FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
(05/12追記、それどころか3つになったぜ・・・。)
長らくお待たせしましたが#14後半の前半です。
それでは本編を再開します。
<<社長は、あまり無茶をなさらないで欲しい!>>
「行けっ!」
ジノーヴィーが操る菊月はグレネードランチャーで上手く敵の攻撃を妨害していた。
<<この程度、無茶の内に入らんよ・・・!>>
しかし有澤社長の操る「雷電」は艦娘と深海棲艦の戦いにおいてあまりに機動性が足りず、社長の腕をもってしても敵の攻撃を振りきれないでいた。
今の雷電は駆逐イ級を二隻、その装甲に噛り付かせながら戦闘している。
ここまで雷電が沈んでいないのはひとえにその非常識なまでの重装甲があってこそであり、そして社長が雷電の性質を熟知した上で運用しているからに他ならない。
<<頭を押さえている以上、今の我々に負けはない。
有澤(我々)の命運は、ここで決まる。>>
いま、社長とジノーヴィーは敵要塞の最前線でその統括者と戦っている。
戦闘力から姫級相当だろう。
他の部隊が要塞から戦力を吐き出させたお陰で、敵はジノーヴィー達に駆逐艦のエリートクラス程度しか差し向けられなかった。
その程度は、ジノーヴィー達の敵にはならない。
「グッ・・・。」
統括者も流石にその状況に焦りを見せている様だ。
少なくとも、人間が見たらそう解釈する表情(カオ)をしている。
「これならいけるか・・・!」
しかしそれは誤解だったのかもしれない。
<<要塞内部に、大規模エネルギー収縮だと・・・!!>>
突如として敵の要塞がその姿を変えた。
今まで城の様に重層に構えていたが、今の形態はそう、大砲だ。
射軸の補正をするのだろう銃身が三つ、要塞から現れその中心にエネルギーが凝縮されてゆく!
<<あれは、不味い・・・退かねば・・・!!>>
有澤の社長も雷電を全速で後退させる。ジノーヴィーも艦娘をOBで目一杯退かせた。
そして。
「ガァァァアアアアア!!!!!!!!」
深海棲艦要塞の統括者による雄叫びと共に、とてもこの世のものとは認めたくない巨大な光が、彼等の目を覆うのだった。
そして、その光の先は。
<<いかん!!グレートウォールがァッ!!!!!>>
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<<エネルギー障壁展開!
総員対ショック用意ッ、ぐわぁっ!>>
「いやいやあんなのは流石に不味いですよッ!」
「と言っても、もう避けられないな。」
グレートウォールが、要塞の放った光に飲み込まれてゆく。
明石とエルールは拠点艦のブリッジからそれを見る事しか出来なかった。
「って、ほんとに丈夫ですね、グレートウォール・・・!?」
「受けきったみたいだな。」
グレートウォールは、その1両目の外装こそ中破したものの健在だった。
ちなみに現在拠点艦はグレートウォールから40km離れた砂漠を激走している。
・・・拠点艦が地上を航行出来ないといつ書いた・・・。
<<こちら<レイヴン>拠点艦より、グレートウォール、大丈夫ですか?>>
明石がグレートウォールに通信を送ろうとインカムで回線を開いた。
その時。
「明石、そこから離れろ!スグにッ!」
「え?って!!!」
エルールの怒号の直後、明石が”爆発”に吹き飛ばされた。
「うぁっと!
な・・・何があったんですか!?」
一瞬早く反応していた明石は間一髪で無傷だった。
「こ、これは一体!!?」
「ECM(Electronic Counter Measures:電子対抗手段)だよ。
最近の強力なヤツだとジャミングに機器が負けて、ボンっ、だ。
ま、ここまでのモノはないがな。」
なんと今の”爆発”はECMの一種だとエルールは言う。
確かに吹っ飛んだのは明石が使用していた通信機器だが、つまり。
「奴の狙いはこれか・・・。」
「あの光はプラズマのエネルギビームでした。
・・・ビームそのものでグレートウォールを焼き払うんじゃなくて、プラズマ波による電子機器への直接攻撃・・・!」
「どうやら奴さん、ホントにこの戦場を石器時代にするつもりらしいな。」
エルールは明石の通信機器の下にあるハッチを開け、内部ボックスを探す。
「・・・恐らく、通信しても反応は無かっただろうな。
今頃グレートウォールの通信機器も、同じ様にお陀仏になっているはず、さ!」
そう言いながらエルールは電子機器の内部ボックスを開けた。
中身を一瞥。
うん、と頷いたエルール。
「悪いけど、こっからは専門職の戦いだ。集中させてくれ。
・・・ここまでされちゃ、黙ってられないね・・・!」
そしてエルールは自身が愛用するキーボードを繋いで作業に取り掛かった。
「幸い。メインランドが生きているな。
ここは・・・あれで行くか・・・。」
「相手が悪かったな深海棲艦・・・。
電子の海で、このエルール・ハングドキャットが特別演習(セミナー)を開いてやる・・・!」
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<<通信エラーが発生しました。
お手数ですが、もう一度確認した上で再度接続をお願いします。>>
なんとまあご丁寧な通信エラーの知らせである。エルールが仕組んだものだろう。
普通の提督にとっては、確かに通信が一切途絶えたことは心配だ。
が、レイヴンはそれ以上に今の自分の身が置かれている状況が危険だった。
「なによっ、コイツ!!」
「グ・・・。」
正確には自分が操る艦隊が危機に陥っている。
・・・たった1隻の空母ヲ級を相手に。
「おぉっと!そう易々と当たるものですか。って!!」
青葉が被弾してしまった。ダメージは・・・軽微か。
「離れなさいっ、コノっ!」
叢雲のマストがヲ級を捉えるが、ヲ級はこれを人間ではあり得ない動きでかわす。
深海棲艦の面目躍如か、それでも一旦ヲ級は叢雲から距離をとった。
と、いうことは・・・!
