FLEET COLLECTION ~艦CORE~   作:ARK-39

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なんと一か月、知らぬ間に時は過ぎていました。

ヘンなのが来る前に言っておかないと・・・。
それでは本編を再開します。

「遅かったな・・・言葉は不要か・・・。」
「遅かったじゃないか・・・。」

それでは本編を再開します。


#21

「「作戦、開始します。」」

 

「「悪いがまだ死ねんのだ・・・!」」

 

「「この感覚、面白い・・・行くぞっ!」」

 

「「優秀な戦士と聞いている。」」

 

「「君になら出来る、幸運を。」」

 

「「・・・言葉は不要か・・・。」」

 

「「大袈裟なんだよ、みんな・・・あるいは・・・。」」

 

「「お前は・・・折れるなよ・・・。」」

 

「「・・・ありがとう・・・。」」

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「・・・来たな。」

<<オーエンさん、来客です。>>

 人工音声がVIP向けのプライベート病室に響く。

「あなたは、じっとしていて。」

「む。」

 オーエンと呼ばれた病院服の男はベッドから降りようとするが傍にいた女性に引き止められる。

「いらっしゃい。」

 女性が扉のスイッチを入れ、彼の見舞いに来た来客を招き入れる。

「フィオナ、久しぶりだな。」

「・・・あまり、昔の名前で呼ばないで下さい。

 後ろの方は?」

「ジョシュアの言っていた噂の”鴉”か、そうだろ?」

「そうだ、その彼だ。」

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 病室へ入ったレイヴンに向かって、この部屋の今回の主となっている男は口を開いた。

「いよぅ、ジョシュアから話は聞いている。

 俺は、ユーリック・ノーマン・オーエン。」

 不思議という言葉が似合う男だった。

 まるで若いままその身を老化させたかのような、歪な外見に目を囲うゴーグル。

 ユーリックはゴーグルを外した。

 その瞳に、光は無かった。

「非企業勢力「ラインアーク」ってのをやっているモンだ。

 が・・・”アナトリアの傭兵”の方が通りが良い、かな?」

 そういうとユーリックは薄く笑った。

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「いやぁ~、マっさかこんなに速くフラグが回収されるとは・・・なんというか・・・。」

「?

 ナンダ、”フラグ”トハ?」

「ヲ級にはカンケーないよ。

 ・・・んにしてもさ~。」

 アナトリア西部の大型ショッピングモールは、その外観を景色に合わせていた。

 その一角、「RE間宮直営」を謳う喫茶店にて鈴谷はヲ級(ジャックリーン)と再会していた。

 ヲ級の格好は巧く機械の体を秘匿しており、艦娘であっても一目では見抜けないであろう。

「ヲ級もよくこんな所にいたね~。

 まぁ誘う手間が省けたし?

 丁度フトコロも暖かかったから、こうして”パッフェ”まで付いたお茶も出せたし?

 鈴谷としては万々歳モンだっけどね~。」

「ソウ、ソレダ。」

「?」

 ヲ級が鈴谷の話を遮った。

「確カニワタシハ地上ニ興味ハアッタ。

 アノ後、ワタシハ近クノ地上ニ上ガリ、ココニ来タノハ2日前。

 ソシテ、オ前ニ会ッタ。アノ提督モスデニ確認済ミダ。

 ・・・偶然ニシテハ、ト言イタイ。」

 ヲ級のその疑問に鈴谷は、若干茶化し気味に答える。

「・・・まさか、何かあると?

 <舞鶴>の完成記念で「リリアナ」のライブを一週間後に控える此処アナトリアで?」

「ソレダケノモノガアルノダロウ?

 艦娘ナラ、分カッテイルト思ッテイタガ・・・?」

「・・・あぁ~ぁー。」

 鈴谷は一人納得した。

「それ、第2世代型艦娘までだわ。

 鈴谷第3世代型なんで・・・。」

 

「ソウイエバ、ズイカクトアブクマトイッタカ。カノジョ達ハ?」

「ショッピングモールは先に合流の時間を決めてあとは自由行動安定じゃん?」

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「それにしても、変わっていないな。

 お前の病院嫌いは。」

「全くだぜ。

 定期健診なんてもんが、なんでこうも元気なヤツにあるんだか。」

「あなたこの間階段から落ちたじゃない。

 ほんとに心配したのよ・・・。」

「あン位ならな、俺には掠り傷一つ付かねえよ。」

 レイヴンは、この会話に加わってはいなかった。

 ティーカップに注がれたダージリン・ティーに口を付けるのは、これで15回目。

「貴方だけの身体じゃないんですから、もっと大事にしてください。」

「わぁってるよ。

 ・・・どうした若いの?

