FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
そういえば、敵深海棲艦はどうやって地上へ侵攻して来るのだろうか?
レイヴンや明石、艦隊<レイヴン>の艦娘達も同じ疑問を持っていた。
そしてその答えは、
「ちょっと・・・これ・・・!」
あまりにも単純で、
「これは想定外でしたね・・・。」
馬鹿らしい程に、
「スゴイな・・・、ハラショー・・・。」
簡単だった。
「スクープ・・・にもなりませんね・・・。」
しかも、
「私も始めてみました・・・。」
その答えは、
「ちょっと何よアレ!聞いてないわ!」
各々の疑問に、
「どうなっているんですかっ!」
真っ向から歯向かって見せたのだ。
「まさか、それは思わなんだよ・・・。」
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レイヴンと明石の混浴から2日経った。
既にグレートウォールは分離を完了させ、最初に見たときの半分の全長になったらしい。
「・・・本当にそうなのかしら・・・。」
山城は作戦の準備の為にグレートウォールに追走するギガベースの上部で作業しているのだが、正直最初に見たときとあまり光景に変化がないのでどうも信じきれないでいた。
「はぁ・・・。こういうのは普通整備員とかそういう人がするはずなのに・・・。」
そう言いながら山城は作戦時に装着する脚部追加艤装をギガベースの上部に固定させた。
確かに、通常では艦娘が行う作業ではない。
しかし、現在の状況では艦娘しかこの作業が出来ないのだった。
何故?実は現在、グレートウォールとギガベースは時速650kmで砂漠を爆走している。
作戦が作戦であるため何処かに止まるわけにはいかず、そのような状況下において顔色ひとつ変えずに作業が行えるのは艦娘しかいないのであった。
「なんで改二になっての初仕事がこんなのなのよ・・・。」
しかし、実際はもっと他の要因が山城の顔色を悪くさせていた。
実は山城がレイヴン艦隊で最も戦闘経験値(レベル)が高く、基本性能は既に限界値に到達していた。
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圧倒的な戦闘力を有する艦娘も建造時の時点ではまだその性能をフルに発揮する事は出来ない。実戦を潜り抜けることで性能の枷となっているモノを払い落としていくのであり、その経過は既に数値化がなされている。それが戦闘経験値(レベル)であり、これが高ければ高いほど本来その艦娘が持つ性能に近づいて行く。レベルに応じた艦娘の性能は基本性能と呼ばれる。
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基本性能はある程度まで向上すると完成されると思われてきたが、近年になって更にパワーアップさせることが可能である方法が幾つか発見された。その一つが"改二"であり、他の方法に比べて分かりやすく性能が向上するため早期に技術が確立された。
改二はレベルの上昇における基本性能の向上を少し極端にしたもので、その外見までもがより本来の性能を発揮するために洗練されてゆく。
・・・のが本来の改二なのだが、その作業の全てをグレートウォール内で行うことが出来ず、山城は中身こそ改二なのだが外見には全く反映されていないのだった。
一応、改二用の装備は無い訳ではない。
「だからって、ハチマキだけって・・・はぁ・・・。」
そう溜め息をつきながら山城は改二用のハチマキを腕に巻いた。
「やっぱり、私って、不幸だわ・・・!?」
そして恒例の不幸節をかまそうとした山城は、異変に気付く。
一瞬遅れてグレートウォールとギガベースも停車しようとするが、その巨体は早々止まらない。
「・・・地震じゃないわ、大地が揺れて・・・!!!」
そしてようやく停車した次の瞬間、目の前の砂漠が、割れた。
停車したのが仇となった。ギガベースはともかくグレートウォールは地割れを回避できない!
だが、グレートウォールはその地割れに飲み込まれる事はなかった。
しかし、より恐ろしいことが起こっていた。
「あれは・・・海!?」
地割れから海水が勢い良く吹き出すと、その水柱の中から現れたのはグレートウォールより2倍はある要塞の様な深海棲艦の率いる軍勢だった。
「ちょっと何よアレ!聞いてないわ!」
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「提督!奴さんの方から来た!」
同じ頃、レイヴンにもエルールから報告が入る。いつもの雰囲気との違いが状況の緊迫を漂わせる。
「モニター回します・・・!?」
そして明石によってその全貌を目の当たりにしたレイヴン達は唖然となった。
「これは想定外でしたね・・・。」
「まさか、それは思わなんだよ・・・。」
エルールと明石が口々に漏らす言葉にも納得である。
この砂漠に到着してから暫く見ていなかった"海"がそこには広がっていた。
この大陸のど真ん中に本来海は無い。
それに、深海棲艦で埋め尽くされている海も、見た事は無い。
レイヴンはAMSルームへと急ぐ!
