FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
「くうっ!」
((ッ・・・なかなかやるな!))
この十数分間の内で、大鳳はその身体に数発の砲撃を受けながら、そして彼女とAMS接続をしているジナイーダは、その砲撃の感覚”だけ”をその身に沁み込ませながら、尚も敵深海棲艦の要塞の統括者と戦闘を継続させていた。
((そうだ、それでこそ・・・!))
なにより彼女達、ジナイーダと大鳳はこの戦いに充実していた。
<<いい動きだ、大鳳。
奴の攻撃が大分解ってきた。
次は合わせるぞ、出来るか?>>
「当然!」
<<よしっ・・・行くぞ!>>
ジナイーダは、あえて大鳳に通信で確認する事が多い。
「Guahhh!!!」
統括者鬼級の波状砲撃をギリギリで躱す大鳳。
砲撃の間隔を縫って、一気に統括者に接近。
「ハァ!」
統括者もそこで攻撃を許すはずがなく、迎撃として様々な攻撃の雨を降らせる!
<<今だ!>>
「この大鳳、その程度で止まるとぉ!」
だがそれは、ジナイーダと大鳳の思う壺。
「思ってぇッ!!」
QBとOBを併用した機動で迎撃を搔い潜り、離脱際に肩部パルスキャノンとマイクロミサイルを見舞う。更に背後に廻り込み右手の試製クロスボウと左手のマシンガンで統括者の動きを止める。
そして!
「第六○一航空隊、全機ッ、一斉射ぁ!」
止めに<TEAM R-TYPER>謹製の艦載機、「流星#601」のレーザーによる一斉射撃。
レーザーが直撃した途端に敵要塞が爆発し、辺り一面が爆炎に包まれる。
この一連こそがジナイーダが大鳳と編み出した必殺の連撃。
この戦法で彼女達は、面白いようにアリーナ演習のランクを上げていった。
しかし!
「!!!」
爆炎を貫いたレーザーが一閃、勢いそのままに大鳳を襲う!
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((爆発!?))
OB中の鮮明でない視界でも、敵要塞が爆発する様と、その後にレーザーが走ったのが見えた。
そのレーザーの直撃を食らった艦娘・大鳳のその姿も。
((マズイわ、このままじゃ・・・!))
叢雲もレイヴンも、大鳳を助けるという考えは合致した。
((アレなら!・・・アレならいけるわ!))
叢雲が閃いたようだ、が?
((アンタも、歯ァ食い縛りなさい!))
ん、待て、それってまさか。
「雷 光 機 関 解 放 !!」
そう叫んだ叢雲から紫電が走ったと思えば、次の瞬間一気にーーーーーー!ッ
「くぉっ、これでよい・・・わッァァアアアアアアアアア!!!!!!」
電光機関解放・・・至極簡単にはリミッター解除である。
叢雲の装着する「ヴァリアブルユニット・ブルーフレーム」にはそのプログラムが組み込まれており、短い時間ではあるが本体のブースタユニット”ヴァリアブルスラスター”と追加ジェネレータの”アルギュロス・スマート”、更に艦娘本体のF.R.O.M循環機構の”タガ”を外すことで、何時かの「VOB」を超える時速1300kmまで1,2秒の加速を得ることが出来る。
当然、その負荷は計り知れない訳ではあるのだが・・・。
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「・・・こっの・・・大鳳は・・・この程度・・・!」
<<よせ、動くな。>>
大破で留まったのはこの場合、不幸であろう。
要塞の統括者が、獲物を自慢の巣で捕らえた蜘蛛の如く、悠々と大鳳に近づいてくる。
その様を大鳳を通してありありと見せつけられるのだ。
<<・・・馬鹿な・・・。>>
体で納得していても、そんな言葉が漏れた。
((こんなところで・・・ッ!))
統括者が、ゆっくりと、要塞の砲塔を大鳳に向けた・・・。
砲身のその奥に、砲弾が装填されるのが、見えた・・・!
統括者は顔色一つ変えず、いや、微かに嘲笑うような表情(カオ)になった。
・・・負ける?
負ける。
・・・負ける!
<<ちょぉっっと待ったァァァアアああああ!!!!!!>>
ジナイーダの耳を劈く通信が入ったのはその時だった。
そして、その声の主は、すぐに目の前に現れた。
「でぇぇえええりぃぃぃいいいやあああああああ!!!!!!!!!!」
そう叫びながら赤と青の追加装甲を纏った艦娘が統括者に肉薄した。
というより、激突して無理やり自らをその場に止めた?
