FLEET COLLECTION ~艦CORE~ 作:ARK-39
それでは本編を再開します。
鎮守府<佐世保>の港は、いつも以上に沸いていた。
当然だ、大規模な作戦が展開される。既にいくつかの艦隊は拠点艦で出港している。
<<8艦隊による「アスピナ機関」資源採掘拠点奪回作戦>>
<佐世保>は資源の獲得に力を入れていた為、今回の作戦は重要度が高いとされ、「カラード」も全面的に支援の方向であるとされる。
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任務:資源採掘拠点奪回作戦の陽動及び敵戦力の掃討
任務領域:鎮守府<佐世保>管轄区画 アスピナ機関管轄資源採掘拠点付近
時間:〇九二〇より任務開始
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「一体如何してこんな装備を・・・不幸だわ・・・。」
「ハンドガン2丁、まあ、司令官にも考えがあるんじゃない?」
うなだれている山城を叢雲がなだめる。
今回のレイヴンの艦隊編成は叢雲・山城・響の三隻である。
そして、追加の兵装として叢雲の背部武装2左側に<ローゼンタール>製のチェインガン、響には椀部と脚部に追加装甲、そして山城には握用武器に<アルゼブラ・イクバール>製のハンドガンを左右に装備させた。
<<あまりもたもたしている暇はありませんよ。>>
明石からの通信で、各艦娘たちは拠点艦のカタパルトへ進む。
<<ちんたらやっている時じゃないぞ。>>
オッツダルヴァからも叱咤される。彼の艦隊は今回作戦旗艦として機能する事となっている。
<<遅いのは良くないですよ。迅さは何物にも勝るのですから。>>
<フラジール>の提督CUBEもまたそう言うが、むしろ彼はスピードに魅せられているので怪しい。しかしそうでなくてはあの島風の提督にはなれないだろう。
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CUBEの”アリーナ演習”を見る機会があった。相手は<佐世保>ランク8、ローゼンタール所属の<トラセンド>、提督名<ダリオ・エンピオ・ジェンドリン>。
CUBEは<佐世保>ランク7であり、これに勝利すればランクの変動がある一戦だった。
”アリーナ演習”とは、提督たちの特別公開演習の事であり、艦娘一隻同士による”決闘”の様なものである。<横須賀>と<佐世保>が特に強い提督にランクをつけており、トップ10同士のランクマッチともなると一般の観衆も増える。「カラード」の表向きの収入源の一つである。
特に、「BLITZ LEAGUE ENTERPRISE」所属のローゼンタールは力を入れており、古参の<レオハルト・ジェンドリン>をトップに<ジェンドリン>の名を持つ提督が三人とも<佐世保>トップ10に名を連ねている。
そしてその演習の結果は、CUBEの圧勝だった。
<トラセンド>旗艦・霧島にまともにロックオンすらさせない超人的な機動で圧倒し、その順位を保持する結果となった。
なお今作戦、<ジェンドリン>は全員参加する事となっている。
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そして今回の作戦はそのスピードこそが重要とされる。
レイヴンが出港してからすぐに見えた大規模作戦用独立浮島には、島風がいた。
それも、10メートルはありそうな余りに不釣り合いな大型ブースターの先端に接続された状態で。
「いってらっしゃーい!私は後から追いつくからっ。」
あの装備こそ今回の作戦の切り札、「Vanguard Overed Boost」通称VOBである。
遠隔による偵察の結果敵は資源採掘拠点に同様の施設を建造したようであり、さながら要塞の如き防衛機構を有しており、正面戦闘では勝ち目はない。
だが、搬入口とも取れる場所があり、内部に繋がっているとされる。
そのために今回の作戦ではその防御機構を<レイヴン>他で陽動し、<フラジール>の島風がVOBで内部に突貫し、内部の中枢機構を一撃離脱で仕留めるというプランが提示された。
そのため島風はVOB以外の装備を追加ブースターとレーザー式マシンガン二丁という必要最低限の火力だけとなっており、”連装砲ちゃん”も今回は休みである。
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今作戦参加艦隊
