FLEET COLLECTION ~艦CORE~   作:ARK-39

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一週間近くの空白を経て再び更新です。よかった・・・。
それでは本編を再開します。


#9

「そろそろ着くわね。」

 <ゲルプ・フィアツェン>の旗艦ギガベースは地上から2kmと無いところまで迫っていた。

 部隊長のビスマルクも少し興奮気味である。

 実際、現代の鎮守府における生活では地上に上がる事など無く、ずっと昔のSFアニメでもあるように地上には一種の憧れがある人もいる。

「あっ、見えてきましたよ!」

 水平線の先に黄色いものが見えてきた。あれが地上で、黄色だから砂漠と言うやつか。

 第一発見者でギガベース第一艦橋のウインドーに張り付いていた青葉が早速カメラを構える。

 が、

「残念だけどダメよ。この船と同じようにGeheiminis(秘密)なの。」

 とビスマルクが制止する。

 先の戦闘による損傷で入渠を余儀なくされた青葉は、復活早々艦内の取材を敢行せんと暴れ回りビスマルクに捕縛されこってり絞られた。

「わ・・・分かりました。」

 流石の青葉も懲りたようで、カメラを仕舞うと艦橋を出ていってしまった。

 ギガベースは艦橋以外で外を見ることの出来るスペースはない。

 そう安堵した表情を見せるビスマルクは指示を続ける。

「地上へ上がり次第、お迎えが来る手筈よ。探索範囲を広げておいて。」

 すると青葉が戻ってきた。今度は機材を置いてきたようだ。

 そしてレイヴンの側に近づいて、

「流石に二度は嫌ですからね。」

 と一言。

 

 しかしその胸元には戦闘時用のバッヂ型カメラが光っていた。

 ・・・彼女にも"意地"ってやつがあるらしい・・・。

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 ギガベースが地上へ上陸し、砂漠を疾走すること4時間。

「艦長、反応が2つギガベースに接近しています。」

 砂漠の景色にも飽きてきたビスマルクにとってその報告は救いの手にも似た感覚を与えた。

「反応の詳細を頂戴。」

「解析・・・出ました。

 反応は艦娘、共に駆逐艦クラス。所属は・・・<有澤重工>です!」

 来た・・・!

「通信開いて。案内役が来たわよ!」

 一連の流れを艦橋の奥でアリーナ演習の録画を観ていたレイヴン達にある疑問がよぎる。

「艦娘は地上では戦闘力が著しく低下する筈なのにどうやって此処まで移動したんですかね。」

 夕張が代表して話を持ち出す。やはり同じことを考えたか。

 その疑問に、演習の録画が映る画面から目を離さずにジノーヴィーが答える。

「それなら、面白いものが見れるぞ。私も初見では驚いた。」

 画面では<佐世保>ランク6、<ヴェーロノーク>の旗艦・北上によるミサイルの弾幕を掻い潜る<フラジール>の島風が映っていた。まるでサーカスでもしているかの様な動きがド派手だ。

 <ヴェーロノーク>の提督であるエイ=プールは数少ない女性の提督であり、所属している企業<インテリヲル・ユニオン>が女性に積極的な企業である。

 この企業に所属している提督には更に<佐世保>ランク2の<レイテルパラシュ>、その名をウィン・D・ファンションという女性提督もいる。

「この企業はレーザー兵器に強くてな、私とは相性が悪い。」

 と画面を見ながらジノーヴィーは呟いていた。

 それにしてもこのエイ=プールの戦い方は、見ているコッチが財布の心配をしてしまいそうだ。

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「有澤重工の雷(イカヅチ)よ!カミナリじゃないわ!」

「同じく有澤重工の電(イナヅマ)なのです。」

「「二人合わせて雷電コンビよ!」なのです!」

 数分して、ギガベースの第一艦橋にやって来たのは駆逐艦の艦娘・雷と電であった。

「貴女が部隊長のビスマルクさんね。今回の任務への参加を感謝するわ。」

 雷がそう言うと電は格納庫からメモリーを取り出す。

「"お父様"から伝言を預かっているのです。」

「Danke(ありがと)、モニターを用意して。」

 ビスマルクが艦橋のモニターを開き、電がメモリーをセットする。

 レイヴン達もモニターの前に集まる。

「"お父様"って、何かしら。艦娘(私達)に親は居ないのに。」

 山城が電の言葉に疑問を持つ。それに答えたのは響だ。

「電の事だから、良いんじゃないかな。」

「なにそれ。」

 するとモニターに光が点る。準備完了のようだ。

 

<<有澤重工>>

 

 社名が無駄に大きく表示された後、その画面に映ったのはまるで岩盤から直接削り取ったかの様な男の姿だった。

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<<有澤重工、社長の有澤だ。先ずは君達の今回の任務への参加を感謝する。

