FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
段々と鎮守府<呉>の外壁面が大きく見えるようになってきた拠点艦のブリッジでレイヴンが何やら難しい顔をしていることに明石は気がついた。
「あれ、提督にしては珍しい表情をしていますね。
何が、あったんです?」
明石はレイヴンが睨めっこをしていたモニターに目をやると、その表情を理解出来た。
「なるほど・・・、新しい艦を我が艦隊に編入させるんですね。
そういえば先日昇進の報も届いていたから、艦娘を9隻まで所有可能になったんでしたね。」
現在のレイヴンの階級は先の作戦における功績から二つ程上昇した。
名目の上では「尉官提督」のままではあるが、簡単に言えば大尉相当の階級を手に入れたのだ。当然待遇もささやかな変更点があり、その中でも最も分かり易いのが艦娘の最大所有数の増加だ。
これは「佐官提督」に昇進した時のことも考えてあるのだろう。
何より、戦力の増強の許可は有難い。
しかし、問題もある。
「で、提督はあまりに現在の6隻による運用に慣れてしまっている。
そのせいで、新しい艦娘を選びかねている、と。」
まったくもってその通りです。
「まず、ラインナップを見せてください。
・・・さてさて、どんな艦娘が今日のラインナップなんでしょうかね。」
明石がモニターを動かして<呉>の艦娘市場を見つめる。
艦娘のラインナップは日替わりで並び替えがなされるため、特定の艦娘が暫く並ばないというのはよくある事だ。
「艦娘次第では建造から困難な艦もありますから、そういうのは市場に出回る前に有力な提督の下へ渡ります。有名なのは「雪風」や「初風」でしょうか。初風は今の一度も市場に出回ったことの無い艦娘ととして「ツチノコ」とまで呼ばれる有様で・・・。」
そんなことを言いながら明石が<呉>の艦娘市場を見る。
初風の話は養成所でも噂で聞いた話だ。
そして雪風は授業でも聞いた。
「そして「雪風」・・・。
現在でも14隻しか建造されていない艦娘であり、その一隻も明確に被弾した報告すら存在しない・・・ですよね。」
一字一句授業で習ったのと同じです。
「まぁそんな艦娘じゃなくても戦闘力の高い艦娘はたくさんいますから。
・・・って!そんなことを言っていたら!」
明石が丁度「弓型空母」の項目を見て驚く。
現在の艦種・空母の艦娘は、本来の「正規空母」「軽空母」による区別ではなく、「建造時点において手に握っている武器」で分けられている。
その中でも、”弓”を使う空母型艦娘は多いため「弓型空母」として一括りにされているのだ。
本日のその弓型空母のラインナップ、その中には結構な艦娘が居た。
「正規空母翔鶴型 2番艦「瑞鶴」・・・。
・・・我が艦隊には千歳こそ居ますが本格的な空母は居ませんでした・・・!」
すると明石は思い切ってレイヴンに振り向きながら言い放つ。
その距離僅かに12cm。顔が、近いです。
「ですからっ!
ここは思い切って!
彼女を編入させましょう!」
レイヴンは思いっきり引きつりのけぞりながらもそれを承諾した。
幸い、彼女を引き入れるだけの資金は十分だ。
「後は私の方で1~2隻編入させます。よろしいですよね?」
ああ、構わない。
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「瑞鶴」読み:ズイカク
艦種:翔鶴型 2番艦 正規空母 弓型
性能特徴:正規空母の中で最も高い機動力を持ち、艦載機を均等に搭載できるのが強み。
艦娘特徴:口より先に手が出る位には元気がいい子。ある艦に対抗心を燃やす努力家でもある。
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<<第5層、<キサラギ>社企業区画に到着いたしました。ご利用有り難う御座いました。>>
<呉>に着いて2時間。
鎮守府の全階層を繋ぐフォーミュラ製リニアモーターレールは何事もなくレイヴン達を今回の依頼元に送り届けてくれた。最高時速1230kmの新型だが外周部を螺旋状に周回する為意外と時間は掛かる。
「確か、迎えがいるとは聞いていますが・・・。」
明石が辺りを見回すが、それらしい人は見当たらない。
精々女の子が一人・・・違うッ!
