FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
任務:<<呉>>に襲撃してきた深海棲艦隊の迎撃
任務領域:鎮守府<<呉>>正面海域
時間:もう始まっています・・・。
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ヲ級は既に、深海棲艦の要塞へ針路をとっていた。
「ヲ級~、聞きたい事あるんだけどさぁ~。」
後を追っていた鈴谷に、ふと、ある疑問が沸いた。
「・・・ナンダ?」
「ヲ級ってさ、これからどーすんの?」
「・・・。」
ヲ級は、少しだけ考える素振りをして、即答した。
「逃ゲル。」
「!?」
「勘違イスルナ、深海棲艦ノ元ニ帰ル訳デハナイ。
ワタシハ、モウ死ンデイルノダゾ、アッチデハナ。」
鈴谷に振り向いたヲ級は、速度を維持したまま続けた。
「・・・ダガ、ヤハリワタシハ深海棲艦ダ。
ソウイウ形ニ生マレテキタモノダ。
オ前達ノ、味方ニハナレナイ。」
「・・・どしてさ?」
「ワタシハ人間ヲ、人間ヲ地球カラ排除スル為ニ生ミ出サレタ。
ソノ、深海棲艦トシテノソノ”キマリ”ハ、ワタシノ最モ奥深ク二存在シテイル。
覆スコトハ、ワタシデハ出来ナイ。」
「まぁ、ね。
わかんなくもない、・・・かな?」
ヲ級は視線を敵要塞へ戻した。
「コレガ終ワッタラ、ワタシハソノママコノ海域ヲ離脱スル。」
「そっか~、いぃんじゃない?」
「・・・止メナイノダナ?」
「むしろ援護するね。
そーいうのって、面白そうじゃん?」
今度は鈴谷が、ヲ級を追い越して振り向く。
「上手く逃げて、それからどうすんの?」
「ソレハ逃ゲテカラ考エルヨ。
タダ、ソウダナ・・・地上ニハ興味ガアル。」
「長生きするよ、その考え方。」
ヲ級は、自らの胸元を叩いた。
非常に無機質な、金属の音が、鳴った。
「モトヨリ丈夫ナ身体ダッタガ、今度ノハ”鋼ノ肉体”ダ。」
「「フフッ、ァハハハッ」」
「後始末は鈴谷に任せてヨ。
なァに
「オッカケマシタケドトリニガシマシター」
って言っときゃ許してくれるっしょ!」
「・・・スマンナ、イロイロト。」
「いいっていいって、鈴谷が勝手にやるんだから。
なんせ鈴谷たち友達でしょ?」
「トモダチ・・・?」
「そそ、鈴谷とヲ級は友達。
だからさ・・・ッ!」
いよいよ敵の要塞が眼前に迫ってきた。
鈴谷とヲ級は即座に臨戦態勢へと入った。
「また会おうよ、友達同士で。
そん時は、お茶の一つでも奢ったげるから!」
「アァ・・・、ソレモイイナ。」
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「そこぉ!」
天叢雲剣の一突きは統括者を捉えることなく空を切る。
その勢いを維持したまま、叢雲は距離を取って反転、引き際にガトリングとミサイルを見舞う。
「Ghuaaa!!!」
統括者に命中はしているが、効いているのかは判らない。
要塞の攻撃は、距離と精度に問題があるようでほとんど来ない。
それが幸いだった。
「くぅっ・・・。」
ガトリングとミサイルが弾切れだが、ヴァリアブルユニットの武装はパージが出来ない。
既に「マーヴ」「モタコブ」は海に投げ捨て、残った実弾兵装は脚部「レッグショット」のみ。
叢雲は格納していたマストを再度展開して右手に持つ。
「二刀流で行くわ・・・!」
それに”ソードフォーム”に変形させたタクティカルアームズを装着し、大型の薙刀にする。
「そして!」
更に両腕の天叢雲剣を合体させ、大型の片手剣にする。
「こっからが私の本番よ、畳み掛けるわ!」
まるでスーパーロボットの様な、世界観錯誤のロマン武装で突撃を掛けようとしたその時、また叢雲の前を紫電が走った。
「マタセタナ!」
「えぇ、もっと遅ければ私が倒したトコを拝められたでしょうに!」
ヲ級のリパルサーが統括者の脇を掠めたのを見て、叢雲はちょっとだけほっとした。
「他ノ重巡ハ別ナ空母ノ救援ニ向カッタ。」
どうやら鈴谷と青葉はジナイーダの大鳳の方へ行ったらしい。賢明な判断だ。
そしてヲ級は統括者の方へ顔を向けた。
すると統括者は驚くような表情をして言い放った。
「ッ・・・<ジャックリーン・ヲ・レキシントン>・・・!?」
「ソノ名デ呼ブトハ、オマエモ命運尽キタナ!」
ヲ級はレーザーで牽制しながら一気に接近し、統括者にリパルサーを浴びせて行く!
