【凍結中】ペルソナ4 ~静寂なる癒しを施すもの~   作:ウルハーツ

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色々ありまして遅れました。僕の状況について気になる方は【小説家になろう】の【活動報告】でご確認ください。まぁ、居ないと思いますが……。学校が再び始まったため、投稿速度は大きく減速すると思われます。

※今回のお話は本編と一切関係がございません。ご了承ください


辰姫 零 予選クイズに参加する

 ○月×日。テレビの中。真っ暗な場所に何か丸い物が存在している。そして行き成り天井から明かりが出現し、それを照らした。照らされたのは大きなクマの着ぐるみ。中には人が入っているようで、明かりに照らされると突然話し始める。

 

「レディース、エンド、ジョエントルメン。安息が訪れた今宵今晩。皆様どのようにお過ごしでしょうか? 今回はスペシャルな企画を用意したクマ。司会は私、【ジャスミークマ沢】でございます。どうぞよろしくお願いしますクマ。それでは参りましょう。気力能力クマの気分。【マヨナカ横断ミラクルクイズ!】始まりクマ!」

 

 クマが題名を言った瞬間、大きな音と共にその場が大きく照らされる。そこはスタジオの様な場所であり、題名の通りクイズ番組なのだろう。しっかりと回答者席も用意されている。そしてその回答者席には左から順に陽介、悠、空席、千枝、雪子と並んで立っていた。

 

 どうやら彼らはほぼ強制的に呼ばれたのだろう。明かりがつくと陽介がクマに「なんなんだこれ?」と質問する。そしてその質問にクマは立っていた場所から降りると陽介の前に移動した。

 

「稲羽市からお越しの花村陽介さん。早速質問クマ? いや~事件も無事解決したクマ。だから、それを記念してクマが面白企画を用意したクマよ。このセットはどう見ても……」

 

 クマの言葉に陽介は「どう見ても?」と返す。が、突然間違いの時になるであろうブザーが鳴る。そしてクマが「残念。正解はクイズ番組でした」と言うと陽介の立っていた回答者席の前側にある画面に出ていた【0】と言う数字が【-1】となる。それはつまり減点という意味だ。それに気づいた陽介は抗議するが、クマは聞かずに次に移る。悠を飛ばし、空席を飛ばし、千枝に移動した。

 

「続いても稲羽市からお越しの里中 千枝さんです!」

 

 その言葉と同時に今度は周りからまるで歓声の様な声が響く。突然自分に振られた千枝は驚くが、次に聞こえた歓声に気づく。事件の時、歓声が聞こえた時が稀にある。そしてその声がテレビの【外】。つまり普通にテレビ番組として放映されており、見ている人達なのだと言うことが分かったのだ。今ここで歓声が聞こえると言うことはこの場面を見られている可能性もあると言う事になる。千枝はクマに誰かが今自分達を見ているのかと質問する。が、

 

「大丈夫クマよ。これはクマが用意した効果音クマ」

 

「紛らわしいっての!」

 

 どうやら千枝の心配は無意味だった様である。心配をしていた千枝は安心と共にクマに言うが、クマは何処吹く風。千枝をスルーして今度はその隣を見る。

 

「稲羽市からお越しの天城 雪子さんです!」

 

「早押しで良いんだよね?」

 

 振られた雪子は目の前の回答席についていたボタンを両手で連打しながらクマに質問する。そしてその光景に他の3人は引いてしまった。どうやら雪子は完全に乗り気の様だ。そしてそれを見た後、

 

「視聴者の皆さん。お待たせしました! 今大会の本命中の本命! センセイの登場です!」

 

 クマは3人とはまったく違う紹介の仕方で悠にスポットライトを照らす。余りにも扱いに差があるため、陽介は悠に少し哀れみの視線を送った。どう考えても一番面倒くさい事になるのは悠なのだろうと感じたのだ。そして紹介の仕方が違うことに何故か雪子は「ずるい」と悠を見る。好きでなった訳では無い為、悠は必死に否定した。

 

「ねぇクマ君。ずっと気になってんだけどさ、私と鳴上君の間。何で空席なの?」

 

「ふっふっふ。気づいたクマね」

 

「いや、誰でも分かるだろ普通」

 

 千枝は少し静かになったのを見て気になったことをクマに質問する。そしてその質問にクマは待ってましたと言わんばかりに言い、陽介がそれに1人呟く。と、クマが突然最初に立っていた場所とは真逆の場所に向かう。そこにはカーテンの引かれ居る何かがあり、突然証明が落ちるとそのカーテンの向こうに何者かのシルエットが浮かび上がる。

