異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
ストックも残り数話。
一話の完成に他の方の作品やネットの簡単なあらすじを参考にしなくてはいけないので今週中には投稿が一度止まるかな?
週末までもったらその時また続きを書きますけどまぁどうでしょう。
異世界の果ては男のロマン
「おい、日向。」
十六夜がそう声をかけてきたのは俺達が黒ウサギの先導でこれから所属する予定のコミュニティに向かう途中のことだった。
先程までとは違い周りをはばかる様な声量にこちらも合わせながら問い返す
「なんだよ?言っておくけどさっきの話なら」
「それも気になるがそうじゃない。」
俺の予想を裏切り要件は全くの別物だと断言する十六夜。
正直カムクラのことを問いただされるのは困るので助かるといえば助かるのだが…………なんでだろうな?欠片も安心出来ない。
「じゃあなんなんだよ。」
少し強めに聞き返した俺の肩を掴んで十六夜は答えた
「世界の果てに行こうぜ!」
「馬鹿なのかお前は。」
落下中に見えたが世界の果てとやらまでは随分な距離がある。
大体土地勘のない俺達が進んで黒ウサギから離れてどうするんだ。
「俺は馬鹿でもけっこーだぜ?いいか、”ロマン”を追い求める男ってのは総じて馬鹿なもんなんだよ。」
「─────ロ……マン…………?」
何故かはわからないが十六夜が不意に放った言葉が俺の何かを刺激する。
「ん、おぉ?そうだよ”ロマン”だ!いいじゃねぇか世界の果て。男ならこれを逃す手は無ぇ!新しい発見が!未知が!新鮮が!新世界がそこには待ってんだ日向!!」
十六夜の言葉がココロにガツンッと響きまるで眠っていた野生を呼び起こすかのように体が震え出す。
(男の…………ロマン?ロマン………ロマンロマンロマンロマンロマンロマンロマンロマンロマンロマンマロンマロンマロンマロンマロン───”マロン”ッッ!!!)
ウオオオオオオアアアアアアアアアアアアアーーーーーッッッッ!!!!!
「よし、十六夜!いくぞ世界の果てまで!!」
燃えるような情熱が体のうちから溢れだし体に巡ったそれが活力となって本能を吠えさせる
不思議な全能感を感じながら俺は今になって十六夜の提案に途轍もない魅力を感じていた
「男だぜ日向!そうこなくっちゃな!」
何故かは良く分からないが今の自分なら何でも出来るような気がする
途方も無い全能感───まるで自分が超高校級のみんなと同じ舞台に立てたかのような高揚感────そんなものが体を支配して…………燃えるかのような熱い思いがそれに向きを与えてすべてを動かす。
その時の日向は目の色が少し赤くなり髪も少し灰色から白へと近づいていた。
そんな異変にも気づかず日向は十六夜の肩へと捕まり一瞬の加速と共にその場から消え去った。
その一部始終を見ていた女子二人は蔑みと呆れをより濃くして黒ウサギへとそのままついて行ったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お疲れ様黒ウサギ。後ろの二人の女性が新しい仲間?」
「はいな♪この二人が────あれ、もう二人ほどいらっしゃいませんでしたか?あの目つきが鋭く如何にも”問題児です”といった方と色々な意味で悪目立ちしている方が…………」
コミュニティへの案内を終え新しい仲間をリーダーを務める十一歳の少年、ジン=ラッセルに紹介しようと振り返って初めて異変に気がついた黒ウサギの質問に飛鳥が答えた。
「十六夜君と日向君なら二人して世界の果てを見に行ったわよ。」
だがその突拍子もない言葉に黒ウサギとジンの思考が一時停止する。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「「止めてくれるなよ、と言われたから」」
「なんで黒ウサギに教えてくれなかったんですか!?」
「「黒ウサギには言うなよ、と言われたから」」
妙に息のあった返答に黒ウサギは改めてその問題児っぷりに肩を落とす。
「大変です!箱庭の果には強力な幻獣たちの住処が!!」
