「オレが忠誠を誓ったのは『組織』になんだ。あんたに対し忠誠を誓ったわけじゃあねえ!
しかしだ。オレも、もともとよォ……行くところや居場所なんてどこにもなかった男だ」
船を停めておくための金属製の柱に腰掛けていたアバッキオが意を決して立ち上がる。
パッショーネに入る前、彼は警察官だった。正義感から警察官になったが、現実は彼が思っていた環境からは程遠かった。
汚職に手を染めるのが日常と化していた警察官たちに失望したアバッキオは、当初の
金をもらうことで見逃していたチンピラに銃で撃たれた際に、同僚がアバッキオを庇って殉職したことで彼の人生は一変した。
警察から追放され行くあてのなくなったアバッキオは落ちるところまで落ちた。
そんな彼を拾い上げてパッショーネへの入団を勧めたのがブチャラティだ。
「この国の社会からはじき出されてよォ。オレの落ち着けるところは……ブチャラティ。あんたと一緒のときだけだ」
パッショーネに元警察官という経歴の男の居場所なんてない。
どれだけ組織に忠誠を誓っても、ボスが代替わりしない限り彼は一生下っ端のままだろう。
だからといって表社会にも居場所はない。アバッキオはブチャラティの率いるチームしか自分の居場所はないと理解していた。
今この瞬間、彼は忠誠より居場所を選んだのだ。
ただただ腐っていくだけだった男に目的を与えてくれたブチャラティと共に進むため、彼は恐怖に打ち勝ち誰よりも先に階段を降りた。
アバッキオの選択に微笑を浮かべるジョルノと、彼の反応が気に触ったのか、いい気になるんじゃあないと鼻を鳴らすアバッキオ。
フーゴは彼の選択に驚愕しているが、この行動が引き金になり、ついていくことを決断した男がいた。
「ボスを倒したのならよォ。実力からいって……次の幹部はオレかな。ホレ! 『亀』を忘れてるぜ」
地面を這っていたココ・ジャンボを拾い上げてジョルノに手渡しながら、ミスタが階段を下った。
ミスタは良く言えば前向きでポジティブな性格、悪く言えば後先考えずに動くいい加減な性格だが、ブチャラティのためなら命をかけるだけの覚悟と信頼がある。
ミスタはブチャラティが組織を裏切ったのは勝つ算段があるからだと判断した。
実際には今まで積み重なってきた組織に対する不信感がトリッシュを殺そうとしたディアボロの行動で爆発しただけなので、ミスタが深読みしすぎているだけである。
とはいえミスタとブチャラティの信頼関係は薄っぺらなものではない。
たとえ本当の理由を知っていたとしても、なんだかんだでミスタはブチャラティと共に組織を裏切っただろう。
もしかしたら一番にボートに乗るのを選んだら、ブチャラティ、ジョルノ、トリッシュの次──
「つーか、オッサン! もう攻撃しねーから、オレの拳銃返してくれよ」
「……ああ、分かった。拳銃は返してやろう」
「うおおおおおおッ!? 思いっきり投げるんじゃあねえよ! 危ねえじゃあねーかッ!」
やたらとオッサン呼びしてくるミスタの態度に少し苛ついたのか、承太郎はやや乱暴に拳銃をスタープラチナで投げ渡した。
もちろん普通の人間が受け取れる程度の勢いまで弱めている。
本気で投げていたら、受け止めたミスタの腕がちぎれ飛んでいるだろう。
確かに今いる面々の中では、30歳の承太郎が一番の年長者である。
ブチャラティチームはアバッキオが21歳、ブチャラティが20歳で残りの面々は10代後半だ。
彼らから見れば30歳はオッサンと言えなくもないだろうが……承太郎は納得いかないようだ。
そんな承太郎とミスタのやり取りをよそに、フーゴはブチャラティの説得を諦めて
