FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
「アームズフォート・グレートウォール」
<ブリッツ>に所属していた旧GA系の技術者達が有澤重工と協力して建造した現状では最大級の<All Rounder Mobillize Ship Fort>(アームズフォート)。列車型を採用している。
現在は有澤重工の本社屋兼製品の製造工場という役割もある。
また、その余りある巨体と列車型という構造もあって有澤の社員達にも居住用車両が用意されており、そこで生活している者も多い。
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エリア50 16-10地点にギガベースが到着した時、ビスマルク他ギガベースに搭乗していた者達に見えてきたモノは"壁"だった。それがグレートウォールの1両の側面部であると判ると、皆一様に唖然となるのに時間はかからなかった。
ビスマルクでさえ話が違うとでも言いたげな表情を見せていたのが印象深い。
そして、ギガベースがグレートウォールの後部格納用車両にあっさりと"飲み込まれた"時には常識とおさらばする覚悟をした。
しかし、このグレートウォールはそれ以上にブッ飛び過ぎたシロモノであった。
「これ、本当にさっき見た"壁"の内部なんですよね・・・。」
眼前に広がる光景に夕張がそう言うのは無理もない。他に至っては言葉にならない状態だ。
今、夕張他レイヴン達とビスマルク達<ゲルプ・フィアツェン>のメンバーはグレートウォール居住用車両の1両にいる。
レイヴン達提督に与えられる拠点艦やビスマルクのギガベース他アームズフォートにも居住区画というものは必ず存在する。しかしそれは拠点艦では個人用の"部屋"であり、ギガベースの様なアームズフォート程のものでもその"部屋"に少々人が集える様なフロアが幾つか用意されているに過ぎない。
しかし、夕張達の眼前に見える居住用車両にあったのは紛れもなく"街"だった。
「此処まで来ますと、何が現実だか分からなくなってきますね・・・。」
明石がそう言っていると、前方の道から"街"にはあまり似つかわしくない大型のホバートラックがレイヴン達の前に止まる。どうやら迎えらしく、そのトラックにビスマルクが搭乗を促した。
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ホバートラックに揺られて"街"のある車両を抜けると、次にレイヴン達の目に飛び込んできたのは巨大な工場だった。
「駆動部車両が2両。有澤社長の居る本社車両が1両。製品の生産工場車両が3両で社員達の居住用車両も3両。ACのハンガーも兼ねる所謂戦闘用車両が4両あって、あとお前達のギガベースが格納されている格納用車両が1両の全14両だ。それらが今のグレートウォールを構成している。一応全車両自走が可能だから配列は結構頻繁に変わるし、駆動部車両を分けて7両編成を二つってことも出来るんだぜ。」
居住用車両を走っているときにトラックの運転手が丁寧に説明してくれた。曰く、
「社長から直々にお前達にグレートウォールを教えておけって言われたもんでね。俺は運送担当だからどの車両にも行けるからな。」
だそうだ。
「あの話を聞きますと、グレートウォールって殆ど小さい鎮守府ですよね。」
明石のその言葉に、思わず皆納得する。
確かに、このグレートウォールは一企業を構成する為の物が全て揃っている。
「さて、こっからは社長の居る有澤重工本社車両だ。」
そしてホバートラックはその車両の中へ消えていった。
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「この部屋にお父様がいるのです。」
ホバートラックによる送迎で有澤重工の本社屋に到着して80分程。
電と雷の案内を以てしてもたっぷり時間を掛け、漸くレイヴン達はドデカく「社長室」と書かれた重層な扉の前に辿り着いた。
「ただいまお父様!ちゃあんとお客様を連れてきたわ!」
そう言いながら雷が扉を叩く。
<<声紋認識。衝撃認識。ロック解除>>
「流石、雷だ。頼りにしている。」
「そうよ。もーっと私のコトを頼って良いのよっ。お父様!」