「あら?じゃああの二人はもうゲームオーバーなのかしら。」
「始まる前からゲームオーバー……新しい。」
「そんな呑気なこと言わないでください!あぁ、もう!ジン坊ちゃん、このお二方を宜しくお願いします!黒ウサギはあの問題児様方を連れ戻して参りますので!!」
そう言って体に力を溜めるようにしゃがみこんだ黒ウサギの青みがかった髪がその怒りを表すかのように赤く染まっていく。
「この黒ウサギを怒らせたことを後悔させて差し上げます!」
そう言って全身の力を解き放ち一息の間に視界から消えて行った黒ウサギの姿に残された三人は感心したように話を続けてドーム状の街の中へと消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ほんとうにあのお二方はどこまで!」
黒ウサギはその尋常ならぬ脚力を持って駆け続けるが一向に二人の痕跡が見えて来ないので既に通り越したことも検討に入れてもう少し範囲を広げるかどうか考えていた。
それでも思い止まったのは間もなく二人の目指した世界の果てと言われる方向から聞こえてくる何かの炸裂音と上空高くまで立ち上る水柱を見つけたからだ。
「ま、まさか!」
最悪の光景が頭を過ぎり一度は止めたその足をさらに前へと進ませる。
一息で距離を埋めたところで黒ウサギはようやく目当ての人物を見つけることができた。
岩場に湖に向かって座り込む日向とそのもう少し前方で同じように湖に向かっている十六夜の姿。
どうやら最悪の状況はまぬがれた様だと緊張の息を吐いて体を弛緩させる。
「十六夜さん、日向さん!よかった、ご無事ですね!!」
「「お、遅かったな黒ウサギ。」」
「一体どこまで来てるんですか!!?」
「世界の果てまで」
「来てるんですよ?ってな。」
これまた残してきた二人のように仲良くハモらせながら帰ってきた言葉に少々ならぬ苛立ちが立ち込めるが無事であったことが何よりも嬉しくそれは表に出ることなく黒ウサギ自身にも一瞬で流された。
(ようやく追いつけましたね。お二人にも怪我はないようですし…………?)
”ようやく追いつけた”?箱庭の貴族とも言われる私が追い付けなかった?
落ち着いたところで感じた疑問を口にだそうもしたところを十六夜に先回りして止められた。
「わりぃ黒ウサギ。説教は後にしてくんねーか?」
「…………はい?」
「今は色々立て込んでるんだよ。」
十六夜の言葉を引き継いで答えたのは先程から全くと言っていいほど微動だにしない日向だった。
「あのぉ…………それはどういう」
『まだだ!まだ試練は終わっていないぞ小僧共ォ!!!』
黒ウサギの言葉を遮るように答えを出したのは日向や十六夜ではなく湖を割って突如現れた巨大な白蛇だった。
「水神!?どうやったらここまで怒らせられるんですか!?」
黒ウサギの言う通り湖から姿を現した大蛇はその声色からも憤怒している事がわかる。
その証拠に大蛇の力なのか左右で巻き上げられた水が強力な渦を作って発射を待っていた。
「何やらいきなりえっらそーに”試してやる”だなんてほざくもんだからよ、俺達を試せるのかどうか…………逆に試してやったんだよ。」
「結果は見ての通りだよ。……つってもやったのは十六夜で俺は何もしてないけどな。」
「おい日向てめぇ裏切りやがったな」
「事実じゃないか。」
それを前にしても変わらずに会話問題児二人…………そう、二人である。
先程のギフトゲームを身体能力のみで、あるいはそれを強化するギフトのみでクリアした十六夜だけではなく、為す術なく、強者としての矜持すら持っていない問題児達の中でもダントツで謎の強い日向までもがこの濃密な殺気が立ち込める中でそれがなんでもないかのように振る舞う。
例えばの話…………何の力も持たない、トランプの絵札すら当てることのできないただの男子高校生が突然自身に怒りを向ける圧倒的上位存在の前に放り出されたとしてその少年はどうするか?
まぁ回答は様々だろうが少なくともそれの殆どが負の方面の考えだろう。
(一体どういうことなんでしょう?)