残る一人、ナランチャは信頼と現実に板挟みになって動けない。
ブチャラティが一緒に来いと命令してくれれば恐怖を見て見ぬふりをして動ける。
だから命令してくれとナランチャは頼み込むが、ブチャラティは自分の『歩く道』は自分で決めろと突き放した。
頭を抱えて、どうすればいいか分からなくなってしまったナランチャにブチャラティが忠告する。
来るな、おまえには向いてないと。そのままの流れで、階段の上からその様子を眺めていた承太郎となのはにブチャラティが声をかけた。
「この場に留まり続けるのは得策ではない。
だからジョータローとナノハ、あんたたちもトリッシュが目を覚ますまでは同行してもらう。
トリッシュがオレたちと来るか、それともあんたらに保護してもらうかは、トリッシュ自身が選ばなくちゃあならんからな」
「いいだろう。トリッシュの保護、もしくは護衛しながら行方不明になったポルナレフの足取りを追うのが、おれたちの目的だ。
おまえたちに協力するのが、現状では最善の手だろう」
ブチャラティの提案に承太郎が頷いた。
パッショーネの情報を探っていたポルナレフの足取りを追う──それはパッショーネのボスの足取りを追うことと同意義である。
敵の敵は味方などという単純な理屈ではないが、共通の敵を前にして両者は同盟を組むことにした。
信用の証にブチャラティがジョルノに拘束を解除させた。
両腕が自由になった承太郎は懐に手を伸ばし、1枚の『紙』を取り出した。
イタリア語で『クルーザー』と書かれているそれを、承太郎は丁寧な手付きでフーゴに手渡した。
「……これは?」
「その『紙』にはクルーザーが入っている。
押しつぶされたいのなら止めはしないが……そんなマヌケな死に方はしたくないだろう?
取り出したいのなら海の上に放り投げろ」
思わず『紙』を開きそうになったフーゴの手を承太郎が押さえつける。
続けざまに教えられた事実に、フーゴはギョッとして顔を引きつらせた。
そういう重要なことは渡す前に言えよ、このスカタンがと思うフーゴだったが、ギリギリで理性が打ち勝ってキレずに終わった。
「これを機にパッショーネから抜けたいと思うのなら、クルーザーの通信機を使ってアドリア海沖にいるSPW財団のエージェントに連絡して国外へ脱出しろ。
SPW財団に受け入れてもらえるよう話は通している」
「アンタ……本気で言っているのか? オレがパッショーネに情報を売る可能性だってあるんだぞッ!」
「これは、おれたちの代わりにトリッシュを護衛していたおまえたちへSPW財団が用意した報酬だ。 『忠誠』『裏切り』『亡命』……どれを選ぶのも自由だが、おまえたちが
裏切り者のチームに所属していた男の将来は決して明るくはない。
ディアボロが勝てば真実の一端を知る人物は粛清される可能性だってある。
消されなくても、幹部に評価されなければ死ぬまで下っ端のままだ。
だからといって勝ち目のない闘争に身を置くのが正しいとも思えない。
そんなフーゴにとって、承太郎の提案は唯一の生き残る道に見えた。
手のひらに乗せた『紙』をじっと見つめているフーゴと、うつろな目で息を荒くして唸っているナランチャに背を向けて、承太郎は両手をズボンのポケットに突っ込みスタスタとボートに乗り込んだ。
なのはも無言で承太郎の後を追いかけてボートに乗り込む。
承太郎は中心付近で船べりに腰掛けているジョルノの正面、なのははアバッキオの隣を通り抜けて、ボートの進行方向に背中を向けて座った。
(このガキ、なんでわざわざトリッシュから真反対のオレの後ろを選んだんだ……?