 そんなにフィオナの淹れた茶が美味いか。」

「フィオナは上手だからな。」

「だから、二人ともあまりその名で呼ばないでって・・・。」

「ぉっと、ユナ、だったな?」

「・・・よろしい。」

 自分の知人が、旧友と病室で談笑している。

 そうとだけ書いてしまっても何の間違いでもない。

 隣にいた明石が小声で話しかけてくる。

(「”ふつう”なんですね。

  なんか・・安心したような感じがします・・・?」)

 ・・・明石であれば、そう思うかも知れない。

 英雄。

 伝説。

 そう呼ばれる人達は、それ故に勘違いされやすい。

 レイヴンと明石の目の前にいる人達。

 ジョシュア・オブライエン

 ”白い閃光”、最初のリンクス。

 ユーリック・ノーマン・オーエン

 ”アナトリアの傭兵”、リンクス戦争の英雄。

 そして彼女。

「ユナ・ナンシー・オーエンです。」

 と名乗ってはいたが、どうも偽名らしい。

 本名、フィオナ・イェルネフェルト。

 アナトリアと”アナトリアの傭兵”を救った立役者。

「お茶、入れてきますね。」

 そういう人達だ。

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「何という事だ・・・見失ってしまった・・・。」

 響はアナトリアの中心街を、少し外した所謂「飲み屋街」で千歳とはぐれてしまっていた。

((まだ3軒目だ。朝から飲もうと言ってきたのは千歳の方じゃないか・・・。))

「ん?」

 そして、響は昼間にしては案外多い人込みで知った顔を見た。

((鳳翔さん?

  しかも「居酒屋鳳翔」の鳳翔さんじゃないか。))

 艦娘はたとえ全くの同型艦でも即座に見分けることが出来る。

 それに、「居酒屋鳳翔」の鳳翔はとても見分けやすい。

((どうして此処に?))

「・・・千歳の方が気になるな。」

 響はもう一度鳳翔を捉えようとしたが、既に消えていた。

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 結局レイヴンは丁重にあの部屋から抜け出してしまった。

 明石は話題が合ったらしく、まだ残っている。

 今、レイヴンは病院の廊下をうろついていた。

 改めて見るとかなり規模のある病院だ。

 鎮守府でもここまで本格的な病院は1つか2つだろう。

 もう少しうろついていると、レイヴンの前に一人の男が通りすがる。

「来ていたか。・・・まぁいい。」

 オッツダルヴァ。

 こんな場所で出会うとは思わなかった。

「あと一週間だ、分かっているな・・・?」

 当然。

 そのままオッツダルヴァは奥の病室へ入っていった。

 ・・・知り合いでも入院しているのか・・・?

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「なるほど、奴が例の・・・。」

 オッツダルヴァが向かった病室には既に2人先客がいた。

 入院中の女性と、付き添いの男性だった。

「<レイヴン>か・・・。

 ヤツも好きものなのだな、どうだ?」

「周知・・・。」

「だろうな。」

 

<<イノウエさん、来客です。>>

 

「お前の名を借りて済まないな、真改。」

 真改と呼ばれた男は何も言わなかった。

「・・・。」

 長い白髪に上下を白で固めた真改は寡黙、という言葉を体現していた。

「かまわん、か。」

 女性はベッドから降り、病室の扉へ向かった。

「入れよ、テルミドール。」

 

「”まだ”オッツダルヴァだ、<オルレア>のアンジェ。」

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「むー。

 まさか響ちゃんに見つかってしまうとは予想外だったわ~。」

「全くだ、なっていないぞ千歳。」

「でもねなっち、貴女の好みから割り出されたんだからお・あ・い・こじゃない?」

「なっち・・・!?」

 その頃響は千歳と那智に再会を果たしていた。

 那智は<ステイシス>の2番艦、矢矧の補佐を務める熟練であり、改二改修も済ませている。

 当然、元<ステイシス>の艦娘とは面識がある。

「ところで、今度は何処に行くつもりだい?」

 響が突き止めたところで少し飲み、現在は移動中だ。

((付いて来る気満々じゃないか・・・どうする?))

