異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
一週間に一回ギリギリです笑
……え?番外じゃないかって?…………ごめんなさい。だから媚うって主人公をゴニョゴニョ
文字は一万二千とやたら長くなりましたがなかなか書けない本編の息抜きなんでクオリティに期待しないでください。まじで。
来週こそ本編書きたいです
プロローグ
────全身が熱い。
四肢は縄や怪我のせいで自由に動かないし脚はナイフによる裂傷で血を流し続ける。
腹部といえば使い方の良く分からない独特な形の長槍で貫かれまるで虫かなにかのように僕を地面へと縫い止めているし足元では何かが激しく燃えているのか熱が空気を伝わって僕を焼く。
意識が遠くなるのは燃焼による排出ガスとは匂いの異なる気体状の毒のせいか…………何にせよかつてこれほどまでに壮絶な殺され方をした人間がいただろうか?
…………ダメだ、考える事も出来ない。
でも………………………………
『僕は希望になれたはずだ』
そう思うだけで不思議と怖くはなかった。
やがて瞳の焦点すら合わなくなってあちこちへと視線が跳ねる中極度に低下した脳が一つの疑問を浮かび上がらせる。
それは僕の計画が成功したかどうかではなく………………なぜさっきまで無かったはずの手紙がこんな所に落ちているのかというとても些細な事だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「─────え?」
僕が手紙を認識した次の瞬間。僕は何故か強い風を感じていた。
先程の大の字の姿勢のせいか空気抵抗が激しく目まぐるしく変わる視界の中で僕は必死に思考を巡らせる。
(な、何が?またモノクマの思いつき?いや、そんな訳が無い。モノクマは確かにテキトウな性格だけどあの生活を根本的に覆すような事はしなかった。)
じゃあなんで僕は突然自由落下を開始しているのか?
その答えはついぞ出ることなく僕は思考をぶった斬られるように着水した。
「ゲホッ、ゲホッ!な…………なんで…………!」
突然水面に叩きつけられたことよりもなんで自分がこうして無傷で居られるのかということの方がよろど疑問だった。
考えても考えても答えは出ない。
周りの少年少女に見覚えはないし周りの木々や湖もジャバウォック島で見覚えのある景色ではない。
「最後にそこの優男さんはなんていうのかしら?」
「え?」
一緒に落ちてきたであろう気の強そうな女の子に突然そう問いかけられた。
「え、じゃないわよ。聞いてなかったのかしら?」
どうやら思考に耽りすぎてこの子の話を無視してしまっていたらしい。
「ごめんね、ちょっとぼんやりしてたみたい。」
「ぼんやりって……まぁ気持ちはわからないでもないけど。」
「いや突然スカイダイビングからの着水させられてぼんやりできるってすげぇぞ?」
「……天然?」
「天然……なのかな?あまりそういうことは言われたことないけど」
なにせみんな近寄ってこなかったからね。
「まぁいいわ。それであなたはなんていうのかしら?」
「僕?僕は狛枝凪斗。ここに来る前は希望ヶ峰学園っていうところに通っていたんだ」
いやここに来る前はジャバウォック島だったけど……それじゃぁ何もわからないしね。
「随分とすごい名前の学校だな」
「そうかしら?名前自体は珍しいけど凄いと言うほどでもない気がするけど。」
「……個性的」
……ふむ、やっぱり希望ヶ峰を知っている人はいないみたいだね。全員日本人みたいだし世界でも有名なそれをまさか知らないわけでもないだろうから。
……理屈はわからないけどまさか異世界にまで飛ばされるだなんてなぁ。自分の幸運を疑うわけじゃないけどこれは不幸だと思うんだよね。さすがに……。
「私は久遠飛鳥。そこの猫を抱えた子が春日部耀さん。そして……」
「俺が逆廻十六夜だ。よろしくな。」
「あぁ、うんよろしく。……それにしてもここどこなんだろうね。あの高さから叩きつけられ他にも関わらず体がバラバラにならないだなんて不思議すぎるよ。」
「……私的にはテレポートの方が不思議で一杯なのだけれど……だって下は水だったし。」
「なんだ知らねぇのかお嬢様。水の硬さってのは速度によって変わるんだぜ?早ければ早いほど固く……スカイダイビングでも直地に失敗するなら海より陸の方がいいって言われるぐらいだ。」
「それはまぁ受けたダメージで泳げないとか陸地になら茂みとか林とかの緩衝材がある場所もあるからということもあるんだけどね。……でもここにはそういったものもない筈なのに随分と衝撃が弱かったから。」
「なんでもありの世界ってことだろ。愉快結構!奇想天外大歓迎だ。……と、言うわけでそろそろそんな世界を案内して欲しいんだが?そこに隠れてるやつ、出てこいよ」
「あらあなたも気づいていたの?」
「当たり前だ。お前らも気づいてたんだろ?」
「風上に立たれれば嫌でもわかる」
「気づくというか……あんな風にウサ耳が飛び出ててピコピコと動いていたら誰でも気になるよ」
隠れているというのかなあれ?
