異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

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土日なんで正午に更新してみました。
受験生なんで平日は予約投稿ができた時は正午、そうじゃなければ不定期です。


ドキドキワクワク!ウバイアイ異世界旅行

ドキドキワクワク!ウバイアイ異世界旅行

 

 

 

 

 

「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス。しかも、参加しなかったお一人様は何をしておられるのですか!」

 

そう遠回しに日向のことを指した黒ウサギの問に日向は疲れた様子で返した。

 

「閃きアナグラムだよ。」

 

黒ウサギの切実な問いをそう投げやりに返したのには訳がある。

そもそも閃きアナグラムとは日向が事前情報に無かったものを推理する時に使う独自の思考法である。

散りばめたピースを並べ偏見を持たないようにして眺めることで通常では考えられないような事物に対しての答えを出す…………そんな方法であるが故に思考中は軽いトランス状態に陥っている。

それほどまでの集中を必要とするこれを使ってもなお答えの見えてこない現状に少し困惑していたのだ。

なお日向が答えを求める時に使う思考法としてもう一つロジカルダイブというモノがあるのだが今回は時間が足りなかったので割愛する。

 

「なんですかそれ?」

 

黒ウサギと同じように疑問の視線を投げるほかの三人に苦笑いしながらも日向は大したことじゃないと話を終わらせた。

 

「誰も黒ウサギを助けて下さる優しい方はいないのですね……」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

涙を浮かべている黒ウサギに十六夜は話の先を促す。日向を除いた三人も一応話を聞く気はある様だったので黒ウサギは気を取り直して咳払いをして、話し始めた。

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです。既に気づいていらしゃるでしょうが皆様は、普通の人間ではありません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその”恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界には強力な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

「…………普通の人間じゃない?」

 

聞くことを優先しようとした日向の呟きは誰に拾われる事も無く宙に消える

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う”我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界に呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多ある”コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの”主催者《ホスト》”が提示した商品をゲットできるというシンプルな構造になっております」

 

「………”主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す為の試練を称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示する為に独自開催するグループもあります。」

 

「結構俗物ね。………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品、土地、利権、名誉、人間……そしてギフトを賭けあう事も可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むこともできるでしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然──ご自身の才能を失われるのであしからず」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期間内に登録していただけたらOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

「……つまり『ギフトゲーム』はこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

飛鳥の指摘にここに来る前のことを軽く思い出す。

自分達がまだ強大な絶望に囚われ、成す術なく操られていた頃の生活はまさにギフトゲームに近かった。

あれをゲームというのはどうなのだろうとも思うが…………あの史上最悪の黒幕にとってはあれもゲームだったのだろう。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。『ギフトゲーム』の本質は一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めてからゲームに参加しなけばいいだけの話でございます」

 

そこで黒ウサギは一度流れを区切ってこう続けた

 

「話した所で分からないことも多いでしょうから、ここで黒ウサギと一つゲームをしませんか?」

 

「「ゲームだって?」」

 

十六夜と俺の問いかけに首肯で答え、虚空に向かって指を鳴らすと何処からともなくカジノにありそうな木製緑の布が貼られたテーブルが落ちてきた。

 

今まで沈黙を続けていた十六夜は片眉を上げ、日向は止まってしまった説明に少し残念を感じて眉尻を下げる

 

「ルールは至ってシンプル。ジョーカーを含めた53枚のトランプの中から絵札を1枚選んでとっていただきます。カードに触れるのは一人一回までとさせていただきます♪商品は、そうですねぇ……黒ウサギに何でも一つ命令できるということにしましょうか♪」

 

「ほう?……何でも、ねぇ………」

 

そう言って十六夜は黒ウサギの豊かに育った双丘を眺め

 

「勿論性的なことはダメですヨ!!??」

 

その視線に気がついた黒ウサギが自身のそれを庇うように腕を回す

 

「冗談だ。」

 

十六夜は笑いながらそう言うがもはや冷たくなった女性陣の目が十六夜の印象を表していた。

 

それにしてもなるほど…………、と日向は思う。

考えていたのは十六夜の行動やそれに対するみんなの視線ではなく黒ウサギのサービス精神…………そしてその態度である。

 

自分たち四人が落下して来た所にたまたま居合わせた案内役…………何てことはあるまい。

この世界に山賊なんてものが存在するかは知らないが、こんな山の中に突如現れた新参者なんていいカモだ。

 

聞く限りに弱肉強食が法のこの世界で初心者だからと見逃す道理はない。

 

(…………となると。やっぱり黒ウサギが俺たちの突然の異世界旅行に関わっているのは明らかだ。そしてその目的が俺たちを狩ることではなく、俺たち自身にあることも…………また明らかだ。)

 

「チップには、………貴女の言うギフトを賭けないといけないのかしら?」

 

態度には匂わせないが少し竦んだ飛鳥が尋ねた。黒ウサギはそれに対して答えるが…………それが日向にとっての確信だった。

 

