FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
青葉をこってり絞るつもりだったが、彼女の"奥の手"の無惨な最期を見てやめることにした。
あれでは反省のするしないに関係無く実行が不可能となっており、現状ではそれで良かった。
それより、とも言いたげな表情でレイヴンは今回浴槽に潜んでいた潜水艦の艦娘に向き直った。
既に風呂から上がって1時間は経っており、明石も普段の調子に戻った。
「で、アンタ達はあくまで護衛としてウチの司令官と明石が入っている浴槽に潜っていたワケね。
理由としては悪くはないけど・・・、ホントなんでしょうね?」
叢雲が彼女達から事情を聞いていた。
この場には青葉とエルール以外の主要メンバーが揃っている。
今の叢雲の問いにはイムヤが答えた。
「誰が好き好んで人のイチャイチャしているトコに首を突っ込むんですか。」
・・・まて、その返答では誤解があるんじゃないか?
「ま、その好き好んで首を突っ込んでいったヤツの末路なんてたかが知れているわ。
未然に防げなかったのが少しシャクだけど。」
「ほんと、いつ抜け出したんですかね?」
特製のカメラを粉砕されて地味にダメージの大きい夕張も不思議がる。
レイヴンに千歳が近づいて話の補完をしてくれた。
「青葉も最初は私達とお風呂に入っていたんですよ。
それがいつの間にか居なくなっていたんです。」
響も加わる。
「確かに青葉は入り口に一番近いところに入っていた。
だけど、私も居なくなっているのが判ったのは風呂から上がった後だったんだ。」
・・・青葉よ、そういう能力は戦場で発揮してくれ・・・。
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「改めて、伊号168のイムヤです。」
「伊号19なの。そう、イクって呼んでもいいの!」
潜水艦の艦娘、イムヤとイクの自己紹介があった。
若干目のやり場に困るが、スクール水着を参考にした装甲部は正規品だ。
「私、潜水艦は初めて見ました。
・・・成程、他の艦娘とはかなり違いますね。」
明石が一通り彼女たちを見て外見以外の違いに気付く。
そしてレイヴンに一通り説明してくれた。
「艦娘というのは通常四肢の先に体内のF.R.O.Mを放出及び吸収する部分があるんです。
そこから自分のF.R.O.Mを放出しつつ海水を吸収して循環することで海面に立つんです。
ところがそれが彼女たちに確認できませんでした。
つまり、彼女たちは海面には立てません。」
「そ、だから私達には通常時にコイツが必要なの。」
そう言ってイムヤが持ってきたのは自らの身丈ほどある魚雷の様な物だった。
かつて夕張が拠点艦に移って来た時にも似た様な物を持っていた記憶がレイヴンにはあった。
イムヤはそれの先端を外し、その中に手を突っ込む。・・・弾頭じゃないのか!?
そして取り出したモノを放り投げるとそれが途端に膨らんで浮き輪となった。
紅白の縞模様が眩しい。
「いや、それ以上にそっちの方が気になるじゃない・・・。」
山城が突っ込む。皆も頷く。
「あれ、夕張さんがいるから見た事位あるものだと思っていたわ。」
イムヤがそう言った。そういえばあれ以来見ていない。
「まぁ、うちはまだ潜水艦の装備が充実していないから・・・。」
そう夕張ははぐらかした。
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「じゃあこれについてはイクが説明するのね!」
イクが自分のモノを取って説明を始めた。
「これはね、わたし達が戦う時に必要なものが入っているポッドなのね。」
イクがおもむろにそれを担ぐと、今度は先端が下にスライドして中からリボルバー式拳銃の様にシリンダーで格納された魚雷がせり出して来た。
「必殺の魚雷に~ぃ」
言いながら今度は脇に構えると先端が一旦元に戻り、もう一度下にスライドする。
「牽制用に機銃もあるの!」
すると次には機銃の先端部が顔を見せてきた。
「凄い!でもどういう仕組みなんですか?」
「そーいうのはわからないのね。」
堪らず明石がイクに質問をぶつけるもあっさりとあしらわれてしまった。
「でも魚雷だけじゃなくてさっきみたいにすれば色々入る不思議なポッドなのね!」
そう言いながらイクがさっきもイムヤがしたように先端を外すとなんと水筒が出てきた。
しかも丁寧にカップがそれも1ダースで出てきた。
「お茶なのね。」
あきらかにそのサイズに入りきらない内容だ。
「円筒状の物以外にも入りますよ。例えば・・・っと。」
イムヤが取り出したのは小型のメモリプレーヤーだった。
再生をタッチすると、そこに映ったのは「華ノニスイセン」だった。
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<<油断しましたね。既に次発、装填済みです。>>
軽巡の艦娘にして「艦隊のアイドル」の一員である神通演じる主人公の華がギャング相手に拳銃をブッ放つ!しかも設定上「華奢な女の子」のハズの華がその手に握るのは「レイジングブル」。
.454カスール弾を5発撃てるマグナムリボルバーは劇中の相棒に貸してもらった代物である。
レイヴンは今回の航海前に夕張から「華ノニスイセン」を貸して貰っており、既に全話視聴済みの為この場面にも見覚えがあった。個人的にも気に入っているシーンだ。
華がこの銃を撃つのはこの回しかなく、普段の彼女は日本刀を使う。
「華ノニスイセン」は創作時代劇というジャンルだが戦闘シーンにおいてはその範疇ではない様で、現代でもおよそ現実味のないスタイリッシュアクションが展開するのだがそれも人気の一因だという。因みに艦娘からすればマグナムも豆鉄砲同然なので神通本人がスタントしているそうだ。
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・・・!