「い、イヤですねー皆様。ウサギは臆病な生き物、そんな恐ろしい目で見られたら死んでしまいます」
「安心しろ山の中で高タンパク質の肉は貴重だから余す所無く食ってやる」
「もはや死後の話ですか!?先に生前の話を挟みません!?」
「あん?だって死ぬんだろ?」
「死にません生きます!」
「……それよりこれ本物?」
「ひゃああぁぁぁっ!!」
ウサギが逆廻君と戯れている間に後ろに回った春日部さんが「ほんもの?」と聞きながらウサ耳を鷲掴みに……ってまじめに解説するような光景じゃないね。
それにしてもみんなウサ耳を掴みにいっちゃったけどこれは僕も行ったほうがいいのかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「話を始めるのに小一時間も要すとは……これが学級崩壊と言う奴なのですか……。」
「いやいや、本物の学級崩壊は辺鄙だけど環境だけは整えられた島に閉じ込められて生徒同士で殺しあわなければならない状況のことだよ」
「そんなデンジャラスな学級崩壊があってたまりますか!!」
……あれを学級崩壊と呼ばないのならまぁ確かにないかもね
「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです。既に気づいていらしゃるでしょうが皆様は、普通の人間ではありません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその”恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界には強力な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
「……皆?」
みんなって逆廻君とか久遠さんとか春日部さんのことかな?……なるほど。彼らも彼らの希望を持っている……というわけか。
恩恵というのはまた妙な言い方だけど。
「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う”我々”とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES!異世界に呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多ある”コミュニティ”に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの”主催者《ホスト》”が提示した商品をゲットできるというシンプルな構造になっております」
「………”主催者”って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す為の試練を称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示する為に独自開催するグループもあります。」
「結構俗物ね。………チップには何を?」
「それも様々ですね。金品、土地、利権、名誉、人間……そしてギフトを賭けあう事も可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むこともできるでしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然──ご自身の才能を失われるのであしからず」
「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期間内に登録していただけたらOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」
「……つまり『ギフトゲーム』はこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」
「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。『ギフトゲーム』の本質は一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなけばいいだけの話でございます」
「……なるほどね。全てを得るか全てを失うか……常にオールベットの世界というわけか。なかなかどうして粋じゃないか」
「……どうしてそういう結論に至ったのかは少し気になりますが、話した所で分からないことも多いでしょうから、ここで黒ウサギと一つゲームをしませんか?」
「ゲームだって?」
そういって黒ウサギが指を鳴らすと虚空から大きなテーブルとトランプが落ちて来た
「ルールは簡単でございます。皆様には一人ずつカードを選んでいただきます。それが絵札ならば皆様の勝ち……黒ウサギは皆様のお願いを聞いて差し上げます。」
「私達が負けたら?」
態度には出していないが少し臆したようなそんな質問が久遠さんから出された
「初めてのゲームという事ですし皆さんはノーベットで……ですがまぁ強いていうならば皆様のプライド……と言ったところでしょうか?」
「あはは、確かに。いくら屑みたいな僕でもプライドぐらいはあるからね。」
「……屑って…………。あと十六夜さん、性的なことはダメですよ。」
僕の発言と十六夜くんの視線に零された黒ウサギの呆れたような言葉と共にゲームが開始される。
だがその前に逆廻君達のカードのチェックが入った。
なんでも黒ウサギがイカサマをしていないかのチェックらしいが……。
まぁ僕も混じっておこう。
…………よし。
「ではそろそろゲームを開始してもよろしいですか?お好きな方から一枚ずつどうぞ。」
「んじゃ俺が行くぜ。」
そう名乗りを上げたのは逆廻くんだ。
……さてさて、彼らの希望がどんなものなのか……是非とも僕に見せて欲しいな!
