異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
あとがきに補足入れときます。そして予備校も本格的に始まりさらに三巻突入ということで原作を読まなかったりと割と忙しいです。1週間に一度の更新は守りたいのですがひょっとしたら遅れるかもしれません。その際は事後報告になるので今曜日になっても今週分が投稿されてないときは察して下さい。
今日も良い天気、良い気候……本来こんな日ならばコミュニティのホームの日当たりのいいところに座って本でも読んで一日を過ごしたいものだがそうもいかないのが俺達ノーネームクオリティだと言えよう。というか毎回毎回話を大きくする十六夜クオリティとそれに賛同する女子二人クオリティだ。そもそも俺は不戦敗でも良かったくらいだというのに……全く持って迷惑な話だ
「とはいえせっかくやる気を出してるのに水を差すのもな……特に最近の久遠は何か目覚めてるし」
ノーネームの荒廃し、作物が育たなくなった畑のその土壌を何やら赤い巨人に不眠不休で耕させて元の状態へと戻そうとしているらしい。
いくら人形とはいえなんとも人使いの荒いことだと聞いたときは思わず言葉を失った
そこまで活気に満ちた彼らに「俺はいい」なんて言えるほど強いメンタルもなく、彼らの誘いにまんまと乗って一人トボトボと歩いているのが俺だ。
事情を説明しようと思うと激しく面倒臭いがようは何時もの競走……かけっこみたいなもので十六夜が提案したそれに乗っかることになったわけだ。景品は南側の連盟、
「ここまで大規模にしなくともいいだろうに……」
ルールは期間内に最も大きな戦果を挙げたもの……無論そんなに簡単にチャンスがやってくるわけもなく俺はこうして一人で何もない道を歩いてそう積極的でもなくギフトゲームを探している訳だ。……とはいえ適当なゲームでは受ける意味もない。確かに南側の祭りには興味があるが行けるのならば別に毎日じゃなくてもいい。俺が燃えているのはつい先日コミュニティの仲間に大見得を切ったばかりだからだ。
黒ウサギのために言った言葉とはいえあれは紛れもない俺の本心……ならばその言葉の通り俺はコミュニティのために誰よりも動かなくてはならない。だからこそ景品とは別に全力で望むべきなのだが……平和すぎるぜ東側。そりゃ魔王にかかってこいなんて言うつもりはないがだからといってそこいらで開催されるありふれたゲームじゃみんなが持ってくる結果の万分の一にも満たない筈だ……となれば俺が狙うべき大物を探さなくてはならないが本当に何もない。
いつぞや会った蛇神ならばどうだとそちらに歩を向ければ頭上を黒ウサギと共に十六夜が高速で駆け抜け何やらゲームを始めてしまったようだしコミュニティ内部のことは久遠が既に手をつけている。春日部も恐らく自身の力をフルに使って何らかのゲームを見つけていることだろう……となれば自然と余り物な俺の取れる手は────
「ちょいとそこな坊や」
─────前には劣るもののそれにしたって高まっている身体能力から使える……というよりは使えているはずの幸運の力に頼る他ない。
道の端で岩に座りこちらを見る妙齢の女性へと迷わず歩を進めた
「俺に何か用か?」
「私が坊やに……?バカを言っちゃいけないよ、用があるのは坊やだろう?」
……これはギフトゲームを求めるものに反応して発生したギフトゲーム……ってことでいいのか?
いいのかい、と手に持って紙をそのまま懐としまおうとするのを慌てて止めて相手の言葉に乗る
「あぁわかったよ。用があったのは俺だ、認めるさ!」
「それでいいんだよ、素直なのはいいことだ。さて、前置きは良さそうだね。坊やが望むのなら私は確実にそれに見合ったものを提供しよう。その代わり坊やはそれを絶対にクリアしなければならない、出来なければずっとそのまま私のゲームの中をさまようことになる」
……とたんに物騒になったな。クリアできなければ終わることのないゲーム……言いかえれば無理難題でもなんでもない絶対にクリアができるゲーム
「……悩むことはないな。いいよ、受けるとも。ルールはなんだ?」
俺の問いかけに女性は何も答えずにその手に持つ紙をこちらへ向ける
俺がそれを読もうと視線を凝らした段階で世界がその一枚の紙へと集約されていく
「─────ッ!」
突然のことに声すら上げられず息を呑むだけの俺気がついた頃には周囲の色という色が抜け落ち、あらゆる存在がその形を霞ませる世界へと変貌していた
「ルールは簡単。このゲームに勝利する事が勝利条件。時間制限も何もないがある意味時間をかければかけるほど勝利から遠のいていく。質問は自由だ、最もあたしがそれにまともに答えるかは別だけどね」
「……何だそれ」
勝つことが勝利条件?何故それがゲームに繋がる。どうすれば勝てるかを提示せずにゲームは成立しない。それはルールがないも一緒……いや、今の口ぶりは何かおかしい……ならばそこを突き詰めていけば自然と勝利に繋がるゲーム?周りの景色とは何の関係がある?
