不屈の悪魔   作:車道

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岸辺露伴は喚かない Episodio #01 広瀬家の日常

 広瀬康一はごくごく一般的な4人家族の末っ子である。家族構成は父、母、姉、そして飼い犬が1匹おり、一戸建ての家に住んでいる。

 恋人の熱心な指導と真面目に塾で勉強するようになったおかげで、一時期は億泰以下だった学校の成績も順調に伸びて順風満帆(じゅんぷうまんぱん)な生活を送っている。

 そんな彼にも悩みがないわけではない。成長期の真っ只中にも関わらず身長は全然伸びないし、恋人の山岸由花子(やまぎしゆかこ)はあいかわらず康一が家族以外の女の子と親しく会話していたら暴走しそうになる。

 それらは些細(ささい)なことだ。康一の目下(もっか)の悩みは、かれこれ一年以上、自宅に居候している漫画家──岸辺露伴との接し方である。

 最初は部屋が余っているので高町家に厄介になる流れになりかけたのだが、なのはが断固拒否して康一が(なか)ば脅される形で引き取ったという経緯がある。

 色々とトラブルを持ち込んだりもしたが、露伴は広瀬家の面々と友好な関係を築けている。なんだかんだで露伴も常識はあるので、親友の家族に無礼な態度をとったりはしない。

 さすがに大学生の女性がいるので洗濯は康一の母親に任せているが、洗い物や掃除、買い出しは自分から手伝うし食費と家賃も支払っている。

 

 しかし、なんだかんだで2年近くの付き合いになるが、康一は露伴の突飛な行動に巻き込まれることが多くて困っていた。

 康一に気を許している露伴は割と遠慮なく無茶をする。犯罪まがいな行為まで付き合わされたことはないが、取材に同行して超常現象に遭遇した回数は、そろそろ片手では数えられなくなりそうだ。

 やや一方的な関係だが、康一も露伴のことを友人だと思っている。だから放っておけないのだが、親友の忠告だろうが露伴は平然と無視する。

 作品のためになるなら、命がかかっていたとしても絶対にやり通す『覚悟』を持っている露伴は、他人の言葉程度では止まらないのだ。

 

 2001年の3月中旬の休日。康一は昼過ぎに露伴を訪ねてきたなのはのために飲み物を取りに行っていた。

 承太郎となのはの契約はまだ続いており、週に1から2回の頻度で露伴に記憶を読ませている。なのはは露伴を家に入れたくないようで、こうして自分から足を運んでいる。

 

「やめて……そんなところ見ないで……」

「大丈夫、ぼくは気にしない」

 

 飲み物とコップを乗せたお盆を持って部屋の前までやってきた康一の耳に、なのはと露伴の会話が飛び込んできた。

 なのはの泣きそうな声に対して露伴が優しく語りかける。そんな絶対にありえないシチュエーションに遭遇した康一は、危うく持っていたお盆を落としそうになった。

 扉が閉まっているので声量が小さく途切れ途切れにしか聞こえないが空耳ではない。このまま部屋に入ったら見てはいけないモノを見てしまうのかと思った康一は、扉の前で固まってしまっていた。

 

「いやだ……恥ずかしいよ……」

「そんなことはないさ。ほら、もっとよく見せてくれ」

 

 ヤバイ! ナニがどうヤバイかは言えないが、とにかく見て見ぬふりをしたら士郎や恭也に殺される! そう判断した康一はエコーズACT3(アクトスリー)を出しながら扉を乱暴に開け放って、露伴を止めるためにスタンド能力を解き放った。

 

「岸辺露伴! それ以上はやらせないぞッ! やれ、ACT3(アクトスリー)!」

「必殺『エコーズ (スリー) FREEZE(フリーズ)』!」

 

 康一に背中を向けてなのはを追い詰めるように迫っている露伴に向けて、ACT3の物を重くする能力が炸裂した。いきなりの攻撃に露伴はろくに反応できず、アゴを強打してグエッと潰れたカエルのような声を出しながら床にへばりついた。

 

「な、何をするんだ康一くん……」

()()をしているのは露伴先生のほうだろッ! 6歳の女の子に手を出すのは犯罪です……よ?」

 

