FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を開始します。
「と、いうわけで!
まずはサクッと私たちの実力試しってヤツ?」
重巡洋艦の艦娘・鈴谷が緊張感の無い声を上げる。
「たぶんそうですね。
駆逐艦の護衛任務に軽巡重巡はそうそう使いませんから。
それにこんな洞窟で・・・敵なんて出るんですかね。」
それに答えたのは軽巡洋艦の艦娘・阿武隈である。
二隻とも、新たに艦隊<レイヴン>の下に編入された新鋭である。
「おふたりさん、今は作戦行動中じゃけえちょっち静かにいかんか。」
「でも、この空気は嫌いじゃない。」
そのすぐについているのは駆逐艦の艦娘・浦風と<レイヴン>の響だ。
浦風は<アルゼブラ・イクバール>に所属する艦隊<スタルカ>の旗艦だ。
その提督ド・スは自分と同じ話し方をする彼女を気に入っているらしい。
「そやけど、此処は一応敵陣じゃけえ注意しとかな・・・。」
「うわっ、なんか、ヌメヌメするぅ!」
「ふわぁぁ~っ!前髪が崩れちゃったぁっ!」
浦風の注意もお構いなしに、かつての「JK」の様な仕草をするふたり。
だがそれを見た浦風は、あまり悪い気はしなかった。
((確かに二人がいつもの雰囲気なのはええのかもしれんのぅ。))
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「鈴谷」読み:スズヤ
艦種:重巡洋艦 最上型 3番艦
性能特徴:火力が重視されている。あまり近接戦には向いていないが、蹴り技が強力である。
艦娘特徴:ちゃらちゃらした行動が目立つが、実は結構真面目なところがある。
「阿武隈」読み:アブクマ
艦種:軽巡洋艦 長良型 6番艦
性能特徴:同型艦の中で最も基本性能が高い。その代りエネルギー消費は劣悪。玄人向け。
艦娘特徴:凄く前髪を気にする癖がある。戦闘中ではセットも出来ないと嘆いている。
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「此処がこの洞窟の中枢の様じゃねぇ。」
「ちょっとー。マジに何もなかったんですけどー。」
その後3分とせずに浦風たちは深海棲艦の洞窟中枢に到着していた。
道中一切の戦闘無し。敵に合う事さえなかった。
「ガラ空きでしたね・・・。」
「いいさ、やり易くて。」
そう言って響は右腕に装着した厳ついブツを展開する。
「ところで、コイツを見てくれ。どう思う?」
「すごく、大きいで・・・って!変なこと言わせないで下さい!」
浦風も響と同じものを展開する。
その武器の名前は「射突型ブレード」。
「とっつき」と呼ぶ方が一般的か。
「ちゃちゃっと始めるけぇの♪」
それは艦娘が装備できる最も一撃の攻撃力が高い武器である!
「さて、やりますか。」
響と浦風は洞窟中枢に鎮座する緋色の結晶に射突型ブレードの刃を向ける。
「えぐらせてもらうで・・・ッ!」
「ウラァァァァァァ!」
ふたりが十分に気合を入れ、目標をとっつきでブち抜く!
「「ハァッラッショォォォオオオオーーーーーッ!!」」
音速で打ち出された杭が圧倒的な破壊力を生み出す!
緋色の結晶はたちまち崩壊し、この洞窟の存在意義は消滅した。
「すっごーい。
って、これで私たちは終わり!?こんだけ!?」
鈴谷の言うとおり、”彼女達の任務”は終了である。
「そうやね。
でもアンタの提督さんはこっからが本番じゃけえの。
うちらは敵さんを叩き起こしたにすぎんからの。」
浦風がそう言った直後、鈴谷達レイヴン艦隊の艦娘は脱力感に襲われる。
「ふぇ、接続が無くなりましたぁ。」
「提督からのAMSが切れたようだ。
浦風、頼んだよ。」
レイヴンからのAMS接続が途絶えたのだ。決して提督が死んだ訳ではない。
「史上初、作戦行動中の「艦隊の総切り替え」じゃ。
ドックに戻らないでAMSを切った状態は覚えておいてな。」
「まぁこんなの熊野は絶対やんないだろーし、帰らないと感想も無駄になるし。
だから浦風さんよろしお願いします。ってね☆」
それを聞いた浦風は、若干自分に言い聞かせるように言い放つ。
「うちに任しとき!
なぁに心配いらんよ。うちがついておるからこの艦隊は大丈夫じゃて!」
自分に言い聞かせる、というよりやけくそに近い言い回しではあったが、それで十分だった。
それを聞いた阿武隈はこう言った。
「浦風さんって、駆逐艦なのにすっごく頼りになりそうですね!」
「いや、まあ、巡洋艦に頼りにされるのは悪い気はせんなぁ・・・。」
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浦風達が洞窟から帰還しようとしている頃、正規空母の艦娘・瑞鶴はハンガーにいた。
((きたっ・・・!))