「さっきは素敵な挑発ありがとよ」
台の前に立つなり顔を引き攣らせる黒ウサギに獰猛な笑みを見せる逆廻くん。右手を天高く掲げて……?
「これはその礼だ!!」
───台に叩きつけた。
衝撃でカードが舞い上がり何枚かが表になる。
それにしてもすごいね!あれほどの筋力はなかなか見れないよ。しかもそれがあの細腕から……これが異世界の希望……か。
「やっぱり希望はあるんだね。」
思わずつぶやいたセリフは誰に拾われることもなく消えていく。
「な─────ま、まだです!まだ十六夜さんが!!」
表になった絵札を取っていく二人に続いて僕も表になったカードを拾い当の逆廻くんの勝敗を見守る。
黒ウサギは耳をアンテナのごとく使い今の行為が正当なのかと何処かに問いかけていたようだが逆に正当であると帰ってきたせいで打ちひしがれている。
黒ウサギの言う通り逆廻くんはその手に収めたカードを返していない。
「おいおい、見くびってもらっちゃ困るぜ黒ウサギ。ほらよ。」
そうやって逆廻が裏返したカードは絵札……つまりは僕たち四人とも絵札で無事全員勝利したということになる。
「これで僕たちのプライドは守られた……っていうことでいいのかな?」
「あれはプライドを守れているのかしら?」
「……他人の成果を横取り……寄生?」
「……言い方が悪すぎないかなそれ。」
まぁ確かに考えてみればプライドもへったくれもない結果だったが。
「それにしてもすごいね逆廻くん。なんで絵札を当てられたの?」
「覚えたんだよ。この場にあるカードの並びを全部。」
……強靭な肉体に異常な記憶力……なるほど、やはり僕の世界とは随分法則が違うんだね。……いやそうでもないのか。あの醜悪な研究の成果たる彼ならば……むしろできないと思うことの方が不思議だね
「それはすごいや。」
「おう、ありがとよ。お前らのびっくり人間ショーも楽しみにしてるぜ?」
「……それは期待されても困るかな?」
僕の力は確かにある……でもそれは僕が制御しているわけじゃないからね。
魅せるということに関してで言えばすごく怪しい。
「……まぁ黒ウサギ的にはあまり納得のいかない結果でしたが良しとします。とりあえず皆様のお願いはできる限り全力でこの黒ウサギが叶えますのでなんでも申してください!……ただし性的な事以外で。」
黒ウサギと久遠さんたちの冷たい目が逆廻くんに向けられる中逆廻くんはその目に一人真剣な色を浮かべながら先程から一度もなりを顰めないその獰猛な笑顔で問いかける
「黒ウサギ。俺が聞きたいのはただ一つ。この世界は面白いか?」
そう聞かれた黒ウサギは先程までの定例文のような決められたものとは違う自分の言葉で答えた。
「Yes。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白い、と黒ウサギは保証いたします♪」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局そのあとやる事もなく黒ウサギのコミュニティとやらに向かっていると気がつけば逆廻くんが消え、それを追いかけるために黒ウサギも消え、残された僕ら三人と黒ウサギのコミュニティのリーダーらしい十一歳の少年ジン=ラッセルは適当に休むために街の中の喫茶店に入っていた。
美味しい紅茶も運ばれてきてさらには二人の持つ希望の話も聞くことができて結局自分の中で方針が定まらないこと以外は個人的に素晴らしい一時を過そうとした時に何やら大きな影が一つジンくんの後ろに現れた。
どこか猛獣を思わせる顔立ちに二mに迫ろうという巨体を白いピチピチのタキシードに包んで立っている
「おんやぁ〜? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュ名無しの権兵衛のリーダー、ジン君じゃないですか 」
「僕らのコミュニティはノーネームです。フォレス・ガロのガルド=ガスパー」
……黒ウサギが妙に話を進めたがるから何かと思えば……最底辺……か。
それが彼女とジンくんの持つ希望につながるのかな?
