異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

29 / 52
活動報告に書いていたのですがどうも土曜日の日付変更までには間に合いませんでした、すいません

iPhoneの執筆アプリがそれほどいいのが見つかりません。キーボードもandroidに比べてというか自分が慣れていないのか執筆速度もだいぶ下がって不便を覚えることも多いです。執筆に関して以外は満足するところも多いだけに少し残念ですね......なんにせよ言い訳はここまでにして小説の話に移りましょう、今回......というかいつもそうなのですが原作にあった場面を大幅カットしているため未読の人は何のこっちゃとなるかもしれません。後書きにどこをどう端折ったのか少し書いておきたいと思います、あとメールでもいいので良いアプリがあったら教えてください、では今回もどうぞ


2015年3月14日21時40分 記号の細かい違いがあった為できるだけ直しました


黒死よりも美しき死色の鮮やかさよ

黒死よりも美しき死色の鮮やかさよ

 

 

 

 

いつかそんな時が来るだろうと予測はしていた。この世界で初めて絶望を知ったその時から......罪木蜜柑は希望を拗らせた他のメンバーとはその本質を圧倒的に異ならせる。彼女はあの狛枝すら興味を示さないほどにただただ"純粋なる絶望"なのだ。

 

「超高校級の保健委員......罪木蜜柑!」

「はぁい、日向さん。そんなに叫ばなくても、私はここにいますよぉ?」

 

この場にいるだけでその存在が俺たちの視線がそっちへと持っていかれる。見たくもないのに、視線をやりたくもないのにその嫌悪感が体を縛って精神までもを凝り固まらせる。

現に俺は一瞬、頭の中から笛吹き女の事が吹き飛んでいた。

だがもちろん彼女も無視できる存在ではない。

無論罪木蜜柑を相手にしながら他に意識を裂く余裕はない。

そして笛吹き女の目的はそんな俺ではなく春日部と久遠にある......

 

「久遠、とにかく逃げろ」

 

だからこそ戦闘が始まる前に......先手を取る。

石畳......硬い硬いその床を全力を踏抜く。今必要なのは余裕、そしてそのための距離だ

 

「させませんけどねぇ」

 

踏み抜かれ俺の足中心に広がっていくはずの罅がしかし伸びていかない......というよりもこれは......

 

「繋がっていっている?」

 

開いたそばから再び何事もなかったかのように接合され床を抜く事が叶わない

 

「縫合は得意ですからぁ、まぁわたし的にはそっちの人がどうなろうと知ったことではないんですけど―」

「ほ、縫合?縫合って......保健委員が?」

「久遠、気にするところが違う」

 

......保健委員だから手も触れず、道具も使わず、痕跡すら残さず石畳を縫合するって?いくらなんでも馬鹿げてるだろ

 

「ラッテンさんはそっちの人おねがいしますねぇ。日向さんは私がやりますので......てかあなたじゃ無理なんで」

「......なんだってマスターはアンタみたいに胡散臭いやつを招き入れたんだか」

「信用されてないんじゃないですか―?」

 

......なんか知らんがケンカしてるし

 

「......久遠、大丈夫か?」

「......身体能力で劣るのは認めるけど馬鹿にされるのは心外ね、楽勝よ」

 

どう見ても楽勝ではない。先程のようなチャンスはもう巡っては来ないだろうし能力まで確認された。見るからにただの人類ではない彼女はおそらく久遠よりも身体能力に優れているだろう。

 

「私のことなんてどうでもいいわ、それよりもあなたよ。絶望だかなんだか知らないけれどどう見ても尋常じゃないわ……それに」

 

続けて言葉を紡ごうとする久遠を遮ってなんとか罪木からそちらと視線を向ける

丈の長いスカートに隠れているが不安定な上半身を見るに震えているのだろう

 

「大丈夫、今度こそ誰も殺させない」

 

間違いは繰り返さない、あの絶望を再び起こさせるわけには行かない

 

「今度こそって……ひなた君

あなた──」

「そろそろいいですかぁー?」

 

再び久遠の言葉が遮られて俺の意識までそちらへと向けさせられる

向こうも言いあいが終わったのかラッテンと呼ばれた女不満そうに立つだけで罪木はその表情を微笑からピクリとも動かさない

……元の罪木にも失礼ながら俺はその表情を似合わないと……そう思った。

 

「よくなくても時間切れです、日向さん……さぁ、行きましょうか」

 

罪木がさらにその似合わぬ笑を浮かべると完全に塞がれた罅が今度はなぜか俺と罪木、久遠とラッテンを裂くように現れ俺達は下の階層へと落とされる床をつかもうとした先からその床まで崩され、下の階に足がついたそばからまた崩され……落ちて落ちてさらに落ちて、そしてようやく地下という高さまで来てようやく止まった

