FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
といいましても、あまり長くありません。
それでは本編を再開します。
任務:敵残存部隊の掃討
任務領域:鎮守府<横須賀>正面海域
時間:一一三五より任務開始
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叢雲と吹雪が戦闘領域へ侵入する。
<<っ!始まっている・・・!>>
アップルボーイが通信越しで新米らしい良い反応をする。先に提督が出撃しているのだから戦闘は始まっているはずなのにである。
<<両艦隊領域へ到達、戦闘準備用意。>>
大淀さんの通信が入る。さしずめ統括オペレータというところか、続いて明石からも、
<<戦闘準備、<レイヴン>、モードを切り替えてください。>>
と通信が入る。
現在叢雲との「AMS」ではメインの制御システムを<通常モード>にしている。
他にも幾つかあるが、戦闘時には<戦闘モード>にするのが鉄則となっている。
思考を整え、モードを変える。
<<メインシステム、戦闘モードへ移行します。>>
直後、通信が入る。先に出撃していたランカーの提督の艦隊がすれ違う。
<<こちらは一度後退だ、後を頼むぞ。>>
同時に、敵が侵攻してくる。駆逐級が各種数隻づつといったところか。
大淀さんから通信が入る。
<<現在の両艦隊がいる地点を最終ラインとします。そこを越えさせない様にして下さい。>>
不意に、それを聞いていた叢雲が振り返る。吹雪も同様の仕草を取っていたようだ。
振り返った先には、壁の様な人工物が佇んでいた。
それは今回たった二隻で守る事となった人類最後の楽園、「鎮守府」の海上部の姿だった。
尤も、現在25km離れていては外壁も少し小さく感じる。500mあるのだが。
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いよいよ敵である「深海棲艦」と会敵する。距離は2km位といったところか。
「これに生き残ればっ!」
まずアップルボーイが吹雪に砲撃をさせる。しかしこの距離では当たらない。
逆に、この砲撃に気が付いた敵駆逐級が突撃をかける。数は3。イ級2のハ級1。
しかし、
「私の前を遮る愚か者がァっ!」
叢雲にはこれがベスト、自慢の機動力で一気に懐へ入る。
「沈めっ!」
マストでハ級を一突き、通り過ぎ様に両側面のイ級2隻を背部の連装砲で砲撃。振り返ってライフルでとどめを刺す。
別の敵部隊が攻撃を仕掛ける、まずは機銃による牽制。叢雲とて、機銃の速射まで避けられない。
しかし叢雲に降りかかる銃弾は目前で弾き飛ばされる。
「ふふっ、悪くないわ。」
その時の叢雲は球体状の青白く輝く膜の様なものに包まれていた。更に銃弾を浴びるが、ことごとくこれに阻まれる。
「今度はこっちの番よっ。」
叢雲の射撃は的確で、すぐに敵の足が止まる。
「いっけぇ!」
それを順調に撃破するのは吹雪。コンビネーションは良好のようだ。
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「成程・・・。」
その戦闘をモニター越しに見るジノーヴィーは呟く。
「確かに、それなりの力は有る様だな。」
「・・・そうだな。」
隣のオッツダルヴァの反応は薄い。
「パーティクルアーマーも使えるのか、初陣にしては中々だな・・・。」
”パーティクルアーマー”、先程叢雲が使った青白い光の膜のことだ。
確かに吹雪は使っておらず、被弾している。
「F.R.O.Mエネルギーの消費が多い叢雲で、よくやるものだな・・・。」
「・・・ふん。」
そうしてオッツダルヴァは席を立つ。
「オッツダルヴァ、・・・貴様は・・・。」
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戦闘開始から15分、随分敵も減ってきた。
次はハ級が2隻、ロ級が3隻。ハ級はレーザーを撃ってくる。
「・・・ッ!」
直撃こそ避けたが、今のでアーマーが消滅した。
すかさず連装砲とライフルで距離を取りながら順番に沈めてゆく。
「そんなっ、きゃあっ!」
吹雪が中破する、しかし敵の攻撃は止まらない。
「えぇい邪魔よっ!」
叢雲で加勢しようとするが、こちらも敵がしつこい。苛立ちを込めてロ級を蹴り上げる。
その時、
「あうっ!」
吹雪が被弾し吹っ飛ばされる。だがそれで敵から距離を取る形となった。
<<いまの射線は、反応、味方!?>>
明石が反応する。そして同じところからレーザーとミサイルが飛んで来る。その攻撃で吹雪に攻撃していたロ級4隻とイ級2隻が沈む。
「そんな、この反応は・・・!」
アップルボーイが驚愕する。彼は味方に吹雪を砲撃されたのだ。しかもその味方は、
<<ぼっ、僕はみ、味方ですっ!>>
<<ノーマル程度に後れを取るようではな・・・。>>
オッツダルヴァ、<ステイシス>の旗艦矢矧だった。
<<貴様は空気で構わん。そっちは準備できているな、貴様。>>
「ッ!ここからが、私の本番なのよ!」
叢雲が威勢よく反応する。
<<ふん、そいつはよかった。じゃ、行こうか。>>
「<ステイシス>、矢矧、抜錨する!」
「だとしても、わざわざ敵の砲撃から避けさせる為に味方を撃つとは流石ね・・・。」
そう矢矧は呟いていた。
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<<敵艦隊の全滅を確認、任務完了です。提督、お疲れ様でした。>>
その後の戦闘は嘘のようにあっけなかった。大淀さんの通信がよく聞こえる。
「こちらでも任務の終了を確認。<レイヴン>、モードを変更してください。」
明石に促され、モードを変更する。
<<メインシステム、通常モードに移行します。>>
「にしても、流石でしたね。佐世保ランク1<ステイシス>のオッツダルヴァは。」
明石に言われるまでもない、叢雲を通して目の前で見ていたのだ。体で解っている。
「ですが、レイヴンもかなりすごいと思います。だって、ノーダメージで戦果も撃墜数トップなんですから。」
「ま、当然の結果よ。」
当然と叢雲は言うが、こんな事は滅多に無いだろう。
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戦果(敵残存部隊の掃討において)
<レイヴン>:イロハ各駆逐級計18隻 叢雲/ダメージ無し
オッツダルヴァ:イロハ各駆逐級計12隻 矢矧/ダメージ極軽度
”アップルボーイ”:イロハ各駆逐級計9隻 吹雪/ダメージ中破
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こうして<レイヴン>の初陣は終わった。
読んでくださって有難うございました。
これでようやっとプロローグ終了です。
<<こちらは一度後退だ、後を頼むぞ。>>
という通信が劇中にありましたが、オッツダルヴァでもジノーヴィーでもどちらに捉えても構いません。
次回から本格的に物語が始まります。レイヴンが色々なモノを貰います。
-補足、というより蛇足-
今現在人類が住んでいる「鎮守府」は、もとは「レイヤード・ボルト」と呼ばれていました。
前回の起動画面においての
<<レイヤード・ボルト、シリアル「*********」>>
とは、言わばレイヴンの住民登録です。
「鎮守府」は3つあり、それぞれ<横須賀><佐世保><呉>という名称がついています。
といいましてもその場所にあるわけではなく、<佐世保>は旧ヨーロッパ跡にあったりします。
また、現在建造中の<舞鶴>もありますが、今までとは違う構造になっているそうです。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。