「ァッサルトォ・・・ァアーマァーッ!!」
その艦娘は自らのパーティクル・アーマーを攻撃に転換する「アサルト・アーマー(AA)」を用いて統括者の動きを封じたのだった。
統括者がひるんでいる間に、その艦娘・叢雲が大鳳へ近寄る。
「けほっ、けほっ・・・ふぅ。
っと・・・見た限りは大丈夫なようね・・・。
どう、動けるかしら?」
その全身に、ジナイーダが見た事の無い追加武装が施された叢雲。
そうだ、たしか・・・。
<<・・・レイヴンか、助かった。
すまないが後を頼む。
・・・手こずる相手でもないのだろう?>>
「そう言われるのは悪くないわ。
・・・とにかくここは下がっていて、後は私がやるわ。」
「悪いわね・・・。」
大鳳の調子が戻り、メインブースターに火が灯った。
そしてOBでこの戦域から離脱したのだった。
「さて・・・。」
叢雲が振り返ると、どうやら統括者も復活したようだ。
そして叢雲は、その統括者にこう啖呵を切った。
「相手になってあげるわ。
かかってらっしゃい!」
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<<ほぅ、これは参考になる・・・。>>
<<成程・・・。>>
キサラギ社の研究員が、自分達の研究の”成果”をモニターで鑑賞している。
その様が通信越しでも伝わってくる。
「あの~、いいかしら?」
待たされるのは、あまり好きじゃない。
キサラギはカタパルトで出撃準備を終えており、GOサインを待っていた。
<<っと、失礼。>>
研究員が気付いたようだ。
<<何分、性分ですので。>>
「貴方達のそうゆうとこ、好きよ。
でも女の子を待たせるのはダメなんだから、ね♪」
<<ははは・・・。>>
仕切りなおして、カタパルトにやって来た研究員がキサラギに説明を始めた。
だがそれは、説明というには余りにもセールス的だった。
<<「とっつき」はキサラギで生まれました。
アルゼブラの発明品じゃありません、我社のオリジナルです。
しばし遅れをとりましたが、今や巻き返しの時です。>>
「パイルバンカーは好きよ。」
<<パイルがお好き?結構。ではますます好きになりますよ。
さぁさぁ、どうぞ。射突型ブレードのニューモデルです。
その名も「KWB-SBR44/R-9DP3"KENROKUEN"」。
豪快でしょ?
んあぁ仰らないで。
規格が合わない。
でも規格品は見かけだけで、リーチは短い、よく外れる、すぐ弾が切れる。
碌な事が無い。
ブレードレンジもたっぷりありますよ。
どんな装甲の敵でも大丈夫。
どうぞ装着してみてください。
いい音でしょう?
余裕の音だ、出力が違いますよ。>>
((そんなのよく知っているわ、いらいら・・・。))
この武器はキサラギが開発主任兼テスターであり、一から十まで彼女仕様だ。
しかし、どうやらこの研究員はそれを知らなかったようだ。
秘匿性を重視する故に、研究部署が違うと他の研究はあまり知ることはできない。
だがその事実を知らないキサラギを怒らせるのには十分過ぎた。
「一番気に入ってるのは・・・ね。」
そんな、静かに怒るキサラギに気が付けない研究員は呑気だった。
<<?何です?>>
ウインドー越しの研究員に振り向いたキサラギはウィンクをして言い放った。
「運用費♥」
そして、そのままキサラギは右腕に装着したKENROKUENを起動させた。
無論、こんなカタパルトで起動させれば一溜まりもない。
<<不明なユニットが接続されました。
システムに深刻な障害が発生しています。
直ちに使用を停止してください。>>
火花を煌めかせながら変形するKENROKUEN。
その姿には、最早神々しささえ錯覚する!
<<!!!!!!!!!!!!>>
漸く事態に気が付いた研究員はそのイレギュラーな事態に慌てふためく。
<<わーっ、何を!
わぁ、待って!
ここで動かしちゃ駄目ですよ、待って!
止まれ!
うわーっ!!>>
遂には部屋を飛び出し、逃げ出してしまった。
「・・・なぁ~んちゃって、ふふふ♪」
乱暴に開け放たれたドアを眺めながら、彼女はそう呟いた。
するとKENROKUENは何事も無かった様に待機状態に変形した。
どうやら、彼女のみが知りえるセーフティ機構があるのだろう。
「さぁ、行くわよ!
キサラギ、出撃しますっ。」
そしてキサラギは自力でカタパルトを起動させ、出撃した。
目標は当然、眼前の敵深海棲艦要塞。
「いまからっ、キサラギが楽にしてあ・げ・る!」
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後半ノ2に続く。
読んでくださって有難うございました。
一つの区切りが四つになるとはだれも思わないであろう。
少なくとも筆者は思っていなかったよ。
ノ2は叢雲の戦闘、キサラギの一撃、そしてヲ級の決断で構成されるはずです。
-補足、というより蛇足-
ジナイーダは要塞級とは初戦闘です。
「企業・組織について」が投稿された時に話題をかっさらった(?)企業、
<TEAM R-TYPER>製の艦載機、「流星#601」が登場しました。
この世界の艦娘の艦載機にはヒトも妖精さんも搭乗していないのでご安心を。
瑞鶴の艦載機はイラストそのままの純正でしたが、「流星#601」は違います。
・・・ラウンドキャノピー?フォース?Rwf-9D1?R-9D?
数少ない名前被りの艦載機ですが、見た目はアレとは違います。あしからず。
電光機関・・・コレデヨイ・・・。
キサラギ社研究員のパーフェクトセールストーク。
キャデラックよりフォードならマスタングが好きです。五代目の前期型。
KENROKUENの運用費ですが、それはもうべらぼーな額です。
分かり易く例えます。
艦これゲーム本編的には「大型各資材最大値十回分」。
アーマード・コアVD的には「OWセット十個分」。
一回の”運用”でこのぐらいです。多分。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。