 

分断されたのは痛いが罪木のそばに久遠がいるのも不味かった……どちらかといえば助かったと言うべきか

 

「ようやく二人きりですね、日向さん──あれれ?良く見たら怪我してるじゃないですか、全身ボロボロです」

 

……確かにジャックにやられた傷がまだ残っている。耐久性はあれど回復力はまだ人外と呼べる領域にない俺は割と体にダメージを残していた──過去系だ。こうして話している間にも体に残った細かい傷や体の内側に響いていた痛み、衣服のほつれやら汚れまでもが綺麗に癒され消えていく

 

「これでもう大丈夫です」

 

……花村との戦いはある意味自身の行いを、かつて決めたはずの覚悟を揺さぶる戦いだった。

逆に辺古山との戦いは前を向くことができるか否かだった。その過程として戦いはしたがあの島での辺古山の剣技を思い出せば今更城を切ろうが驚かない……ただしここまで来るともはや別だ

 

「……ギフト」

 

……未だ再現に成功したのは辺古山の才能のみだがその才能だってギフトとしては存在していなかった。どれだけ人知を超えた才能であってもそれが才能である限りはギフトではない。

だが罪木のそれは保険委員の延長というレベルですらない

 

「その通りです、この世界は元の世界の逸話や偉業が形として現れる世界……超高校級の才能ともなればどれもがその業界においては伝説のようなものです。だから私もこうして世界に認められた、受け入れてもらえた!私はもう今までの私じゃない、今までの私をあの人もこの世界までもが受け入れてくれたから!……だから次は私が受け入れるんです、私を受け入れてくれなかったみんなを……日向さんを私が受け入れて見せるんです!」

「……変わってないよ罪木。それは何も変わってない」

 

受け入れることも、受け入れてもらうことも全部そんな言葉で片付けられることじゃない。

 

「だから俺も一緒に変わるよ、自分のためにも、みんなのためにも」

 

少し予想外ではあったが傷も治り全開が出せる。多少力ずくでも……

 

「──押し通るッ!」

 

不意打ち気味に体を倒して極端な前傾姿勢のまま突撃する。もともと距離もないこの状況であれば一撃いれられ──る?

 

「なんで……?」

 

体が動かない、文字通り全身の血液が鉛にでもなったかのようにかつてあった全能感すら消え失せ体が持ち上がらない

 

クラウチングスタートに失敗して地に付したかのような状態で動く気配を見せない体とは違い頭はそれでも回り続ける……でも答えは見つからない──いや、これは体が動かないんじゃなくて……

 

「今までが動き過ぎていた……って事か」

「あの人の言った通りです、今の日向さんを動かしているのは希望。だから日向さんは希望を取り上げられたら動けなくなる」

 

……希望を意識すればするほど上昇する身体能力、だからこそ言ってしまえば絶望を意識すれば俺は無力なニュートラルな状態へと戻される。いやむしろこの状態ならばまだいい、でもこれ以上俺が絶望を受ければ──

 

「考えるな、考えれば絶望に繋がる」

 

無理矢理にでも体を動かし立ち上がる。大丈夫、この状態が普通、今まで楽をしすぎて辛く感じているだけだ。

それに不思議なのは確かに絶望を感じたとはいえ辺古山を前にして失わなかった希望をなぜ今失ってしまったかだ。

 

「あれれ?立ち上がっちゃうんですか……いくら治せるとはいえ日向さんを傷つけたくはないんですが……」

「思い上がるな罪木……俺はまだ希望を捨ててない、負けるつもりはない」

 

感じた絶望に差はなかった。性質や経緯、原点こそ違えど間違いなく絶望としては前の二人も劣るところはなかったはずだ。じゃあ何が影響した?

 

「んー、困りました。日向さんのこともそうですがまためんどくさいことを……」

「なんの話だ?」

「いえ、ウサギさんが少し余計なこと……ルールで縛られている以上こればかりはどうしようもありませんね、また来ますね、日向さん♪」

 

そう言って罪木は黒い風に飲まれて消えていく。言葉を聞くに黒ウサギがなにかしたのだろうか?