重そうに開いて行く扉の向こうで待っていたのはあの映像の男、有澤重工社長その人だった。
映像でさえあの迫力だ。ビスマルクでさえ右頬を走る冷や汗を隠せないでいた。
「遠いところを、よく此処まで来てくれた。
歓迎したいところだが、余り時間もない。
仕事の話をする。会議室は此方だ。」
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会議室に入ると、既に各々の部隊長であろう者達が顔を揃えていた。
旗艦の叢雲以外の艦娘や明石達と別れ、残ったレイヴン、<ゲルプ・フィアツェン>部隊長のビスマルク、艦隊<デュアルフェイス>の提督ジノーヴィーと旗艦の菊月、更に<サイレントアバランチ>の隊長であるリヒテンヴァルトがそれぞれ指定された席に座る。
「これだけの面子が揃った以上、何が始まるのかは大方想像が出来るだろう。」
社長のこの一言で、この場にピンと張り詰めた空気が漂う。
「今回の大規模作戦は、これまで膠着状態であった地上戦線の"幕引き"を行う。
明後日05:00には本社の居住用車両と生産工場車両の切り離しを行い、戦闘体制に移行する。」
「本格的だな。どうやらカラードも腰痛が直ったようだ。」
AC部隊の部隊長であろう老練な風格の漂う男が話を遮った。
・・・"本腰を入れる"か、"重い腰を上げる"あたりか。
彼の席の札には「<フィードバック>ローディー」とあった。
「ビスマルクの部隊<ゲルプ・フィアツェン>の旗艦、アームズフォート・ギガベースは<サイレントアバランチ>の他に此方で用意したAC部隊、ローディーの<フィードバック>とメノ・ルーの<プリミティブライト>の拠点となってもらう。格納庫の拠点艦は此方で預かる。」
「分かったわ。」
するとビスマルクに向かいお辞儀する女性がいた。札の限りでは彼女がメノ・ルーか。
白銀の長髪で整った顔立ちに、意思の籠った瞳を持つ美人だ。
「今回はよろしくお願いします。」
「良いわ。任せてちょうだい。」
次に社長はレイヴンとジノーヴィーに顔を向ける。
「艦隊<レイヴン>は急遽であるが作戦に参加してもらう事となった。
艦娘の艦隊が二つになったのは心強い。」
「ジノーヴィーの<デュアルフェイス>には我社で開発中である艦娘の地上用追加脚部「GINZAN(銀山)」を装備して前衛に就いてもらう。」
「<レイヴン>も同様の内容だが、それ以外に山城をギガベースに付けてもらいたい。戦艦である彼女に我社のグレネードキャノン各種を複数装備してもらい、火力を付加させる。」
ジノーヴィーが質問する。
「その銀山の許容積載量はどれくらいだ。」
その質問に社長はニヤリと笑みを浮かべる。
「<レイヴン>に所属する夕張に我社の兵装を目一杯装備しても機動力には影響は無い。
迎えに行った雷電が使っているのは試作段階の旧式だ。」
そして社長はパンとひとつ手を合わせ、皆の視線を集める。
「グレートウォールを中心に前衛は<デュアルフェイス>と<レイヴン>の艦隊。
中堅は<フィードバック>と<プリミティブライト>。グレートウォールを囲う形をとる。
後衛に<ゲルプ・フィアツェン>と<サイレントアバランチ>を据える。」
「地上部隊に再三と辛酸を味合わせてきた匹夫共に、一泡吹いてもらおうではないか。」
その一言は、皆の戦意を高揚させるのには十分だった。
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そして作戦会議を終えて、レイヴンは熱烈な歓迎を行われた。
読んでくださって有難うございました。
次回は、有澤といったらある意味外せないモノ。温泉回です。
-補足、というより蛇足-
地上では艦娘が力を発揮できないので、AC(アーマードコア)が深海棲艦と戦っています。
どうやって深海棲艦が地上で戦うのかは追々。
そのAC部隊を率いる人が二名登場しました。
メノ・ルーさんとローディー"先生"です。
社長御登場です。なるべく雰囲気を保たせていられたら良いのですが、あくまでこの世界の有澤重工社長なので少し位イメージと違っても何も言えません。
前話で夕張を最高にさせたメカは、改良を経て「GINZAN(銀山)」となりました。
名前は山形県の銀山温泉より。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。