  我社の本社屋「アームズフォート・グレートウォール」は現在エリア50、16-10地点にいる。

  細かいことは到着次第、順次説明しよう。雷電を宜しく頼む。>>

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 それだけの短い伝言だったが、迫力は十二分だった。

「・・・確かに"お父様"ね・・・。」

 山城に至っては一人勝手に納得してしまった。

「というわけで、ちょっとの間お世話になるわ。よろしくね!」

「分かったわ。座標入力、飛ばしていくわよ!」

 ビスマルクはギガベースに鞭を打ち、エリア50 16-10地点に急行する。

「あなたは艦隊<レイヴン>の提督さんなのですか?」

 電がレイヴンに問う。代わりに答えたのは響である。

「そうだよ、艦隊<レイヴン>の司令官は彼さ。」

 すると電はレイヴンに深くお辞儀する。

「今回の任務への参加を感謝するのです。ありがとうなのです。」

「まぁ、身動き取れなくなっていたとこを拾われただけなんだけどね。

 それよりっ!」

「はわわっ!」

 夕張のいきなりの話題転換に電は驚く。

「貴女達がやって来たときのモノ、早く見せてよ。スッゴい気になっているの!」

「はわわわわ、わ、分かったのです!」

「夕張、アンタに肩掴まれて振り回されたら電じゃたまったもんじゃないわ。」

 叢雲が夕張を制止させる。夕張は技術方面の話題になると止まれなくなってしまう。

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「ヒャッホォォオオゥ!!!サイコーだゼえぇぇぇ!!!!」

 夕張は今、最高になっている。詳しく書けば、砂漠を爆走している。

「まさかっ、地上で艦娘の力をここまで使えるようになるとは思わなかったっ、わ!」

「お父様の会社の発明品なのです!」

 夕張と付き添いの電の足元にはホバーと無限軌道を併用する戦車の駆動部の様な物が装着されていた。艦娘が接地する箇所には海水が張られており、艦娘の精製するF.R.O.Mエネルギーをそこから伝達させる事で自由な挙動を実現させている様だ。

 砲塔の無い戦車の上に立って砂漠をサーフィンする、というイメージが分かりやすいだろう。

 その光景をギガベースの格納庫のデッキから見ていたレイヴン達の所に雷がやって来る。

 現在ギガベースの格納庫の扉は開けっぱなしになっている。

「凄いでしょ!私もお父様から貰ったときにはすっごくこーふんしたわ!」

 その話に明石が乗る。

「確かに艦娘はその性質上地上での戦闘力はかなり低く、特に機動力が著しく低下するんですよ。

 だからって足場だけでも海面にするって発想はある意味盲点でしたね。」

「艤装を装着した状態でも動かせるけど、重装備の駆逐艦か軽装の巡洋艦が今は限界。

 でもお父様が頑張ってくれているから、いずれは山城さんの装備が全部有澤製になってもスイスイ動けるようになるわ!大丈夫!私達を頼って良いのよ、ねっ!」

「気持ちは有り難いのだけど、遠回しに私が重いって言っているんじゃないかしら・・・。」

 そして、その会話に割り込んでくる艦娘がいた。

「それで、その重装備の駆逐艦を扱う艦隊として<デュアルフェイス>が抜擢されたんだ。」

「若葉じゃない、って!」

 雷が<デュアルフェイス>に所属する若葉を見るなり、彼女に詰め寄ってゆく。

「雷、久しぶりだな、ん、なんだ?」

「もう!またこんなに着崩して、みっともないじゃない!初霜はどうしたの!?」

「部屋で寝ている。それがどうし」

「もう!こんなんじゃ人の前に出せないわ!いくわよ!」

「はなせ、わからんぞ・・・。」

 どうやら格好に気に入らないところがあったらしい。雷は若葉をひっ捕まえて行ってしまった。

「雷はあんな感じだよ。世話焼きって言うのかな?」

「なんか、お母さんって感じでしたね。今のやり取りは。」

 響に対して明石がそう言うと、他も皆納得がいったようであった。艦娘もそこは分かるらしい。

 だがレイヴンは、お母さんのイメージに思わずこの間の鳳翔さんが現れてしまった。

 確かに解るが、いかんいかん・・・。

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有澤重工本社屋「グレートウォール」はまだ遠い。だが既にそれと思われる影は見えている。




読んでくださって有難うございました。

次回は、有澤重工本社屋に到着します。スゴいですよ、いろいろと。

-補足、というより蛇足-

雷と電の雷電コンビ登場です。
この2隻は登場させておいて損はないでしょう。轟沈させる気もありませんし。

そして雷電と言ったら我らが有澤重工社長の御登場です。
短くて名前が出ませんでしたが勿論第43代社長です。
そしてこの世界での「グレートウォール」は有澤の本社屋というブッ飛んだ設定がつきました。ギガベースもそうですがこの世界のAFは元より更に巨大化しているようです・・・。

有澤製の試作メカですが、最初のイメージはセグ〇ェイの無限軌道版でしたが、某第3帝国が二次大戦時に運用した「ゴリアテ」なるものを発見し、イメージを変えました。
といっても最も簡単に説明すればタンク脚に艦娘が立っているが一番でしょう。

<デュアルフェイス>、ジノーヴィーの艦隊は駆逐艦を主軸にしています。
読者も予想どうりでしょう。菊月が基本的に旗艦を勤め、若葉他黒っぽい艦娘を揃えています。

蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。

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