FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
追記、それどころか四つになりそうじゃないか。
・・・ともかく、
それでは本編を再開します。
青葉と鈴谷が楽観している割に、実は叢雲は苦戦していた。
「ぅ私の、前を遮る、愚か者がァ!」
両腕に輝く”天叢雲剣”で、雷巡チ級3隻を同時になます切りにしたと思えば、すぐにタクティカルアームズの武器ハンガーに懸架されている腕部武器、右腕用のチェーンガトリングと左腕用の多分裂マイクロミサイルポッドに換装。
クイックブースト(QB)で一気に敵との距離を開け、それらを自分の居たところに今更やって来た敵に撃ち込んでゆく。
「しっ、沈めェっ!」
そう、苦戦と言っても、敵との交戦による苦戦ではない。
((しゅ、出力にモノを言わせたピーキーな装備なんだからっ。))
「も少しっ、てーねーに、扱いなさいよッ!!!」
叢雲渾身の雄叫びと共に、両手に握るオープニングブレードが敵軽空母2隻を貫く。
「ハァー・・・、ハァーッ・・・!」
叢雲もそうだが、それを操るレイヴンもAMSの高負荷が響く。
「その原因は、たぶん、これね・・・。」
叢雲が、両手に握る銃と剣に変形する武器を見る。レイヴンも、それには同意見だった。
「エネルギーを馬鹿食いする割に、たいしたことない火力しかないレーザーマシンガン。
と、威力はあるのにレンジがあんまりなブレードなんて、考えた奴を張っ倒してやりたいわ!」
そう、出撃前にキサラギの研究員が叢雲に装備させた武器だったが、これが所謂”産廃”だった。
かつて、<フラジール>の島風が装備していたレーザーマシンガンの様な、エネルギーパックのマガジン式ではない、艦娘から直接エネルギーを供給する必要のある方式のせいで、追加のジェネレータを搭載しているにもかかわらず、常にエネルギー管理に気をやらないといけないという代物だ。
「くぅっ、全く、カッコに見合った武器にしてくれれば・・・ってぇ!?」
一瞬の油断で敵の攻撃を浴びてしまった。
しかも、
「やだ、”チャージング”なんて、そんな、あり得ない・・・!」
ダメージこそなんともなかったが、ついにエネルギーが完全に底をついてしまった!
こうなってしまっては艦娘は一度、全身にF.R.O.Mを循環させるために全くの無防備となってしまう。新米の提督が陥り易い、悪く言えばレイヴン位の提督では起こらない事態だ。
「あぁもうっ!危ないトコ、見せないでよー。」
「ワザと敵を引き付けますよー。ワレアオバ、ワレアオバ・・・ひゃー!」
青葉と鈴谷が上手く敵を分散させたらしく叢雲への攻撃は凌いだ。
だが、レイヴンと叢雲はいよいよ決断に迫られていた。
((これ、パージしちゃおうかしら・・・。))
たしかに、一番手っ取り早い方法としてパージは利に叶っている。
しかし、パージした武器を回収する事は出来ない。
この武器にはレコーダーが内蔵されている事が判ってある。
つまり、この武器は必ず回収しないといけない事になっているのだ・・・!
「あ、ヤバ・・・提督!!」
鈴谷の声が聞こえた時には、既に叢雲に敵軽巡4隻の放った一斉砲撃が迫っていた。
未だ叢雲のチャージングは完了していない。
パーティクル・アーマーを張れない今の叢雲には軽巡1隻の砲撃でも脅威だ。
しかも避ける為のブーストも一切行えない!
「ッ!!!」
叢雲が精一杯ダメージを抑えようとする。
レイヴンもフィードバックを覚悟する。
そしていよいよ砲弾の雨が叢雲に降りかかる!
その時!
「リパルサァーーッ、インッパクトォォオオオ!!!!!!!」
叢雲の少し手前で、雨は晴れた。
青白く光る2つの雷鳴によって。
「・・・!、アンタそのカッコ・・・!?」
「・・・ドウダ、カッコイイダロウ。」
叢雲が向いたその先にいたのは”あの”空母ヲ級だった。我々が鹵獲した、あのヲ級。
何故判ったのか。
実に簡単だった。
首から下が、全て機械で構成された空母ヲ級が、あのヲ級でない筈がない・・・!