何やらいきなり嫌悪な空気だけれども
「黙れ、この名無しめ。用があるのはお前じゃねえ。ここにいるお嬢様方だ」
「私達?」
「ええそうです。単刀直入に言います。よろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに入りませんか?」
「な、なにを言い出すんですガルド=ガスパー!?」
「……それはスカウト……っていうことでいいのかな?」
「もちろんそのとおりです。私はあなた方三人と黒ウサギを私のギルドにぜひ迎えたいと。」
……ふーん。
「黙れ、ジン=ラッセル。この過去の栄華に縋る亡霊が。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてるのか理解出来てんのか?」
「そ、それは……」
「壊滅状態なんでしょ?そういうどうでもいい話はいいから本題を進めてくれないかな?」
……あれ?空気が固まっちゃったよ。
「あれ?また僕変なこと言っちゃったのかな?」
「な、なんで壊滅状態だと?」
ジンくんの震えた声は聞き取るのに辛いが言っていることは簡単だったので何とか理解できた。
「そりゃまぁわざわざ異世界から人を呼ぶ理由があるとしたらよほど人材に飢えてるからでしょ。そしてそこのガルドさんが言ってたようにこのあたりで底辺らしいジンくんのコミュニティと黒ウサギのやたら性急な話の進め方を考えれば自然と見えてくるさ。」
「……結論を言わないあたりが少し気になるけどよくわかったわ。それにしてもどうでもいいとは酷い言い方ね。」
「……久遠さんはそういう話がしたかったの?それなら僕は黙って待ってるけど?」
「……いえ、いいわ。それでガルドさん……だったかしら?なんで実力もわからない、この世界でのことも何も知らない私たちみたいな存在を仲間に引き入れようとしたのかしら?」
「それはジンくんのコミュニティが力をつけるのが気に食わなかったからだよ」
「解説ありがとう狛枝くん。でもまた理由が欠けてるわ」
「理由も何も辺境とはいえ一番力を持っているコミュニティがわざわざ一番下の些細な行動に目くじらを立てるのなんてその行動が看過できないものか、はたまた気に食わないかの二択しかないじゃない。そして久遠さんの言う通り看過出来ないもなにも僕らのことをガルドさんは知らないんだから答えはひとつだよね!」
「万が一の可能性を潰しに来たとかじゃないのかしら?」
「あぁそっかそっかそういう事もあるよね。僕としたことがそんな大事な事を見落していただなんて……すごいよ久遠さん!」
「……ありがとう。でもどちらにせよ最大のコミュニティが最底辺のコミュニティを気にするのは不自然よね。それはどうして?」
「そ、それはですね───」
「それはさっきのガルドさんも言ってた様にジンくんのコミュニティは過去の栄光があるからだよ。多分昔はここらで一番……いや、下手をすればそれよりも大きな勢力だったのかもしれないよ?」
「……そのとおりです。で、ですがそれも過去のもの!」
「でも噛み付かれるのは痛いからその前に引き込んじゃえと……そういう訳ね。それにしても狛枝くん。あなたもう少し静かにできないかしら?私が言うのも何だけれどそうセリフを奪われてはガルドさんが可哀相よ。」
「いやごめんごめん。話を早く進めたいって思いが強かったみたいだ。次からは気を付けるよ。」
確かに希望に対して余計なお節介だったね。
「まぁ理由はどうあれジンくんのコミュニティの事情はよくわかったわ。何でか最底辺に落ち込んだ元最大のコミュニティ……そういうことね。」
「その解釈で概ね間違えてないかとマドモアゼル。わたし達のコミュニティは連戦連勝を重ね今やここらの地域を治める程になっています。その上でもう一度問いまが……黒ウサギとともに私のコミュニティへ来ませんか?」
「その上でお断りするわ。そもそも黒ウサギのことに関しては私が決めることではないし。」
……あれ、意外だな。見た感じ名家の出みたいだからそっちに行くのかと思ってたけど……。
「な、なぜ!?」
「当たり前じゃない。あらゆる私は恵まれた環境を捨ててまで異世界に来たのよ?今更そんな捨てたものをやるからこちらに付けだなんていうガサツな誘い文句にときめく訳が無いじゃない。春日部さんはどうかしら?」
「……私はどっちでも……ここには友達を作りに来ただけだから。」
「あら、なら私が立候補してもいいかしら?」
「……うん。飛鳥は……私の知ってる子とは違うみたいだから。」
そんな春日部さんの言葉に反応する三毛猫くん。僕には何を言っているかわからないけれど春日部さんはどうも動物と会話する力があるらしくあの三毛猫とも友達らしい。
「狛枝くんはどうなの?」
「僕?いや僕が春日部さんの友達だなんて畏れ多くて務まらないよ。」