 部屋を見渡すが、康一が考えていたような光景は広がっていなかった。なのはは恨みがましい目つきで露伴を威嚇(いかく)しているが服装は乱れていない。ただし、体の一部が『本』になっていてイタリア語で記述された内容が見え隠れしている。

 早とちりしたことにようやく気がついた康一は、慌ててACT3の能力を解除する。だが、能力を解除した後で康一は思い至った。嫌がっている少女の記憶を無理やり読んでいる男を止めるという行動自体は、むしろ正しかったのではないかと。

 

 

 

 

 

 

「そういう冗談はシャレにならないんだから、絶対にやらないでくださいよ! てっきり、いつぞやの蜘蛛(くも)みたいに『味もみておこう』としているのかと思いました」

「康一くんがぼくをどんな目で見ているのかはよーく分かった。言っておくがね、ぼくが描いているのは少年漫画なんだぞ。そういう方面の描写を描くと思うのか?」

「い、いえ! そんなつもりで言ったわけじゃあなくて……」

 

 康一くんは騙されやすい上、新鮮で自然な反応を返してくれる。日常的にからかうせいでチープ・トリックのときは信じてもらえず帰ってしまうということもあったが、康一くんの表情は漫画の参考になるからやめられないのだ。

 人がいい康一くんは、ぼくがわざとふてくされた態度を見せると、こちらが明らかに悪くない限りはすぐに折れる。今回は言い過ぎたと思ったのか、すんなりと謝りだした。調子に乗っていると本気で怒られるので加減を見極めるのが重要である。

 

 湧き上がってきたイメージをスケッチブックにササッと描き起こし終えると、麦茶をちびちびと飲んでいるなのはが、ぼくを半目で睨みつけてきた。

 今年から小学生になる少女とは思えない迫力のある雰囲気を(まと)っている。見かけはごく普通の少女だが、犯罪組織のボスをやっていただけに独特な凄みが感じられる。もっとも、ぼくは見慣れているのでこれっぽっちも怖いとは思わないが。

 康一くんが邪魔したせいで、ディアボロとドナテラがどんな付き合いをしていたのか全然読めなかったのは残念だが、まだチャンスはあるだろうし今日はこれぐらいにしておこう。

 

 しかし、康一くんのエコーズACT3を直接食らうのは初めてだが、あのときと同じく腰にくるな。チープ・トリックのときは、ぼくを狙った攻撃じゃなかったから分からなかったが、体の重さが何倍にもなった感覚は把握できた。

 ……何倍もの重力を受けた描写には役に立ちそうな体験だったが、三度目は勘弁願いたいな。さすがに、この歳でぎっくり腰にはなりたくない。

 実は康一くんが勘違いして乗り込んでくるように、なのはのほうからわざとそれっぽい言葉を選んでいたのだが、悪乗りしたのが裏目に出てしまった。まさかスタンド能力を使ってまで止めるとは思わなかった。

 

「でも、去年はゴシップ記事を書かれそうになってたよね。『若き天才漫画家、岸辺露伴が幼気(いたいけ)な少女と秘密の関係を!?』って見出しで週刊誌に載りそうになったのを止めてあげたのは、どこの誰だったかなァ?」

「それは過ぎたことだろ! 第一、後をつけられて隠し撮りされていたのに、途中まで気が付かなかった君にも非はあるはずだぞッ!」

 

 まだ自己破産する前、低俗な記事を書くことで有名な週刊誌の記者が、ぼくのスキャンダルを探っていた時期があった。ぼくとしては自分のポリシーを貫いているだけなのだが、業界内で変わり者扱いされているので目をつけたのだろう。

 その記者は定期的にぼくの家を訪れる子供という格好のネタに飛びついた。アイドル並みとまでは言わないが子役としてやっていけそうなぐらいには、なのはの容姿は優れている。(いささ)か幼すぎるが写真映えはするだろう。

 途中でなのはが監視されていることに気がついて、キング・クリムゾンで時を飛ばして背後に忍び寄って意識を刈り取った後、ヘブンズ・ドアーで記者の記憶を少しだけ書き換えて事なきを得た。

 

 世間一般に『岸辺露伴はロリコン』というレッテルを貼られるのは気にしない。ぼくは金や名声を求めて漫画を書いているわけではないからな。だが、そのせいで作品の評価まで落ちるとなると話は別だ。