特に、鳩尾にあたる部分にF.R.O.Mと同じ青白く光るリングが”いかにも”だ。
「・・・何しに来たのよ。」
「ソノ武器ハ、艦娘デハ扱イ切レナイト思ッテナ。」
そう言いながら近づいてきたヲ級が、叢雲の握る銃をやや乱暴に掴み取る。
「ちょっと!」
「コノ武器ハコウ使ウ・・・!」
そして躊躇いなく、深海棲艦に向けてレーザーを発射した。
しかもそのレーザーは、さっきまで叢雲が撃っていたようなしなびたレーザーではない、きちんと一発の威力があるものだった。
「コレハワタシガ使ッタ方ガ良サソウダナ。貰ウゾ。」
もう一丁をヲ級に渡しながら、叢雲はレイヴンと同じ考えをヲ級にぶつけた。
「・・・深海棲艦はアンタの味方よね?
そう易々撃てるもんなのかしら?」
するとヲ級は、意外なことを言った。
「深海棲艦(ワタシタチ)ハ人類ヲ共通ノ敵トシテイルダケデ、味方トカ、仲間トカトイッタ認識ハ持チ合ワセテイナイ。ワタシハ、向コウデハ既ニ存在ガ抹消サレテイルダロウ。
ソレニ、ワタシニハコノ身体トイウ借リガアル。ソノ分ハ、オ前達ノ味方ダ。」
そしてヲ級は自身の背中の武器ハンガーからあるものを取り出した。
「それっ・・・!」
「忘レモノダ。
オマエニハコッチノ方ガ似合ウ。」
マーヴとモーターコブラだった。
「サ、行ッテコイ。
コンナ所デ手コズッテイル訳ニハイカナイノダロウ?」
ヲ級に言われるまでもない。
レイヴンと叢雲の眼前には、もとより敵要塞しか映っていない!
「・・・悪くないわ。」
「コッチガ片付イタラワタシモ行コウ。
ソレマデニ沈ムナヨ?」
「誰に言っているのかしら?」
そして叢雲がOBで敵要塞に向かっていくのを見ていたヲ級は呟く。
「フッ、違イナイ。」
ん?何か忘れているような・・・。
「ちょっとちょっと待ってよヲ級さ~ん?」
「青葉達を、忘れてもらっては困りますねぇ!」
そうだ、そういえば青葉と鈴谷も居たのだった。
「ナンダ、叢雲ニ付イタノデハナイノカ?」
ヲ級もすっかりそう思っていた。
「鈴谷があんなのに付いて行けると思う?このナリで?」
「青葉としては、ここはヲ級さんに付いていた方が良い記事になりそうなので!」
「・・・ソ、ソウカ・・・。」
結果として、鈴谷からは至極妥当な答えが返ってきた。
青葉は・・・。
しかしよく考えれば、ジャーナリストとしてしたたかな彼女を垣間見る答えだった。
鈴谷がヲ級の前ででクルンと回る
「まぁ、鈴谷これでもアシストには自信あるからっ。」
そして、背中に手を当て鈴谷らしく言い放った。
「ま、背中は任せなヨ。って(笑)」
青葉は、自分の装備を確認して言った。
「取材相手が目の前で死んでしまっては、記者の風上にも置けませんからね。
今度こそは、青葉に任せてください!」
そしてヲ級は、そんな二人を見て”面白く感じた”。
「フッ・・・イイダロウ。
ヨシ、蹴散ラスゾ!」
そして、ヲ級達3隻によって、この海域の敵は瞬く間に壊滅させられる事となる。
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後半ノ1に続く。
読んでくださって有難うございました。
後半は決着編になります。
-補足、というより蛇足-
ヲ級の機械の身体について、
右腕以外は某社長が主人公のアメコミで登場するスーツを女性風にした感じです。
右腕は深海棲艦製の義手のままです。
鈴谷の最後の言い回しは某ポエムがステキな車漫画からです。
分かる人いるかな・・・。
素敵性能ばかり良い産廃には筆者も苦労したものです・・・。
ハンデレールガンとか。
なんででしょうね、ああいう武器ってやけに積んでみたくなるんですよね。
ハンデレールガンとか。
そして何としても有用性を見出そうとしたくなるんですよ。
ハンデレールガンとか。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。
追記、流石にタイトルがあれなので変更しました。