「そっちの話ではなくてスカウトの方よ。どうなの?」
「……あぁそっちか。」
……あまり興味がないんだよねぇ。確かにこの世界は才能という面では希望に溢れているかもしれない……でも本当の意味で希望を持っているのはどれくらいなのだろう。
僕が求める希望は文字通りの希望……人々の先に立つ存在なんだ。その像とガルドさんは……僕なんががいうのもおこがましくて身の程知らずだけど……あまりにも違いすぎるんだよねぇ。
「僕も春日部さんと同じだよ。自分の目的があってここに来た。それに別にガルドさんは必要ないかな。」
「お、お言葉ですが──「それよりもさぁ?」」
耳障りな声を遮って話を続ける。
勧誘の話はいい……でも少し気になることがあるのだ。
「どうも納得がいかないことがあるんだよねぇ……いやほら別に文句とかじゃないんだよ?でもやっぱりこういうことははっきりさせとかないと。」
「いいから早く言いなさいよ。回りくどいわね。」
「ごめんごめん、怒らせちゃったかな?あまりもったいぶるのは僕も本望じゃないから言うけどガルドさんのコミュニティはどうして最大のコミュニティになれたのかな?」
「……どういう事だ?」
少し険のある声で返されてしまった。うーん。怒らせるつもりはなかったんだけどなぁ?
「まぁ見てわかるけどガルドさんのコミュニティは最大っていう名前の通りにあちこちに旗が登ってるよね。これ程までに
「確かにそうね……。ギフトゲームは両者合意の勝負……普通ならここまで大きな勢力との勝負は避けるものだと思うのだけれど……連戦連勝を重ね?『どういうことか話してくださる?』」
久遠さんの言葉に不思議な重みが宿ると共にガルドさんが話ちゃいけないような事を平気で話始める。顔だけは自分がなぜこんなことを喋っているのかわからないと言わんばかりに動き続けているのだがそれでも彼の口は止まらない。
「……人質……か。確かに有用な手だね。」
人質を取って相手に無理やりギフトゲームを承諾させ全てを奪いまたそれを足にして人質を手に入れ次のギフトゲームに臨む……たしかに成功すれば確実に勝利を手にできる。……何よりも凄いのはその人質を殺したというところだ。
「そして何よりも下衆な手よ。呆れた……無法な世界なのだろうとは思っていたけれどここまでとは……箱庭とはこんな輩ばかりなのかしら?」
「いえ……箱庭でもここまでの下郎はそういません。」
僕たちを騙していたという罪悪感からかずっと黙っていたジンくんがここで初めて口を開いた。
「こ───この女ァァァァッ!!」
理由はわからないが喋るつもりのなかったことを喋らされた原因が久遠さんにあることを悟ってかガルドさんが机を跨いで久遠さんに迫る。
「──ガッ!く、クソ!離せぇ!!」
───がそれも横から割って入った春日部さんの細腕に組み伏せられることで阻止された。
というか違和感がすごいね。春日部が実は柔術の達人だったと言われても思わず納得しちゃいそうな光景だ。
「離してもいいよ春日部さん。」
僕の言葉に全員が全員目を剥く……って当たり前か。よく常識を疑われる僕でもそのくらいはわかる。
「……どういうつもりだ?」
「いやガルドさん……僕は悲しんでいるんだよ。」
「「「「───ハァ?」」」」
みんなに揃って疑問系で返された。まぁ端から理解されようだなんて思ってないけどね。
「ガルドさんが殺した人質の中には将来花咲かせる存在もいたかもしれない……そう思うと僕は悲しみとか、悔しさとか!そういった感情に押しつぶされそうなんだ……僕は怒っているんだよガルドさん!」
「ちょ、狛枝くん!?何を言っているのかしら───」
「久遠さん、悪いけど口を出さないでもらえるかな。いや僕みたいなのが久遠さんに指図するなんてと思うかもしれないけど」
「い、いやそうじゃなくてね?───あなた何をするつもりなのかしら?」
……あぁそれはもちろん───
「───ガルドさんにこの場でギフトゲームを挑もうかなって」
………………。
…………………………。
………………………………………………。
「何を言ってるんですか!?」
長い沈黙を破ってジンくんがそう言った。
「ギフトゲームを挑もうかなっていったんだけど……おかしいことかな?」
「おかしいも何もこの場で!?みなさんは召喚されたばかりですよね!?」
「あぁ大丈夫。やるのは僕だけだから。皆をこんなどうでもいいことに巻き込めないよ。」
これはいわば僕の私怨みたいな物だからね。
「正気か小僧?なんでそんなことを……」
「ハァ?だから言ったじゃないか……僕は怒ってるんだよ。そんなくだらない希望で沢山の人の希望を奪ったことが。」
「希望……?なんの話だ。」
「ゲームのルールは……コイントスにしよう。」
「だからなんの…………っコイントスだと!?」
何をそんなに驚いているのさ?