トリッシュを保護しに来たのなら、一番近いブチャラティの隣に行けばいいだろうが)
なのはの意味が分からない行動にアバッキオは疑問を感じた。
アバッキオの背後を選んだのは、船上のメンバーの中で彼のスタンドが一番戦闘向きではないから──などという深い理由ではない。
ただ単に、できるだけジョルノから離れたかっただけである。
想定外の事態に驚きはすれども、大抵の相手に物怖じしないなのはだが、ジョルノだけは例外だった。
目を合わせるのも嫌なのか、納骨堂で対面してから一度もジョルノの顔を見ようともしていない。
「行くぞッ! ボートが離れたのなら、おまえたちは『裏切り者』となるッ!」
フーゴとナランチャ以外が乗り込んだのを確認したブチャラティが号令をかける。
自分たちを置いてどんどん離れていくボートを眺めているフーゴは、正論を述べて自分の心を納得させようとしていた。
自分は組織を裏切っていないのに、裏切り者はブチャラティたちのほうなのに、フーゴは言い知れぬ虚無感に襲われていた。
その虚無感の正体をフーゴは自覚できない。
ここにいる誰よりも常識的──様々な知識をため込んでいるが故、彼は一歩前に踏み出せない。
理性が邪魔をして、感情の
「ジョルノ、『亀』をとってくれないか。トリッシュを中に入れよう」
「……ブチャラティ、振り返って見てください」
『亀』を手渡そうと後ろを向いたジョルノが何かに気がついたのか、ブチャラティに振り返るように声をかけた。
彼らの視線の先──そこには必死に泳ぎながらボートに向かっているナランチャの姿があった。
「行くよッ! オレも行くッ! 行くんだよォ────ッ! オレに『来るな』と命令しないでくれ────ッ!
トリッシュはオレなんだッ!
口の中に海水が入るのも気に留めず、ナランチャはブチャラティに聞こえるように大声で呼びかける。
自分の意志で『歩く道』を決めたナランチャを受け入れるため、ブチャラティはボートをその場で止めた。
ナランチャは父親に愛されず見向きもされなかった過去がある。
元々家族に対して冷たい父親だったが、ナランチャの母親が病気で亡くなったことが拍車をかけた。
彼自身は父親のことを尊敬していたが、現在も父親との仲は修復できていない。
実の父親に殺されかけたトリッシュの姿を見て、ナランチャは共感した。
あそこにいるのは父親に認められず、悪友に濡れ衣を着させられ、目を患って残飯を漁っていた頃の自分だ。
あのときはフーゴとブチャラティが自分を守ってくれた。
だから次は自分がトリッシュを守る番が来たのだと、ナランチャは思ったのだ。
「てめえ、決断が
「どうなっても、誰かを恨んだりすんじゃあねえぞ」
「ナランチャ、きみのその勇気に敬意を表します」
ボートの上にナランチャを引っ張り上げながら、ミスタ、アバッキオ、ジョルノがそれぞれ言葉を投げかける。
教会の方に目を向けると、既にフーゴの姿は見えなくなっていた。
「フーゴの野郎、来なかったな」
「まあ、判断はそれぞれの問題だ。頭のいいあいつなら、組織に残るか亡命するか……どっちを選んでも上手くやっていくだろうさ」
ブチャラティにトリッシュを守りたいと宣言しているナランチャの姿を眺めながら、ミスタとアバッキオがフーゴについて言葉をかわしている。
ブチャラティチームの面々はフーゴが自分たちについてこなかったからといって、彼を非難するつもりはなかった。
あの選択肢の中なら、SPW財団を頼って海外に逃げるのが一番利口な選択だろう。
胡散臭くはあるが、仮にも表社会で有名なSPW財団の待遇がパッショーネより悪いとは思えない。
自分たちの選択は間違っていないという自信はあるが、同時に裏切りを決意した自分たちのほうがおかしいという自覚もあるのだ。
「それで、これからどうするんだよ、ブチャラティ。こんなチンケなボートじゃあ外洋には出られねーぜ」
「ひとまずは運河を通ってヴェネツィアに上陸して、トリッシュが目を覚ますまで食事でもしながら、今後どう動くか話し合うつもりだ」
ミスタの質問にブチャラティはすんなりと自らの考えを明かした。
危機感があまり感じられないようにも思えるが、そもそも現状ではできることがほとんどない。
ボスの正体を突き止めるためのヒントをどうにかして手に入れなければ、動こうにも動けないのだ。
当てもなく移動するにしても、ヴェネツィアは陸路ではリベルタ橋──ミスタとジョルノが暗殺チームのギアッチョという男と戦闘を繰り広げた橋でしか行き来ができない。
既にパッショーネの手の者が陸路や海路、鉄道を監視するために動いているだろう。
ヴェネツィアに上陸するためにボートを動かそうとブチャラティが
「ヴェネツィアに上陸するのは賛成できない。たった今、食事中に敵スタンドに襲撃される光景を『予知』した」
「テメー……ワケわかんねーこと言って、ブチャラティの判断にケチつけるつもりか?