 

「今日はスペシャル企画。だから、クマが超スペシャルなゲストをお呼びしたクマよ。それではスペシャルゲストの入場クマ!」

 

 クマの言葉と同時にそのカーテンの前にいつの間にか置かれていたセットから白い煙が出る。その煙はカーテンの部分を隠し、しかしシルエットがあるためカーテンから出てきているのは悠達にも判断出来た。

 

 徐々に煙が晴れていく。そしてその姿を確認できるようになった時、全員が一様に驚いてしまった。それもその筈。出てきたのはこの場に居ては非常に不味い者。

 

「稲羽市からお越しの辰姫 零さんです!」

 

 零であった。現在零の格好は巫女服であり、読んで居たのか手には本がある。恐らく急にこの場に来たのだろう。本を持ったまま顔だけ上げて首をかしげ、周りを見回し始めた。

 

「おいクマ! 不味いだろどう考えても!」

 

「そ、そうだよ! 辰姫さんは何も知らないんだよ!? どうすんのさ!」

 

「むふふ、それなら心配要らないクマ。この番組にはとあるスポンサーが居るクマ。で、そのスポンサーの力でヒメちゃんの記憶を消去するクマ。だから、帰ったらヒメちゃんはなーんも覚えてないクマ!」

 

「記憶を飛ばす? 一体どんな奴が後ろに居るんだ」

 

「それはセンセイにも内緒クマ。ササ、ヒメちゃんはあいている回答席に座るクマ。そこにメガネが置いてあるからちゃんとつけるクマよ? 若干、巻き入ってるクマ」

 

 クマの言葉に零は頷くと千枝と悠の間にある回答席に座る。零の隣となった2人はこの後に記憶が消されるという話を聞き、どうして良いのか分からなくなってしまう。が、零は席に着くとそこに置いてあったメガネを掛けて本を読み始める。その光景に『変わらないな』と2人は思うととりあえずはこの大会をどうにかしようと考え始めた。

 

 陽介はこのクイズ番組を本当にやるのかクマに質問する。雪子以外誰も乗り気では無いのだ。しかしクマは陽介に「怖いクマか?」と聞けば陽介の態度は一変。自分が怖がって居ないと見せるために「やってやろうじゃねぇか」と大会に参加する意を示し始めた。それを見て千枝は「結局乗せられてるじゃん」と言うが陽介は「事件が終わったんだし、こう言うの少しやりたかった」と本心を言う。千枝もそれには納得の様で、大会に参加することを決意した。悠は元からどちらでも良かったらしく、零は特に気にして居ない様だ。つまり全員が大会に参加することに異議を言わなくなった。

 

「それじゃあ始めるクマよ! マヨナカ横断ミラクルクイズ! スタートクマ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クマが大会のルールの説明を始める。問題は早押し。制限時間内に手元にあるボタンを押すことで、正解すれば1ポイント。不正解なら-1ポイントで最後の問題の後に一番ポイントの高い人が優勝との事だ。そしてそれを言い終わるとクマが問題を言い始める。

 

「第1問、ジュネスの歌は何クマ? 『!』」

 

「へっこれっきゃねぇぜ!」

 

 クマが問題を言い切ると同時に陽介が手元のボタンを押す。そして『エブリディ・ヤングライフ』と答えれば正解の効果音が周りに響いた。ジュネスの社長の息子で常にそこでアルバイトをしている陽介には簡単な問題だった様だ。

 

「第2問、商店街にあるじ『!』」

 

「はやっ!」

 

 今度は問題の途中でボタンが押される。押したのは零だ。そしてかなりの早さだったため、隣に居た千枝が驚いてしまう。

 

 零は喋らず、押してから答えるまでの短い制限時間の中で紙に回答を書いて答える。書いたのは『辰姫神社』。と同時に正解の音が響いた。問題は『商店街にある神社の名前は?』であり、住んでいる零が一番答えなければいけない問題と言って良いだろう。

 

「第3問、稲羽市を通る稲羽線の終着駅、八十稲羽駅の隣駅は何処クマ?」

 

「『!』 東稲羽」

 

 次に答えたのは雪子。両手で何度も回答ボタンを押し、問題に答える。そして正解だったため音が響き、雪子は「良かった」と安心した表情を浮かべる。

 

「第4問、2年2組の新しい担任となった柏木の下の名前は何クマ?」

 

「あ~『!』 柏木 智子?」

 