「賭けるものは君の全てと僕の命でどうかな?まぁ僕の命で釣り合うとも思えないんだけどさ。」
……でもこのゲームから彼は降りられない。
彼がやってきたように今回は彼が自分という人質を取られたから。
「このゲームで勝てば少なくとも一人の口は封じられる……。」
「なんなら僕は君の擁護をしてもいい。この場に証人なんていない。いるのは当事者だけだからね。意見が別れればまだ君の口封じもしやすいだろう?」
「だから何を言っているのよ狛枝くん!!」
「何度も同じことを言わせないでよ。ギフトゲーム……さっき黒ウサギともやったじゃないか。……そうだね。イカサマを疑われるのも嫌だしコインはガルドさんのでいいよ。ついでに交互に投げるとしよう。更に僕は連続100回正解……きみは一回でも当てれば勝ちだ。」
「馬鹿なのあなた!!?」
ひどいなぁ……結構真面目なんだけど
「……いいだろう。こんなに舐められたのは初めてだ!!」
「舐めてなんかないんだけど……まぁいいや。それじゃぁ……ゲームスタート。」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ゲーム名『勝率2の100乗分の1』
・プレイヤー 狛枝凪斗
・クリア条件 コイントス100回連続勝利
・敗北条件 プレイヤーの一度のミス
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。“フォレスガロ”印
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
……みんなが絶句するのもわかる内容だ。
何せ本来コイントスは確率1/2……だがそれを連続でとなると単純な確率論でも十回の時点で当たる確率は1/1000を下回る。
そもそもこんなゲームはイカサマや超常の力でもない限り成り立たない。
でも僕はささやかな力を持っている。いうことを聞かせる力も並外れた身体能力も動物と会話する力もないが……それでも僕は幸運だ。だからこそ僕は自信を持って言おう。
「お先どうぞ、ガルドさん。でも僕は先に言っておくよ。これ以降君が投げるコインは全部表だ。」
────勝率100%だって。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
世界の果て、トリトニスの滝からの帰り。
相変わらず人外の速度で十六夜は黒ウサギと駆けていた。
「それにしても聞けば聞くほど悲惨だな。水もなかったとか洒落にならねぇよ。」
「だからこそ十六夜さんには感謝してます。水樹の苗はその洒落にならない状況を大きく改善してくれますから───っと見えて参りました。あそこです。」
走りながらも黒ウサギが示した方向へ十六夜が顔を向ける。
普通にいうならばはるか先ともいうべき距離を跨いで石造りのドームが見える。先に行ったのか途中まで一緒だった他の仲間の姿は入口にも見えない。
……もっともその距離をあっという間に無かった事にしてしまえる二人にとってそれははるか先という言葉を使って表す距離にない
「随分と陰気そうなところだな。お日様の光を浴びねぇと頭が苔むすぞ黒ウサギ。」
「大丈夫でございますよ。あのドームは日光を直接浴びることのできない種族のためにあるもの……中は普通に外と同じ環境でお日様も青空も見えちゃうのです」
「そりゃすげぇな……っと!」
言っている間に早くも入口までやって来た二人は会話もそこそこに中へと入っていく。
黒ウサギはコミュニティのリーダーとはいえ十一歳の少年に問題児三人を預けたことが不安で。
十六夜は黒ウサギのいう日光を遮断しない謎素材の天井の真偽を確かめるために。
もっとも入ったところで外と対して変わらぬ光景にある意味期待を裏切られ昂った気持ちを持て余すことになるのだが……結果被害は全て黒ウサギが受けるので特に問題はないのが周りにとっての幸いだった。
「それで?あいつらどこにいるんだよ?」