「……質問は自由、だったな。ならこのゲームに勝利条件は他にないのか?」
「さぁ、そう考えた時点でもうダメだとも言えるかな」
この考えがダメ……?考え方が違うのか、はたまた考えすぎ?思考を単純にすれば解けるのかはたまた焦点が違うのか……いやそんなことはないこれが何かを求める物ならばそれを提起しなければゲームではない。ならばこのゲームが求めるのは本当に勝利という事だ
ほかのゲームを受けてきて勝利しろということか?なら時間をかければかけるほど勝利が遠のく理由がない。
「……この景色はなんだ?」
「気になるなら散歩でもしてくればいい。こんなピンボケした世界目がおかしくなりそうだがね。この世界で一生を過ごすことになる場合はこれにもなれなきゃならんだろう?」
時間制限もなく競う相手もない、状況は何ら変わらないのに勝利だけが遠のく?例えばそれはどんな状況だ?勝利Xの座標は動かないのに俺との距離だけは開く、ならばそれは俺が勝利からかけ離れていることにほかなら無い。思考すればするほど遠くなるのならば思考を止めればいいのか?だが思考の停止に答えがあるのでなければ……Xの座標が0じゃないのならばそれはなんの意味もない。
まず間違いなくこのギフトゲームは何かを求めるものではなく俺の行動を必要とするものなんだろうがその行動がわからない!
自分から離れていってるのだとしたら、このゲームを受けたときまず何をするかを考えればいいのか?それが勝利につながると?
「悩むといい坊や。悩む事は悪いことじゃないさ」
……言ってくれる。考えれば考えるほど泥沼に嵌っていくと言ったのはどこのどいつだ
「坊やが何もできないならあたしは暇潰しにここで寝てるから答えが決まったら呼んでちょーだい」
「なんでそんな投げやりなんだよ……」
意味不明すぎる─────なんだあれ?
透明でヒラヒラした……ビニール?
「あぁ、忘れてたわ」
そう言って腰掛けた岩に溶けている雪だるまのごとくベターっと張り付いていく女は一言付け加えた
最もそんなことはどうでもよく俺の視線はその女の背後の木の後ろ、何やらヒラヒラヒラヒラとどんどん増えていく半透明な何かに吸い寄せられて離れない。時々見える紙のような腕には何故か長く鋭い3本爪が見え隠れし、その凶刃木をひしっと握り締めながら出された半顔は頭部の半分を裂くようにしてつけられた口と明らかにその頭部のサイズに合わない瞳が備え付けられていて……目が合った。それも十匹程が同時に。
「─────制限時間はないけど幽霊が出るから気をつけてね?」
「遅すぎるだろっ!!?」
俺の叫びに反応したのかケタケタと笑い声だか鳴き声だか良く分からない声でアンサンブルしながらその手に力を込めて木をへし折って……そうそう、そうだな。それを振りかぶって……いやそんな幽霊がいてたまるか!!?