((いっそ巻き込んじゃいましょうか?))

「信頼してくれ、私は口は堅い方だ。」

((ね、本人もこういっている事だし。))

((むぅ、しかたない。

  話は任せるぞ。))

((おっけ。))

「じゃ響ちゃん、ここからはオトナの時間よ。

 私たちの旧友に会わせてあげる。」

「千歳と那智の旧友なら、期待できるな。」

 

 数分後。

「ここだ。」

 那智の先導で3人が着いたのは、アナトリアの飲み屋でも一際渋いバーだった。

「・・・悪くない。」

「気に入ったかしら。」

 店の看板には「BAR早霜」とあった。

「艦娘の早霜の店か・・・似合うな。」

 彼女たちの僚艦でありこの店の店主、早霜は同型艦に会った事が響にはあった。

 夕雲型駆逐艦の艦娘・早霜は確かにこういう空気が似合う艦娘だ。

「入るぞ。」

 そういって那智は「closed」と掲げられているドアを開けた。

 店内に来客を告げるベルが響く。

 目の前のカウンターに彼女、早霜はいた。

「あら、随分と見なかった顔・・・懐かしいわ。」

「来ているか?」

「今日は”閉店”なのに、字の読めないヒトが多くて困るわ・・・。」

 するとカウンターの奥から知った顔が飛び出す。

「なっち~ちとせ~、遅かったわねっ!」

「響は「鳳翔」以来か~。

 人が多けりゃ酒も旨くなるぜぇ~?」

 「鳳翔」で働いていた足柄と隼鷹だった。

 響は困惑する。

「あれ、ど、どうして2人が此処に?

 2人が千歳と那智の旧友なのかい?」

「おい千歳!?」

「そういえば居酒屋「鳳翔」に行ってたわね・・・。

 ごめんなっち!」

「おぃ~っ!」

「・・・ふふふっ。」

 そうしてBAR早霜が賑やかになっていると、更にベルが店内に響く。

「またですか・・・。

 今度から看板は「へ・い・て・ん・ちゅう」にしましょうか・・・?」

 

 入って来た客は賑やかを通り越して、うるさかった。

「艦隊のアイドル那珂ちゃん参上~!

 今日は「リリアナ」のリーダー、”オールドキング”とお忍びデートだよっ!!

 スキャンダルされたら、イロイロとマズいんだからねっ!!!」

「オぅ、揃っているじゃねぇか。」

 

 そして早霜は、オールドキングと呼ばれた男に対し、こう言った。

「ふふふ・・・司令官、貴方の帰還を歓迎するわ・・・。」

____________________________________________

<舞鶴>の完成記念セレモニーまで、あと一週間。




読んでくださって有難うございました。

一か月掛けただけあったでしょうか・・・?
次回からはこの位の投稿ペースになるかもしれません・・・。

次回は・・・ライブ回?
筆者も忙しすぎて初期プロットの進行をあまり覚えていないのです・・・。

-補足、というより蛇足-

前話(#19後半ノ2)でフラッグが立っていた気もしましたが、気のせいでした。

今回だけで新キャラが結構出ていますね。

ユーリック・ノーマン・オーエン(アナトリアの傭兵)
&ユナ・ナンシー・オーエン(フィオナ・イェルネフェルト)
ジョシュアが出ておいてこの二人が出ない筈が無いでしょう!
冒頭の回想セリフは・・・機会があれば・・・あるいは・・・。

アンジェ&真改のアリーヤ剣豪コンビ
出るとしたらやはりコンビでしょう。
そしてオッツダルヴァには何か企みが・・・?
イノウエは真改の元ネタからです。

BAR早霜の面々
この話は大分初期のころにプロットを作っていて、巧く早霜が加わりました。

蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。

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