「あら、お呼びかしら♪」
そう言ってレイヴン一行に近づいてきたのは間違いなく<キサラギ>の案内役。
「<キサラギ>と申します。おそばに、置いてくださいね。」
駆逐艦の艦娘・如月・・・とは少し違うキサラギだった。
そう、主に瞳の色と全体的な色の濃度が違う。
通常の如月は瞳がピンクに近い赤なのだが目の前にいるキサラギは金色だ。
「此方で車が待機していますわ。」
そして彼女に先導される形でレイヴン達は<キサラギ>に行く事となった。
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「あっ、あれ、<AMIDA>じゃないですかっ!」
キサラギ社の施設内、「グリーンルーム」なる区画を通過している最中、夕張が何かを指差した。そしてそれに釣られて首を向けたレイヴン他叢雲と山城は戦慄する事となった。
響と千歳は寝てしまっている。・・・狸寝入りかもしれない・・・。
そこにいたのは成人男性と比較してデカ過ぎる・・・喩えようの無い”生き物”だった。
「なっ!何よアレぇ、化け物!?」
「あんなものを見てしまうなんて・・・不幸だわ・・・!」
それに対して夕張と明石が反論する。
「な、なんと<AMIDA>の可愛さが解らない者がいようとは!」
「全くです。
昨シーズン遂に河童を下してペットランキングトップに輝いたあのAMIDAだというのに。」
「あの形容し難いお姿こそが何者とも違う風格を漂わせるんですよ!」
その頃その<AMIDA>は研究員と思しき男性から餌の様なモノを与えられて身体を左右に揺らしている。くそぅ、見た目に合わない可愛い動きしやがるぜ・・・。
「・・・ふふ・・・♪」
キサラギはその光景をただ微笑みながら見つめるだけだった。
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<キサラギ>社で顔合わせと今後の日程を少々打ち合わせて、レイヴン達は自分達の拠点艦へと戻ってきていた。
「オオ、戻ッタノカ。コレデ安心ダ。
イヤ、安心シテモ駄目カ。」
出迎えたのはヲ級だった。彼女はまだ引き取らせていない。
・・・お前、首だけしかないのに動けるのか!?
「ソウ言エバ艦娘ガ3隻コノフネニ入ッテキテイタゾ。」
「たぶん、編入させた艦娘たちですよ!提督、早く行きましょう!」
明石に引っ張られてレイヴンは食堂に連れていかれた。
「艦娘は最初に食堂に向かうようにされています。
間違いなく、居たっ!」
明石が食堂の扉を開くと3隻の艦娘が食事の準備をしていた。
その光景に思わず明石が叫ぶ。
「どうせだからパーッと行きましょう!
あの時期も近いですから、例えば七面鳥とか!」
すると明石のその一言に突っかかる艦娘が1隻いたのだった。
「なッ、七面鳥、ですって・・・!冗談じゃないわ!!」
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「まあまあ良いじゃないですか。」
「良くないわよ!ほら!アンタも加勢しなさいよ!」
「いやまーそこは「助けるつもりなど元より無い」ってヤツじゃん?」
「じょ、冗談じゃ・・・。」
読んでくださって有難うございました。
ギリギリ「シーズンネタ」ですよね・・・!?
次回は新しく編入させた3艦娘の初任務です。
-補足、というより蛇足-
「雪風」と「初風」・・・。
雪風はともかく初風は完全にゲームをやらないと分からないネタです。
筆者、実はごく最近提督になりましたがまだ鎮守府正面さえクリア出来ていないのでこの作品はあくまでも「私の考えるアーマードコアチックな艦これ=艦CORE」として進みます。
因みに初期艦は漣。いきなりケーキを投げる様になってビックリしました。
如月・・・。
キサラギ社が艦これの世界に来れば間違いなく彼女を旗艦(マスコット)にするのでしょう。えぇ、AMIDAとのダブルエースです。
そして彼女を仏教に目覚めさせてナニカシタ挙句に昼でも"レ"を一撃にするんです。
あとそういえばなのですが、彼女とAMIDAって配色が似てますよね。
本編でもネタにしたのですが、緑とピンクに近い赤・・・、似ている、私に。
本編に登場した"キサラギ"は当然上記の筆者の欲望が詰まった1隻となっています。
AMIDA・・・。
アレほど強烈なエネミーは今後現れるのでしょうかね。
NX、LR共にお世話になりました。
瑞鶴・・・。
彼女はフロム的には七面鳥とかより「冗談じゃ・・・。」という台詞の方がネタっぽいです。勿論使わせてもらいました。返している艦娘の正体は次話にてって、言い回しで判りますかね。あの現代JKみたいな言い方で・・・。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。