既に前のような聴覚を失って様子を伺うことはできない。状況を知るためにも……いや伝えるためにも地下からは一度でなければ。

 

「罪木が引いた以上ラッテンも同じ状況のはず……いや、今はむしろ俺の方が無力か」

 

何故……それは未だにわからない。だが考えるのは後だ、動いた状況に適合しなければ死ぬ……俺はそれをよく知っている

ラッテンが引いたあとにしろ引く前にしろ今の俺には駆けつける力も駆けつけた後にどうこうする力もない……なまじっか合理的な判断ができる分質が悪いな

傷一つないくせに重たくなった体を引きずって上へ上へと向かっていく

ようやく周りのざわめきが聞こえてくる頃にはまともに歩けるようになったとはいえやはり違和感だけは拭えない。

とはいえいくらそんな状態といえども大声で自身の名前を呼ばれれば流石に気づくものだ

 

「ノーネーム、日向創!日向創はいないか!?」

「……俺か?」

 

行っては見たもののノーネームでさえ珍しいのにまんま日本名なその名前はさらに珍しいだろう。どうやら俺のことを探しているらしいサラマンドラの彼の元へと急ぐ

 

「日向創は俺だ、何かあったのか?」

「あぁよかった。審議決議の追加メンバーとして魔王のコミュニティが直々に指定してきた。とにかく会議をすすめるためにもついてきてもらおう」

 

審議決議?追加メンバー?なんの話だ、誰が俺を?というかなぜ?……言いたいことは沢山あるがなんにせよさすがはフロアマスターのコミュニティと言うべきかはたまたそれほどまでに急いでいるのか俺が質問を投げる余裕もないほどに早足で向かっていく

やがてたどり着いた部屋の名前は貴賓室……着くなり豪奢な扉を開けて中へと押し込まれてしまった。

 

「日向さん!無事だったんですね!?」

「黒ウサギ?それに十六夜にジン……マンドラとサンドラ様まで──いやそれよりもそっちか」

 

中では長机にそって向かい合うようにノーネームやサラマンドラ……つまりは味方陣営五人と敵陣営四人が座っていた

その中には見た事のあるものもいる。ラッテンと言う名の女性と罪木だ。そして追加でもう二人……白と黒の色が印象的なフリル付きのワンピースに身を包んだ少女、どうにも斑を印象づけさせる柄が危険な匂いを醸し出すそのとなりで軍服姿の男が目を伏せて座っている。

なんだかんだ言って騒がしかった罪木、またまんま明るそうなラッテン、子供姿の少女に暑苦しそうな見た目の男とうるさそうなメンバーが揃って恐ろしいほどまでに静かだ

 

「また会いましたね、日向さぁん?」

「あぁ、今のお前に会えても何も嬉しくないがまた会ったな、罪木……俺をここに呼んだのもお前だろ」

 

生死不明の俺の生存を知ってるのはコイツしかいない。そもそも俺に固執しているコイツでもない限りこんな話し合いにまで俺を引っ張り出す酔狂な奴は……まぁ十六夜ならやりかねんが

 

「知り合いなのですか!!?」

 

そう食い気味に聞いてきたのはサンドラ様だ。まぁ確かに正体不明の敵と知り合いだという味方がいたら気にもなるか

 

「残念ながら俺が知ってるのは罪木蜜柑という少女だけで……他の三人はあまり知らない。ただ久遠はそこのラッテンってやつと戦っていたはずだ」

「あら、さっきの子ね。ありがたくゲットさせてもらったわ」

「ミカン?あなたが欲しかったのはあんな冴えない男なの?」

「日向さんは冴えない男なんかじゃありませんよ?何せ──かつてはあの人と渡り合い、果ては2度目の敗北を教えた存在ですから」

 

……やはりあの人か。未だに罪木のなかから消えていない……いずれはまた対峙することになるのだろうか?

 

「……知り合いってどういうことだ?それともまただんまりか日向?」

 

別にだんまりじゃないさ、そうだとも。後ろめたいことなんて何もない。十六夜が笑っているその裏ではやはり俺らの確執を気にしていることも、さらに言えばやはり例に漏れず俺の態度にイライラしていたことも知っている

 

「──日向さん!」

 

黒ウサギの叫び声が閉じられたこの部屋に響く……俺はさっきも説教をされたばかりだというのに何を躊躇っているのか……

 

──ハァ、やっぱり俺はバカなんだよ

 

「俺らはかつて仲間だった。今も仲間だと……俺はそう思ってるよ、詳しい事は今回のことが終わってからでいいだろ?」

「絶対だな?」

「絶対だ、嘘はつかない」

 

……話すと言ってしまった、もう後に引くことはできない

 

「……黒ウサギに白夜叉の伝言が伝わって今は言わば試合でいうタイムアウトの状態だ。やるのは作戦会議(パドル)の代わりに和平交渉だけどな」

「どうなった?」

「結局主導権は取られた、今は何とか落としどころをみつけようと条件を聞いたんだが──」

「私たちが求めるのは優秀な人材……ここにいる員面々に白夜叉と言った主力メンバーよ。最もあなただけは私ではなくミカンのところへと送る約束なのだけれど……私からすればあなたのどこがいいのかまったくわからないわ」