提督からのAMS接続に素早く反応し、カタパルトに身体を向ける。
「空母瑞鶴、出撃、何時でも行けます!」
その言葉とともに瑞鶴はカタパルトで打ち出された。
何事も無く”着地”、脚部のスラスターでオーバードブーストを起動させる。
「よし!
では提督、瑞鶴の艦載機を発艦させてください。
私のとはかなり勝手が違いますから、手こずらないでね。」
「楽しみだなー。私の場合は無理矢理にしか扱えない飛行甲板。
”本物の空母”はどんな風に扱うのかしら!」
先に出撃させていた千歳と夕張に追いつくと、艦載機の発艦を急かされる。
当然それには答える必要がある。
提督自身、空母らしい空母は操った事が無い。養成所でも練習の難しい分類だった。
だから、今ここで行う必要がある。
「第一次攻撃隊。発艦始め!」
瑞鶴の声に合わせて左肩の飛行甲板が展開、内部から艦載機が飛び立ってゆく。
第一次攻撃隊は一旦空中で集合を行った後、瑞鶴と速度を合わせた。
"演習強化"によるものだが、どうやら練度は十分のようだ。
艦載機は見た目こそクラシックな物であり、そのサイズはプラモデルと間違える。
だが、その性能は古の飛行機を一蹴するらしい。
もっとも、比較する飛行機が今の時代には存在しないのだが。
<<やはりな、おまえなら出来ると思っていた。>>
艦載機の扱い方を一通り理解した時、突然レイヴンに通信が入る。
声は女性。
一度、聞いたことがある声だ。
<<また会えたな、レイヴン。
こういう形で再会出来るとは思っていなかった。>>
ジナイーダ。
艦隊<ファシネイター>を率いる数少ない女性提督。
その実力は僅か半年で<横須賀>のランク3に立ったことから想像しやすいだろう。
<<来たぞ。上空の敵は任せた。
生憎だが、私の大鳳は航空戦力を重視していない。
アテにするなよ。>>
「旗艦大鳳、突貫します!」
通信が切れた後、彼女の艦隊の旗艦である大鳳が一気に突入していった。
確かに彼女の武装は空母らしからぬ重装だ。こんな使い方をする提督は早々いないだろう。
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<<作戦開始です。気を付けて!>>
明石からの通信を合図に、レイヴンは夕張と千歳を左右に飛ばす。
そして瑞鶴はブーストを止め、波紋を立ててその場に制止する。
「全機爆装、準備出来次第進撃。
目標、正面切って前進してくるおバカな敵艦。
・・・やっちゃって!」
艦載機を放ち、彼女は自身の弓を構える。
「アウトレンジで・・・決めたいわね!」
目一杯引いた短弓で矢を放つ。
戦艦の主砲を超える射程を誇るその矢は敵をしっかりと狙撃してゆく。
一撃の威力より速度と貫通力に優れた空母の矢は、敵深海棲艦に慢性的なダメージを与える。
「やるぅ!こっちも負けてられないようね。
うふふふ、隠れても無駄なんだから!」
千歳が瑞鶴の艦載機をやり過ごしていた重巡リ級を炙り出し、艦載機の餌にする。
「データはバッチリ!
さぁ!色々試してみても、いいかしら!?」
夕張が新たに装備した<キサラギ>製武器椀型ブレード「SYURA」で敵をサシミにする。
瑞鶴の矢と艦載機によって疲弊した敵艦を千歳と夕張が各個撃破してゆく。
「装甲甲板は伊達ではないわ。さぁ!行くわよ!」
そしてジナイーダの大鳳は敵旗艦と交戦していた。
彼女が敵を撃墜するのも時間の問題だろう。
<<提督、洞窟方面の艦隊が脱出に成功、これより帰還します。>>
明石からの通信の直後、大鳳は敵旗艦を撃破した。
「この程度!この大鳳!びくともしないわ!」
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「いや~、ぶち疲れたわぁ。
でも、作戦は上手くいったみたいやね。」
「勝利か、いい響きだな。嫌いじゃない。」
読んでくださって有難うございました。
次回は”キサラギ”の決戦兵器をご紹介。
後叢雲にどっかから”プレゼント”があるようです。
それとヲ級が遂にナニカサレルことに・・・。
-補足、というより蛇足-
ド・スと浦風・・・。
彼女が登場するならこの人がいないと・・・。
夕張の武器腕型ブレード・・・。
え?夕張はスピードが出ない・・・?
本編中では書かれていませんが、キサラギ製の追加ブースタを装備しています。
ブレードホーミングに特化した逸品です。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。