処変わって此処はマサゴタウン。
シンジ湖でナナカマド博士との出会いからもう一度ポケモントレーナーの道を歩む事を決意したミュウツーはナナカマド研究所に来ていた。
トレーナーとしてシンオウ地方に回る為の最低限の手続き及び必要な物を取りに来る必要があったからだ。
「よく来てくれた。改めて紹介しよう。私はナナカマド博士」
本来2度目の自己紹介など不必要なのだがこれも様式美というものなのだろう。
特に疑問を口にする事も無くミュウツーはナナカマド博士の紹介に耳を傾けつつ研究所内の周りの物に意識を傾けていた。
場所は違えど研究所とはミュウツーを生み出した施設である。
なればこそ生み出された本人が意識を傾ける事も不思議では無い。
「此処の研究所は―――不思議な感じがするな」
決してニューアイランド諸島研究所の時には感じる事が出来なかった感覚。
言うならばそれは『安らぎ』なのかもしれない。
ただ居るだけで心が穏やかになる様な感じであった。
それは研究所で待機している沢山ののポケモンが証明していた。
まず目についたのが研究所の庭で研究員に餌を与えられていた3匹のポケモンである。
『ポッチャマ』『ナエトル』『ヒコザル』の3匹が仲良く並んで与えられた餌を食べていた。
その表情は極上の笑顔。
自分達の世話をしてくれる研究員を心の底から信頼している事が伺える様な表情であったのだから。
「ベストコンディションでこのポケモン達を新たな旅立ちへと歩むポケモントレーナーへと託す事が私達の使命の1つであるからね」
「なるほど」
使命感もあるだろうが、それだけでこれ程の愛情をポケモンに注げるとは到底思えなかった。
しかし現実に目の前の研究員達はポケモンに対してまるで我が子に接する様に可愛がっている。
ならばこの矛盾を解決するとすれば………
「好感…か」
「君はポケモンがトレーナーに懐く事に疑問を持っているのかね?」
「そうではない。このポケモン達も初めから研究員に懐いていた訳では無いだろう。だが恐らく研究員は始めてあのポケモンと出会った頃から今と変わらない接し方をしていたに違いない。
ならばあの研究員は心の底からポケモンが好きなのだろうと感じてな」
「確かに…。トレーナーもそうなのだが私達研究員も多くのポケモンと接して来た。気付けば我々はポケモンを好きになったのだろう。この世界中で生きる全てのポケモンを」
「ならば私も―――何時かは同じ感情を人間に対して持てるのだろうか」
「それは君次第……と言いたいが、私は持てると思うぞ」
確信があるかの如く強く言うナナカマド博士に疑問を持つミュウツーだが、続く言葉に素早く意識を傾ける。
「創られたポケモンとはいえ君は今を生きている。なら今を生きる者同士心を通わせる事が出来る筈だ」
「そうか……」
心の奥底がむず痒くなる感覚だった。
最強と歌われた私の力に対してではなく、ポケモンとしての私を称えてくれた者は居なかった。
だがそれは今まで孤高の道を歩み続けてきた故の必然なのかもしれない。
孤高は決して理解される事が無い。
しかし今より自らが歩む道は対極の道。
トレーナーを理解し、ポケモンの事を理解し力を引き出してやらなければならないのだ。
全てが未知の感覚であったが湧き上がるのは一つの躍動感。
初めて『ミュウ』と対決した時と同様、ただ只管楽しいと感じた懐かしいあの感じをミュウツーは今再び味わっていた。
「博士。ポケモン図鑑とモンスターボールです」
「おお、ご苦労」
シンジ湖で先に研究所へと戻っていった研究員が奥の部屋から突如出てくる。
その手には数個のモンスターボールとポケモン図鑑が握られていた。
「それで手続きの方は完了したのか?」
「すみません。それが……シンオウリーグ協会への新規のトレーナー認証が認められなくて。それよりも博士っ! 今から此処に―――」
「お久しぶりです。ナナカマド博士」
突然入り口の方向から聞こえてきた気高い声。
振り向くと底には金髪を腰より下まで伸ばした一人の女性が立っていた。
イグのんです。投稿が大変遅れました。申し訳ありませんでした。
仕事がひと段落してようやく時間に余裕が出来ましたのでまた投稿を再開します。
宜しくお願いします。
なお、次回からの後書きは座談会を載せていこうと思います。
これからも宜しくお願いします。