「最初のギフトゲームということでチップはなしとさせていただきます。強いて言うなら皆さんのプライドを掛けるといった所ですか」

 

安い挑発…………と言えれば楽なのだろうが他の三人には効果的面だったようで皆異様に乗り気だ。

 

才能豊かな友人に恵まれる日向だからこそわかる事だが力や才能を持ち、それで生きている者達と言うのは異様にプライドが高かったりそれを神聖視している節がある。

十六夜はある意味表情が固定されているせいで読めないが他の二人はもはや冷静とは言えないだろう。

 

 

それではゲームを、と言いかけた黒ウサギに十六夜はカードのチェックを申し入れた。

まぁ申し入れたというほどお行儀の良い言い方ではなかったが。

 

別に日向は負けて失うものなどないし見たところでどうこうできる才能がない。

イカサマなどにしたってアソコまで必死な彼らが見つけられないのなら自分に見つけられるはずもないと各々カードに何やらするのを遠巻きに見るだけにとどめた。

 

そんな日向を三人は訝しげに見ることこそしたが遂に話しかけるものはおらずゲームは開始された。

 

 

やたら自信ありげな十六夜は一番手を名乗り上げ、テーブルのカードをざっと見た。

 

「さっきは粋な挑発をありがとよ」

 

「き、気に入っていただけて何よりデス……」

 

十六夜の皮肉に内心ビビっているのか若干引き攣りながらも言葉を返す。

 

「これはその礼だ!!」

 

十六夜が突如テーブルを平手で叩きつけた。日向と黒ウサギは本当に突然のことに驚き、耀と飛鳥は表になった絵札のカードを取っていく。

 

 

なんていうか強かな女子たちだな…………。

 

「エエッ、な、何をやっているんですか!?」

 

「一人一回、絵札のカードを選びとる。ルールには抵触していない筈だろ」

 

驚く黒ウサギを余所に十六夜はしれっと自身の正当性を主張する

すぐさま黒ウサギはウサ耳を立ててどこかと連絡を取った。

 

というかアレ受信だけじゃなく発信もできるのか……。

 

と元の世界で散々弄られた自身の髪型に似たそれに少し愛着を覚えつつも不憫そうに黒ウサギを眺める。

 

「うう、箱庭の中枢から正当であるとの判断が下されました。し、しかし、十六夜さんと日向さんがまだですよ!!」

 

「え、俺も?」

 

表になったカードはまだあるので自分もそれを取ればいいのではないかと言外に主張するがどうやら十六夜の行動に頭に血が登ったらしい黒ウサギには聞いてもらえなかった。

 

なお当の十六夜は

 

「俺を誰だと思っているんだ?ほらよ」

 

などと言いながら手に持つカードを返し、ちゃっかりとクラブのキングを引いていた。それを見て黒ウサギは目を丸くする

 

「一体どうやって!?」

 

「憶えた」

 

「は?」

 

「だから53枚のカードの並びを憶えたんだよ。」

 

何でも無さそうに言う十六夜に、黒ウサギは戦慄しているが、対して十六夜は、既にニヤニヤとした表情でこちらを見ていた。

 

「さあ、お前の番だぜ?」

 

内心今の衝撃にこちらのことを忘れててくれたらいいのにと思いつつも日向は焦る事無く適当なカードをひっくり返す。

 

盤面のカードから確率を計算するとか無駄な動作すらしなかったそれに期待の面持ちで日向の手元をのぞき込むが────現実はそう甘くはなかった。

 

「やっぱりダメだったか。」

 

予めわかっていた結果だが周りの成果とも言えるそれを見たあとではやはり悔しい。

 

日向がめくったのはハートの7…………つまり敗北だった。

 

周囲に走った衝撃はある意味十六夜よりも強かったと言ってもいい。

何故かと言われれば期待していたからとしか言い様がないがその期待のレベルが普通とは違ったのだ。

 

黒ウサギは人類の中でも最高レベルのギフト所持者が召喚されるという事前知識があったが故のある一種の偏見があったし、十六夜や飛鳥達にしたって未だに力の一端を見せずただ後ろに控えるだけの日向に素振りこそは見せないものの興味を持っていたのだ。

 

 

───それが手酷く裏切られた。

 

 

「まぁ俺のプライドはズタズタにされたってことかな。」

 

そうやって手に持ったカードをヒラヒラとしながら苦笑いを浮かべる。

 

そんな日向の態度に明らかに納得のいっていないという表情の四人。

中でも取り分け黒ウサギは困惑の色が強く、十六夜は不信が表面に出されており、女子二人に至っては十六夜に向けるそれよりも視線が冷たい。

 

 

そんな目で見られても日向にとってはこれが全力で隠しているものはない。

確かに自分はかなり特殊な例だが数々の死線をくぐり抜けてきたしある意味自身の手で仲間達を処刑台に送り込んできたという自覚もある。

 