「提督、艦隊は既に出撃準備完了です。・・・御武運を。」
その姿を明石はそう言って見送った。
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いかにもスクランブル(緊急出撃)という状況だがこういう時に焦っていい結果は得られない。
レイヴンはいつもより丁寧に各種機器を取り付け、AMSの起動シークエンスに耳を傾けた。
<<AMS接続:完了>>
<<F.R.O.M循環度:良好>>
<<システム起動>>
<<アドミラルコード「XA-26483」認証>>
<<レイヤード・ボルト、シリアル「*********」>>
<<コールネーム<レイヴン>を確認>>
<<メインシステム、通常モードへ移行>>
<<システム戦闘モードを起動中>>
<<メインシステム、戦闘モードへ移行します。>>
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すると通信が入った。そういえば初出撃の時も起動時に通信が来たとレイヴンは思い出す。
<<有澤だ。
諸君、チトばかし早く来た来賓を歓迎するぞ・・・!>>
レイヴン艦隊が「GINZAN」で地上に降りると、既に大半の部隊が出撃していた。
「<レイヴン>も来たようだな。我々も行くぞ。」
<デュアルフェイス>の各艦娘も出撃を完了していた。噂に違わず駆逐艦だけの編成である。
「ちょっと・・・これ・・・!」
「スクープ・・・にもなりませんね・・・。」
「どうなっているんですかっ!」
目の前の光景に今回の編成である叢雲、青葉、夕張も似たり寄ったりの一言だ。
するとグレートウォール本社車両の大型ハッチから12mはあろう巨大な重戦車が現れた。AC風の上半身に戦艦の如きタンク部が場を揺らす。有澤のマークと、「人」の紋章がなされていた。
<<状況が状況だ。我社の危機とあれば私もこの「雷電」で出させてもらおう。>>
聞いたことがあった。
有澤の現社長は生粋の「戦車乗り」であり、有澤重工の最高戦力であるということを。
<<社員の命は我社の命だ。それを守れずして「社長」は名乗れん・・・!>>
社長の戦車「雷電」がその背中に装備したあまりに大きなグレネードランチャーを展開する。
全ての展開を終えたそれは雷電をして持て余す程だった。
その巨砲の名前は「OIGAMI(老神)」。
確かにその姿の前では神も逃げ出すであろう。
<<今からこの場所は石器時代と同じになる。
その啖呵は私が切ろう・・・!>>
そして、OIGAMIから高速でグレネード弾が発射されたのを合図に大規模地上作戦は幕を開けた。
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「お爺様!あと少しよ!頑張って!」
「この先を右、いえ左なのです!」
雷と電はグレートウォール本社車両を雷が"お爺様"と呼んだ初老の男と共に急いでいた。
目的地は社長室。あそこが一番丈夫だ。
「ああッ、バイク事故の古傷が!」
「そんなのずっと昔の話でしょ!ダイジョーブよ!」
「見えてきたのです!」
そしてようやく社長室へ滑り込むと、そこにはイムヤとイクがいた。
「相談役!御無事でしたか。」
「雷も電も良く頑張ったのね!」
イムヤに心配された"お爺様"、イムヤに相談役と呼ばれた男は息を切らつつ、
「まさかこのトシになってここまで運動する羽目になるとは!」
と大丈夫なようだ。
実は彼、第41代有澤重工社長にして現相談役という結構な重要人物であり、過去の実績から社内ではその名前もあって(神) とさえ呼ばれることもある。
「じゃあ私たちも早く行くわよ!」
「イクのー!」
「お爺様!行ってくるわ!」
「少しここで待っていてほしいのです。」
そして、彼女達が出ていった社長室で取り残された彼は言った。
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「モウ!何が何だか分からない!アリ!」
読んでくださって有難うございました。
有澤社長の渋すぎるカッコよさが伝わってほしい・・・!
あれが「大社長魂」だ!!!
次回は、大規模地上作戦、戦闘編です。
-補足、というより蛇足-
スゴい人が登場しました。
なんと( ´ 神`)御登場です。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。