さっきから一言も喋ってねーガキの言葉を、オレらが信じると思ってんのかッ!」
すぐ側に座っていたアバッキオがなのはにガンを飛ばすが、無表情のまま逆に睨み返された。
アバッキオも含めて、この場にいる面々は子供相手にビビるような性格はしていない。
それなのに、彼らはなのはの藍色の瞳の奥に言い知れぬ不気味さを感じていた。
直接対面していたアバッキオはケツの穴にツララを突っ込まれた気分になって、無意識のうちに立ち上がってなのはの胸ぐらを掴んでいる。
「どんな未来が見えたんだ? 詳しく教えてくれ」
「おい、ブチャラティ! コイツの言ってることを真に受けるつもりか!?」
予想に反して乗り気なブチャラティの反応に驚いたアバッキオが、なのはから手を離して振り返った。
アバッキオから解放されたなのはは、不機嫌そうに掴まれて少しシワの寄ったパーカーを整えている。
「予想に過ぎないが『遠い未来と近い未来を予知できるスタンド』の使い手とはナノハのことなんだろう。
だから、こんな子供をイタリアまで連れてきた。あってるか、ジョータロー?」
「ブローノ・ブチャラティ。おまえの言いたいことは分かるが、なのはは自分の意志でここにいる。
無理やり連れてきたわけじゃあない」
ブチャラティは子供や老人といった弱者を守る正しい心を持ったギャングだ。
このような争いごとに
もっともブチャラティはなのはを弱者だとは思っていない。
なのはの立ちふるまいは、命のやり取りや戦いをしたことのある人間特有のものだからだ。
ブチャラティたちが妙な動きをしたら反応できるように、船の先端にいるのもその証拠だ。
理由の内訳は監視が1割、ジョルノから離れるためが9割だが、心を読めないブチャラティからしてみたら戦い慣れているとしか判断できない。
どちらかと言うと、この質問は承太郎が子供を平然と利用する人間かどうか見極めるためのものだった。
裏社会のスタンド使いの殺し屋というイメージが広がっているせいで、ブチャラティは承太郎の人となりを知らないのだ。
「『予知』には水面から飛び出して攻撃してくるサメのようなスタンドと、舌に取り憑いて嘘をつかせるスタンドが見える。
時刻は……今から一時間とちょっとといったところだな」
「えらく具体的な内容だけどよォ~~~。それってどれぐらい当たるんだ?
半分しか当たらないとかだったら、ショージキあんまり参考にならねーぜ」
「わたしの『予知』は、近い未来は予知を見て行動した場合の結果が見えるが、遠い未来は何もしなかった場合の結果しか見えない。
だから当たるとも言えるし、当たらないとも言える」
疑惑の目を向けてくるミスタに対して、なのはが予知の仕組みを簡単に説明した。
未来予知が可能なスタンドの使い手なら、なのはの説明は嘘だとすぐに見破れるだろう。
『
よって、予知結果を変えるのは不可能だ。解釈を変えることで見えた未来を回避できても無かったことにはできない。
だからこそ、それを可能とするキング・クリムゾンを知ったポルナレフは承太郎でも勝てないと思ったのだ。
ブチャラティたちは裏社会では全員が若手の部類に入る。
当然、未来予知ができるスタンド使いの知り合いなどいない。
よって、ブチャラティたちは近い死の運命が決まっている人間を安らかに殺すスタンド──ローリング・ストーンズと本体のスコリッピという男とは遭遇していない。
もっとも、
「ナノハの予知が本当だとしたら、ぼくは迎え撃つべきだと思います。
敵の能力が分かっているのなら、こちらが有利だ。
それに無防備に船で海上を移動するのは、水面から攻撃できる敵スタンドにとって有利すぎる」
「ならば
承太郎がポケットから取り出した『紙』を開けると、大きめの旅行カバンが現れた。