「来るわ!避けるわよッ!」
ヲ級の右腕・・・機械的な義手の掌に青白い光がスパークをもって集まって行く!
そして!
「リパルサァーーーッ、レェェエエエイ!!!!!!!」
ヲ級の怒号で突き出された右腕からスパークが放たれる!
これだ、これを夕張は避けきれずに一撃で大破したのだ。当然、夕張は後退させた。
「くぅっ!」
「ちょっと、青葉ァ!」
ヲ級を軸に、扇状に迫るスパークを気合で避ける叢雲と青葉だったが、青葉はスパークが掠ってしまった。まだ小破で済んではいるが、長くは持たないのは確実だ。
それにしても。
「Repulser-RAY(撃退する光)」とは、結構なネーミングだ。
まるでコチラが深海棲艦に攻め込んでいるかの様じゃあないか・・・。
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「さっきのはホントにスゴかったのです!」
「あんなのもう一度食らえば、ひとたまりもないわね!」
<<もっとスピード出して!まずはアレを止めるわ!>>
イムヤの指示に順応するリヒテンヴァルトの<048AC-S>。
<<あいよ・・・!>>
電と雷を肩部に乗せたリヒテンヴァルトのACが、自身の部隊<サイレントアヴァランチ>を伴って砂漠を爆走する。副隊長機にはイムヤが乗り、更にイクと対海上要塞試製グレネード魚雷投射砲「MAMUROGAWA(真室川)」を担ぐ2機を囲う陣形だ。
((全く、この戦場は地獄だぜ!ハァッ!))
結局、AC一機で済む話ではなかったので、部隊総出で4隻の艦娘による「お手伝い」をお手伝いする事とした。その方が損失が少ない上に、なにより。
<<お嬢ちゃん達を沈める訳にゃいかねェ!見えたモンには全部撃てぇい!>>
<<見える敵に鉛玉のプレゼントは気分が良いぜ!ほらよ!>>
艦娘の護衛とあって、部下の野郎共が脳内麻薬でイっちまっている。
故に、今の<サイレントアヴァランチ>は統率がすこぶる良い。元から連携には自信があるのだが、此処までのモノになった試しがない。というより普段はする必要が無いのだ。
<<しかしリーダー、本来遠距離からの狙撃を生業にするのが我らのACです。
既にAC乗りの認識では”インファイト”の距離。これ以上の接近は危険です!>>
ACが深海棲艦に対抗できる理由(わけ)・・・それは火力である。
深海棲艦に対してACは機動性と防御力で劣るものの、火力、とりわけ遠距離からの狙撃に関してはACに分があった。それ故の<サイレントアヴァランチ>である。
そして、現在その”ACによる深海棲艦への対抗手段を最も上手に出来る部隊”があろう事に、それをしないどころか愚の骨頂とも言える、ACによる深海棲艦との直接対決(殴り合い)を部隊全体が敢行しているのだ。<サイレントアヴァランチ>創設以来の珍事である。
<<目標地点までフルマラソン往復分よ!ほらっ、頑張れ!頑張れ!>>
<<84.39kmと言えんのか!
・・・あと、その応援をしてもらった以上、意地でも送ってやるよ!>>
雷に急かされるリヒテンヴァルトもかなり脳内麻薬にヤラレているようだ。
そうでなくては、彼はこんな事はしない人だ。
そして、イムヤは地平線に君臨する敵要塞を見ながら思う。
((あれだけのビームなら、再照射には時間が掛かるのがお約束。
だからお願い、間に合って・・・!))
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ノ2へ続く。
読んでくださって有難うございました。
長かった・・・、そしてまだ終わらないとは・・・。
正直この回の戦闘シーンがこれだけ書きづらいとは思っていませんでした。
頭の中の構図を巧く文章で表現する力が欲しい!です。
次回は、この回で出てこなかったキャラの陣営が登場します。
もしかしたら決着がつくかもしれません。
(05/12追記、つかなかったぜ・・・。)
-補足、というより蛇足-
SFモノでもある「電子戦」。
一度取り入れてみたい要素でした。
エルールはそれこそ元ネタが「アイツ」ですから、こういうシーンは必要だと。
ですが「電子機器が電子攻撃で爆発する」は、本当にあり得るのでしょうか?
ヲ級の義手、それに搭載された「Repulser-RAY(撃退する光)」。
ネタは「アメコミ版有澤隆文」こと某鋼の社長です。
名前までそのままなのは、単に他の名前が考え付かなかったからです。
正直この名前にも時間をかけてしまいました・・・。
因みに翻訳は筆者の解釈です。真に受けない様に。
・・・やっぱ野郎は欲望に忠実なモノなのよ・・・たぶん・・・。
彼等の通信機が生きているのは単にECM波の範囲外にいたから、というだけです。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。