「ガァッ!!!」
「・・・ドウシタ、アノ”オモチャ”ハ、飾リ、カ?」
「Gu・・・アァァアアアアア!」
ヲ級の挑発に統括者はたまらず要塞の砲門を開く。
「ちょ、とばっちりよ!」
厚めの弾幕を搔い潜りながらも、叢雲は考えていた。
((って、このままもたもたしてちゃ、いいトコ持ってかれるわ!))
尤もだ。レイヴンも、ここで黙って見ている理由はない。
深海棲艦を倒すのは、人間と、艦娘だ。
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「いやぁん、ほんと、髪の毛が潮風で痛んじゃう・・・。」
キサラギは目下敵要塞へ向けて航行していた。
オーバードブーストが使えないのには簡単な理由がある。
規格外の武装(オーバードウェポン)を装着している為に、たとえOBを使用してもスピードとエネルギー効率が釣り合わないのだ。
しかしここは戦闘海域のド真ん中。
髪の毛を気にしながらチンタラとクルージングできる場所ではない・・・!
「なぁ~んちゃって♥」
キサラギが左腕に装備した「オートカウンターガン」が捉えたのは敵の艦載機群だった。
艦載機群はその無慈悲にして正確な、自動の機銃掃討によって海中に叩き落されていった。
その様はさながら、殺虫スプレーで一網打尽にされる蚊柱を彷彿とさせた。
「そ・れ・に、艦娘の髪の毛は潮風程度じゃ、傷まないわよ♪」
どうやらキサラギはワザと油断を見せることで敵を誘き寄せていたらしい。
効果はともかく、キサラギを狙っていた敵はもう周囲にはいない。
「さぁてっ。」
そして再びキサラギは敵要塞へ針路をとった。
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「ここまで来れば大丈夫かな?」
「瑞鳳さんと龍驤さんがいい仕事をしてくれたので、コチラに被害が無くて助かりました!」
<レイヴン>艦隊の青葉と鈴谷はそう言って敵要塞の戦線に戻っていった。
<<私は・・・。>>
((提督?))
戦線から後退し、レイヴンの艦娘達の戦闘を眺めていたジナイーダが呟いた。
<<私は、もっと強くなりたい。
お前達の提督として、私が「提督としての力」を持つ理由を知るためにな・・・。>>
((提督・・・この大鳳、あなたに付いて行きます。))
<<あぁ、ありがとう・・・。>>
その時、大鳳の眼前を何かが通って行った。
((!?))
<<何だあれは、艦娘じゃないのか?>>
索敵機能が故障してしまっていた為目視で確認したが、変な機械を背負った艦娘の様であった。
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「・・・ぃい加減ッ、しぶといのよォ!」
背部に装備された「サーペントテール」という鞭とも尻尾とも言えそうな武器で、叢雲は敵要塞の統括者による攻撃を掃った。
未だ、叢雲たちは敵深海棲艦要塞、そしてその統括者を落とせていなかった。
既にヲ級が参戦してからでも30分はゆうに経っている。
「ク・・・マサカココマデシブトイトハ、思ワダナ・・・。」
「そうよ、いったい何で出来てんのってぁっ!」
弾幕を避けきれず叢雲が被弾した。
損傷はこれで中破か。
「ッ・・・もぅ容赦しないわよッ、これで決めるわ!」
・・・叢雲よ、そのセリフはこれで何度目だ?
「今度こそよッ!