レイヴンは正しく「ハッ」とした。自分の中でパズルが完成するのが手に取るように解った。
そして夕張にそれとなく質問する。彼女は映像とお茶に夢中だ。千載一遇のチャンス到来。
・・・なぁ、アレってどのぐらい入るんだ?・・・
夕張は答えた。そして、物凄く悔しがった。
「文庫本サイズ250冊に映像メモリー120本位でしたかね?・・・!!!」
道理であんなに漫画からメモリーから拠点艦に持ち込めたわけだ。
こんな技術が相手では判る筈がない。
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「そういえば夕張の装備云々で思い出したのだけど・・・。」
山城が蓄積ダメージの限界に達した夕張をチラと見て、話題を変える事にしたようだ。
今作戦での山城は、名指しで火力強化の為に単艦でギガベースに付くことになった。
当然、AMSも接続しない。今作戦のレイヴン艦隊の編成は叢雲、夕張、青葉だ。
「こんなにグレネードを積む必要はあるの・・・?」
両手に「SAKUNAMI」。
左腕に「WADOU」、右腕に「NUKABIRA」。
肩部武装に「YAMAGA」を2連装。
背部武装1に「OGOTO」を3連装。
全て有澤重工謹製のグレネードランチャーである。有澤は温泉とグレネードと戦車の企業だ。
更に脚部にも砲撃時の衝撃に耐えられるよう戦車風の追加艤装を施す予定であり、それも有澤製の艦娘用ウエポンである。お陰で重量過多を回避できたが、その代わり山城は固定砲台となった。
艦娘の肩部武装や背部武装には、1つのスロットに同種の武装を2つ3つと"連装"することが可能である。しかしあまり利点があるわけではないために企業が開発した艦娘用の武装を連装している提督は少ない。
今作戦では有澤社長が自社製品を幾らでも装備して良いと宣言したために、様々な部隊で有澤の文字が輝くこととなった。<デュアルフェイス>も全艦娘が肩部武装に「OGOTO」を装備した。
その中でも、一際有澤の意匠となった山城は今作戦唯一の戦艦の艦娘である。つまり、
「何で私に全部載せようとしたのよ・・・?」
・・・ちょっと、質問の意味が分からない。・・・
・・・載せちゃ駄目なのかなぁ?・・・
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やっぱり、私って、不幸だわ・・・。
読んでくださって有難うございました。
・・・どうしよう、「華ノニスイセン」がどんどん頭の中で出来上がっていく・・・!
次回は、次こそ有澤の大規模地上作戦が開始されます。
前回の次回予告を完全に忘れていた・・・!
-補足、というより蛇足-
潜水艦の艦娘はACシリーズのポジションでは恐らく2,3,N系の「フロート脚」でしょう。
メリットとデメリットがハッキリしているということを本編で説明しきれたでしょうか?
「華ノニスイセン」における相棒の「レイジングブル .454カスール」。
同じ弾を撃てる銃に「スーパーレッドホーク」もありましたが、何故レイジングブルの方が選ばれたのか。もしかしてピンと来た人はいると思います。
夕張は先の<横須賀>でもポッドを装備していきました。
それはそれは多大な戦果をあげたそうです。
(´神 `)の化身と化した山城・・・。
扶桑姉妹はこの世界ではどの戦艦より"火力"は強化できます。
・・・え?アレはどうした?フフフ、焦るでない・・・。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。