だがそれでも自分自身は何ら特別ではないことを知ってしまっているのだ。

 

だからこそあの最後まで希望を求めて死んでいった狛枝のように自分にも都合よく”幸運”が微笑むとは思っていない。

 

そんな沈黙を割るように目をさらに鋭くさせた十六夜が口を開く。

 

「お前…………なんか隠してんだろ?」

 

「別に隠してることなんてないさ。」

 

隠す必要もない。

ただあの生活を経験した日向には不確定な事や曖昧なことをそのままで伝えたくないという潜在意識があった。

皆の様子を見るに自分とは別の世界から呼ばれていることは確実と言っていい。

まず服に統一感がない、それにギフトと呼ばれる存在に心当たりがあるであろう彼らを希望ヶ峰が見逃す筈がない。

 

…………だがその希望ヶ峰学園に彼らの姿はなかった筈だ。

自分たちを救出に来た後輩は既に五人を覗いて死亡、同級生も同数を除けば意識不明の昏睡状態。

自身が入学する前の世代に彼らのような存在がいなかったことは知っていた。そう考えると彼らが同じ世界…………少なくとも同じ時代にいたとはとてもじゃないが思えなかった。

だから自分の事で特筆して語ることも想像がつかないし十六夜がそこまで自身を疑う理由に心当たりが無い。

 

「そこまで言いたくないなら一つ言いたくなるようなことを言ってやろうか?」

 

そう前置きした割には俺の返事を聞く間もなく話始められたそれは確かに俺にとっての毒だった。

 

 

いやむしろそれは───

 

「俺の記憶力はさっき見てくれたと思うんだが…………」

 

───悪意を持たないが故に致命的なまでの力を持った猛毒とも言えるものだった。

 

「俺達がスカイダイビングの真っ最中の時、お前は居なかった。居たのはもっと危ない感じの不審者然としたロン毛の男だったはずだ。」

 

そんな十六夜の言葉に何やら女性陣は半信半疑の視線を向ける。

俺はと言えば────完全に思考を停止していた。

 

自分がここにいる以上完璧に消滅したのだと思っていた絶望がまだ”生きている”。

それは正しく日向にとっての絶望だった。

 

「着水した後、何処かに消えたあの男と変わるようにお前が現れたわけなんだが…………これって普通か?」

 

日向にとって解決したはずのあの絶望の事件は…………まだ完全に終わったわけではないらしかった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

そうしてどれだけの時間がたっただろうか。

 

今度は十六夜の言葉に驚かされた俺が何とかつぶやけたのはその男の名前だけだった。

 

カムクライズル───かつて希望ヶ峰学園で開発された人造の天才…………超高校級の希望と呼ばれた男。

 

そして俺であって俺でない…………普通じゃない男の姿が十六夜の言った特徴と一致するのである。

 

 

一向に回復が見られない場の空気を変えたのはこの中でも最年長と見られる黒ウサギだった。

 

両手を打ち合せて注目を集めるとお願いの話を全員に振ったのだ。

 

「まぁ日向サンは失敗してしまわれたので今回はなし…………ということになりますが他のお三方はお願いがありましたらこの黒ウサギが全力で持って叶えさせてもらいますですよ!」

 

あくまでも性的な事以外と付け足したのは場を和ませるためなのか意外とマジな視線で十六夜を見ているあたり本気で警戒しているのか。

 

黒ウサギの意図を悟った十六夜もしょーがないと言わんばかりに頭を掻き自身に注目を集めた上でこれまた暴力的な自信に満ちた笑顔で持って問いかけた。

 

「黒ウサギ。俺が聞きたいのはただ一つ。この世界は面白いか?」

 

そう聞かれて黒ウサギは、花開く様に笑みを浮かべ、こう答える。

 

「Yes。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白い、と黒ウサギは保証いたします♪」

 

若干回復した空気の中自然とこの世界で生活していく流れになっていることに日向が気がつくのは話が終わり黒ウサギのコミュニティへ移動が始まってからのことだった。




はい、今回も話は動きませんでしたが少し日向くんと他の3人…………特に女子陣にはかなり
嫌悪されてます。
完璧な主観ですが飛鳥さんは自立すべき年齢の男が負けてあんなにヘラヘラしているのを見たら、勝利のために努力すらしていなかったら多分その人に嫌悪感を抱くと思うんですよ。
春日部さんもあれでいてプライドが高いですから…………もともと女の子の方が主だとしても人間不信ということもあるので有り得るんじゃないかと。
なぉ十六夜くんは嫌いというより興味と不信ですかね。
黒ウサギはもちろん腹黒ウサギなので実力を隠していたりする線を疑っています。
だって普通呼び出した内3人がすごくて一人だけ普通とか無いでしょ?
まぁそんな感じです。

今回の話はそう言った日向くんへの距離感を決める話でした。結構大事

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