「陽介残念! 違うクマ。正解は柏木 典子クマ」

 

「柏木の名前なんか覚えてねぇよ! ってかまた俺マイナスか畜生!」

 

 少し迷った末に答えた陽介だが、間違いのブザーと共に陽介のポイントが下がる。最初ー1で先程1つ正解し、また間違えたため陽介は最初に戻ったも同じ状態となってしまう。陽介はそれに頭を抱え、悠が静かに慰める。

 

「第5問、時価ネットたなかの社長の口癖『!』」

 

「ワンダホー!」

 

「正解クマ! さっすがセンセイ!」

 

「良く知ってたなお前」

 

「一応常に見てるからな」

 

 悠は時価ネットたなかの番組を見ているため、簡単に答えを出すことが出来た。クマは他と違い、悠の正解の時だけ褒める。そしてすぐに答えられた悠に陽介は感心していた。

 

「第6問、千枝ちゃんの席は前『!』

 

「はいはい! 3番目!」

 

 正解の音が鳴る。そしてその音を聞いて千枝が「ま、あたしの席についてだからね」と答えた。そう、問題は『千恵ちゃんの席は前から何番目?』と言う問題であった。恐らく自分の名前と席と言う言葉からすぐにそれに千枝は行き着いたのだろう。

 

「ここで問題が半分終わったクマ! 今の順位は……陽介が『-1』ポイントで先生達は『1』ポイントクマ。これは凄い接戦クマよ!」

 

「っつかこれで半分って全部で12問か? 半端じゃね?」

 

「し、仕方ないクマよ。問題を作るのは非常に大変クマ」

 

「え、これクマ君が作ってんの?」

 

 クマが作っていると言う事実に千枝は驚き、雪子がそれに付け加えて「ちょっと意外」と呟く。が、それが地味にクマの心に刺さったのか「クマだってかなり頭は良いクマよ!」と言うと強引に後半戦を始めた。

 

「第7問、2年2組の中にある椅子の数『!』」

 

『30』

 

「姫ちゃん、何でそんなすぐに分かるの?」

 

 問題の最中に素早くボタンを押す零。そしてすぐに数字の書いた紙を前に出すと正解の音が響いた。全員にも今の問題は分かった物の、非常に難しいものであった。内容は『2年2組の中にある椅子の数は全部で何個か』と言う物。今の速さでは覚えていなければ難しいだろう。と、ここで千枝が「29じゃないの?」と疑問に思った様に零に言う。が、零は首を横に振ると『先生』と紙で見せた。そう、生徒数は千枝の言うとおり29人。だがクラスには生徒以外にも先生が存在するのだ。椅子はクラスの人数+1となる。

 

「そんな早解きよく出来んな」

 

「流石だな」

 

 陽介と悠も分かった様ですぐに答えた零をほめる。零は首を横に振って否定するとクマを見た。

 

「じゃ、次行くクマ。第8問、菜々子ちゃんはし「『!』1年生だ!」せ、センセイ早いクマ!」

 

「菜々子の事なら負ける気はしない」

 

 メガネを押し上げながら呟く悠の妹への強大な愛に全員は引いてしまう。良いお兄ちゃんなのは確かなのだがかなりシスコンに近いだろう。いや、シスコンと言っても良いかも知れない。余りの速さに出題者であるクマ自身も驚いてしまっている。因みに問題は『菜々子ちゃんは小学何年生か?』と言う物だ。

 

「第9問、イザナギの弱点『!』」

 

「てやぁ!……何!?」

 

 問題が出てすぐに悠はボタンを押す。が、悠に回答権は入らなかった。回答権を得たのは隣に居る零。零は『疾風』と答えると正解の音が響いた。

 

「間に合わなかったか」

 

「いや、その前に何で相棒のペルソナについて辰姫さんが知ってるかに疑問を感じろよ!」

 

「流石姫ちゃん、博識だね」

 

「それで済む問題じゃないから!」

 

 自分のペルソナについて答えられなかったことにショックを受ける悠。しかしその隣で陽介が悠に突っ込みを入れた。陽介の言うことは最もでテレビの中についてすら知らないはずの零が悠のペルソナについて答えられる筈が無い。が、現実に答えてしまったのだ。可笑しいと感じるべきことだろう。雪子が零に笑顔で言うが千枝は疑問に思っていない雪子に突っ込みを入れる。零は本に視線を戻しているため、一切話を聞いていなかった。

 

「次行くクマよ? 私語は止めるクマ。第10問、シャガールの店長の名前は?」

 