背後は同様に森が広がっている。挙句全体がぼやけているため認識と現実の違いで転んだりぶつかったりするかもしれない以上森へと逃げることはできない─────ならば障害物の無い道沿いにと走り出そうとした瞬間その木が連続して打ち出された
一瞬で視界が白い葉の波に覆われ枝に引っかかれながら無理やり森の方へと飛ばされる
こんな状態でも音は拾えるもので間近の木の葉の擦れる音や木が着弾する音と共に幽霊達のキィィィイイ!!なんて叫び声が四方から聞こえてくる。いや多過ぎだろうと口を開くことすらできず体にのしかかる木をそのまま持ち上げてなんとか起き上がる
これが生身の俺だったらダンプかなんかが起こした事故現場みたいになってたところだ。むしろあちこちへ飛び出した枝が体を貫通してその先端に俺の肉体のいろいろなものを実らせて余計スプラッタになっていたまである
「勝利しろってのはこいつらを倒せってことか!?」
……いやないな
徐々に包囲を縮めるなんてことはせず各々が自信の持てる全速力でこちらへと走ってきているであろう気合の入った叫び声を聞きながら余裕のない頭で下した結論は幽霊はこのゲームとは無関係であるということ。こんなに分かり易い奴らが勝利に関わるのならゲームの勝利条件があんなに不明瞭なのはおかしいからだ
俺が一番最初に目があった二足歩行でダバダバと全力疾走してくる紙のような体を持った幽霊が視界に飛び込んで来るのに振りかぶった木を合わせながら思考を続ける……いや走る姿が衝撃的過ぎて実は少し考えが飛んだ。トラウマなんてものじゃないトラペガサスレベルのショック具合……落ち着こう少し頭がおかしくなってるみたいだ
「てかやっぱり木は使いづらいな」
とはいえ素手で触る勇気もないしまず触れるのかもわからない。木で触れて素手で無理なんてことだったらそれはそれで意味がわからないけれどそれでも試したくない。
木を振り回し引っかかる木をへし折りながら周囲を無理やり開拓する。超高校級の土木業者が名乗れそうだ
「……やっぱり微塵も落ち着けてない」
こんな状況下でゲーム攻略法に頭を回すことなんてできやしない。あの意味不明のゲームにこの精神的にも物理的にも激しすぎる超難易度の幽霊の相手とかそりゃ投げ出したくもなるわ
……遂にはギリギリ開拓されていない更地と森の境界線に目玉を乗せた人型の紙がペラペラと風に靡きながら並んでしまった
……心臓が弱ければもうこれだけでポックリ逝ってもおかしくない。
「「「KiiiiiiiiyAAAAaaaaaaaa!!!!!」」」
目の焦点があっちこっち跳び跳ねてるんだけどそのままどっか飛んでいってくれないかな?
「ハロウィンに全員まとめて出直してこい!」
「「「ManmaaaaaaAA!!!!」」」
……頼むから鳴き声ぐらい統一してくれ、バリエーション豊富過ぎてこっちが泣きたくなってくる
足元に転がるさっき投げられたそれを足で蹴り上げ真横のまま蹴っ飛ばす。素晴らしいことに弾だけなら沢山ある。ここならしばらくは────風に乗って来んじゃねぇぇぇぇ!!!
蹴飛ばした木によって起こされた風圧にその紙のような体を乗せて正面の幽霊が全員空へと舞い上がった。あぁ、きっと空に色があっても美しさはないだろうこの光景……絶景かな
「なんてそんな気持ち悪さを突き詰めてるんだよ……」
体から想像できなかった自分が恨めしいがそれでも道は開けた。ジャイアントスイングの要領で周りに寄って来ていた幽霊を吹き飛ばしそのまま役に立ちそうにない木を捨て空いた道を駆け抜ける
「時間をかければかけるほど勝利が遠のく……考え方じゃなくて幽霊のことをさしてたのか?」
それでも話は通る。そもそもなぜ幽霊がいるのかも気になる。女のところに戻ろうにも幽霊たちのせいでその余裕もない。だが逆に考えればこの状況下でもクリア出来ることがこのゲームの勝利条件なのだ。
物理攻撃にたいして風圧に乗ることでよける様などう仕様もない存在をあの無尽蔵と言える数相手にしてそれでも解決できる事の筈なのだ。
……箱庭において出されたゲームではクリアできなければそれはクリアできなかった側の力不足というのはもう耳にタコができるほどに聞かされた話だが逆に言えばクリア方法がないギフトゲームなんてない筈なのだ。たとえそれが誰にも実現不可能なことだとしても、理論場可能ならば、机上の空論であろうと天文学的な回数の試行の元に達成できるのであればそれが勝利条件なのだ。だがそれならば時間が経てば経つほど難しくなるなんてことはない。だからこそ考えられるのはやはりはじめの考え……誰でも達成可能なことだが幽霊のせい、もしくは自分が考え過ぎているが故に答えにたどり着かない、通り過ぎている場合が考えられる。だが勝利条件に幽霊が絡むにしてはいやに女の言動やギフトゲームの情報があやふやだ。幽霊なんて少なくともこの世界では木よりもはっきりとした物なのだからギフトゲームに絡めるのならばもっと明確にその存在を明らかにするはず……─────え?