作戦旗艦<ステイシス>/旗艦:矢矧/<佐世保>ランク1
<フラジール>/旗艦:島風/<佐世保>ランク7
<ノブレス・オブリージュ>/旗艦:金剛/<佐世保>ランク4
<トラセンド>/旗艦:霧島/<佐世保>ランク8
<ノブリス・オブリージュ>/旗艦:比叡/<佐世保>ランク10
<ゲルニカ>/旗艦:扶桑/<横須賀>ランク10
<カスケード・レインジ>/旗艦:吹雪/
<レイヴン>/旗艦:叢雲/
他、通常戦力多数
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<<拠点艦、指定の位置へ到着。<レイヴン>、出撃の準備を。>>
明石からの通信が入る。彼女は現在レイヴンの拠点艦を指揮している。
拠点艦には当然「AMS」が設置されているが、提督は「AMS」を装着したまま拠点艦の指揮までは出来ない。その為の副艦長である。
<<メインシステム戦闘モードへの移行準備:完了>>
叢雲・響・山城がカタパルトから高速で打ち出され、轟音と水柱を立てて”着地”する。資源採掘拠点まで120km。「オーバードブースト」を起動し、一気に接近する。
「AMS」では操舵する艦娘の変更もできる、レイヴンは叢雲から響へチェンジする。「AMS」で操舵されていない艦娘はその間実力で戦闘を継続する必要があるが、その間の情報も「AMS」で逃さずチェックできる。
変更したらいきなり大破していた、というのはない。
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<<各艦、作戦領域へ到達。>>
艦娘たちが作戦領域に到達すると、再び明石から通信が入る。
<<では、<レイヴン>は<カスケード・レインジ>と共に<ゲルニカ>に続いて下さい。>>
<ゲルニカ>の旗艦・扶桑は武器椀のレーザーキャノンを両腕に装備している。確かに強力ではあるが、戦艦に装備させるものではない。
<ゲルニカ>のゲドから通信が入る。
<<よし、私の尻について来い!>>
・・・だからそれでは誤解も受けように・・・。
<<まぁ、よろしく頼むよ、新入り。>>
<カスケード・レインジ>の提督からの通信。
旗艦の吹雪は右手に「ハンドレールガン」を装備している。
<<作戦開始です。<レイヴン>、モード切替を。>>
<<メインシステム、戦闘モードへ移行します。>>
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「始まりましたね、島風。」
専用のカタパルトに接続された島風に、CUBEは直接隣で声をかける。
「私も早く行きたいよ!」
VOBの接続とカタパルトへの拘束で、島風は空中でじたばたする。
「今から誰よりも速くなりますよ。」
CUBEがそう言うと、島風も納得する。
「元から速いけどねっ!」
「未体験の”超”超高速戦闘です。
テストとしても重要ですから目を回さないで下さいね。」
「提督の方こそ、ちゃんと追いつけるんだよね。」
「はい、当然そのつもりです。」
そうしてCUBEは島風のもとを去ろうとして、戻って来る。
「忘れていました。」
彼が取り出したのは紫色のゴーグルだった。
「受け取りなさい・・・!」
えらく尖がった、いかにも速そうなそれを、島風に投げる。
「オゥッ!?」
島風はそれをぎりぎりでキャッチする。
「!・・・これっ!」
「試作パーツ<ラディカル・グッドスピード>。
高速度下での視界の確保を目的にされた逸品です。」
さっそく島風が意気揚々と装着する。
「テストの汎用性が高くなりました。いい傾向です。」
「にひひっ、これ以上速くなっても知らないから!」
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後半へ続く。
読んでくださって有難うございました。
後半は、いよいよ島風が敵中枢へ突貫します。
-補足、というより蛇足-
アリーナ演習は、ACシリーズの「アリーナ」とほぼ同じです。
CUBEが島風に渡した<ストレイト・クーガー>は、「スクライド」より”兄貴”のメガネだと思ってください。
11/28追記。<ラディカル・グッドスピード>に変更しました。
蛇足にまで付き合っていただき、有難うございました。
私の作品を読み続けてくださるのであれば、応援、アドバイス等いただけますと有難い限りです。