陽は雑魚であった。当然そう言われても仕方が無い。そして、この錬もまたシャーマンとしての力により、不穏な空気を感じて女子寮近くにやってきていたのだ。なんせ本人は友人と考える聖歌が女子寮に居るのだ、当然である。そこにまたもや、こんなやつがやって来ていたのだ。心配になって女子寮付近へ来て正解だったと言うものだ。そこで、不審者の陽を相手にするため、当然臨戦態勢となる。陽は過去の敗北のためか、錬の顔を見るやいなやさらなる怒りを表していた。

 

 

「てめぇはぶっ殺してやる!! O.S(オーバーソウル)!!」

 

「ふん、少しはマシになったか、だがその程度では話にならんぞ!O.S(オーバーソウル)”武神”!」

 

 

 そんな怒る陽を涼しい顔で眺め、錬はこの前よりも一段階あげたO.S(オーバーソウル)を展開していた。この陽のO.S(オーバーソウル)は、ある程度強くなったのか、あの麻倉葉が初修行を経た時の第二形態となっていた。だが、錬のO.S(オーバーソウル)も変化していた。というのも元々このぐらい操れたのである。馬孫刀ではなく、宝雷剣に馬孫をO.S(オーバーソウル)させた姿、それが武神であった。

 

 

「な、なんだと!? そこまで出来るってのかよ!?」

 

「何を言っている? この程度で驚くというのなら、所詮キサマは雑魚のままだということだな」

 

 

 錬の言うとおりである。錬はすでにこれ以上のO.S(オーバーソウル)を操っているのだ。陽が今のO.S(オーバーソウル)で満足しているのなら、本気で話にならないのだ。ましてやこれが本気だと思っているのなら、陽は昔と変わらず雑魚ということになるのである。今の錬の言葉に、陽は完全に血が頭に上り、やはり暴れるようにO.S(オーバーソウル)をがむしゃらに振るう。この程度の挑発で顔を真っ赤にしているのなら、所詮その程度のレベルだろう。

 

 

「なんだとおお!! 絶対にぶっ殺してやる!!」

 

「ふん、なんと哀れなヤツだ。面倒だ、一撃で終わらせてやろう」

 

「ほざけぇ! 俺だって強くなってんだ! クソみてぇなこと言ってんじゃねぇぞ!!」

 

 

 もはや相手にもしたくないという態度の錬に、陽は暴れるだけしか出来ないほどとなっていた。その陽は技すら使うことも忘れ、ひたすら無駄にO.S(オーバーソウル)を振るっていた。なんという情けない姿か。そこで錬はそんなどうしようもない陽の言葉を無視し、O.S(オーバーソウル)を地面へと突き立てた。

 

 

「ならばその身に受けてみろ、我が必殺の”刀幻境(とうげんきょう)”!!」」

 

 

 刀幻境、O.S(オーバーソウル)武神を地面に突き立てることで、その周囲に大量の剣と槍を生み出し、相手を串刺しにする技である。その一撃で、あっけなくO.S(オーバーソウル)が破壊され、両手両足を負傷してしまった陽であった。またしてもあっけなく決着がついたようだ。もう勝負は終わったも同然だ。錬は最初から、この陽を相手にする気など無かったのである。

 

 

「ぎあ!? な、なんだよそれえええ!?」

 

「所詮キサマは雑魚だということだ。この程度、避けれんとはな」

 

「や、やろおお! もう一度だ!!」

 

「何度やっても無意味だ……」

 

 

 そう、この程度もしのげなければ、絶対に陽は錬に勝てない。それはコーラを飲んだらゲップが出るぐらい当然のことだった。だが陽はそれでも戦おうとするのだ。それは単に勇気ではなく、無謀な行為である。はやりつまらないという表情で、淡々と陽を見る錬であった。

 

 

「無理をすることはない、今すぐ逃げ帰るんだな」

 

「何を!! ふざけんなああああああ!!」

 

「……仕方が無い、少し見せてやろう。俺の本気とやらをな」

 

 

 そう言うと錬のO.S(オーバーソウル)が変化した。さらに巫力の密度が増し、高質化したのである。そう、これが甲縛式O.S(オーバーソウル)武神魚翅(ブシンユーツー)である。

そしてその必殺は、雷を操るものであった。

 

 

「最超奥義”九天応元雷声普化天尊(くてんおうげんらいせいふかてんそん)”!!」

 

 

 それは雷であった。轟音とともに陽の手前に落雷が発生したのだ。それこそが、この武神魚翅の最超奥義である九天応元雷声普化天尊であった。

 

 

「ひいいいぐいいいああ!!??」

 

 

 雨により水が湿っており、その雷の一部を陽は受け、吹き飛ばされていた。これほどまでに戦力差があるなど、陽も思っていなかったようだ。もはや戦意を喪失し、逃げるしかない哀れな陽であった。その姿、なんと情けないことか。そんな姿の陽を、視界にすら入れずに錬は目の前から消えろと言っていた。

 

 

「逃げたければ逃げろ。所詮キサマなど、俺の敵ですらない……」

 

「あ、ひ、ひいい!?く、クソオオオ!!」

 

 

 陽は逃げた、もはや戦う気力すら奪われ、逃げたのである。それを本当にくだらないと思い、見ているだけの錬であった。また、この敗北が、陽をどうなるかは、誰にも予想できないだろう。敗北を悔しく思い、これをバネに成長するか、もしくは恐怖により堕落するかだ。さて、陽の未来はどちらだろうか。それは誰にもわからない。きっと今の陽ですら、わからないことであろう。

 

 そして、またしても余裕で陽に勝利した錬は、この勝負にむなしさすら感じていた。一撃で終わる戦いなど、戦いですらないからだ。こんなもの、ただの弱いものイジメでしかないからだ。そこで、すでに勝負は終わったため、O.S(オーバーソウル)を解除した錬。その横に馬孫がドロンと現れた。

 

 

「錬ぼっちゃま、あのものが本当に覇王という男の弟なのでございますか!?」

 

「ああ、残念だが情報に偽りはない。本当に残念だ」

 

 

 この錬はシャーマンキングの内容をしっかりと覚えている。その自分の特典元である道蓮のライバル、麻倉葉の特典を貰った陽に初めて出会った時、錬は実は喜んでいたのだ。何せ作品中のライバル同士、強敵との戦いになると思っていたからだ。

 

 しかし蓋を開けてみれば、あっけないものだった。陽はシャーマンとしての技術をまったく伸ばしていなかったのだ。さらに言えばあの覇王、シャーマンキング最強のハオの特典を貰った男が近くに居るというのに、この体たらくというのも許せなかった。シャーマンとして強くなれる環境化にありながらも、雑魚のままだった陽に、錬は完全にあきれてしまったのだ。

 

 

「まあいい、帰るぞ馬孫。あまり女子寮付近をウロウロしていると、変な噂になりかねん」

 

「ハッ、そういたしましょう」

 

 

 錬は自分の寮へと帰ることにした。この場所に居れば、変態だと思われるかもしれないからである。とりあえず一つの敵を倒したのだ。他にも敵が居るかはわからないが、もし居るのならば夜の警備仲間の転生者にでも譲ってやろうと思ったのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:真方使羽(まがた しば)

種族:人間

性別:男性

原作知識:あり

前世:40代無職

能力:リリカルなのはの魔法

特典:オリジナルデバイス、ジャイアントキリング

   保有魔力SSSランク

 




悪魔たちは封印された訳ではなく倒されてしまっていたので、アーチャーが必死になって召喚しました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。