 自分では最高の漫画を描けたつもりでも、読者が面白いと思うかどうかは分からない。作者のスキャンダルで潜在的な読者を失うなど耐えられない。下手したら逮捕されて連載を打ち切られる可能性だってあった。

 

 まあ……結局、山を6つ買って自己破産したことが大手新聞社に取り上げられてニュース番組でも話題になってしまったがな。一時期、居候している広瀬家の周りにマスコミが押し寄せる事態になったが……こうなることを予期して、なのはは高町家に世話になろうとしたぼくを止めたのか?

 いや、あれは単純にぼくのことが気に食わないから拒否しただけだな。こちらも好かれようと思っているわけではないので文句はないし、そもそも本命は康一くんの家で高町家はダメ元の予定だった。運よく居候できたら銃弾すら切れる古武術の取材ができるかも、という期待はあったけどな。

 

「露伴先生って、よくなのはちゃんの記憶を読んでますよね。そんなに漫画の参考になるんですか?」

「裏社会の知識なんかは詳しくは描けないが、今後の展開を描くときの参考にはなるな。もっとも、そっちはオマケで一番の目的はこれだよ」

 

 康一くんの疑問に答えるため、ぼくは机の上に置いていた分厚いハードカバーの本を手にとった。見た目はごく普通の本だが、中身は白紙のメモ帳である。なのは以外には知られていない極秘のネタ帳だが、康一くんになら教えても構わないだろう。

 手渡された本を開いた康一くんは、おもむろに中身を読み始めた。ふむ、予想通りあっという間に顔を青ざめたな。題をつけるなら『見てはならないモノを目撃してしまった少年』と言ったところか? 少し陳腐(ちんぷ)すぎるかもしれないな。

 

「ろ、露伴先生ッ! なんですかこれ!?」

「見てのとおり、()()()()()()()()()()()をまとめた本だよ。ぼくは翻訳家じゃあないから直訳気味だが、中々悪くないだろう?」

「まさか……()()()()()()んですかッ!? ああ……天国にいる鈴美さんになんて報告したら……」

「早とちりするんじゃあないぜ、康一くん。ぼくのヘブンズ・ドアーは死体を『本』にはできないんだ。幽霊の記憶は読めるが……幽霊なんて()()()()いない連中の記憶を読んで回るのは難しい」

 

 幽霊と言えば、地縛霊の少女がいるという噂があった市街地の外れにある廃ビルは期待はずれだった。終始ビビりっぱなしだった康一くんは不幸な少女がいなくて良かったと言っていたな。

 ただの廃墟探索で終わってしまったが、噂話の内容はかなり胸糞悪かったのでガセネタで良かったのかもしれない。感情を制御できずに騒ぎ回る奴が多いから子供は好きではないが、かといって不幸になってほしいと思うほど嫌いでもないのだ。

 次は退魔師の巫女と妖怪の狐がいるという噂のある神社か、幽霊に殺人を斡旋(あっせん)しているという噂のある寺に行ってみたいな。もっとも寺のほうは場所はおろか名前すら分かっていないので、行けるのはいつになるか分からないが。

 

「それじゃあ誰からこんな記憶を読んだんですか……?」

「目の前にいるじゃあないか。この世の誰よりも死んだ経験のある奴が」

 

 ぼくの指摘でようやく気がついた康一くんは、なのはの顔を見て納得したようだ。さては康一くん、なのはの前世についてすっかり忘れていたな。

 敵対していたり襲われた相手とも改心すれば普通に接することができるのは康一くんの美点だが、殺されかけて人質にまでされた相手に気を許しすぎじゃあないか?