「さぁそこまではわかりかねますが……」
「……その耳で聞こえねぇのか?」
「まぁハイテクなのは認めますが街中だとよほど目立つ音かギフトゲーム関連しか───え゛?」
十六夜の指摘に非常に分かりにくいながらも実演を交えて説明しようとしたところでハイテクな耳がハイテクらしく異常を捉えてしまった
「……狛枝さんが……フォレスガロとギフトゲーム!!?」
「へぇ、早速か。よし、行こうぜ黒ウサギ。案内しろ!」
「もちろんです!あのおバカ様方はぁぁ!」
そうして二人はそう遠くない喫茶店のテラスへと駆けていく。
もちろんスピードは先程の何十分の一にも抑えているが、その代わりに黒ウサギの危機迫る表情といえばそれ以上の迫力だ。
「何をしているですか皆様!!」
いち早くその現場へと飛び込んだ黒ウサギは到着早々そう怒鳴り声を上げる。先程十六夜の八つ当たりをくらったぶんも含めガマンの限界だったということもある……が何よりも自分の不安が的中したこと、そしてそれが十六夜のような力の確認出来てない狛枝だったからこそだ。
「く、黒ウサギ……。」
「ジン坊ちゃん!ちゃんと説明してください!」
「……いや説明よりも見たほうがはやい……って何だこりゃ?」
そこには滅多なことでは動じない十六夜を驚かせるものが確かにあった。
「コイントス百連勝?おいおい無茶だろいくらなんでも」
「というか賭けているものが命ってなんですか!?ちょ、狛枝さんは何を!!」
二人が視線を向けた先では狛枝が欠伸をしながらガルドが開く手を見もせずにぼーっとしている。
……結果は表。
当然のことのようにそれを眺めながらコインを受け取った狛枝の横でカウンターが数字をひとつ上げる。
それを見て驚愕する二人へ飛鳥が言葉を添えた。
「……始まってからずっとあの調子よ。開始直後に自分のする選択を全部表だって言い切ってから自分の番でさえ適当に弾いて終わり。」
「……それでも当たってるんだろ?」
「春日部さんが自分のギフトで試せるだけ試したらしいわ。結果は白。」
「……イカサマの痕跡はない。」
「そんな……それがどんな確率なのか分かってますか?」
「わかるも何もギフトゲームの名前がご丁寧にそう書かれてるんだもの。それでも現在の99連勝を運以外で説明する要素が見つからない。」
「コインに直接ギフトを働かせてるのか……はたまた俺たちに夢幻でも見せてるのか……何にせよいくらそんなチカラを持っているにしてもやりすぎだぜこれは。」
広がる疑念の中で正真正銘最後のコイントスが始まる。
狛枝の爪で弾き上げられたコインが狛枝の手へと帰った。
……正解は二つに一つ、表か裏か。
「Which?」
今までとは違う。あたれば勝ちの勝負……ただし負ければここで終わり……後はもうない。
「……くっ、……う…………表……だっ!!」
そうやって言い知れぬ恐怖を払うように声を上げるようになってからもうずいぶんとたつが未だに足元からなにかが這い上がってくるかのような感覚は拭えない。
そして周りが緊張の眼差しで見つめるなか狛枝の手がどけられる。
キラリと輝くコインは裏……またしてもガルドの予想と外れた結果を見せつける。
「────何故だっ!!?」
ガルドが拳をテーブルへと叩きつける。
カウンターの数字は無情にもまた一つ数をあげてついに上限へと達した。
同時に腰掛けていた椅子から立ち上がっていた狛枝がガルドへと振り返る
「何故?何故ってそりゃ────
─────────やっぱり僕の運が良かったからじゃないかな?」
どうでしたかね?狛枝かけてましたかね?
個人的に原作キャラの役割を奪うのは好きじゃない(飛鳥がガルドの発言の違和感に気づく)のですが今回は速攻でガルドをぼこさないとオチがつかないのでこうなりましたー。
それにしても狛枝くんの幸運大安売りですねー。狛枝君のはたしか不幸のあとには大きな幸運がでしたっけ?まぁこの作中だと普通に運が良くなっちゃった笑
気をつけます