箱庭で強者として生まれ強者として二百年を過ごしてきた黒ウサギを持ってしてもそれは異常な光景だった。
『つけあがるなよ人間!我がこの程度で倒れるかぁ!!』
蛇神の怒りに比例して勢いを増す渦が周りの木々まで巻き込み始める。
「十六夜さん、下がってください!!」
「おいおい下がるのはお前の方だぜ黒ウサギ。これはあいつが売って俺らが買った喧嘩だ。割り込もうってんならお前から潰す。」
「さり気なく俺を巻き込むなよ、俺はそんな押し売り商法に引っ掛かってないぞ。」
「そんなことを言っている場合ですか!」
『心意気は認めてやろう。故にこの一撃を凌げば貴様らを勝者としてやる。』
「ちょっと待ってくれよ、俺関係ないだろ」
「腹を括れよ日向。そんでそこの蛇にひとつ言っといてやる……バカ言え決闘ってのは勝者が決まって終わるんじゃない、敗者を決めて初めて終わるんだ!」
『減らず口をぉ!!!』
蛇神がその長い身をくねらせ触れればそれだけで吹き飛びそうな渦を飛ばして来る。
「十六夜さん!」
黒ウサギの叫びも遠く、無慈悲にも竜巻は地面を削りながら動き始めた
水でできたその竜巻は先程よりも勢いを増し既に蛇神の背丈すらも超えてこちらへと迫る。
まさに絶望的────そう表すしか無いほどに目の前の光景は想像を絶していた。
「────ハッ!しゃらくせえぇ!!」
それに対して十六夜が取った行動は…………ただ腕をふり抜くだけという巫山戯てるとしか思えないものだった。
だが何よりもふざけていたのはそんなただ振られただけの腕にあれ程の威力の水流が吹き飛ばされ、消滅した事だった。
「嘘っ!?」
『馬鹿な!』
「おいおいウソだろ。弐大とか終里とかそういうレベルなんじゃないか?」
驚く黒ウサギや蛇神をほっておいて、いやあの二人でも無理か?でも弐大ならあるいはなんてことを考える日向へと攻撃の余波が迫る。
「おい、日向!!」
「───は?」
十六夜の声にようやく目を向けた日向に迫る炸裂した水弾。
砕かれてもなお鉄すら粉砕しかねないそれに日向は反応する。
手に取るのは辺に飛び散る一本の木の枝。
丈夫そうではあるがどう考えても眼前の脅威を退けるには役不足なそれを無意識に拾い────そのまま振るう。
十六夜のそれと同じように適当に振るったように見えるがその実超高校級の剣道家とも言われる技術で振るわれたそれはいとも容易く水弾を切り裂き────そのまま湖を両断した
「辺古山…………お前本当に凄いぞこれ。」
『ヌゥッ!?』
足場を失い姿勢を崩した蛇神へと跳躍した十六夜が迫る
「まぁ…………中々だったぜお前。」
その割には既に興味を失ったと言わんばかりの声色で告げた十六夜は先程と同じように適当に撃った蹴りで蛇神を沈めた。
「おい十六夜!今のわざとこっちに飛ばしただろ!!」
「さぁてね、ちょっとわかんねぇや。」
「お前……!」
あまりにも非現実的な光景に黒ウサギは固まっていた。
(神格を持った者に…………唯の人間が勝った?それもいとも簡単に…………)
これなら自分たちの悲願が叶うかもしれない!そんなことを目の前で騒ぐ二人を目にして思う。
「ていうかやっぱり出来るんじゃねぇかよ日向。まぁ俺の速度に耐えられている時点で分かってたけどな。」
「あ、いや、今のは違っ────」
「なぁに謙遜すんなよ。いや本当におもしれえなこの世界は。」
「話を聞け!!」
日向創ver,ロマン登場です。
通常のひなた君と違うことはロマンに敏感なこと。
燃えていること。
その勢いで若干希望化していること。
戻ったとき若干の記憶障害…………簡単に言ったら酔った後みたいな?まぁ人によって違うのでそこは想像でよろしくです