 

「真っ黒に塗りつぶされてるように見えるぐらい小さな文字だから読み解くのに時間がかかるが……この記憶はクリエイター(創作家)なら、どんな対価を出してでも知りたがる内容だ」

「ざっと計算したら少なくとも1000万回以上死んでるけど、それを全部書き起こすつもり……?」

 

 目を伏せているなのはが、疲れた声でポツリと呟いた。たとえ何十年かかろうが全部書き起こすつもりだと答えると、付き合っていられるかと騒ぎ始めた。

 なのはの言うとおり、1ページに書かれてる死亡回数とページを(めく)る速度から逆算すると、最低でもそれぐらいにはなるだろう。さすがに、ぼくもそこまで付き合わせるつもりはない。

 今は金がないし技術も追いついていないので手作業でやっているが、『本』の文字を読めるぐらい高画質の写真を撮れるデジタルカメラが出るまでの辛抱だ。

 死の記憶が記された『本』は枚数が多すぎて、引きちぎったらなのはが死んでしまう。だが、写真で撮れば相手に影響を出すことなく、『本』をいつでも見られる形で保管できる。

 

「ただでさえ『例の日』が近づいてて、()()()を見る頻度が増えて疲れてるんだから勘弁してよ」

「なのはくんも忙しそうだし、今月はもう記憶を読むつもりはないさ。ぼくも短編の執筆や取材でこれから忙しくなるからな」

 

 例の計画の実行まで2週間と少し。なのはにとってはトラウマの塊であろう存在と再会する処刑日のようなものだ。覚悟はできていても怖いものは怖いだろう。

 それでも逃げ出さずに立ち向かおうとしているのは好感が持てる。暗く残虐な過去を持っているので好みは分かれるだろうが、彼女も康一くんと同じく読者から好かれそうな性格をしている。

 

 ぼくが忙しいのは本当のことだ。本気で書けば1ヶ月分ぐらい描き溜めておくのは簡単だが……編集部に安っぽく思われるのも気に食わないので、()()()()()()()()()()()()()()()()そんなことはしない。

 康一くんの家でお世話になるのも悪くはないが、やはり一人暮らしのほうが気楽でいい。幸いにも月村春菜が社長を務める建設会社の系列企業の不動産会社が都合をつけてくれたおかげで、結構気に入っていた元々の家は誰にも売られずに残っている。

 ぼくの顧問税理士の坂ノ上誠子の算出では、漫画の印税と原稿料を合わせたら()()()()取材や趣味で使う金を差し引いても来年には買い戻せる予定になっている。またキレられてボールペンを投げつけられてはたまらないので、()()()()()無駄遣いはしないつもりだ。

 もっとも、六壁坂(むつかべざか)の妖怪伝説のときのように、取材の目的を逃さないためなら金は惜しくない。ぼくにとって、取材のために使う金は無駄遣いじゃあないからな。あのブチギレ税理士がなんと言おうが、取材に使う金をケチったりはしない。

 

「……ところで康一。イタリア語の学習は進んでいるか?」

「露伴先生となのはちゃんのおかげで、だいぶ喋れるようになったよ。いやあ、ヘブンズ・ドアーってスゴイですねえ」

「それは康一くんにイタリア語を覚えられるだけの『才能』があったからさ。ぼくのヘブンズ・ドアーでも『不可能』を『可能』にするのは無理だからな」

 

 意図的にイタリア語で喋り始めたなのはに、康一くんは流暢なイタリア語で答えた。ぼくもイタリア語は読み書きできるが、発音に関しては康一くんのほうが上手かもしれないな。

 ヘブンズ・ドアーの能力は今もなお成長を続けているが、書き込んだ命令を何もかも実行できるわけではない。たとえ話だが、ズブの素人に人類史上最高の漫画を描けと書き込んだら、実際に傑作が生まれるかと言うとそうではない。

 どれだけ出来が良くても佳作か凡作止まりである。漫画を描かせることはできるが、その人物の限界を超えることはできないのだ。一方で肉体面の操作は融通がきくので、肉体のリミッターを外させてぶっ飛ばしたりはできる。

 最近は知性があまりない生き物も『本』にできるようになってきたので、いつかは限界を超えさせられる日が来るかもしれない。とりあえずの目標は、魂が宿っていない物も『本』にできるようになることだ。

 

「ヘブンズ・ドアーによる基礎知識の転写と学習能力の増強……加減を間違えると鼻血を出してぶっ倒れる欠点もあるが、意外と実用的だったな。もっとも、楽を覚えて精神的な成長に悪影響が出たら康一くんのためにならないし、今回っきりになるだろうが」

「露伴が言い出したときは失敗するとしか思えなかったが、こうも上手くいくとは……恐るべきはヘブンズ・ドアーの応用力か」

「あの、もしかして……二人してぼくを実験台にしたわけじゃあないですよね? 承太郎さんの仕事のために必要だからやっただけですよね?