「シャガール? 確か沖奈市にある喫茶店だよな?」

 

「店長さんの名前なんて知るわけないじゃん」

 

「うーん。私も聞いたこと無いかな。姫ちゃんも無さそうだし」

 

 問題に誰も答えない。既に殆どの人物が諦めているが、悠のみ考え続けていた。普通この場合、マイナスを恐れてうろ覚えや分からない問題などはスルーするのが常識。悠はこの問題をスルーする事にきめる。結果、誰も答えることは無かった。因みに答えは『無門』だ。と、ここで突然クマが全員に背を向ける。

 

「ま、不味いクマ。このままじゃセンセイが優勝しないクマ」

 

「? どうかしたのか、クマ?」

 

「こ、ここでダブルジャスミーのお時間です!」

 

「何それ?」

 

「次の問題に正解すると、ななな何と! 2ポイント貰えまっす!」

 

 突然のチャンスタイム。しかし現在マイナスの陽介には既にそれを取ったところで何の意味も無いため、陽介は完全に諦めた様に「あっそ」と答える。が、千枝と雪子は違った。現在1ポイントである2人はここで正解し、次で正解すれば優勝出来るのだ。

 

「第11問、2年2組の先生で、いつも赤いジャージを着ている人は?」

 

≪……≫

 

「え? 誰も答えねぇの?」

 

 問題が出るも、誰もボタンを押さない。千枝も雪子もボタンに手を添えたまま一向に押す気配が無く、零は諦めた様に本に視線を戻す。そして悠は……完全にど忘れしてしまっているようだ。しばらく経つが答えが出ず、陽介が「仕方ねぇな」と行ってボタンを押す。

 

「『!』近藤だろ?」

 

「せ、正解クマ……」

 

「俺の時だけテンション違い過ぎるだろ!」

 

 正解の効果音が響くも、クマは物凄い落ち込んでいた。この時点で悠のみの優勝は無いことが確定したのだ。しかしそんな事を当然知りえない陽介は自分と他の人への対応の違いを抗議する。が、落ち込んでいるクマは何も言わずにスルーした。

 

「最後の問題クマ。第12問、完二が初めて仲間になった時に持っていた武器は何クマ『!』」

 

「パイプ椅子だ」

 

「正解クマ。そして今の問題で終了クマ、結果発表に行くクマよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の優勝者は!」

 

 上の電気が真っ暗になり、それと同時に5人の頭上にスポットライトが転倒する。そしてそれは移動しながら5人の上を移動し、やがて1人を照らし……出さなかった。

 

「同点クマ?」

 

「は? そりゃそう言う事もあるだろ?」

 

「……まさか同点の時を考えて無かったんじゃないでしょうね?」

 

 誰も照らさずに通常通りスタジオを明かりが照らし始めた。クマはまるで惚けるように結果を言い、それに陽介が答える。とそこで千枝がクマの今の状況に気づいた様に質問すると、クマは着ぐるみをつけているのに汗をだらだらとたらし始めた。

 

「同点? じゃあ同点決勝ある? あ、でも私負けてるから……鳴上君と姫ちゃんの同点決勝? 姫ちゃん頑張れ!」

 

『面倒』

 

「いや、ありません。さっき言ってたじゃん。問題は12問しか無いんでしょ? どうすんの? 結局グダグダじゃん」

 

 今の状況を見て雪子が少し興奮する様に言った後、零にエールを送る。が、零は乗り気では無い様で首を横に振りながら紙で答える。そしてそんな光景を見ながら千枝が現状を言い、クマに質問した。その質問で5人の視線が一気にクマに集中する。そしてクマが出した結論は……

 

「さ、さよならクマ!」

 

「んなっ! そんなクイズ番組があるかよ!?」

 

「皆がちゃんとやらないから悪いクマよ! 陽介があそこで答えなければ誰かが優勝してたクマ!」

 

「誰も分かってなかったから答えたんだろうが! 人のせいにすんなよ!」

 

「そんなに文句言うならもう一回やるクマよ!」

 

 無理矢理終わらせることであった。クマの行動に陽介は抗議するも、今度はクマが逆切れして陽介に起こる。が、陽介がそのことにしっかりと反論すればクマはもう1回と言った。陽介とクマは口論で気付いて居ない様だが、もう1回やると言う事は『同じ問題をやることになる』と言う事実に他の全員は気付いた。

 

『帰りたい』

 

「ああ、俺もだよ」

 

 零の意思に悠は同意し、その光景をただ見続けるのだった。


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