<<ヴァリアブル・インフィニティ>>-ッ!」
叢雲の叫びと共に、ヴァリアブルユニットが更に大掛かりな変形をした。
両合わせにした天叢雲剣のグリップに、更に変形したタクティカルアームズ・ソードフォームが合体する。その後ろにヴァリアブルスラスターと追加ジェネレータアルギュロス・スマートが装着され、その”刀身”に叢雲のマストとタクティカルアームズのグリップが合体した。
マスト後端にサーペントテイルまで装着されている「ヴァリアブルユニット・ブルーフレーム」極秘の攻撃モード。
「ふふふ・・・悪くないわ・・・!」
叢雲はやる気だ。
「ハァアアアアアアア!」
ヤル気だ。
「 雷 光 機 関 解 放
! ! ! ! ! ! 」
もう一度統括者にほぼ捨て身の突撃を敢行する!!!!
統括者までの決して近くない距離を、僅か刹那一閃に加速した。
その少ない時間、統括者は必死の抵抗をしようとしたが・・・!
「オトナシク退場シテモラオウカ・・・!」
ヲ級のリパルサーはしたたかに、統括者の動きを止めた。
「 沈 み な さ い ! 」
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統括者は断末魔を上げるその前に四散し、大人しく退場した。
「ま、マァ当然の結果よ!」
ヴァリアブルユニットを基本形態に変形しながら強がる叢雲。
「さてぇ要塞はッ!?」
統括者を倒したことで要塞が暴走を始めていた。
「チィ!」
「ちょっとコレまっ、マジヤバじゃん!?」
「取材どころじゃありません!!」
荒れ狂う要塞は消耗しきっていた叢雲たちには分が悪すぎた。
<<でも、そういう分の悪い賭けって、嫌いじゃないのよねぇ~♪>>
皆がその通信を聞き取ったとき、既にキサラギは「KENROKUEN」を起動させていた。
<<不明なユニットが接続されました。
システムに深刻な障害が発生しています。
直ちに使用を停止してください。>>
「ちょ、アンタっ」
<<ここから先は私にま・か・せ・て、ねっ♥>>
キサラギが要塞に向けて突撃の姿勢に入り、けたたましい爆音がKENROKUENから鳴り響く!
「撃ちぬくわよっ・・・止めてみなさい!」
そしてジェネレータが臨界し、一瞬で要塞の懐へ潜り込み、そして!
「さぁいくわよっ♪」
アンカーパイルが撃ち込まれ、完全に直撃を狙える形となった!
臨界状態のジェネレータが爆発!
その破壊エネルギーを糧に、F.R.O.Mは更なる破壊エネルギーを生み出す!
行き場の失った破壊エネルギーが一点に向けて加速する!
”秒速一光年”ものスピードで杭が要塞に撃ち込まれた!
更に、300%に凝縮されていた杭がその時点で元の形状に戻ろうとすることで威力が底上げされた。
この一連の流れが、全て滞りなく成功した時・・・。
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「杭の接地点にて小規模ながらブラックホールの発生を確認。
敵要塞は次元の彼方へ消えた・・・と。」
「ともかく、迎撃は成功。」
「キサラギも無事に帰還してくれたおかげで、研究の成果が確証された。」
「ヲ級は。」
「<レイヴン>の鈴谷曰く
「オッカケマシタケドトリニガシマシター」
だそうだ。」
「いいさ。
サンプルの採取は完了済。
彼女がいなくても研究は続行可能だ。」
「それに、あの”スーツ”のテスターも兼ねてくれた。
少しぐらい、自由にしておくさ。」
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<<呉>>の長い一日が、終わった。
読んでくださって有難うございました。
次回は、すごく聞き覚えのあるところに行きます。
そこで聞き覚えのある人達に会いに行きます。
-補足、というより蛇足-
ヲ級さん、名前がありました。
この世界の深海棲艦は「功績や戦果」から個人名が貰えるようです。
このヲ級さん、鬼や姫でもないのに二個師団任されていた艦なので、名前を貰っていました。
名前は元ネタの艦である「レキシントン級空母」。
それと、「ジャック・オ・ランタン」のもじりです。
ジャックの女性名はジャクリーンなので、あえて ッ も入れました。
<<ヴァリアブル・インフィニティ>>モード・・・。
多分これ以降に使用される事は少ないと思います。
KENROKUEN・・・。
ちなみにブラックホールは要塞の内部に発生したため、杭などは残っています。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。