「ここって……あの蛇神の?」
脇目も振らず走っていたからかいつの間にか世界の端まで来てしまったらしい、トリトニスの滝……といっただろうか?いやだがそれはどうでもいい。問題は……痕跡がないことだ
「俺が湖を斬った痕が見当たらない」
白夜叉が直したのか?わざわざ?たかだか岩についた切断痕を消しにここまで?
……幽霊……クリアしなければ脱出ができない世界……消えた痕跡──────頭の中で謎で作られた回廊を通り抜けていく。痕が消えたのは白夜叉のせいじゃない、そもそもあの痕はきっとそのまま残っている、幽霊もこの状況もきっと全部答えがある。このぼやけた世界だってやはり理由があるんだ。
だが
「とにかく今は確かめる為にもアイツのところに戻らないと」
さきほど逃げてきた道を少し迂回しながら再び駆け出す。この世界で一生を過ごすのもあの幽霊にあうのもゴメンだ。だがそんな俺の慎ましやかな願いも虚しくぼやけた木々の先に幽霊達の瞳の輝きが見えるとはいえこれ以上迂回してたら一生たどり着きもしない。蹴散らす勢いでむしろ踏み込む力を強めて根っこを吹き飛ばしながら正面へと体を打ち出した。そのまま空中で姿勢を制御して足を前へと出しながら─────自身の軽率な行動を後悔する。
前方にあるのは白い壁……否、紙のような体を重ね木と木のあいだに壁を作るように幹へと巻き付いた無数の幽霊達。着弾と共に触れるだけで不安を感じるような触っているのか触っていないのかも良く分からない感触と何故かそれでいながら確実に冷気を伝えてくるそれに足が沈みパチンコの様に、二本の木をしならせながら体を引き絞って行く。
マズイッ────と足を地面に突き立てようとしてもう一方の足を地面へと突き出したところでそちらの足も幽霊達に絡め取られて……限界へと達した幽霊達が体を弾けさせるのと同時に打ち出した力のままに俺は通って来た道を再び吹き飛びながら戻って行く。木をへし折り巻き込み巻き上げながら向かう先は世界の果て─────この体ならば空中でも跳ねて戻ってこれるのだろうがあいにくと俺にはその技術が無い────冗談じゃない。制御の効かない体では足を地に付けることもできない。全くなんで幽霊のあいつらが二足歩行で俺は空中浮遊させられているのだか……
「─────クソッ!!」
ギフトカードから再び金箔の模擬刀を取り出しさらに花村のエプロンで手と刀を固定しながら辺古山の技術で今度はうまい事切らないように調整しながら地面へと刀を突き刺し、折れないようにあの後増えていた罪木のものであろうギフトをかけて今にも壊れそうなそれをギリギリで使用可能な状態へと引き戻し続ける。
それでもまだまだ勢いは減らず遂には世界の果てのその先……どこへ続くともしれない奈落が見えてくる
「うおおおぉぉぉぉッ!!」
もはや刃のことなど考えている余裕はない、少しでも勢いを殺すために刃を傾け一気に減速をする……だが遅かった。
急減速のせいではねるように浮き上がった体は無情にもその淵の奥へと進んでいく
突き出した左手もその滝を別ける一つの岩を滑り完全にその身は虚空へと投げ出された
途中の幽霊のマザコンみたいな鳴き声はソニックアドベンチャー2に出てくるナックルズパートの幽霊のボスのあの声を想像してください
なお今回、十六夜君と同時刻に同じ場所にいますが十六夜くんや黒ウサギどころか白雪すらいないのは仕様です。ってかまぁ普通にギフトゲームにおいてように展開された世界なので十六夜くんたちはいないのは当たり前なのですが一応ということで補足しておきます