その中から分厚いポケット付きのファイルを取り出してパラパラとめくり、目当ての『紙』を引き抜いた。
そのまま水上飛行機と書かれている『紙』を全員に見えるように掲げる。
「何かの冗談か? 準備が良すぎるどころの話じゃねーぜ。オメーらはネコドラくんかよォ────ッ!?」
「我々は可能な限りの下準備をしてから、この場に来ている。
陸海空、全ての移動手段を用意していると思ってもらっていい。
それで……どうするんだ? 飛行機に乗って空に向かうのか、ヴェネツィアに上陸して追手を迎え撃つのか。『歩く道』を選ぶのはおまえたちだ」
イタリアでは80年代から日本のアニメがテレビで浸透している。
キャプテン翼やドラゴンボールはイタリアでも人気な作品だ。
奇妙な道具をポケットから取り出すネコドラくんも、日本と同様の知名度を誇っている。
ミスタは意外とテレビを見るタイプの男だった。
ミスタの例えを無視して承太郎はブチャラティに決断を迫った。
承太郎となのはは協力者なだけで、行動の主導権はブチャラティが握っている。
「ナランチャ、周囲に怪しい人影はないか?」
「ああ、レーダーに反応は無いぜ」
「そうか……決めたぞ、みんな! オレたちは──」
追手を迎え撃てば親衛隊を削れるかもしれないが、確実に始末できるかは分からない。
飛行機でヴェネツィアから脱出すれば、パッショーネの追跡を一時的にやり過ごせるかもしれないが、逆に追い詰められるかもしれない。
ブチャラティがどちらを選んでもジョルノたちはついていくだろう。
一瞬の沈黙の後、ブチャラティは選択した。その選択にジョルノたちは反論することなく、黙って頷いて同意したのだった。
ボートに向かって泳いでいったナランチャの姿を見ていられなかったフーゴは、ブチャラティたちを見送ることなく足早に教会の中へ逃げ込むように移動していた。
クルーザーを取り出して亡命するのが一番助かる可能性が高いはずなのに、フーゴは心の中をジワジワと蝕む虚無感のせいで何もできずに礼拝堂のベンチに腰掛けて
「ぼくは……正しい馬鹿にはなれない。だけど、ブチャラティたちの情報をパッショーネに流すような
フーゴはブチャラティに一番最初に拾われて共にチームを作ったという経歴を持つ。
彼には返しきれないほどの恩があった。だが自分の命が惜しいと思う理性的な部分も同時にあった。
フーゴはナランチャのように自分の感情に素直に動ける正しい馬鹿になりたかった。
今からでも遅くはない。急げば間に合うはずだ。それなのに、足がすくんでフーゴは一歩も動けない。
彼には『歩く道』を自分で選べる勇気がなかった。
ナランチャと同じく、フーゴも今まで誰かに命令されて生きてきた人間だ。
どうしてもメリットとデメリットを天秤にかけてしまうのだ。
「ならば、パンナコッタ・フーゴ。おまえに第四の選択肢を与えよう」
「──ッ!? 誰だッ!」
コツコツと足音を立てながら、見知らぬ黒髪の男がフーゴに向かって歩み寄ってきた。
フーゴは立ち上がってスタンドを出して警戒するが、黒髪の男は気楽に散歩するかのような態度のままペースを落とさずに近づいていく。
「見たところ、きみが動けずにいるのは情報が足りないからだ。
だから、
「な、何を言って──」
「ぼくはパッショーネのボスが誰なのか知っている。高町なのはと空条承太郎の本当の目的も把握している。
信じるか信じないかはきみの自由だが……もう少し自分に素直に生きてみたらどうなんだ?」
なのはが立てた筋書きの裏で、予想もしていない事態が起きようとしている。
黒髪の男の行動がどう影響するのか、それは誰にもわからない。
誤字脱字、表記のぶれ、おかしな日本語、展開の矛盾を指摘していただける国語の先生をお待ちしております。