 というか、これが成功したら受験勉強を楽できると思って協力したのに、これじゃあ無駄にイタリア語を覚えただけじゃあないですかッ!」

 

 康一くんの質問に曖昧な笑みで答えると、ガックリとうなだれてしまった。そもそも康一くんが早とちりしただけで、最初からヘブンズ・ドアーを使って学業の手助けをする気はなかった。

 いいか、康一くん。今後のために覚えておくといい。大人はウソつきじゃあないが、間違いはするんだぜ。それにイタリア語だって、いつか役に立つ日が来るさ。入試では役に立たないけどな。

 

「ちょっとガッカリしただけで、やっぱり仕事は手伝わないなんて言いませんけどね。露伴先生となのはちゃんには結構な時間を割いてもらいましたし……途中からは露伴先生とマンツーマンだったけど」

「わたしが教えたほうが手っ取り早かったが……また、山岸由花子に襲われたくないからな」

「由花子さんも悪い人じゃあないんです。ただ、虫の居所が悪かったというか……」

「半分は自業自得だから責めはしないが、今後は絶対に康一と二人っきりにはならないぞ」

 

 一週間ほど前、翠屋のテラス席で康一くんがなのはにイタリア語を教わっていたときに不幸な事故が起きた。運悪く由花子と出くわしてしまったのだ。

 アホの億泰がうっかり、なのはが康一くんをボコボコにして誘拐したことがあると漏らしてしまって機嫌が悪かったのに加えて、二人っきりで会話している状況を見てしまい由花子はものの見事にプッツンした。

 店に被害を出すまいと逃げるなのはを『逃げるなッ! このションベン臭いガキがァ────ッ!』と叫びながら追いかける由花子。

 反撃しようにも、なのはは『空条承太郎とその仲間には攻撃できない』命令が書き込まれているので手出しできない。時を飛ばして逃げ回るなのはを、由花子はスタンド能力をフル活用して追い詰めていた。

 康一くんが止めに入ったおかげで、なんとかその場は収まった。由花子は康一くんが許すなら自分も許すと言っていたそうだが、あの性格だから同じ状況になったら絶対に暴走する。

 

「そういえば今まで聞けなかったんだけど、どうしてぼくだけが調査の人員に選ばれたんですか? スタンド能力の適性があるっていうのは分かりますが、なのはちゃんなら土地勘もあるし未来を読めるから成功率が上がると思うんだけど」

「本当はわたしも同行したいんだが、別件で予定が埋まっている。イタリアは日本と比べたら治安があまり良くないからスリや置き引きには気をつけたほうがいいが、スタンドがあれば対処できるはずだ」

 

 康一くんは、なのはと承太郎さんが別ルートでイタリアに向かうことは知らされていない。偶然にもDIOという吸血鬼の息子がイタリアに住んでいると判明した時期が悪すぎた。

 計画の最終地点はローマだが、DIOの息子──汐華初流乃(しおばなはるの)が住んでいるのはナポリのネアポリスなので、広範囲のスタンド攻撃に巻き込まれる可能性は低い。念の為、なのはがローマは治安が悪いから行くなと康一くんに言い(ふく)めてある。

 

「旅費は全額負担するし、バイト代も別途支給する。承太郎が言っていたように、春休みの旅行だと思って楽しんできたらいい」

「思えば初めての海外旅行だもんなあ。そうだ! なのはちゃん、オススメの観光スポットとか教えてよ」

 

 どこからともなく観光ガイドと地図を取り出した康一くんが、なのはに質問している。元々はネアポリスを本拠地にしていただけあって、観光地や穴場スポット、危険な場所について詳しいだろう。

 ()()()()イタリアへ取材に行くので、ついでに色々聞いておくとするか。そう怪しむなよ、高町なのは。ぼくは何も企んでいないぞ。ただし、偶然取材に行った先で君たちと出くわすかもしれないけどな。




誤字脱字、表記のぶれ、おかしな日本語、展開の矛盾を指摘していただける国語の先生をお待ちしております。

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