「それは俺にもわからないな」

 

人材確保……何をしたいのか知らないが本来なら人材確保というのは何らかの目標があってのことだ、つまり足がかりにしか過ぎない。その段階でここまで派手なことを仕出かすと言うのだから箱庭の奴らの積極性には全く持って驚かされる

 

「俺らが提示した要求はゲームの再開を一週間後とすること、そしてその条件は奴らの人材確保の邪魔にならないための自決、同士討ちの禁止、黒ウサギの参戦許可、最後にゲーム開始より24時間後に決着がついていない場合主催者側の勝利が決定するという事」

「なるほど、そこまで決まっていてなんでそのタイミングで呼ばれたのやら……」

「日向さんはこういうの考えるのが好きじゃないですかぁ?そ、それとも余計なこと……でしたか?」

 

……何やら久しぶりに気弱な罪木を見た気がする。だがまぁそのとおりだ。好きなわけではないが知らないところで勝手に決められるのは困ることも多い。こういった会議に参加させてもらえるのならばそれだけで損はないだろう

 

「特に俺から言いたいこともない。久遠のこともまぁゲームが開始したらでいいさ……だから聞くことも言うことも一つだけ……あんたらはこの条件で受けるんだな?」

「えぇ、そっちのジンクン、だったかしら?坊やの発破も気に入ったし何よりお互い得じゃない?」

 

……言葉にいちいち試すような意図が見え隠れするのは少し恐ろしいものがあるが……所詮言葉の上とこと絶望に関してならば俺たち以上に向いている奴らもいないだろう。

罪木と眼前の少女が何故つるんでいるのかは不思議だがそれは終わってからでも構わないだろう。

 

「それで、言いたいことはなんなのかしら?聞いてあげるから早くいいなさい」

 

……罪木や久遠、いやそもそもゲームのことすらおいておいて言わなければならないこと──そんなものはひとつだけに決まってる

 

「どんな理由があれど絶望なんかに手を出したのならば待つのはそれこそ絶望だけだ。あんたは自分から絶望を呼び込んだ……それだけは忘れるな」

 

たとえ星であろうとも、異世界であろうとも逆に矮小な人間であろうともそれは変わらない。絶望の前には全て等しく飲まこまれ退廃するのみ……

 

「忠告ありがとう、一週間後が楽しみね」

 

そう言って魔王の陣営は黒い風に包まれカラスの羽のように黒いギアスロールを残して消えていった。

その場に落ちることなくこちらへと飛んできたギアスロールには俺らが要求した条件、要求が書き加えられている。

 

「さて、一段落したところでまた問題が出てきたなぁ日向?」

「なに、俺だって聞きたいこともある。じっくりゆっくり話そうじゃないか」

 

肩にかかる力が万力のように俺を締めあげる

そしてそれは反対側の肩にもかかり出して……恐る恐る振り返れば本来青みがかった艶のあるはずの髪を仄かに赤く染めてまさに怒髪天を衝くを再現した黒ウサギが──

 

「──っ痛い痛い!!」

「えぇ、ようやくじっくりと話せるんですかそれは大変ようございました。いろいろ忙しいこともございますし早速ゆっくりじっくり話し合いましょう」

「文の中で凄い矛盾出てないか!?」

 

既に先程の殺伐とした空気はどこに行ったのやら……後ろの方で頭を抑えるジンと顔を引きつらせたサラマンドラの二人が止めに入るまで唐突なギャグパートは終わることはなかった




前書きの通り少し書いておきます。
端折ったのはひなた君が来る前の会議の様子ですね。本来ならばあそこで黒い風の正体が突き止められ紆余曲折あって「いくつもの不利や鬼札とも言える黒ウサギ参戦を飲み込んだ上で試合の開始期間を短くする」要求をする事になります。
理由知らない方からすれば「準備期間があった方がいいのではないか?」とか「黒ウサギの参戦は有利になるけどそれ以外の条件は少し意味がわからないよ」と言う感じかもしれません。どこまでがネタバレか少し判断できないので状況だけ伝えると「魔王は時間が経過するだけでゲームに勝利する手筈があり、それを十六夜くんたちがなんとか見抜いてそれを防ぐため相手要求に沿ってそれらしい理由で再開期間の短縮を要望し、そしてその中でも少しでも勝ちの目を拾うためにそこからは黒ウサギをカードに交渉した」と言う感じです
相手が人材を求めるが故に叶ったことですね。
そして思ったのですが今回のタイトル......中身とマッチしてないな!ではさようなら!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。